『SR サイタマノラッパー』の続編(その時の記事はこちら。上鈴木兄さんからコメントをもらったりしてます!)、『SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』を観賞。新宿バルト9にて。
前作の埼玉から舞台を群馬に移し、ティーンエイジャーの頃にヒップホップに情熱を燃やしていたアラサー女子たちの苦悩と葛藤を描く。前作はヒップホップで天下取りを夢見る若者にみひろが「おまえら宇宙人かよ」と突っ込みを入れたりと影のキーマンとなっていたが、続編の本作ではSHO-GUNGの二人、MC IKKUとTOMが女子ラッパーの気持ちを揺れ動かすきっかけを作るところで登場する。
こんにゃく屋の娘・アユムが、既に亡くなったDJ“T.K.D.”(タケダ先輩)が伝説のライヴをした場所を訪ねるため埼玉からやって来たIKKUとTOMに遭遇。そこで聞いた「タケダ先輩」の言葉に、アユムの眠っていた“ヒップホップ魂”に火がつき、高校時代に結成したラップ・ユニット“B-hack”のメンバーを集めて、一夜限りのライヴを実現させようと奔走するが、さまざまな現実の壁に突き当たることに。
認知度もなく白い目で見られ、“痛い”と思われる周囲の目に打ち勝ちながら、夢であるヒップホップに駆けようとする展開は、前回と同様。前途多難ながらも、高校時代に立ち戻って再び駆け出してみようと思った矢先、前作の“会議室でのラップ”と似たような屈辱的な“事件”が彼女たちに強烈なパンチを見舞う。メンバーもバラバラとなり、やはり無理だったと諦めかけたところ、格好悪いが熱く語る“あの男たち”に触発され、クライマックスへと向かう……。
ストーリー構成に大幅な変化はない。“ヒップホップで夢見た田舎もんが、現実との葛藤に苛まれる”という図式も変わらずだ。それでもつい見入ってしまうのは、こんにゃく屋の娘・アユム(山田真歩)、借金旅館の娘・ミッツー(安藤サクラ)、風俗嬢・マミー(桜井ふみ)、金持ち箱入り娘・ビヨンセ(増田久美子)、走り屋・クドー(加藤真弓)といった個性的な5人を主人公にしたこともあるだろう。しかも、ラップがそれほど巧くない。ミッツーとクドーはクールな佇まいでそれらしく振舞っているが、それ以外は微妙なレヴェル。その代わりに抜群に美人……という訳でもない。だが、そこがいい。本音を言えば、群馬の山奥であれば、もっと訛りが出ていてもよかった。
鮮度があるうちに続編を、ということから監督は製作したと思うが、ストーリーには相当悩んだのかもしれない。ハッキリとした結末を迎えないままで終わり、さらに(本編ではないのかもしれないが)ありがちな“つづく”的な手法でオチをつけた。もうこれは、『水戸黄門』の全国行脚というか、『男はつらいよ』『釣りバカ日誌』的な方法論でシリーズ化されるようなエンディングだ。北関東で続編なら“伝説のDJ”つながりは活かせるだろうし、SHO-GUNGの二人のラップもそれほど成長してないところを見ると(苦笑)、彼らの成長と活躍も描ける題材の一つだ。
初作を超えるインパクトがあったかというと正直微妙だが、スカッとした気持ちや終わり方にならないのがこの映画の“特徴”であるのだから、そういった意味での“もやもや”を観客が感じたのなら、それこそがリアルな感情であり、説得力のあるストーリーということにもなるのかもしれない。
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監督・脚本: 入江悠
製作: 畠中達郎、澤田直矢、國實瑞惠、入江悠
エグゼクティブ・プロデューサー: 外川康弘
プロデューサー: 綿野かおり、入江悠、遠藤日登思
撮影・照明: 三村和弘
音楽: 岩崎太整
製作国: 2010年日本映画
上映時間: 95分
配給: ティ・ジョイ
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上映終了後、トイレで若い二人の男が「あの“シュッ、シュッ、シュッ”はねえよなぁ」「ラップっていう感じじゃないし、ちょっとなぁ」という会話をしていた(テーマ曲「ワック!ワック!B-hack」のこと)。ヒップホップを日常的に素直に受け入れられる世代ということもあるのか、ヒップホップ=クールという図式に当てはめて考えてしまうんだろうな。
でも、言っておこう。あの「ワック!ワック!B-hack」は高校時代にヒップホップ好きの5人が作ったもので、しかも舞台は群馬。“ダサ素人感が出てないとかえってダメ”なのだ。そういう意味では、多少勘違いをしていると思わせる部分が重要な訳で、前の人の肩に手を乗せて“トレイン・スタイル”で「シュッ、シュッ、シュッ! めくられたカード~」と歌われるフックは、それに充分相当するものなのだ。
「ワック!ワック!B-hack」
川でのSHO-GUNG vs B-hackのフリースタイル対決(これもボロボロ…笑)や、選挙カーのウグイス嬢のバイトでついついラップをかましてしまうなど、クスリとさせる部分はしっかりと埋め込まれているし、飽きさせないという意味では、前作を上回るのかもしれない。
それでも「うーん」となる人は、ミッツー(安藤サクラ、お母さんに似てますね)を北陽の虻ちゃんに、マミーを山田優に、アユムを深津絵里に見立てて観ると楽しめるかも(???)しれない。(ウソ)
それと、今回はまだサントラをゲットしてないのですが、劇中で使われていたトラックはかなりクールだったので、期待大。(という間に、注文してしまいましたが…笑)
もう一回観に行くかもー。(最近、このフレーズばっかりですが…苦笑)