亀の啓示

18禁漫画イラスト小説多数、大人のラブコメです。

美月と亮 アラフォー編①

2017-07-31 14:52:58 | 美月と亮 アラフォー編(2009)
俺と美月は、26で結婚。
翌年には双子の息子に恵まれる。
そして月日は流れて。
俺たちは40を過ぎ、男と女を越えた絆で
結ばれつつあった。
もちろん、俺はそんなこと
100%よしとなんかはしていないが。






「亮。今日はお弁当、冷蔵庫入れてよ。
暑くなるって。りんご入ってるし。」

「おう。さんきゅう。」

「いってらっしゃい。」

「いってきまーす。」

ここで気づいた賢い読者もいるだろう。

そう。行ってきますのキスをしてない。

俺もこの頃は忙しくて黙認してきた。

美月はもう子どもが大きくなったのだから、
そんなことはやめようという。

そういう問題ではない!
行ってきますのキスはその日一日の
男の士気にかかわる重要な問題だ!!


「変なこといってゴネないでよ。
渉や卓の前でキスするのいやだもん。」

確かに中二というお年頃の息子二人。

あいつらの目の前では
マウスツーマウスというわけにもいかんか。

「あたしだって学校行く準備とか
あるんだから。」

そう。妻は久田学園中等部の理科教師。

息子二人の担任の先生でもある。

ああ。言いくるめられちゃう
じゃないか!若い頃はこのうぶな女を
俺がずっと言いくるめてきただに。

「だって!!したいんだもん!!
意地悪美月!」

だだをこねてみた。

「うるさい!バカるー!!」

俺の名前のとおるから最後の一文字を
取って「るー。」

家族しか呼ばない名前。

美月はこんなときによく使う。

おっちょこるーとか、アホるーとか、
ノロるーとか。

「じゃあさあ。夜は、どうする?
うふふ。」

「いっとくけどソフトの朝錬
つき合うから、また今週一杯勘弁ね。」

「また?」

「だって、しかたないじゃん。
倉沢君が入院中なんだから。」

三週間くらいお預けくってるのにい。

俺たち、本当に夫婦かよう。

「浮気すんぞ!」

「出来るもんならしてみい!
バカるー!!」

うげ。蹴り入った!!暴力妻!!







「どうしたんですかあ?長内さん。」

会社についてからも昨日の美月の
蹴りが鈍痛を呼び起こす。

「いや。ゆうべ妻とケンカしてね。」

結婚してもう16年。

でもいまだに「妻」と呼ぶのは
うれし恥ずかしい。

うふふ。俺の、妻。美月。

ここんとこキスさえまともに
してないがね。

「ええ~?奥様に?ひどいですう!
DVですう!私だったらこんなステキな
旦那様にそんな酷いことしません!!」

「玲奈ちゃん。ありがと。」

若いもんはいい。
新人の女の子に優しくされて
チト機嫌が直る。


「長内さん。今日、飲みに行きませんか。」

「え?じゃあ、一課のみんなも一緒?」

「いいえ。みなさん今日は
営業二課と飲み会です。」

「じゃあ、玲奈ちゃん…」

彼女は人差し指を口の前に立てた。

「長内さんに元気になって欲しくて。」

はあ。なんか、よくわかんないまんま
近所の居酒屋に連れて行かれる。

玲奈ちゃんは女子大生気分の
抜けていない新人の女の子だ。

隣のシマのマーケティング二課の子で、
直接の指示系統はない。

あまり話したことがないということで、
飲みに行っても話が続くか自信がなかった。
しらっとつまらなくなれば、
切り上げて早く帰れるかな。

「長内さんって、おいくつなんですかあ?」

「もう42だよ。君からしたら
叔父さんくらいの歳だろうな。」

「でもそのくらいの世代の男性って
魅力的です。仕事が出来て包容力があって。
すてきですよ。」

「あはは。ありがとう。」

あれ?これって。もしかして。

そこでケータイがなった。

『あ、とうさん?まだ仕事終わんないの?
先に飯食うよ。』

渉だった。どうした?

『今夜かあさん研修とかで出張。
遅くなるっていってたろ?』

そうだっけ。

『だからカレーだよ。帰ってきたら
勝手に温めろ。おれはやんないよ』

あいつ今日台所当番だもんな。

ってことは。俺も羽伸ばしちゃって
いいってことか?

