kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

007スカイフォール

2012年12月10日 | 洋画(良かった、面白かった、気に入った)
日時:12月9日
映画館:バルト11
パンフレット:A4変形版700円。スタッフ・キャストのインタビューが盛りだくさんなうえ、さすがは50周年。過去作品のおさらいページも充実。007のパンフレットはこの辺が毎回、楽しい。

これまでのボンド映画の掟を破りまくった、ある意味、今までで一番の異色作。

原因はなんといってもvillain(悪人)。
今までの007の悪役の目的は、基本的に金とか世界の再構築などだったが、今回はMとMI-6への復讐。これまでMI-6で爆破騒ぎもあったが (ワールド・イズ・ノット・イナフ)、直接の攻撃対象となったのは初めて。これだけでボンドの立ち位置が全然異なってくる。
ハビエル・バルデム扮するアントン・シガー・・・もといシルヴァは物欲とか思想で動いているわけではなく、基本は復讐という執念。行動も計算づくっぽいわりにブチ切れた行動もして、バットマンのジョーカーっぽさがあったりなかったり。

さらには登場も映画がほぼ半分近く進んでから。前半はいつものようなアイテム争奪戦のような話と思わせておいて、彼が登場する後半から全く違う映画になってしまう。
残念なのが、基本的にバルデムが英国本土のしかも人目につかない場所でしか活躍しないってこと。007の悪役は世界を股にかけ、華やかな社交界でイイ顔しなくちゃダメでしょう。

ダニエル・クレイグのボンドも自身の路線をしっかりと走っているのは良いのだが、短く刈り込んだ髪に東欧顔とあっては、英国の諜報員というよりスティーブン・バーコフのオルロフ将軍(オクトパシー)の若かりしころのようだから困ったもんだ。
オープニングにしても、やっていることは、これまで悪人側がボンドを追い詰める時にしでかしてたかのような乱暴さなのだから、これまた困ったもんだ。
さらに、ハビエル・バルデムと初めて対峙するシーンで「ジェームズ」と問いかけられるのだが、違和感がありありで、「イワノフ」とか「セルゲイ」の方がしっくりきそうなのだから、またまた困ったもんだ。

酒を飲んだくれているボンドなんて、ロジャー・ボンドとかピアース・ボンドの時には想像もつかなかったが、まあ、原作では酒大好きな不健康ライフゆえ療養所に放り込まれる(サンダーボール作戦)のだから、あまり違和感はない。酒に限らず、ボンドの生い立ちや私生活に深く触れているのも、本作の異色なところ。(ジェームス・ボンド伝)

「ミッション・インポッシブル」のスパイ組織IMFは、現役に裏切り者はいるわ、OBは犯罪者だわ、上部組織の職員はテロリストと内通しているわで、とにかく組織のあり方に批判を浴びてきたが(誰の?)、これまで内部で鉄の結束を誇ってきたMI-6もとうとう身内が敵となってきた。(過去にも例がある(ダイ・アナザー・デイ)が、基本的にイギリス人は「ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ」事件から二重スパイ問題にはナーバスなのかも知れない。)

元々同じ組織、同じボスに忠誠を尽くしてきたボンドとシルヴァは同じコインの裏表として描かれ、そのモチーフなのだろう。劇中で小道具として鏡が多用されるのだが、そういった仕掛けって007映画では要らないんじゃないかな。

一方で、ちゃんと旧作への目配せはしていて、新劇場版:Qの「壊さないで返して下さいよ。」の名セリフには嬉しくなるし、アストンマーチン DB5が以前のひみつ兵器を備えているだけではなく、ちゃんと機能させてくれるのだから、これまた嬉しくなってしまう。(ゴールドフィンガー)

シリーズものの基本は「いつも一緒、いつも違う」だと思うのだが、驚愕のラストを含め、ここまで変化があると気持ち的にちょっと複雑。(といっても小説版「007は二度死ぬ」みたいに行方不明になる訳ではないのでご安心を。)一応、クレイグ・ボンドとして、MI-6の顔ぶれも揃い、ボンド映画として一定のスタートラインに立ったような気がするので、次回作に期待したいのだが、やはりソフト路線への方向転換はかなり困難だろうな。






題名:007スカイフォール
原題:SKYFALL
監督:サム・メンデス
出演:ダニエル・クレイグ、ハビエル・バルデム、ジュディ・デンチ、レイフ・ファインズ

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