
※断面図として使われてきたポートフォリオ手法だが、現代においては、むしろ戦略的な方向性を読み取る動態的なツールとして活用すべき...
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先週の木曜日は久しぶりによい天気でしたね~。でも、前日に緊急の依頼案件もあって、その日の午前3時頃までその資料を読み込んだりしていたので、朝の陽射しがやけにまぶしく感じてしまいました-----
さて、この日は終日、神奈川にある、某産業用化学品メーカーの研究開発センターへ行ってました。ここ何年も投資効率の悪さが続いている「R&D戦略&体制」の見直しが主なテーマで、4ヶ月ほど前からプロジェクトがスタートしています。
その内容について少しだけ。
プロジェクトの骨子は、変化の激しい化学技術を包括的・体系的に管理するため、技術戦略のプラットフォームとしてテクノロジー・ポートフォリオと、それを進化させながらドライブする体制をあわせて構築し、秋口までに運用にこぎ着けようというものです。
ご存知のようにポートフォリオというしくみの本質は、二律背反する変数群の最適な組み合わせを科学的に維持管理し、恒常的にROIや生産性を最大化しようとするところにあります。
ですが、化学製品における技術は、通常のハードウェア製品などに使われる技術と違って、素材技術や組成技術といった流動的な要素が入ってくるので、一般的にはポートフォリオ・システムに落とし込みにくいと言われています。
ゆえに、技術間の境界線の設定や単位変数をどのレベルの大きさでくくるか、といった難しい問題があり、これを科学的・理論的に特定するための作業がひとつの山場となります。
・・・で、このテクノロジー・ポートフォリオ・システム(TPS)の構築作業をごく簡単に説明してみますと...
まず、現在、同社が抱えている技術や特許を、ターゲット市場や既存顧客に対する経済的インパクト、顧客の生産性への寄与の度合い、顧客のリスク軽減度合い、といった「顧客に対する付加価値」に貢献する変数として定量把握し体系化します。これがTPSの二律背反するうちの1つの軸、すなわち「対市場付加価値軸」となります。
一方で、もう1つの軸を設定するため、技術・特許の原価・利益構造、開発組成工数、付随データ資産の価値、製品展開の可能性、生み出すキャッシュフローの多寡などの内部経済性に影響するデータを体系化します。これが「対自社経済性貢献軸」となります。
そして上記変数のすべてについて、総合評価をしやすくするための統一スケール化や調整を施し、TPSを動かすための従属変数群として決定し、これらをシステムへ落とし込みます。
最後に、中期戦略経営計画の立案フローへ組み込み、モニタリング体制も構築し、運用に入ります。
・・・このようにサラっと説明すると、全体の作業量はそれほどではないように見えるかもしれません。でも「言うは易し、行うは難し」で、実は、連日大変な作業が続いているんですよね。

膨大な量のデータを解析するために、同社の研究者・技術者、同社顧問の技術士や弁理士の先生方、さらにはフィールド・エンジニアやファイナンス部門の社員まで動員して作業を行っているのですが、前例のない不透明な領域も多く、悪戦苦闘の連続です。
もともと扱っている技術の幅が広いため、4つのプロジェクトチームを並行して走らせています。しかし、複雑な化学組成データや大量の実験データから顧客・財務経理データまでを取り扱い、しかも、それらが複雑な因果関係を持っているので、進捗・成果管理も一筋縄ではいかないのです。
ただ・・・大変だけど、同社の社風にはずい分と助けられているんです。。経営陣をはじめ、明るく前向きな人が多いので、他にも数社の顧客を抱えて疲労困パイ気味の私が逆にはげまされる、なんてこともあったりするんですよね(苦笑)。
とにかく、この種のプロジェクトは、スタートから半年が勝負です。このくらいの期間で一定のメドをつけないと、生産性が急に下降カーブを描きはじめ、疲労感が指数関数的に増加するようになってしまいます。
なので、もうしばらくは、膨大なデータの分析と、しばしば白熱した議論をともなうミーティング、そして総勢22人からなる4つのチームのマネジメントに追われる日々が続きそうです。
※本コラムは同社の了解を得て掲載しています。
■ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所■
http://www.jtm-tanaka.com/
〒105-0003
東京都港区西新橋1-2-9日比谷セントラルビル14階
TEL:03-3975-8171 FAX:03-3975-8171
