K'sマンション

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        ☆自作物語2F本
クレインズKの

創想物語  『あわせ鏡』

2006-04-07 17:53:41 | 2F:本
ワタシの名前はミコ
もうすぐ一年生になる、ちょっとオマセな女の子!!
おかあさんの化粧台にチョンと座り自分の顔を見るのが大好きで、お出かけするおかあさんの真似をして、いつも、鏡を覗いてる

そこには色々な化粧品やヘアースプレー、ブラシにドライヤー、どことなく花の香りのするその場所は、とっても居心地の良い、心落ち着く所でした


ある時、化粧台の引き出しの奥から一枚の鏡を見つけたんです
お祭りでもらうウチワのような貝殻の形をした大きな手鏡を・・・。

その手鏡は真ん中から左右に観音開きする扉があって、裏には豪華な薔薇の刺繍がされ、とてもきれいな手鏡でした

「おかあさん?こんなのみつけちゃった!?」

「あらっ!?おばあちゃんの鏡ねっ^^」

「亡くたったおばあちゃんの・か・が・み・??」

「そーょ おばあちゃんがおばあちゃんのおかあさんから受け継いだ鏡っていってたけど??」

「そのおかあさんは、そのまたおばあちゃんからもらったって、そうして代々譲り受けてきた鏡なのよ」

「へぇーじゃーワタシのだぁ^^」
「だっておかあさんはワタシにユズラなくっちゃいけないのでしょ^^」

「やったーワタシの鏡ねっ!!」

「まぁまぁ^^」
「大切にするのよっ^^」
っと
その日からその鏡はミコの宝物になりました
どこにいくのも一緒で、その手鏡の扉を開けて、映る自分に「こんにちはっ^^」っと、まるで他人の家をうかがうよーに挨拶するのが日課になりました

鏡に扉があるなんて、ミコには初めてで、どこかヨソのおうちに入るような気持ちになるんでしょー


ある日
いつものように化粧台の前で 手鏡の扉を開け
「こんにちは^^」
っと言うと、その鏡は化粧台の鏡に写り込み、鏡の奥のワタシがニコッと
「いらっしゃい^^」っとほほ笑みかけたんです!!
ワタシはびっくりして手鏡の扉をバタッと閉めました
「確かに、いらっしゃいって言ってたよ・・・鏡の中の向うのワタシが・・・」
恐る恐るもう1度、手鏡の扉を開け、化粧台の鏡に合わせてみました
「こ・ん・に・ち・は・・・」
すると
鏡の向うの映り込んだワタシの顔は、目一杯の笑顔で「いらっしゃ^^」
っと笑ってます

不思議そうな顔のワタシと、合わせ鏡に写る笑顔のワタシ・・・。

ミコは勇気を振り絞って言いました

「あなた誰?」

・・・

「なにいってるの??ワタシはあなたじゃん!!」

・・・・??

キョトン顔のミコと、笑顔のミコ

そこで、鏡の奥のもう一人のミコが言いました
「じゃーねぇ 昨日の晩ご飯は、ハンバーグののったカレーとポテトサラダ・・・今朝はトーストと卵焼きと野菜ジュース!!卒園式の入場でコケちゃって恥ずかしかったでしょっ^^」
「それから・・・」

・・・・

「うんっ!!わかった!!」
「じゃーワタシならワタシの考えている事、分かるはずねっ!?」

「あたりまえジャン!だってワタシはあなたですもの!!」
「じゃーゆーねっ」
「んーとぉ・・考えてることはぁ・・・小学校でツトムくんと同じクラスになりたいなぁ・・・とか?ヤスコ先生さようなら・・・とか??昨日の夢は恐かったなぁとか?今日の晩ご飯なんだろなぁ??とか・・・って、ゆーか?ワタシが思っている事、言ってるだけなんですけど・・・」

合わせ鏡の向うのもう一人のワタシは正真正銘のワタシでした・・・不思議だけど・・・。


それからとゆーと
ミコはあわせ鏡の中の自分を“ミカ”と呼んで、まるで友達のようにおしゃべりするのが楽しくて楽しくて、毎日鏡の扉を開けては、「こんにちは!?」っとミカを呼び出していました
それは
兄弟のいないミコにとって、姉か?妹ができたような、とっても新鮮な感覚でした









ある日
ミコが公園に遊びに行った時の事
ミコより大きなお兄ちゃん達がブランコで遊んでいました
それは思いっきりブランコをこいで、勢いよくジャンプして、飛んだ距離を競うといった、とても危険な遊びでした
最初は恐々見ていましたが、だんだんと面白く
「がんばれ!!がんばれ!!」っと楽しくなってきました

