太陽LOG

「太陽にほえろ!」で育ち、卒業してから数十年…大人になった今、改めて向き合う「太陽」と昭和のドラマ

#499 こわれた時計

2018年01月28日 | 太陽にほえろ!


ある朝の一係。
ナーコ(友直子)がみんなにお茶を配りながら、最近バスで一緒になる小学生男子から見られている感じがして
気になると打ち明ける。ドック(神田正輝)がすかさず「それは初恋です」と分析。
ゴリさん(竜雷太)の初恋は小学生の時、ロッキー(木之元亮)は中学時代の担任の先生、と告白。



「先生に初恋って、岩城さんが?」
「どういう意味だよ。小さい頃はこのひげはなかったんだよ。初恋くらいしますよ、ちゃんと」
ラガー(渡辺徹)に抗議するロッキーと、なぜかいっしょにふんぞりかえるゴリさんが笑えます。

翌日ナーコは少年からこわれた腕時計を渡される。長さん(下川辰平)は、父親の勘でなんとなくその児童が気になり、
ナーコの出勤に付き添って彼と会い話を聞こうとするが、知らないと言い張る。

長さんは、時計に血痕がついているのを見つける。分析の結果、未解決の殺人事件の被害者の血液と一致した。
犯人が落とした可能性が高く、その児童・浩が事件を目撃しているのではないかと踏んで尋ねるが口を閉ざすばかり。


#417「ボスの誕生日」以来のナーコ活躍編。
一係のマスコットといえば、アッコ(木村理恵)が好きでした。
ナーコはあまりに普通っぽくて、逆に彼女が出てくると「芝居」を感じてしまっていました。

ただ、改めて観てみると、決してでしゃばらず、それでいて人としてのおおらかさ、飾らなさに
器の大きさを感じて好ましいです。笑顔も最初のころに比べて自然で、どんどんきれいになってきましたね。

本編では固く閉ざしてしまった浩に寄り添い、最後には彼の心を開いて事件解決に貢献します。

ナーコの活躍以外にも、長さんが息子・俊一に子ども心を知りたくて相談したら、知ってるつもりで
知らなかった我が子の少年時代の出来事を聞いて驚きつつも、息子の成長に目をうるませるホームドラマっぽい場面や


植物園、遊園地で遊んでいたナーコと浩がいつの間にか海に来ていて青春ドラマっぽい場面もあり、
ある意味「太陽にほえろ!」らしい、刑事ドラマの枠にはまらない話でした。
(ちなみに、波打ち際の二人を見守っているのは、ゆうひが丘の木念先生に似ていますが、ドックです)




事件解決後、みんな揃ってなごやかにお茶…じゃなくて日本酒を湯のみで飲んでますw
恒例の主演刑事とボスのツーショットに、今回はナーコも。
こういうところが「太陽」のいいところだなーとほっこりします。




「大都会 闘いの日々」#1 妹

2018年01月21日 | 刑事・探偵モノ
石原プロがテレビ映画を制作した記念すべき第一回作品。
主演・石原裕次郎、渡哲也。脚本・倉本聰
ほかに、仁科明子、高品格、篠ヒロコ、中条静夫、佐藤慶、宍戸錠、寺尾聡…
どうかしている豪華な布陣です。

そのなかに「1本だけ冷やかしで」と説得され参加したのが当時スキーメーカーのテスターをしていた
神田正輝さんです。



神田さん演じる東洋新聞の新人記者・九条浩次が城西署の記者クラブに配属され、キャップのバクさん(石原裕次郎)を
訪ねてくるファーストシーン。
床に印を貼られて、ここまで歩いたらセリフを言う…という細かい指示をされているにもかかわらずNGを連発した、
とのことですが、本当に見ていて気の毒なくらいぎこちないですw

セリフ云々以前に、あれだけ身体能力の高い人が普通に歩けてないということに驚きました。
そう思うと、話し、歩き、電話をかけ、食事をするという日常を、カメラの前で自然にみえるように演じる俳優というのは
たいへんな職業だと改めて尊敬します。


ベテランのみなさんの麻雀シーン。あまりに自然です。ホントに遊んでるんじゃなかろうかw


第一話の終盤、犯人の妹を囮にして犯人をおびき出し逮捕しようとする黒岩刑事(渡哲也)たち。
黒岩に張り付いていた九条も現場に居合わせ、妹を盾に逃げようとする犯人を撃ち逮捕した黒岩に詰め寄ります。