この記事の一部またはすべての転載を固くお断りします。
Copyright (C) 2010 Kiyoshi Tanaka All Rights Reserved
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先週の木曜日は久しぶりによい天気でしたね~。でも、前日に緊急の依頼案件もあって、その日の午前3時頃までその資料を読み込んだりしていたので、朝の陽射しがやけにまぶしく感じてしまいました-----
さて、この日は終日、神奈川にある、某産業用化学品メーカーの研究開発センターへ行ってました。ここ何年も投資効率の悪さが続いている「R&D戦略&体制」の見直しが主なテーマで、4ヶ月ほど前からプロジェクトがスタートしています。
その内容について少しだけ。
プロジェクトの骨子は、変化の激しい化学技術を包括的・体系的に管理するため、技術戦略のプラットフォームとしてテクノロジー・ポートフォリオと、それを進化させながらドライブする体制をあわせて構築し、秋口までに運用にこぎ着けようというものです。
ご存知のようにポートフォリオというしくみの本質は、二律背反する変数群の最適な組み合わせを科学的に維持管理し、恒常的にROIや生産性を最大化しようとするところにあります。
ですが、化学製品における技術は、通常のハードウェア製品などに使われる技術と違って、素材技術や組成技術といった流動的な要素が入ってくるので、一般的にはポートフォリオ・システムに落とし込みにくいと言われています。
ゆえに、技術間の境界線の設定や単位変数をどのレベルの大きさでくくるか、といった難しい問題があり、これを科学的・理論的に特定するための作業がひとつの山場となります。
・・・で、このテクノロジー・ポートフォリオ・システム(TPS)の構築作業をごく簡単に説明してみますと...
まず、現在、同社が抱えている技術や特許を、ターゲット市場や既存顧客に対する経済的インパクト、顧客の生産性への寄与の度合い、顧客のリスク軽減度合い、といった「顧客に対する付加価値」に貢献する変数として定量把握し体系化します。これがTPSの二律背反するうちの1つの軸、すなわち「対市場付加価値軸」となります。
一方で、もう1つの軸を設定するため、技術・特許の原価・利益構造、開発組成工数、付随データ資産の価値、製品展開の可能性、生み出すキャッシュフローの多寡などの内部経済性に影響するデータを体系化します。これが「対自社経済性貢献軸」となります。
そして上記変数のすべてについて、総合評価をしやすくするための統一スケール化や調整を施し、TPSを動かすための従属変数群として決定し、これらをシステムへ落とし込みます。
最後に、中期戦略経営計画の立案フローへ組み込み、モニタリング体制も構築し、運用に入ります。
・・・このようにサラっと説明すると、全体の作業量はそれほどではないように見えるかもしれません。でも「言うは易し、行うは難し」で、実は、連日大変な作業が続いているんですよね。

膨大な量のデータを解析するために、同社の研究者・技術者、同社顧問の技術士や弁理士の先生方、さらにはフィールド・エンジニアやファイナンス部門の社員まで動員して作業を行っているのですが、前例のない不透明な領域も多く、悪戦苦闘の連続です。
もともと扱っている技術の幅が広いため、4つのプロジェクトチームを並行して走らせています。しかし、複雑な化学組成データや大量の実験データから顧客・財務経理データまでを取り扱い、しかも、それらが複雑な因果関係を持っているので、進捗・成果管理も一筋縄ではいかないのです。
ただ・・・大変だけど、同社の社風にはずい分と助けられているんです。。経営陣をはじめ、明るく前向きな人が多いので、他にも数社の顧客を抱えて疲労困パイ気味の私が逆にはげまされる、なんてこともあったりするんですよね(苦笑)。
とにかく、この種のプロジェクトは、スタートから半年が勝負です。このくらいの期間で一定のメドをつけないと、生産性が急に下降カーブを描きはじめ、疲労感が指数関数的に増加するようになってしまいます。
なので、もうしばらくは、膨大なデータの分析と、しばしば白熱した議論をともなうミーティング、そして総勢22人からなる4つのチームのマネジメントに追われる日々が続きそうです。
※本コラムは同社の了解を得て掲載しています。
■ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所■
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