そして
お兄ちゃん達がいなくなった、地面にはチャンピオン一郎、二位淳平、三位ケイタと三本の線が書かれていて、無人のブランコが、ゆらゆら揺れていました
ミコも好奇心から、その楽しそうな遊びを、見よう見真似でやってみました
それがとても危険な遊びと云うことを、疑うこともなく、勢いにまかせてブランコをこぎました
力いっぱい!お兄ちゃん達に負けないよーに、こいで・こいで・こいで・・・
それは幼稚園児が支える事の出来ない勢いまでに達し、力尽きたミコは勢いのまま振り落とされ、頭から地面に叩きつけられました

周りの人達が集まってきて騒がしい様子で、救急車のけたたましいサイレンが近づいて来るのが聞こえました・・・
事故の一方を聞きつけて来たおかあさんが、真っ青な顔で叫び続けていました









あれから
何日たったでしょう?

窓の向うに、スズメの鳴き声と朝焼けの光が、見えました
一輪挿しに入れられた桜の木が綺麗な花を付けていて、その上に入学式で着る真新しい制服がかけられていました
枕元には、あの日持って出た、手鏡を入れた子ぐま模様の手さげ袋がありました

「ここはどこ??」
「いったい何があったの??」

「そーだ!ミカに聞こう!!」

っと
子ぐまの手さげから出した手鏡を備え付けの鏡に合わせ、扉を開きました

「ミカ!?いったいワタシ・・・?」

・・・・??

「ミカっ!?」

・・・


「バカーーーッ!!」
「どれだけ心配かけたら気が済むの!!」
「死ぬとこだったのよっ!!」

・・・

「だから・・・ワタシ??どーしたの??」

「どーしたも、こーしたもないわよっ!!」
「ブランコから落ちたのよっ!」
「出来もしないのに、お兄ちゃんの真似をしてねっ!」

・・・

「あー、そーだった・・・」

・・・

「おかあさんがどれだけ心配してたか知ってるの!!」
「一週間、何も食べずに、つきっきりだったのよっ!!ミコも食べてないからって・・・」

「ほんと、最低な親不孝ものよっ、あなたは・・・」

「もー絶対!あんな危険な事しないって約束してね!!」

「一歩間違えたら・・・ほんと・・・」

「約束よ、、、生きたくっても、生きられない人だっているのよ・・・」

・・・。

「えっ・・・??」

・・・??




「あなた・・・お姉さんがいたの・・・」

「双子の姉がねっ・・・」
「難産の、難産の、、難産の末、、、、あなたを救うために・・・」

「だからあなたは、その子の分まで生きなきゃだめなのっ!」

「おかあさんに同じ思いをさせちゃいけないのっ!!・・・あなたは・・・生きなくちゃ・・・いけないのよっ・・・」

・・・・


何か騒がしい声が近づいて来たので、ワタシは急いで鏡の扉を閉め、寝たふりをしたんです


目を閉じたまま、今ミカから打ち明けられた事を考えてました・・・
ワタシにお姉ちゃんがいたことを・・・
ワタシが生まれる為に死んでいった双子のお姉ちゃんがいた事を・・・


騒がしさが近づいて来たので、薄めを開けて様子を伺ってると、作業着のおじさん二人が大きな箱をヨッコラ運んで来たんです
背中には“山田葬儀社”って、難しい漢字で読めなかったけど・・・

「おじさん??何してるの??」
っと、コッソリ声をかけてみると、おじさん二人はビックリした顔で・・・

「でぇーたぁーー(◎-◎;)」っと、箱をほっぽりだして逃げていったんです

少ししてから、お医者さんと看護婦さんを連れて来たです
青い顔をして・・・

「ミコちゃん??私が見える??」

っと、喉や腕を握って何か調べてる様子で・・・

「先生なんですか!?ワタシブランコからおっこちたんでしょ??」

先生はとても真剣な顔で
「奇跡だっ!!生還してる!?早く!おかあさんに連絡を・・・MRIの準備と、院長に連絡をとってくれ!!」
っと慌て口調で看護婦さんと話している

