*** june typhoon tokyo ***

SOUL'd OUT@JCBホール

Sould_out 後楽園、東京ドームシティ内のミーツポートにある、JCBホールへ<SOUL'd OUT TOUR 2008 “ATTITUDE”>を観賞しに行く。

 今回のライヴは、4thアルバム『ATTITUDE』をタイトルに冠した全国ツアーの追加公演でツアー・ファイナル。
個人的には、メインMC、Diggy-Mo'の「東京…よォ、1年振りだな」のMCでもあった通り、前回ツアー<TOUR 2007 “Single Collection”>の日本武道館公演以来となる。(前回ツアー・レポートはこちら
 昨年の日本武道館公演ではいいパフォーマンスを見せてくれた彼らだが、シングル・コレクションなるベスト・アルバムをリリース以降新たなるスタートを切った彼らがパフォームする“アティテュード”とは果たしていかなるものだろうか。

Jcb01_2 会場となったJCBホールは初めて来場。立地条件は最高。エントランスのある地上1階がそのままホールにおいては第3バルコニーとなる。赤色の壁と白黒のチェックボード風のフロアが目立つシャレたエントランスだが、ちょっと狭いか。エスカレーターの横にグッズ売り場などが設置されるとかなり狭くなる。それと、ドリンク・コーナーが第2バルコニー、第1バルコニーにしかないので、第3バルコニーの客は、わざわざ降りないといけないのは面倒。しかも上がってくる時は階段だ(入場時はエスカレーター2列がともに下りに設定してあったので)。このあたりはスペース的に致し方ないところかもしれないが。
Jcb02_2 エスカレータで1階下ると第2バルコニー、さらに1階下ると第1バルコニー、その下がアリーナ席となる4層構造だ。ステージから最も離れた座席でも25m以内に配されているらしく、“アーティストの表情がわかるライヴ・ホール”をテーマに設計されたとのこと。自分は第3バルコニーの最後列(実際にはその後ろに立見席スペースがあるのだが)にいたが、角度はあるものの、ステージはしっかりと堪能出来た。第3バルコニーの最後列(アリーナを1階席と考えると、事実上4階席の最後部となる)ということでかなり近いというまでの感覚はないが、高低差はあるもののステージをほぼ視界が遮られずに観られるのはいい。高さとしては武道館の2階席のような感じだが、ステージとの距離を考えると、武道館でのステージ正面ではなくステージサイド(Billboard Live TOKYOの5階カジュアル席よりちょっとだけ距離がある)くらいの感覚だ。
 
Jcb03_2 次に音響面だが、意外とというか結構よかった。吸音効果の高い造りになっているのか、第3バルコニーにいても反響音がほとんど感じられない。印象としては、スピーカーなどの要素もあるだろうが、バンド・サウンドのそれぞれがくっきりとした輪郭のある感覚で聴こえる。音圧を上げるとサウンドがつぶれて(特にベース音などが)振動のみが前面にくることが多いが、そんなこともない。ただ、それぞれのパートの音をクリアに聴かせてくれる一方で、サウンドがヴォーカルをつぶすほど覆いかぶさってくるような圧迫感で支配されていないためか、ヴォーカル音がかなり前面に聴こえる。そういう意味ではヴォーカルでしっかりとパフォーム出来ていないと、その稚拙が容易に解かってしまう感じだった。

 さて、ライヴは19:10過ぎに暗転してスタート。ステージ中央高台にはShinnosukeが配され、アルバム『ATTITUDE』のジャケットよろしく、歯車のようなデザインが施されてある。左からドラム、ベース、キーボード(Shinnosuke)、ギター、ターンテーブル(S.O. 第4のメンバー、DJ MASS)、キーボード(ピアノ)といった配置だ。
 
 今回も例に漏れることなく、寡黙にセット・リストを進めていく。アルバム『ATTITUDE』の流れと同様、幻想的なシンセ・サウンドが流れるなかでDiggy-Mo'のクールなラップがひたむきに綴られていく「STEALTH」から「COZMIC TRAVEL」へ。「COZMIC~」は“クリストファー・コロンブス!”のフレーズが印象的な、シングルとなったアッパー・チューンだが、コーラス・パートを通常のハイトーンのメロディではなくロウで歌ったたり、観客にマイクを向けたりしたこともあってか、興奮度が高いアリーナ前方はともかく、こちらには思っていたほど熱気は伝わってこなかった。いや、熱気がないというよりも、ライヴ序盤ということに加え、ツアー・ファイナルをラストまでしっかりドライヴするために意識的に抑えた入り方をしたのかもしれない。個人的にはライヴ・セットのラストを飾ってもおかしくないキラー・チューンだと思っているので、ステージでの完成度を求めてしまうところもあると思うが。
 以下、本家東京での(ツアー各地では“TOKYO”の部分を言い換えていたらしい)「TOKYO通信」「Magenta Magenta」などを披露するが、本格的にエンジンがかかった(2ndギアに入ったと言った方がいいか)のは、サイレンのイントロとシンセ・サウンドのマッチングが絶妙なハイパー・ポップ・チューン、「MEGALOPOLIS PATROL」からだった。

