太陽LOG

「太陽にほえろ!」で育ち、卒業してから数十年…大人になった今、改めて向き合う「太陽」と昭和のドラマ

#459 サギ師入門

2017年12月31日 | 太陽にほえろ!


ドック(神田正輝)が住むアパートの大家が不動産詐欺に遭い、2億円もの賠償金を負うことになってしまった。
仕掛けたのは隣の部屋に住んでいた律子という若い女。
大家から泣きつかれたドックは、同じく律子に騙されて金を貸した不動産屋の田上(穂積隆信)に会うが、
二係の草野刑事の調べで、田上は関西で有名なサギ師だったことがわかる。
田上と律子はグルだったのだ。



ドックの犯罪入門シリーズ第二弾。

アパートを売らせないために居座り作戦を決行するも、水道・ガス・電気を次々止められて住人がどんどん引っ越してしまい
孤立無援の闘いを強いられるドック。

「でもこれだけ止められたら気が楽だよな。ほかに止まるものねえもん」と余裕をかましていたものの、
田上に引っ越し資金30万円を渡され、作戦変更して家財道具を実家に送った(すっかり父と元通り)ところ、
その引っ越し業者が田上の手配したニセモノだとわかる。



身ぐるみはがされゴリさん(竜雷太)のアパートに転がり込むドック。
本来泊めてもらいそうなロッキー(木之元亮)、スニーカー(山下真司)はなにげに家族と同居していて、
さすがに遠慮したんでしょう。面倒見のよいゴリさんが引き受けてくれました。
でも、いまは休んでいるスコッチ(沖雅也)も、頼めば案外泊めてくれそうな気が。
スコッチ宅にお世話になるドックもちょっと見てみたかった。

「元気出せよ、ドック。お前らしくないぞ」
ゴリさんの言葉に、しょげていたドックも元気をとりもどし、さらに奇策を思いつくのでした。


猛烈なアピールで田上に強引に弟子入りしたものの、いわれたとおりに実演するたびに現行犯で捕まるドック。
電話を受けて驚きあきれる長さん(下川辰平)とゴリさんのリアクションが最高です。
(今回、刑事ドラマとは思えない効果音が多用されていて、みなさんの名演を盛り上げております)


冒頭の写真は、人を喜ばせる訓練とそそのかされ、高層ビルを見上げているおばあさんの写真を撮ってあげ、
とても喜ばれたと顔をほころばせ師匠に報告する弟子の図。

渡されたカメラにフィルムが入っていなかったことを知り、もう騙されないぞと誓った直後に
またしても田上に騙され無賃乗車未遂で捕まってしまう。

「それでも僕は騙す側より騙される側にまわりたい。騙されても騙されても人を信じ続ける。
そのほうが人間らしい。そう思いませんか」
泣き落としのつもりで田上に投げかけた言葉ですが、ドックの本心でもあるんでしょう。
でなければ、人を疑うのが商売の刑事が、サギ師だとわかっている相手にこう何度も騙されるわけがないw

アパートの土地に買い手がつき、契約成立まであと3時間と迫る。
あきらめかけたドックですが、田上の運転免許取り消し、律子の文書偽造、社員の賭博という
アパートの件に直接関係ないと思われたさまざまなピースが最後にぴたりとはまり、
田上と律子をみごと逮捕。アパートの大家さんも土地をとりもどせたのでした。


【本日のラスボス】


大家さんも帰ってきて元の松沼荘に戻ったと、尽力してくれた仲間に礼を言うドック。
「荷物も無事に戻って良かったな」と笑顔の長さん。

「そうだ、ゴリさんに頼まれていたんだ」と、一泊の宿泊費2000円を預かる。
ニヤリと笑う山さん(露口茂)。ギリギリ出勤のゴリさんは状況がのみこめない。
「鈍いんだ」とナーコ(友直子)に言われ、ようやく騙されたと気づくドック。
まさかの長さんの詐欺に、私もまんまと騙されましたよ。ショックでしたw



スコッチがこの2回前から、ボス(石原裕次郎)が今回から不在で6人体制の一係。
たしかにふたりの不在は大きいものの、だからこそいつものチームワークがより発揮されたエピソードでした。

沖さんの事故についてはよく覚えていませんが、裕次郎さんの入院は当時連日報道され心配していました。
観ている私たちがそうなのですから、キャスト、スタッフのみなさんは本当にいたたまれない気持ちだったと思います。
それでも一丸となってこんなに楽しいエピソードを作ってくれたことに改めて感謝します。
劇中の一係のメンバーはもちろん、「太陽」は最高のチームです。