「先生??ワタシどーしたの??」

「(◎-◎)死んだはずなのに・・・生き返ったんだよっ」
「奇跡が起こったんだよっ」
「天国から帰って来たんだよっ・・・天国から・・・。」

みんなは慌ただしく病室を後に、看護婦さんも「ちょっと待っててね」
っと、声を掛け急ぎ足で、出ていっちゃって、一人になったんです

カーテンが風でユラユラ揺れている・・・

一輪挿しの桜の花が一枚、ヒラヒラと舞っている

「ワタシが死んだ??」
・・・
「そして生き返った??」
「奇跡・・・・」




あなた・・・お姉さんがいたの・・・

・・・

双子の姉がねっ・・・

あなたを救うために・・・
・・・あなたは・・・生きなくちゃ・・・いけないのよっ・・・

ミカの声が蘇る・・・

・・・

「ミ・・・カッ・・・?」
「姉さんっ??」

「姉さんねっ!!」

確信に近い思いで、もう一度、あわせ鏡でミカに会いにいったんです
ワタシの姉さんって事を確かめに・・・
誕生日のあの日に、ワタシの命を救ってくれたように、また助けてくれたの?って、確かめに・・・

手鏡の扉を開けて、ミカを呼んでも、向うに写る姿は自分のままで・・・

結局出てきてくれなかった・・・
もー会えないの?ミカ?

そして手鏡の扉を閉めました
・・・
ドキドキ心臓は高鳴り
ガタガタ震えていました
・・・

「もう会えないのね・・・姉さん・・・」

ごめんね・・・ミカ。

・・・

ありがとう・・・姉さん。


お・わ・・








あれから20年

二度も救われた命を噛み締めて
私も一児の母になりました
“ミカ”ってゆー女の子!!の母に・・・。

そして、あの手鏡も、私が母から無理無理もらったように、娘に取られちゃいました^^
古い子ぐま模様の手さげに入れて、いつも一緒!
って
やっぱり親子ねっ^^
あっ
噂をしていたら・・・

「ただいまー!!」

「おかえりミカ!」

「おかあさんおかあさん!?不思議なことあったよっ・・・」

「んー?どーしたの?」

「あのね、鏡に鏡を合わせると、ワタシじゃないワタシがいるの・・・。」



おわり

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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (うらら)
2006-04-09 04:36:49
いつも誰かに 見守ってもらっている・・・。

   あわせ鏡=しあわせ鏡

て感じる心温まるお話しでした
Unknown (りり)
2006-04-09 13:08:51
お久しぶりです。

いつもの通り不思議なお話にひきこまれちゃいました。

『鏡』ってどちらかというと恐い印象を持っていましたが

なんだかすごくしあわせな気分になれました^^

これからもクレインズKさんの素敵なお話楽しみにしてますね!

Unknown (月影草)
2006-04-10 11:13:47
ご無沙汰です



夢のような想像の世界観、心暖まるクレインズKさんの自作ファンタジー!

いつも楽しみに読ませていただいてます

短い話の中での小気味よい流れ、ストりー展開、頭に浮かぶ光景と、読み終わった時の暖か味

ほんと、ありがとうです。
かわいい♪ (退屈庵)
2006-04-10 21:21:40
どーしてなんでしょ?女の子って鏡好きですよねー☆

読んだ後ちょっぴり悲しいんだけどふわぁって暖かくなるクレさんのお話。

いつも楽しみに読ませてもらってます(^-^)
しあわせ鏡 (★うらら★へ)
2006-04-11 12:12:20
あわせ鏡=しあわせ鏡

うまいことゆーなぁ

「山田くん!座布団一枚!!」

って

“いつも誰かに見守ってもらってる”

うららさんは??



一度、あわせ鏡してみたら?

鏡の向こうの“誰か”がウインクしてくるかもよ^^
 (★りりちゃん★へ)
2006-04-11 12:19:26
鏡が恐い印象!?

うんうん

何となくわかる!!

鏡が割れたら独特な感覚に襲われたり、二枚あわせの鏡の、ずぅーと永遠に続くトンネルを見てると吸い込まれそーな気分になるもんなぁ

ホンマ

鏡って不思議やなぁ
URL添付を!! (★月影草★さんへ)
2006-04-11 12:27:18
ホント久しぶり!

ウチのマンションの2F:本の階に足を運んでくれてたとは感激です^^

以前の投稿コメントでは少し意味深なトコあったりで、心配してました

元気そうでなによりです

おつかれ^^ (★退屈庵★さんへ)
2006-04-11 12:38:39
女の子は鏡好き!?

そーやなぁ

毎日必ず見るしなぁ



オレがよー見るっちゅーたら、車のサイドミラーぐらいやけどなっ



鏡っちゅーたら

ちっこい頃、どっかの遊園地の『鏡の部屋』に入った時、一時間ぐらい出てこれんと、おでこにコブ作って泣き泣き出て来たん思いだすわっ^^

ホンマそん時の鏡は恐かったわっ。