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映画【恋愛睡眠のすすめ】

2007-05-20 23:45:44 | 映画
恋愛睡眠のすすめ
2007
ミシェル・ゴンドリー


名作「エターナル・サンシャイン」のミシェル・ゴンドリー監督の最新作。
珍しく劇場で鑑賞しました。週末の夜の回で8割くらいの入りでしょうか。女性客が多いですね。


本作では監督自身が脚本も書いているとのこと。
前作があまりにも素晴らしかったのは、もしやカウフマンの素晴らしい本のおかげで、監督は画づくりだけに特化していたのでは?と思っていたモノの、全く覆してくれました。

「エターナル・サンシャイン」もミシェル・ゴンドリー監督の作品です。多分原案からして。
本作はその続編というか、ちょっと見方を変えてみた感じ。根本的なロマンチック路線は同様です。
本作は「夢」(寝ているときの)お話。
より、おとぎ話に昇華しています。

夢の機能について常々思っていることがあります。
【私たちが見ている夢というのは「結果」だけであって、結果先行でプロセスはあとから作られる。そのプロセスはただの辻褄合わせで時間軸を無理矢理取り入れて秩序だたせている】ということ。
例えば「いいところ」で終わってしまう夢というのも、その「いいところ」と私たちが思うこと自体が結果であって、その先は無いんです。多分。「いいところ」と思う瞬間が一番幸せだと思うこともあります。この先があると思うこと。
片思いで悶々としている時がその先について最も思いを巡らせる瞬間。もちろん、その後上手くいくにこしたことは無いんですけど。
で、その瞬間の思念みたいなのを脳が現実っぽく順番を入れ替えて意識に送り込んでいる、と思っています。
コレはただの持論なので「そりゃ間違っている」とかいうツッコミはご勘弁を。

「エターナル・サンシャイン」では「記憶」をモチーフとしていました。現実の世界のお話なので。
【「記憶」の順番というのはその本人にとって関係ない、それを僕らは「運命」と呼ぶ】という映画でした。
で、本作はその「関係ない」部分を「夢」に置き換えています。置き換えているというか、夢が記憶であるという映画。もう、現実なんて関係ない。
夢の中では誰でもヒーローでもあるし、脇役でもある。現実のあらゆる出来事がミックスされて、変な想いを作り出してしまう。カタルシスの世界。
その夢の描き方が素晴らしかった。

おとぎ話っぽいアニメーションというのはよくある手法なのですが、実写では本作、アニメーションでは「マインド・ゲーム」がいまのところ頂点です。自分比で。
実写でよくぞここまで表現したなぁ、という労作に対する感覚ではなく「こういう描き方があったのか!」という目から鱗。
あるシーンだけが飛び抜けている訳ではなく、素晴らしく全編のトーンが整っています。

もの凄く言い表しにくい想いを孕ませる映画。
単純に「良かった!」と言うだけではもったいない映画です。
優れた表現の根本には、やはり揺らがない信念があるんだろうなぁ、と感じた次第です。


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