「俺たちは天使だ!」

2017年12月23日 | 刑事・探偵モノ


柴田恭兵さんのことを書いたら、このドラマを取り上げないわけにはいかないでしょう。
「俺天」こと「俺たちは天使だ!」
恭兵さんは今でも活躍されている息の長い俳優さんですが、数ある代表作の中でも私はダーツ役がいちばん好きです。

そして、「太陽にほえろ!」好きにとっては、スタッフ・キャストがほぼ被っていることで
愛着をもたずにはいられないドラマです。

麻生探偵事務所のCAP(沖雅也)=スコッチ
藤波弁護士(小野寺昭)=殿下
新妻署桂刑事(勝野洋)=テキサス
マンションの管理人・原田(下川辰平)=長さん

藤波さんの助手・久美(長谷直美)=早瀬婦警のちマミー
新妻署金沢刑事(三景啓司)=ドックの弟・進
新妻署神保刑事(横谷雄二)=吉野巡査

そして、JUN(神田正輝)がこのあとドックとして太陽に加わります。

あの秀逸なオープニングのクレジットにも、太陽でおなじみのスタッフの方々が名を連ねています。

クールな役柄が多かった沖雅也さんの素に一番近かったのが、このCAP役だったそうですね。
見た目はクールで二枚目なのに、お人好しでチャーミングなCAPは本当にハマリ役でした。
なにしろ、楽しそうに活き活きとしています。

はじけっぷりが目を引くのが、長さんこと下川辰平による管理人さん。
衣装も派手で可愛らしく、ステップを踏みながら駐車場の掃除などをする姿に、最初は度肝をぬかれました。
下川さんもきっとお好きなんでしょう。

ストーリーは、あくまでシンプル。
依頼を受けた探偵たちが、一獲千金を狙いながらもけっきょくお金をつかみ損ねてがっかり。
「俺たちは天使だ!」と声をそろえてエンディングというワンパターンなもの。

それでも当時も今もこんなに楽しんで観られるのは、役者さんたちの息の合ったやりとり、
軽妙なアクション、軽快な音楽…毎回明るく楽しく面白いがつまっているから。

とにかく全員が「面白い」を追求していて、そのためなら何でもする!という心意気を感じます。
かといって身内受けにならず、お涙頂戴要素もなく、ある意味ドライで風のように吹き抜けていく感じが心地よいです。








これだけ美形揃いなのに、そこに頓着しない潔さが素晴らしいし、それでもやっぱりみんなこんなにチャーミング。





「大都会PARTⅡ」#36 挑戦

2017年12月17日 | 刑事・探偵モノ
柴田恭兵の登場で、「かわいいチンピラ」というジャンルが生まれました。
なんとテレビドラマの出演は「大都会PARTⅡ」が初だとか。
第15話につづき二度目のゲスト出演ですが、ほとんど“柴田恭兵”です。

当時25歳。見るからに若くて少し硬さもありますが、すでに舞台では活躍されていたせいか、
映像の世界でも最初から自分のスタイルをちゃんと確立しているのがすごいです。

神田正輝さんのデビュー作は、クレジットに(新人)と書いてなかったとしても
「見りゃわかる」感じでしたが、恭兵さんの場合は、少なくとも私はまさか初出演とは思わなかったです。


取調室内が贅沢なことになってます…


以前、黒岩刑事(渡哲也)に捕まったロク(柴田恭兵)は、出所後黒岩に仕返しに恥をかかせようと、
当時世話になった今日子(丘みつ子)を訪ねたふりをして渋谷病院から輸血用の血液を盗み出し、
仲間二人とともに殺人事件を偽装し、バラバラにして袋詰めしたマネキンを海に捨てた。

彼らの計画通り、現場から見つかったナイフと靴から前科者のロクが割り出され、取り調べで海に死体を捨てたと供述するが、
なんと現場からは本物の死体が上がってしまい、ロクたちは本物の殺人犯として追及される羽目になってしまった。



 
ジン(神田正輝)がロクの仲間を尾行していると、彼らの兄貴分の暴力団組員が現れた。彼らが二手に分かれてしまったため、
ジンは組員の方を追うが撒かれてしまう。

ジンの軽快な柵越えが見られるうえ、駆けつけたトクさん(松田優作)と坊さん(小野武彦)に二人の行方を聞かれて
「逃げられちゃった」と答えて「アホか、ばか!」と頭をはたかれ、「だって俺、二人も追えないもん」と言い訳w
転んで顔に泥がついたジンに、「お前、顔どうした」といいつつ顔を拭いてやる態でどんどん泥を塗り広げていくトクさん…
という私的においしい場面がこちら。

神田さんが、なにげなく泥のついた手で顔をこすってスタンバイしてるし、優作さんが泥を嬉しそうに塗りたくって
「かわいそうに、いい男が」と満足げに去っていくのが笑えて、ついつい繰り返し観てしまいます。





