その場しのぎ

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消防署の前をランニングする恥ずかしさを知っていますか?

2012-06-06 02:49:02 | 私とその周辺について

ランニングする時、何を考えて走っていますか?
これはランナーが良く聞かれる質問だ。

走るのを日課にしている村上春樹は、講演を控えた時などは
英語のスピーチを反復しながら走ることもあるという。
なんとオシャレでスマートなのであろうか。

では私は何を考えて走っているのか。

何を隠そう、人目を気にして走っている。

世の中に数あるスポーツの中でも、ひとりで気軽に始めることができ、
人と競わなくていいことが最大の利点とされるランニングをしている時に、
私は他人の目を気にしているのだ。

そもそも運動不足解消のために走っているのだから、
四角ばった想いはいらないのだろうが、さすがにふがいない。

私も早く
「ライバル?それはきのうの自分です。
走ることで、他人と競ってもしょうがないですから」
というランナー名言を言える素敵ランナーになりたい。

何が私にそこまで気をつかわせるのか。
まず、私は走ると顔全体がとてつもなく赤くなる。
それが恥ずかしい。

これが、とてもかわいい子だったら話は別だろう。
だって高校生時代、帰り道ですれ違った美人の友達は、
部活でランニングをしていた時でさえ、かわいかった。
走っているのに、苦しそうなのに、相変わらずかわいいのである。

平凡な顔をしている私とは、そもそもが違うのだ。
さらに私はスピードも遅く、かなり必死の形相なのである。 (でも一生懸命なのさ~)
そんな時に、人とすれ違うのは何よりもいやだ。

だからランナー同士ですれ違う時はかなり警戒する。
誰かが前方から走ってくるとわかるや、どう対応すべきか、頭をフル回転させる。
できれば目を合わせたくない。
だが、ある程度は相手の位置を確認しないと、ぶつかってしまう。
だからって、あまりに見すぎると因縁をつけられるかもしれない。
そうこう考えている間にランナーはすぐ近くまで来ているのだ。

あたふたした私は、気づくと向かい側のファミリーマートの看板に目をそらすという
奇怪な行動をとっさにとっている。もう条件反射だ。
あの緑と水色のさわやかな縞模様の看板を凝視しながら、
軽やかに走っている風を装う。
せいいっぱいのさりげなさである。

しかし走っているから、当然息苦しい。

……つらい。

もしファミリーマートがなかったらどうすればいいのだろうか。

そして、もっとよくないことに、私が走るコースには消防署があるのだ。
私は走る時間を特に決めていないので、通りすぎるのは昼だったり夜だったりするのだが、
いつでも彼らは広場でトレーニングをしたり、車のメンテナンスをしたりしている。
消防士さんたちは、とにかく、いつもいるのだ。
消防士がここまで働きものだったとは。

職務にいそしむ彼らの前を、私はいつも同じジャージで、同じヘタレフォームで走りぬける。
そりゃあ、向こうも気になるのであろう。
腹筋している消防士さんの中には、
私が通り過ぎるまでこちらをずっと見ている人もいる。(気がする)

そんな風に走っていると、
私は急に、自分がとてつもなく変なジャージを着ているような不安に襲われる。
このジャージには毛玉がつきすぎているのでは?
そもそもなぜ上下そろったジャージを着てこなかったのか。
フォームだって、いつもへんてこな気がしてくる。
腕の振り方が甘すぎる。そもそも走るリズムが変なのでは?
……気になりだしたら止まらない。

そんな極限状態の時は、私は必死にあの流儀を自分に言い聞かせる。

「マラソンというのは、早い遅いではない。自分がどれだけ走れるようになったかである」

そうだ、そうだ。

つまり、マラソンをしている人間でカッコ悪い人間なんてものは存在しないのだ。
走っている人間、それは皆、求道者なのだ。

その通り! 

恥ずかしいわけなどない。

しかし一方で、ある不安が頭をもたげる。
この「走るものは皆、素敵」という “ランナー界の鉄の掟” を、
消防士の皆さんは知っているのだろうか。

この教訓を知らないとしたら……
私は相変わらず、様子のおかしいランナーである。

知っているのか、いないのか。

はたして “走る人類、皆ステキ理論” が消防士業界にも浸透しているのか、
猛烈に気になってくる。
百歩譲って、マラソンは自分のペースで、という教えは小学校で習っているはず、
と言い聞かせてみるが……それって全国共通の教えなのだろうか。

……確かめたい。 Uターンして問い詰めたくなってくる。

マラソンは自分との闘いってことはご存知ですよね?と
車のメンテナンスをしている消防士さんに確認したい。

……が、もちろんできない。 (私が常識人でよかった)

仕方がないので
「マラソンが自分との闘いであることは日本人なら誰しも知っているさ…
 だから、安心してお走りなさい!」
と、マラソン界の神様を頭の中で勝手に呼び出し、自分を納得させる。

今日もそんな葛藤と戦いながら、私はのろのろと彼らの前を通り過ぎる。
しかし相変わらず地元の消防士さんたちは、
街を火災から守るべく、日夜訓練に励んでいるのである。

それが正解である。 邪魔してごめんねごめんね~(古い)


5 コメント

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Unknown (ぬんこ)
2013-01-30 12:30:15
笑いました(笑)
気持ちわかります。
私は消防署などない田舎道を走っていますがお互い頑張りましょう(笑)
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<ぬんこさん (kairo-s)
2013-03-31 22:03:19
人前を走るのは恥ずかしいですよね…
カッコよく走れていると信じて、お互い続けられたらうれしいですね~☆
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Unknown (Unknown)
2013-04-26 09:27:24
はじめまして。
わかるわかると頷きながらも、笑ってしまいました(笑)
特にファミマの看板に視線をそらすくだりが…ファミマではないけど、同じ事しています(笑)
頑張りましょうU+203C
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Unknown (kairo-s)
2013-08-07 22:36:52
しっかり目を合わせるのはさすがに照れますよね。
笑顔もうまくできないし…
ランナー共通の悩みのようで励まされます!!
お互いそれでも走りましょう!
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わかります! (ランニング始めました)
2014-04-10 10:20:10
通りすがりです。ランニング初心者で、走っている時の恥ずかしい対策をどうしようかと検索かけていました。
描写が細かくて笑えました。でも、気持ちすごいわかります!!
キャップを目深にかぶって走りましょう!
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