画だけ見てるとさほどまずくないと思いますが、実際はNGの連発で、人の演技について何も言わない裕次郎さんが
唯一自分相手に練習させたという逸話の残る場面。
受ける渡さんは、文句も言わずずっと付き合ってくれたそうで、さすが団長です。


裕次郎さんが、自社の勝負を賭けた作品に起用したわけですから、初めて会った時になにか感じるものがあったんでしょう。
1話だけ撮って山に帰っちゃったのを呼び戻すのはやむを得ないとしても、見込みがないと思えば次はないはずです。
「闘いの日々」で自分の部下役で手元におき、「PARTⅡ」では信頼する渡さんのもとに預け、
その後はあえて石原プロ以外の現場をいろいろと経験させて、満を持して「太陽にほえろ!」で一共演者として迎える…。
社長としての責任もあったでしょうが、裕次郎さんからこれだけ可愛がられ、それに応えていった神田さんも立派だと思います。

せっかく得意で大好きなスキーを生業としていたのに、まったくやる気もなかった演技で叩かれ、私だったら辞めちゃうと思いますが、
それでも続けてみようと思える魅力が、裕次郎さんはじめキャスト、スタッフのみなさんにあったんでしょうね。
スキーの世界に戻っても活躍し楽しく過ごされたと思いますが、そうしたら私たちはドックにも出会えなかったわけで、
ここで踏んばってくれて感謝です。



#495 意地ッ張り

2018年01月20日 | 太陽にほえろ!

ドック対頑固オヤジシリーズ。今回のゲストは七曲署管内の派出所勤務、袴田伝吉さんです。

深夜サラ金の金庫が襲われ現金が奪われる事件が続いた。
覆面車で張り込みをしていたドック(神田正輝)とラガー(渡辺徹)は、警ら中の警官に駐車違反だと注意を受ける。
身分を明かし職務中だと弁解すると、車じゃなくて外で張り込めと嫌味を言われる。
「頑固一徹を壁画に描いたような」ベテランの袴田(井上昭文)だった。

言われたとおりに歩いて付近をパトロールしていたドックは、ビルの非常階段に怪しい人影をみつけて追跡。
袴田も合流してその不審な男を追いつめ格闘になるが、暴走車にはねられそうになった袴田をドックが突き飛ばした隙に、
男は逃げてしまう。

そのとき近くのサラ金が襲われ、ガードマンが殺されていたことが判明。
亡くなったのは、袴田の元同僚だった。



「お前が邪魔をしなければホシを逃がさなかった」と、助けられた恩など微塵も感じていない袴田。
若い刑事を目の敵にしているのかと思いきや、
「ドッグ!・・・そういうあだ名なんだろ?」と、どこで仕入れてきたのか最初からあだ名で呼ぶ気安さもあり。



ドックはドックで、「ドッグは犬、僕はドクターのドック」と身振りつきで説明。
その後も毎度毎度訂正して、なんだかんだ言いながら名コンビになる予感がします。

とび職の山上が容疑者として浮かび、袴田も間違いないと証言するが、証拠不足で逮捕には踏み切れない。
袴田は、近所を犬の散歩でよく通る野口という老人が、事件を目撃しているに違いないとふむが証言は得られない。

ドックも野口に食らいつくものの、なぜか頑なに拒まれる。
しかし、あきらめて山上の婚約者の線から攻めようとした矢先、野口老人と偶然再会。

さんざん自分にまとわりついていたドックから「もう用事はないよ」と言われ一抹の寂しさを見せる野口のじいさん。
袴田が倒れたことを聞かされ、心配なくせに見舞いに行く義理はないとうそぶく。
「あんたはこんなところでなにやってるんだい」
「関係ないだろ」
ドックに言われて顔をゆがめ、写真を見せろという。

野口のじいさんが、なぜ証言を拒みつづけ、にもかかわらずこのとき証言する気になったのか。

これは想像ですが、人とのかかわりを避けて自分の殻にこもって飼い犬とだけ心を通わせてきた老人にとって、
同年輩の袴田が、若い刑事を連れて捜査をしているのがどこか羨ましく、それゆえに知らんぷりをしてしまったんじゃないか。
ドックが最初に「教えてほしいことがあるんです」といったとき、すこし嬉しそうに見えました。

