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映画【ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)(BEFORE SUNRISE)】

2009-03-31 00:17:22 | 映画
ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)(BEFORE SUNRISE)

1994
リチャード・リンクレイター(Richard Linklater)


たった一晩の二人の会話劇。
それ以外の要素は殆ど無くて、あるのは場所だけ。

この映画に対して何かを言うことは独白することと同義なので出来るだけ避けたいな、とは思うものの想わずにはいられません。

以下、私の記憶ですが、似たようなことは皆さんおありでしょう。
真冬の公園でその瞬間を慈しむなんんて発想もなく浮かんだことを想うままに喋りあいながら空が白むことがあんなに恨めしく想ったり、まだ何も起こっていない真夏の夜のまだ熱の籠もった殆ど車も通らない田舎道のアスファルトの上に二人してふざけて寝ころびちょっとだけ触れ合った手の温度をあとどれだけ感じられるかを考えたこととか。

その時は、朝が来ることで現実に引き戻されることを極力避けていたのだろうと思います。
朝というのは、はじまることのしるしであるものの、時として残酷でもあります。
それまでの夢を一気に引き戻す。
酒を呑みながら語り明かした夜も、朝が来て、街をゆく人を観ればそこにとどまることを是としない。
強制的に前に押しやる。
その『前』が果たして何を意味するのか。
その瞬間を永遠に感じたいけれど、全ての人に平等に朝はやってくる。こう言ったのは誰かは忘れました。
平等に時が訪れることは、果たして幸福となりうるのか。


かつて、アインシュタインは特殊相対性理論を、子どもに説明するときにこんなことを言ったそうです。
「学校で勉強している時間は凄く長いけど、君が好きな女の子と一緒にいる時間は一瞬に感じるだろ?そういうことさ」
時間というのは決して万人に対して平等ではなく、密度との相対性なのかもしれません。

 E=mc^2

今となっては物理学上で破綻があるらしいこの方程式。
相当なロマンチストが自分の都合だけで考えだしたものかもしれません。光速を絶対値としたことは、彼なりの言い訳なのかも。
さて、このmに「me」を代入してみましょう。
そしてcには「she」。
となれば、Eは「Esperance(希望)」
安いテレビドラマの口説き文句みたいですが、意外なほど合点がいく公式になってしまいました。
今度使おう。
男子目線で申し訳ない。



こんなことを考えてしまいがちな映画です。
リンクレイター監督の放つダイアログが素敵すぎます。
このダイアログたちが言葉として響くのではなく、その瞬間の節々を想起させる。
そして、この言葉が暖かく響く今までの自分の人生は随分幸せだったのだな、と。
多分、そう思うことはこれからもあるんだな、と。


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