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映画【卒業】

2007-03-03 00:45:04 | 映画
卒業
1967
マイク・ニコルズ


多分、初めてこの作品を見た訳なんですが、ここまでの変態モノだとは思ってもみませんでした。
子供は観ちゃいけません。
ラストシーンの教会で花嫁を奪い去るシーンですが、これに騙されて観た女子中学生なんかはPTSDを抱えることになるかと。
それ以前の話がお色気マダムと葛藤する片思いの若者の話。
今の言葉で言えば、変態痴熟女とストーカーの話。


余談ですが、基本的に今の言葉というか新語というか俗語というのは、その言葉に付随するバッファが少なく、エッジが異常に鋭くなってしまった。
簡単に言うと情緒がない。
そして、便利であるために安易に使われる。
「あの子、いつも校門の前で待ってるけど、おまえに気があるんじゃないか?」というかわいらしい言葉も
「あいつストーカーじゃね?」の一言。
これじゃ恋も生まれません。
たまに本物のストーカーもいますが。
ただの片思いのつもりが、いつの間に世間で言われるストーカーの行動と同じことに気づき、開き直って本物のストーカーへと昇華してしまうこともままあるでしょう。

同じようなことで、言葉が先行してしまって、キャラクターをその言葉に付けられてしまうことがあります。
「フリーター」ですね。あるいは「ニート」。
昔は「書生」「浪人」「プータロー」などと言ったステキな言葉があったんですが。
次は「ワーキング・プア」でしょうか。
だんだん呼称が本人のキャラクターからズレてますね。


すみません、話を戻します。
あのシーンだけ取り出したらステキなお話なんですが、それがもう全然そんなハッピーエンドではありません。
主人公のダスティン・ホフマンは1969に「真夜中のカーボーイ」でびっこのペテン師を演じるのですが、コレが本作のベン(主人公:ダスティン・ホフマン)のその後であってもおかしくない。

教会のシーンだけが一人歩きしていますね。
本当のラストはその後のバス揺られる2人のシーンなんですが。
あの芝居は、はまさしくスーパー役者。
それまでのシーンを全て飲み込んだ表情を1分ちょっとでかましてくれます。ダスティン・ホフマン恐るべし。
「カマしてやったぜ!ベイベー」ではなく「勢いでやっちゃったけど、これからどうしよう」感が全く台詞が無くても伝わる。
序盤で"漠然と将来に不安を持つどっちつかずな若者"とは全く別物。
序盤は、大学生が就職活動をする時に感じる不安で、ラストシーンは"勢いで退職願出しちゃったけど、次決まってないしなぁ"の気分では。
前者の不安はかなりの可能性(主人公はエリート)が目前に広がり、そのなかから間違っていないチョイスが自分で出来るかというモノですが、後者の場合は可能性はもう無限ではないし、もしかしたらもっと状況は悪くなるかも、おとなしくしてた方が良かったんじゃないのかというほとんど後悔。
下世話な例ですみません。
バスに着席してものの10秒でそんな表情に変わっていきます。やっぱりハッピーエンドじゃありません。

この時代のアメリカンニューシネマはやはり後味が悪い。けれど嫌いじゃない。
因果応報の世界。そしてその感情表現がリアルすぎて平常心じゃ観られません。
世の中そんなに甘くないという表向きとは逆の解が潜んでいます。

主人公が卒業祝いに貰ったアルファロメオのジュリア・スパイダー。かっこいいなぁ。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ジュリーブランキー)
2007-03-03 11:55:08
映画の本出したほうがいいよ、アンタ。

いや~今回のは特に、もやもや抱えていたものが取れたよ(笑)
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Unknown (juraky)
2007-03-03 13:49:34
>>ジュリーブランキー
出せたら良いねぇ、阿部和重とか中原昌也みたいに。
なんかで売れたら出してもらえるかな。
ちなみに、文章はジュリーさんとこのを所々参考にしてたりします。

書いてること、間違ってることと多々あるんで注意してください。
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48歳の意見 (タン君)
2008-01-15 08:13:31
私も観ました。バスの中の2人このあとどうなるんだろう・・と思いました。
でも真夜中のカーボーイは
もっと深いテーマがあることも(同性愛的な)お忘れなく。あそこまでおちぶれるとはおもえないし。娘を奪われ自分も捨てられた夫人のその後がどうなったかが気になるので続編を誰か作ってくれないだろうか。そうしたら2人のその後もわかるし。そのときのBGMもやっぱサイモン&
ガーファンクルかな・・今のところ思いつかない。
日本版で作ったら本編、続編(?)エレカシでは無理だろうか。ファンなので強引に考えてみました。
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Unknown (juraky)
2008-01-15 23:06:20
>>タン君さん
コメントありがとうございます。
続編を勝手に考えてみました。

エレーンは、やはりお坊ちゃま育ちのベンとは上手くいかず、こっそり母に金を無心していた。
その送り先からベンとエレーンの住まいを探り当てるエレーン母。
片やベンはわがままなエレーンに失望し、もともと抱えていたマザコンがひっくり返って同性愛に走ってしまった。
エレーン母はその現場を目撃。
唯一の生活の糧であったエレーン母からの仕送りもストップ。
ベンは元エリートのプライドが邪魔をして働くこともせず、ズルズルと「真夜中のカーボーイ」へ。
なんてのは如何でしょう。安いか。
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