本当は慕っているのに、黒岩に悪態をついて故郷に帰っていくロク。
相手になってやるからいつでも東京に出て来いよ、という黒さんに、照れくさそうにちらっと手をあげ、
踊るような足取りで署を出るロク。
素直になれない若者の、それでもにじみ出る喜びをさりげなく表現する恭兵さん。
見守る渡さん、丘さんのまなざしも暖かく、短いながらも強く印象に残るシーンです。



ロクたちが仕込んだ“死体”が引き上げられ、中から出てきた黒岩宛のメッセージを見て爆笑する刑事たち。
後ろのダイバーまで笑ってますw

ユーモラスな場面も多い「PARTⅡ」ですが、なかでもこの回は全体的に明るく笑えて楽しいエピソードで、
それは間違いなく柴田恭兵のおかげだと思います。


「大都会PARTⅡ」は、現在月曜以外の毎朝4時からBS11で放映中です。

#436 父親 / #444 ドック刑事のシアワセな日

2017年12月07日 | 太陽にほえろ!
親の敷いたレールに乗って医者になるのが嫌で医大を3年で中退し、たまたま警察官募集のポスターを見たのがきっかけで
刑事になったドック(神田正輝)。開業医の父・勝(梅野泰靖)は、そんな息子を勘当。

数年の月日が流れたある日、近所に住み勝とも顔なじみの中山が何者かに自宅で襲われ、西條外科医院に運び込まれるという事件で
親子は久しぶりに再会した。




患者のプライバシーとなにより安静を守りたい医師と、事件解決のため被害者の証言を得たい刑事。
真っ向から対立するふたり。

ドックは弟・進(三景啓司)から、凶器は木ではないかとの証言を得る。
進は医者の卵として、父の病院を手伝っていた。



ドックが医大中退という設定は、シリーズを通して有効に生かされていたと思います。
今回取り上げるふたつのエピソードは、ドックの実家が舞台で、西條父子、兄弟の姿を通して、
西條昭というひとりの青年のバックボーンが描かれます。

一係の刑事の家族が出てくる話はほかにもありますが、どちらかというと妻や母、叔母、姉や妹など女性が多かったですよね。
その中で、ドックの家族は父と弟。母親のことはまったくふれられなかったと記憶しています。
早い段階でなんらかの別れがあったのかもしれません。

それにしても、お父さんと弟がドックとどことなく似ていて、家族という設定に違和感がありません。
キャスティングする方も、演じる役者さんたちもすごいなぁと感心します。



怪我をしたドックが進に治療してもらっている途中、父が入ってきて傷口を確認。レントゲンは兄貴が嫌がるから撮ってないという進を叱る。
「ほら、怒られたー」と兄に文句を言う感じがなんとも自然で、兄弟の子供時代が目に浮かぶようです。

思えば、「太陽」以前の神田さんは、ずっと後輩・弟ポジションで、ちょっと頼りない甘えん坊な役柄が多かったですが、
ドックには弟がいて、一係でも次第に兄貴分になっていくわけで、年齢的にも役割が変わっていく頃だったんでしょうね。
実際には一人っ子だそうですが、兄貴キャラも弟キャラも不思議とすんなりはまっています。


「親子の対話を復活させようっていう思いやりじゃないの?」
進が親父をからかいますが、勝もドックも口を開けばけんか腰になってしまう。
それでも、思わず山さんに「あの子は…、昭は…?」と訊ね、
「ご心配なく。いい刑事になりますよ」といわれて深々と頭を下げる親心が泣かせます。


#444では、夜勤明けに無意識に実家の方に足が向いてしまったドックが、休診日に入院中の老人を診るために残った父・勝とともに
銀行強盗の兄弟と対決。


まったく余談ですが、柵越え好き(観るのが)としては、このドックの柵越えは「合格!」です。

#436のときよりかなり打ち解けているものの、早々に帰ろうとする息子に、「お茶でも飲んでけ(=お前が入れろ)」「将棋でもしないか」と
引きとめる父。頑固で厳しいけど、息子が訪ねてきて嬉しいのがバレバレです。

強盗をして逃げる途中で弟が怪我をし、兄(峰竜太)が西條医院に駈け込んできます。
ふとしたはずみで鞄の中の札束がこぼれ落ち、兄は拳銃を突きつけて治療を迫るはめに。

隙あらば犯人を取り押さえようとするドックと、犯人を刺激しないよう、また怪我人の治療を最優先に考えて行動する勝。
しかし、ここは西條医院の診察室といういわば父の城。主導権を握るのは勝です。
拳銃を持った犯人にも臆することなく時に怒鳴りつけ、毅然とした態度を崩しません。
ドックが頑固な年配者に慣れているのは、この父に育てられたからでしょう。