 ここでDiggyはステージ・アウトし、Bro.Hiのヒューマン・ビートボックスへ。
SOUL'd OUTというグループは一介のヒップホップ・アーティストと違って(そもそもヒップホップ・アーティストの概念をどうとるかで変わってくるが)、いわゆるヒップホップ的なビート・トラックに乗せてフロウを展開していかないので、純粋なヒップホップではないのかもしれない(そのあたりが過去にリアルを標榜するいわゆるヒップホップを突き進むアーティストたちから揶揄の対象となったのかもしれないが…その是非は別にして)。そういう意味において、Bro.Hiのフロウはいわゆるヒップホップのそれを純粋に繰り出すアーティストだ。メインMCのDiggyに目が(耳が)奪われがちだが、実はBro.Hiの存在は非常に大きい。それはステージでも同様で、熱情を昂ぶらせ爆発的なフロウを繰り出し、カリスマ的な魅力をもたらすDiggyの不安定さ(不安定ゆえに頂点に達した時は観客の琴線を限りなく揺らすのだが)を補完して余りあるもので、そのブレがないクールなアティテュードは健在だった。

 SOUL'd OUTというアーティストは、ヒップホップ的なアプローチをしているとはいえ、なぜキャッチーでポップなトラックが多いのに、それほどチープさや独りよがりさを感じさせないのか。それぞれを考えると、Shinnosukeが操るキーボードはテクノ・ポップやエレクトロ・ポップ的要素が強く、Bro.Hiはヒップホップ&ヒューマン・ビートボックスのストリート的要素が強い。そしてDiggyは、ヒップホップの面とシンガーの面をスクランブルさせたような……なんとも表現しがたい存在だ。“アラララァ”といった独創的な破裂音フレーズ、がなるようなヴォーカル……決して歌が巧いという部類ではないが、周囲に左右されないストイックなスタンスを持った、オリジナルであることは確かだ。
 その特異的なDiggyを羽ばたかせるため、サイドにBro.Hiを、土台にShinnosukeのサウンドを配し、クリスタルなトライアングルを形成しているのだが、それらを絶妙につなぐものの1つとして、その根底にあるのは“ファンク”ではないかと思う。
 彼らの楽曲を聴いていると、クールや時にハード、ヘヴィなトラックでも、しっかりとグルーヴが幹になっているのが解かるはずだ。それもダンス・クラシックスやディスコ・ミュージックによるものが多いのである。それらはブラック・ミュージックのなかでも楽しさを前面に出し、凝縮されたソウル・ミュージックだ。その要素を含有しつつ3人のケミストリーが新たなるサウンドを創り上げていく……これらにノレない方がおかしいのだ。“ダン・クラ”の近未来的アプローチの具現化……そういっても過言ではないだろう。実際、“ダン・クラ”の名曲「She's A Bad Mama Jama」をカヴァーしていることからも、彼らに色濃く影響していることが窺える。

 中盤に入り、クレンチ&ブリスタを迎えての「TABOO」、ステージを囲むように10本火が焚かれ演じられたスリリングな「VOODOO KINGDOM」を披露。このあたりになると、Diggyのヴォーカルも安定し完全にホールを支配していくまでとなった。
 キーボードをバーンと叩くパフォーマンスで衝突音を繰り出すShinnosukeによるインスト曲「Master's Groove 2」を境にして、手馴れた楽曲も飛び出して一気にクライマックスへとなだれ込む。「Flyte Tyme」「Dream Drive」などの初期曲に、カメラのシャッター音でスタートする「Catwalk」を経て、“タン・テ・タン”のフレーズが中毒になったように脳内をループする「TONGUE TE TONGUE」を挟んで、「いくゾォ~JCB!」の掛け声から「To All Tha Dreamers」「Starlight Destiny」で本編締め。「Starlight~」で銀のテープが発射されたのは、前回の武道館ツアーと同じ演出だった。

