*** june typhoon tokyo ***

Robert Glasper Experiment@Billboard Live TOKYO

■ ロバート・グラスパー・エクスペリメント featuring レイラ・ハサウェイ@ビルボードライブ東京

Robertglasperexperiment01
Lalahhathaway
 
 
 2012年6月、同じくビルボードライブ東京での公演(その時の記事はこちら)以来、約半年ぶりとなる来日公演。ジャズからゴスペル、ヒップホップ、R&B、ロックなどの要素を組み込み、多彩なゲスト・ヴォーカルをフィーチャーしたアルバム『ブラック・レディオ』は、発表後シーンで大きく採り上げられ、まもなく開催される第55回グラミー賞にもノミネートされている。そんなホットな話題を携えての日本公演、今回は『ブラック・レディオ』でも共演したレイラ・ハサウェイを引き連れてのステージとなった。レイラも昨年、1月のブルーノート東京公演(その時の記事はこちら)以来だからほぼ1年ぶり。

Robertglasperexperiment03_2 エクスペリメント(Experiment)は直訳すれば“実験”、つまり、ロバート・グラスパーは音楽のさまざまな可能性を求めて実験的な音楽(Experimental Music)を繰り出す。エクスペリメンタルというと、フレーズの反復によるミニマル的な展開やそのときの偶然の産物ともいえる即興性を多分に含み、またテクノなどの電子的な楽曲でのミニマルな手法との近似性を強く感じる。そのせいかポピュラー・ミュージックを多く聴くことの多い自分は、“実験”というどうも電子的、無機質的なイメージを持っていたが、楽曲を聴き、ステージを体感するにつれ、これは人間や動物、自然などが元来持つものへの回帰なのではないかとも思えてきた。

 前回のライヴ記事でも述べたが(以下、前回記事引用:「彼らのサウンドはアヴァンギャルドで実験的(=エクスペリメンタル)な演奏だといえるが、なめらかに走る鍵盤、大地の響きのようなベース、幻想的なヴォコーダー、生命力を感じるドラム……それらが奏でる音を聴いていると、実は非常に自然的でもあるのではないかと思えてきた。」)、彼らが奏でる音を聴いていると、非常に野性を感じる。岩肌に波が打ち当たる、平原に勢いよく風が吹き抜ける、山の木々がざわめき出す、雨に打たれた草木が大地に滴を穿つ……そういった本来ある原始的な音として伝わってくるのだ。だから、観客も本能で反応してしまうところがあるのだと思う。非常に静寂な、じっと息を呑み耳を傾ける時空間も少なくないのだが、無意識に五感は反応しているのだ。

Robertglasperexperiment04 そして今回、ヴォーカリストとしてレイラ・ハサウェイが加わった。彼女の声も母性というか“母なる大地”的なスケールの大きさを感じる。ひとたびあの低音の声を発すれば、大地から広々とした空へ響き渡るようなアーシーな風景が脳裏に浮かんでくる。そして、このステージも大地からの信号を直に受け取るかのように、“裸足のレイラ”だ。
 レイラは開演してから約4、50分してようやく出てきた(それでも音が停止したのは数回、曲単位でいえば20数分の曲を2曲ほどやったという感覚)。まず、『ブラック・レディオ』で本人が客演しているシャーデーのカヴァー「チェリッシュ・ザ・デイ」を披露。次に『ブラック・レディオ』ではレディシを迎えた「ゴナ・ビー・オールライト」を。最初はレイラならではのロー・ヴォイスで響かせたあと、次にはレディシに近いハイトーンで歌ってみせたりと、ヴォーカリストとしての多彩な表現力を示してくれた。その後もコーラスで参加したり、リズムに反応して身体を揺らすなど、華としてステージを彩ってくれた。

Robertglasperexperiment02_2 クライマックスにはニルヴァーナ「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」を。このイントロが流れると(イントロといっても、まさに“オルタナティヴ”なカヴァーなので、原曲とはまったくスタイルが異なるのだが)、観客も拍手や歓声が沸き起こる。ヴォーカル・エフェクトを駆使したケイシー・ベンジャミンの持ち味が活きる曲で、原曲のような激しさはないが、幻想的で退廃的、サイケデリックで謎めいたサウンドとなった。ライティングの効果もあって、観客はその超現実性な空間に恍惚していくのだ。

 ステージの印象はというと、“炎”ということになるか。炎といっても燃え盛る炎ではなくて、蝋燭に灯されているようなゆらゆらと揺れる一本の炎だ。青白く真っ直ぐに灯っていたかと思えば、風に当たり橙や朱の色みに変わった火がゆらゆらとうごめく。とはいっても、それは激しいものではなく、有機的なたなびきの揺れだ。青白い炎は一見スマートでクール。だが、炎は赤みが強い部分よりも青や白い部分の方がより高音なのだ。クールに見えながらも熱は高い……それは、それぞれがクールに演奏しているように見えながらも、内実はふつふつと表現したい熱が高まっているという姿と重なる。演者それぞれが有する内に秘めたる炎がステージでぶつかり合う、そんな生々しいライヴだ。それゆえ、ライヴ=“生”を体感しに来た観客たちにも、おのずと“生”の感触へ反応していくのではないか。

 今回はヴォーカリスト、そしてアンコールもあった。生で聴いてみたい『ブラック・レディオ』収録曲は客演者が帯同しないと観られそうにないが(たとえば、「アフロ・ブルー」はエリカ・バドゥ、「オールウェイズ・シャイン」はルーペ・フィアスコとビラルとか)、それらがなくとも充分体感するに値するステージ。ドラムがクリス・デイヴじゃないからと嘆く人もいるとは思うが、マーク・コレンバーグのスティック捌きやリズムも一見の価値あり。次回も期待したいアクトだ。


◇◇◇
 

<MEMBER>

Robert Glasper(Keyboards,Piano)
Derrick Hodge(Bass)
Casey Benjamin(Saxophone,Vocoder,Synthesizer)
Mark Colenburg(Drums)

Lalah Hathaway(Vocals)


◇◇◇


Robert Glasper Experiment -“Cherish The Day”feat. Lalah Hathaway




このグループのライヴでの迫力や情感は動画では伝えきれませんが、それでも素晴らしい。




 
 
 



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