しつこく粘るドックにうんざりしながらも、用はないと言われると寂しい。
じいさんとバッタリ再会したドックが、真っ先にじいさんの飼い犬をなでていて(犬は画面に映っていない)、
私的にツボだったんですが、じいさんもちょっと嬉しかったんじゃないかな。

「関係ないだろ」と突き放すことで、じいさんを揺さぶれると計算していたのかどうかはわかりませんが、
ドックはついに事件現場近くで山上を見たという証言を得ます。
「ありがとう、じいさん!」
感謝されて照れたような嬉しそうな表情をごまかすように犬を促してリアカーを引いていく後ろ姿がよかったです。


ゴリさん(竜雷太)とドックが職場に現れたとたん、逃げ出す山上。
街中を追跡中、袴田も合流して抜け道を伝授。
ドックと袴田が神社に追いつめ格闘の末、山上を逮捕。
「手が離せない!」と手錠を打つのを袴田に頼むドック。



この事件を最後に引退を決意した袴田。
自身の体力への不安、同居を申し出る娘の想い、いろんな要素が重なっての決断でしょうが、
ドックと意地を張りながら、ときにケンカし、ときに協力して、最後にはへとへとになるまで
いっしょに走って格闘して死んだ同僚の仇をとることができた。
それが長い警官人生の有終の美を飾って、気持ちよく辞める決断ができたんだと思います。

「ありがとうよ、ドッグ」
最後まで意地でも点々をつける袴田に対し、最後の一回だけは訂正せずに受け入れるドック。
まっすぐ交わす視線にお互いへのリスペクトと思慕が感じられ、静かで温かい名シーンです。



#503 山さんとラガー

2018年01月10日 | 太陽にほえろ!


矢追ストアーに強盗が入り、店長を殺害したうえ二千万円あまりを奪って逃走した。
付近の公園で不審な男を見かけた山さん(露口茂)とラガー(渡辺徹)は、任意同行でその男・黒田(辻萬長)を
取り調べる。
ラガーは、公園での黒田の様子から犯人だと決めてかかるが、山さんは黒田の息子・清に会った印象で、
黒田は事件に何らかの関係はあるものの、犯人ではないと考えた。


冷静沈着、ベテランの山さんと猪突猛進、熱血新人のラガー。
あまりに対照的なコンビです。パーマの髪型が唯一の共通点でしょうか。

ラガーが、今回どういうわけか最初から頑なに黒田を犯人と決めつけ、周りが諫めても聞きません。
そんなとき、黒田をみつけた公園からだいぶ離れた河原で被害者の血がついたナイフが見つかり、
目撃者の証言から、ナイフを捨てたのは黒田とは別人らしいと判明、釈放された。

その夜遅く、黒田の息子に話を聞こうとアパートを訪ねたジプシー(三田村邦彦)とラガーは、
ガス中毒で意識不明の親子を発見し救急搬送する。

ジプシー、けっこう強引な…と思いましたが、結果グッジョブ!
アパートの部屋を調べる際は、出したものを丁寧に元に戻して、それを見たラガーが自分の行動を反省しておりました。
言葉でなく態度で示す。良き先輩です。



一命をとりとめた親子。山さんが清に対する接し方が本当に優しくて、すっかり父親の顔でした。
状況から、心中を装った殺人未遂と思われたが、黒田は自分がやったと言い張り、やがて病院を抜け出してしまう。

一方、山さんは黒田が真犯人について口を閉ざす理由を探るうち、清が黒田の実の子ではないという事実を突き止める。
産婦人科医の運転手だった男が出生の秘密を知り、それをネタに黒田をゆすり、強盗に誘うも断られ口塞ぎのために
殺そうとしたのだった。

黒田をわざと逃がして尾行したラガーは、真犯人の柏木をつきとめ逮捕しようとするが、逆に拳銃を奪われてしまう。
間一髪、山さんとロッキー(木之元亮)が駆けつけ逮捕。
ゴリさん(竜雷太)が清を連れてきて、感動の親子の再会…とそのとき!
なんと、柏木が腹立ちまぎれに、清に向かって「お前はもらいっ子だ」と告げる。