 暗転した後、フロアには“ハ~レロハレロ、ハレハレハレロ”のコールがこだまし、メンバーのステージ・インを待つ。アンコールのオープナーはShinnosukeの「大事な曲を」というフリからデビュー曲「ウェカピポ」。最初にこの曲を聴いたのは、アーティマージュ(ARTIMAGE)のフリー・マガジン『SAMPLING』についていたサンプラーCDだったが、何気なしに流していたら耳にスッと入るグルーヴに<このアーティストはいいなぁ>と感じていたのを思い出した。当時はここまでビッグになるとは思わなかったが。
 そして解かりやすい言葉で真摯にメッセージを伝えるフックが魅力の「GROWN KIDZ」へ。このあたりになるとメンバーの感情も感極まったものになってくる。そして、ラストの思いのたけを咆哮で表現する「GASOLINE」へ。この曲に“TV観て家出ボーッとしてるだけのBaby、今夜おまえのためだけに歌ってあげたいとっておきの歌があるんだゼ”というリリックがあるが、これこそが彼らが曲を演ずる上でのモチベーションなのだろう。不器用でぶっきらぼうだが、いつでまでも純粋な夢を突き進め……そういうメッセージをてらいなく伝えることが使命なのだと。
 その思いが爆発したのか、Diggyはフックで声にならないほどの咆哮を発した後、背中から倒れこんで歌うほど。その際にトレード・マークともいえるキャップが脱げて床に倒れこんだまま歌い続けてたのだが、そのまま起き上がって再び叫ぶと場内は異様な雰囲気に。常日頃からキャップをかぶったスタイルで、キャップを外した姿を見たことがないファンが、ブレード(ブレイズ)風のヘアスタイルを目にして、狂喜的なヴォルテージとなった。だが、この予兆はあったのかもしれない。予兆というより、ハプニングかもしれないが、ここまで曝け出してやるという熱気に包まれていたのは確かだ。熱い感情で煽らないことはないが、どこかクールなスタンスを持ち続けているBro.Hiが、自らとった帽子を右手に持ちながら、観客に目をむき出しにして心の奥底にある思いのたけをぶつけてくるようなステージングをしていたのを観たからだ。MC2人はこのラスト・ナンバーを歌いきった後、感謝とピースを掲げて、あっという間にステージ・アウトしてしまった。それだけ、このラストに思いを込め、やりきったということなのだろう。

Sould_out_flip_side 直前のMCで、デビューしてここまであっという間だったけど、どこだろうが(“高松みたいなちっちゃなところでも”)、いつでも、誰にでも、全身全霊で当初と変わらず持ち続けていた思いをこれからもぶつけていく…というよなコメントをしていたDiggy。「険悪な世の中だけどよ……夢持っていこうぜ!」の発言は、彼らの偽らざる信念だ。バカ正直にしか生きられない彼らの、そんな彼らとつながっている“バカ野郎たち”であるファン=S.O.クルーたちへの最高級のメッセージに酔いしれるオーディエンスとのこの空間は、汗臭くも輝いていた瞬間だったに違いない。

 「MEGALOPOLIS~」には“This is Supersonic”というフレーズがあるが、彼らはその通り“超音速”でここまでやってきた。ベスト・アルバムもリリースした。だが、やはりその信念は変わらないのだと、泥臭くても代わり映えしなくても、心に燈した“夢”という希望へ突き進むことが全てだという思いが、今宵改めて実感出来たのだった。

 「Starlight Destiny」にあるように、彼らは今夜“力強く煌めいて”いた。ステージとして注文が全くなかったという訳ではない。だが、そんなちっぽけなことよりも、言葉以上にこのステージを共有出来たこと自体に意味があるのだといわんばかりのライヴだった気がする。信念を貫き続ければ、きっと限りないパワーとなるはずだ、今もこの先も。そんなメッセージを体感させてくれた彼らの未来は、これからも煌き続けるだろう。


◇◇◇

<SET LIST>

00 INTRO
01 STEALTH
02 COZMIC TRAVEL
03 Paraluxx
04 TOKYO通信~Urbs Communication~
05 Magenta Magenta
06 MEGALOPOLIS PATROL
07 Bro. Hi's Human Beat Box
08 Cinozoic
09 TANK
10 デタラmEDUCATION
11 TABOO feat. Clench & Blistah
12 VOODOO KINGDOM
13 Pop n' Top
14 SHUFFLE DAYZ pt.2
15 Widespread Panic
16 Master's Groove 2
17 Flyte Tyme
18 Dream Drive
19 Catwalk
20 TONGUE TE TONGUE
21 To All Tha Dreamers
22 Starlight Destiny
≪ENCORE≫
23 ウェカピポ
24 GROWN KIDZ
25 GASOLINE

<MEMBER>
*SOUL'd OUT
Diggy-Mo' (Main MC)
Bro. Hi (Human Beat Box/MC)
Shinnosuke (Trackmaster)

DJ Mass(Turntable)
斉藤光隆(Bass/Band Master)
Armin Takeshi Linzbichier (Drums)
JUNKOO(E.Piano)
鈴木俊介(Guitar)

and...
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