一方のドックも、父を逃がそうと何度かチャンスを作りますが、父は息子を見殺しにはできず、
ついには、刑事だということがバレて殺されそうになった息子を救うため、怪我をしている弟にメスを突きつける!
(いや、ドックはちゃんと刑事だと申告しているのに信じてもらえず、入院していた老人が「刑事になったんだって」と
話しているのを聞いて逆上されるという理不尽…)

「お前の親父さんは立派な人だよ」と急に身の上話を始めた峰さん(兄)に対し、
(へ?)って感じでポカンとしている西條親子がほほえましい。




事件解決後、「俺が家を出たからむりやり進を医者にしたんじゃないだろうね」と問い詰めるドックに対し、
「お前も少しは弟のことを考えてるんだな。さっきの男には及ばないが」と父が返してまたケンカ…になるかと思えば、

仲良すぎww


ドックは休日が返上されてぼやいていたけど、まさにシアワセな日になったわけで、まあ代休はあきらめましょう。
そしてお父さん、慰安旅行に行かずに残って良かったですね。



実家と職場、ふたりの“父親”。偉大な彼らを超える日は来るのか。
ドックの成長物語はまだまだ続きます。




#452 山さんがボスを撃つ⁉ / #453 俺を撃て!山さん

2017年12月03日 | 太陽にほえろ!

連続殺人犯を追跡中、目の前で犯人が通行人を車ではねて逃走。見逃せば次の犠牲者がまた出るだろう。
当時城南署の刑事だったボス(石原裕次郎)は、やむなくそのまま犯人を追跡。
無線で救急車を要請したものの、間に合わずに赤ん坊は死亡。
母親も怪我が元でその後自殺。
目の前で妻と子を見殺しにされたと、10年間ずっとボスを恨んできた寺田(河原崎建三)は、
凶悪犯を捕まえるためにやむを得ない行動だったと告げた山さん(露口茂)の息子を誘拐し、
助けたかったら、ボスを殺せと迫る。


何度も考えました。
ボスがとった行動が、ベストだったのか。
私は、応急処置がむりでも、せめて「救急車を呼ぶから待ってろ」の一声があれば、
寺田の気持ちは多少違ったんじゃないかと思いました。

周囲に電話も他に人もなく、目の前に怪我をした妻と、どんどん出血しているわが子。
ひいたのは犯人だけど、警察に見殺しにされたと思っても無理はないかな、と。

もちろん、ボスは必死で救急車を要請したし、犯人を見逃していたら被害は拡大したかもしれない。
でも、目の前で死にかけている人の命が優先じゃないのかな。

だからと言って、山さんにボスを殺させるために、息子を誘拐したり、爆弾を仕掛けたりというのは
許されることではないけれど。


最愛の息子を人質に取られ、交換条件にボスを殺せと言われる。
山さん最大のピンチです。
息子は無事に取り戻したものの、実は寺田は爆弾をしかけていて、今度はそれをネタに脅してくる。

一係のみんなにとっても、「山さんがボスを撃つ」なんてあってはならないこと。
爆弾の設置場所を探して走り回ります。


子供みたいに泣きながら走るドック(神田正輝)を見て、当時は「泣き虫だなー」と思っていましたが、
この放送からほどなく石原裕次郎さんが病に倒れ危険な状態に陥るわけで、それをふまえて改めて見ると、
当時神田さんも、こんなふうに人知れず泣きながら走ったこともあったのかもしれないなと、今頃もらい泣きしてます。


めずらしく取り乱して寺田にとりつく長さん(下川辰平)。その必死の叫びがスピーカーを通してボスと山さんにも届く。
やがて我に返ってひざまづき、「刑事が憎いなら俺を殺してくれ」と拳銃をさしだす長さん…。



「殺されるより殺す方がつらい。山さん、つらい思いをさせてすまなかった」
ボスの言葉に、さすがの山さんも涙を流します。
山さんが引き金をひこうとしたそのとき、寺田がついに復讐をあきらめるのでした。


爆弾を処理したという無線を受け、しずかに見つめあうボスと山さん。
「進退伺なんて妙なこと言わないでくれよ」
「ボス」


ふたりはそれぞれ覆面車に乗って走り去るのですが、山さんの車がバックして、ボスの車に先をゆずり、後ろからついてゆく。
多くを語らずとも、俯瞰でとらえた車の動きだけでふたりの心情が伝わってきます。

長いあいだ関係を積み重ねてきた演者と、見続けてきた視聴者をも信じてくれている粋な演出でした。