ラガーが男に怒鳴って殴りかかってましたが、私もなにすんねん!と叫びました。

清に問われ、口ごもる黒田に山さんが諭します。
「恐れるな、黒田。本当の親子かどうかなど、なぜそこまで気にするんだ!…血のつながりだけが、すべてじゃない!」
厳しくも暖かい山さんの言葉に背中を押され、黒田は清に真実を告げ、清も受け入れた。
同じ年頃で、同じく養子の隆を育ててきた山さんだからこその迫力でした。

今回むすっとしてばかりだったラガーが、ようやくいつもの笑顔になり「サイコー!」と叫ぶ。
あとでみんなから冷やかされてましたが、ラガーだから、そして渡辺徹だから成り立つ一言です。



【本日の瞬間最高視聴率】
カッカして暴走しそうなラガーをドック(神田正輝)がなにかとフォロー。
聞き込み中、一人でどんどん行ってしまうラガーの前にまわり込み、「落ち着けよ、お前」とでも
言っているのか、いつになく厳しい表情で見つめあうも、次の瞬間磁石のようにピタッとくっついて歩くふたり。



並んで歩く後ろ姿が意外なほどよく似ていて、いつもバカ騒ぎしているコンビの意外な、
しかし結局仲の良さがにじみ出ている場面で、私的に最高視聴率達成です。


#500 不屈の男たち

2018年01月04日 | 太陽にほえろ!



放送開始10周年を迎えた1982年。第500回記念当時の七曲署捜査一係のメンバーです。

パリで事故死した殺し屋の持ち物から、日本人ピアニストで音大教授の吉行圭介(北村総一朗)の資料が見つかり、
吉行の自宅が七曲署管内にあるため、一係が捜査とガードを担当することになった。
狙われる理由がないと非協力的な吉行だが、彼をガードするなかでロッキー(木之元亮)とラガー(渡辺徹)が
相次いで負傷する。しかし、吉行は予定通りリサイタルを行うという。


「刑事がどうなっても知ったこっちゃないって態度ですよ!」
吉行に腹を立てるドック(神田正輝)は、ゴリさん(竜雷太)になだめられるもおさまらず、
「文句があるならデカをやめろ」とボス(石原裕次郎)から久々の決め台詞をくらいます。



「リサイタルが成功するかどうかはお前たちしだいだ」
ボスにハッパをかけられ一同が出ていくなか、動かないドックを連れ出すゴリさん。
ドック、そんなに聞き分けのない子でしたかw

部屋を出るとき、もう一度ドックの背中をたたくゴリさんの手に温かみを感じます。
大切な仲間が傷つけられ、今後さらに犠牲が出るかもしれない状況で、守っている相手からは協力を得られない。
やってらんないと怒る気持ちはみんなも理解できるでしょう。

それでも、ボスの言葉に集約されているように、「それが俺たちの仕事」なのです。
もしかしたら、ドックが怒ることで周りは自分のなかにある怒りをおさめられたのかもしれない。
街に出た刑事たちが、それぞれ犯人の手がかりを求めて捜査する姿を映し出す。
そこに流れるのが“七曲署のテーマ”なのが熱いです。

やがて捜査線上に、吉行の知人で半年前に会社が倒産し焼身自殺した宅間という男が浮上。
実は、宅間は偽装倒産をし浮浪者を自分の身代わりにして殺し、多額の保険金をつかんでパリに逃げたところを
たまたま吉行に見られ、彼の殺害を企てたのだと判明。

リサイタル当日、怪我をおして出てきたロッキーとラガーも加わり吉行を警護。
舞台袖に現れた殺し屋の女を逮捕し、無事にリサイタルは終演。
何も知らない観客たちのアンコールの拍手に応えて吉行が弾きだしたのは、
ラガーが唯一知ってると言った『乙女の祈り』だった。



好きな音楽を聞かれ、しれっと「松田聖子ちゃん」と答えるジプシー(三田村邦彦)にずっこける面々。
聞いたのがドックというのも、今となればなかなかきわどいです。
一係に来て二ヶ月近く経ち、そろそろみんなと打ち解けたいと思っていたジプシーが放った渾身の一打……
だとしたら泣かせますが、どうだったんでしょう。