あいつより先に家に着けば、
シャワーを浴びてきれいさっぱり
証拠隠滅ができるってもんだよね。

「息子さんですかあ?」

「うん。まあね。今夜は、飲もう。」

「はいっ!」

彼女はすぐにほろ酔いで
俺にしなだれかかってきた。

「もうわたし、あるけません。」

「そんなに、酔っちゃったの?」

「これじゃ、お家帰れません。」

酔った女というのは新鮮だ。

自分の女房はザルどころじゃない酒豪。

酔ったところを見たことない。

「かわいいな。酔った女の子。」

「長内さん、お酒強いんですねえ。
すてき。」

うわあ。こんなことも言われたこと
ねえし!なんか、いい!

「じゃあ、どこかで酔いが醒めるまで
休もうか。」

「ええ。」

彼女はもう俺に肩を抱かれて、
ふらつきながらもしっかりとついてくる。

あそこで、いいかなあ。うふふ。
こんなとこ結婚してから入ってない。

「さあ。いこうか。もう少しで
横になれるよ。」

「うれしい。長内さん、
背中さすってくださいね。」

「いいとも。」

他のところもさすっちゃるでー。

「おや。お連れさん酔ってますか。
お手伝いしましょう。」

後ろから余計な声がかかる。
大丈夫ですよ、これからゆっくり…

「タクシー止めました。
どうぞ、お嬢さん。」

俺は全身の血がさーっと
音を立てて引いた。

「わたし、大丈夫です!これからまだ
行くところがあるんです!!」

玲奈ちゃんがすっくと立ち上がる。
あれ?酔ってないじゃんかよ!!

「ね。長内さん!!」

俺は血が引いちゃったもんだから
頭に血流が行かなくて
なにがなんだかパニック状態だった。

「今日は帰ったほうがいいよ!
玲奈ちゃん!!また明日!!」

タクシーに彼女を押し込んで、
運転手に五千円札を渡す。

「ごめん。足りなかったら
本人から貰って。」

タクシーを見送り、やっぱり血が
引いてしまったので体が動かない。

どうしてこんなことになったのか。

これからの身の振り方。

まずは目を合わせないと。

でも、動けない。

今度は血流の問題ではなく、
恐怖感からだった。

「明日はおまえ会社休んで役所行け。
離婚届を出しにな。」




「直樹。やっぱし美月に言うよね。」

「当たり前だろうが!!何あんな若い女に
ひっかかってんだよ!」

「いや。面目ない。」

「あの子、総務じゃ有名だ。
マーケティング二課の子だろう?
うちの課までは来てないが、
総務と庶務の係長と課長。やられてる。」

「え?」

「気がある振りで言い寄って。
財布から金抜き取るって。」

「げええええ!!」

「酒は強くていつも酔った振り
するらしいぜ。」

「くそう。」

「送ってくよ。悪い虫がつかない様に。」

直樹は俺の腕を痛いほどの力で引っ張った。






美月はもう帰ってきていた。


「案外早く終わったんだ。
飲み会つれてかれそうになったんだけど
子どもと旦那が待ってるからって
帰ってきちゃった。」

かわいく笑った。

「晩御飯は?カレーだよ。
直樹はどう?くってく?」

「いや、俺はいいよ。みつえがなんか
用意してるはずだから。」

直樹は俺に耳打ちした。

『これは俺の胸に収めておいてやる。
美月大事にしろ』

俺は大きくうなずくと
仏を拝むように送り出した。

「どうしたの?」

「…いや。なんでもない。」






その日の夜は上機嫌の美月が
俺に擦り寄ってきた。

うしろめたくて胸が痛んだが、
もちろん三週間ぶりのセックスを味わう。

「ごめん。美月。」

「なにが?」

「なんでもない」


後に総務、庶務の係長に話を聞いた。

これなら直樹と出会わなくても
未遂で終わっただろう。

彼女はやる前に、抜き取るお札が
満足の行く金額あるかチェックするという。

俺は居酒屋での会計を済ませた後、
残ったお札を全部タクシーの
運ちゃんに渡したのだから。


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