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映画【コレクター(THE COLLECTOR)】

2008-10-08 01:09:35 | 映画
 
 
コレクター(THE COLLECTOR)
1965
ウィリアム・ワイラー (William Wyler)


一応、本作(コレクター)の感想です。本筋とあまり関係が無いと思われるかもしれませんが、中盤でかわされる「ライ麦畑でつかまえて」を巡る会話が素晴らしい。

ある種の自閉症に追い込まれたコレクター(監禁してる人)と健常者だと思ってる人(監禁されてる姉ちゃん)の会話のズレが本作の全てと言っても過言ではないかと。

全て、というかこの「ライ麦畑でつかまえて」を読んだときに主人公に同化できるかどうか、というか同化しすぎて嫌悪感を抱くコレクターの心情を察するに、とても他人事だとは思えません。
彼の言葉で「ライ麦畑でつかまえて」の主人公(ホールデン)が『どうして名門校に通って、金もあるし、友達もいるのに彼は反抗するんだ?それが僕には分からない」という場面があります。
そう!そういうこと!
そこに疑問を持つかどうかでその人の懐の狭さが伺えるというものです。
理解する姿勢がない。自分に持っていないものを持っている人間が不幸であるわけがないという誤解。
翻って監禁されてる姉ちゃんの「彼の苦悩がわかる」という無責任な発言。
そう!そういうこと!
安直に「わかる~~」とか言ってるバカ。
これは自分に決定的不満を見いだせない人間の発する一言。それこそ一度でもそこに陥ったことのある人間にとって「オマエらの無関心さがオレ達の様な人間を生んだんだ」と追い込む一言に間違いありません。
コレクターの彼を逆上させるに十分な言葉です。
そして「どうして彼が嫌いなの?」と姉ちゃんが聞けば「話し方が嫌いだ」と、もう小学生の文句。最高です。
冴え渡るこの件。

ちなみに、この会話の終盤では学歴コンプレックス丸出しの「オマエらは偉い人が良いと言ったから良いと思ってるだけだ!」とコレクターがピカソの画集を破り捨てたりします。良いですね、こういう中学生っぽい感じ。既に自分内での判断基準すら失い「偉い人が良いと言っているものは全部クソ」というルールが上書きされてしまっている。
もしくは、新たに捉えた採集物(姉ちゃんのこと)に自分の価値観をすり込もうとするも失敗の図。チョウチョの様にはいかなかった、と。
今まで人間と接していなかった故に、自分内で発生した不条理が理解できないコレクター。バツグンです。


サイコサスペンスの皮をかぶった自閉症映画。
本作を語るに、この件に造詣の深い方はどうお考えでしょうか。


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2 コメント

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バックボーン! (gs)
2008-10-08 11:36:02
子供(小学生)の頃、テレビでこいつを何回か(よくテレビ放映されてました)観た時、「これだっ!これ!これ!」って思いました。でもこれは他人に大きな声で「これですよね、これ」って言ってはいけないと子供心に思いました。

自分の中では「太陽がいっぱい」の次に「キタ~!」映画だったんですが、子供心に「これは『太陽がいっぱい』のよーな名作ではなさそーなのであまり他人にお勧めしてはいけない種類の映画にちがいない」と思ったんです。

大人になってからは見返していないのでハッキリとは憶えていないのですが、今にして思えば実録犯罪者達の「鬱屈した鉛の魂」とか「蓄積され過ぎたコンプレックスの出口の無さ」具合がね、子供心に忘れられないもんを観てしまった感じがしました。今こーゆー映画を作ってもきっとスッキリとコンセプトがまとまったつまんない映画になりそーですね。

あとひとつ、子供心に期待し過ぎた「女子のエロシーン」が少ないとゆーのが不満だったよーな気がします。それ以外は「女子とのすれ違い具合ぶり」とかもパーフェクトだったですね。

やっぱし「監禁」はなにかと鬱屈の多い殿方の夢であり理想にちがいありません。


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Unknown (juraky)
2008-10-08 23:42:06
>>gsさん
小学生の時に「コレクター」も「太陽がいっぱい」も観てない世代です。

モンモンとした何かをそのまま映画にしたら何だかよく分からない気味が悪い人が出てる映画になっちゃった傑作ですね。「サイコ」の様な明確な回答が無いあたりも。

本作が童貞目線の為、エロシーンが皆無というのも今となっては頷けます。
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