*** june typhoon tokyo ***

近況注意報 1105 音楽篇(2)【3055】




  音楽レビューサイト「3055」に寄稿したレビューの第2弾です。

◇◇◇

≪2013年掲載分≫

■BRANDY/TWO ELEVEN
[ 2012 ] RCA

 4年ぶりの復帰作。さまざまな“いわく”がつく波瀾を経ているゆえ、思い入れもひとしおだろう。人身事故を起こしどん底を味わったのちエピックへ移籍。だが、前作『HUMAN』が不振で約1年で契約解除。家族ドキュメンタリー番組に出演して公私を晒しながら、ようやくリリースにこぎ着けた。

 タイトルには、自身の誕生日と同時に敬愛するホイットニー・ヒューストンの命日を冠した。他界直前の“自分らしくトライし続けて”の助言をそのまま実践した力作だ。

 クリス・ブラウン客演の“Put It Down”や“Let Me Go”といったヒップホップ的アプローチへのトライが刺激的でおもしろい。だが、やはり本筋は原点回帰のクールなR&B。冒頭から“Never Say Never”を想起させる“Wildest Dreams”や“Slower””Without You”、坂本龍一ネタ楽曲など、派手さはなくとも(むしろ地味)適度な湿度で濡らす。どっぷりと回帰に浸り過ぎず、時流に迎合しすぎない。絶妙の線でまとめたこれぞR&Bな曲が揃った。

 カムバックを素直に喜べる一枚だ。

Jan 03 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. Intro 2. Wildest Dreams 3. So Sick 4. Slower 5. No Such Thing As Too Late 6. Let Me Go 7. Without You 8. Put It Down 9. Hardly Breathing 10. Do You Know What You Have 11. Scared Of Beautiful 12. Wish Your Love Away 13. Paint This House 14. Can You Hear Me Now 15. Music 16. What You Need 17. Outro


■雅-MIYAVI-/SAMURAI SESSIONS vol.1
[ 2012 ] EMI Music Japan

 優れた才能を持つアーティストとのジャンルを超越したコラボ企画“SUMURAI SESSION”シリーズを始動させたのが2011年。そのコラボのひとまずの区切りとして2012年にリリースされたのが本作だ。

 エレキをすべて指で弾く独自のスラップ奏法を駆使して世界各地で注目を集めた雅-MIYAVI-が、本物のアーティスト(どうやら彼はそれを“サムライ・アーティスト”と呼ぶらしい)とガチンコ勝負。共演ではなく競演。だから、クレジットには“vs”の文字が並ぶ。
 
 それが最も凝縮されたのは第1弾シングルの“STRONG”だ。「お手並み拝見」とばかりに繰り出すスラップ奏法に、KREVAがしたり顔で高速ラップで応戦。それは真剣勝負の緊張のなかで鍔迫り合いを楽しむような、互いの力を認め合ったもの同士が作り出せる空間だ。

 KREVAとの“一戦”はヒリヒリしたものだが、そのスタイルばかりでないのが懐の深さと経験値。三味線の上妻宏光とフラメンコギターの沖仁を交えての“HA NA BI”の高揚感、H ZETT Mのピアノと創る多幸感など、先入観を軽く凌駕。聴き逃しは損と断言できる力作。

Jan 18 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. GANRYU 2. STRONG 3. DAY 1 4. SILENT ANGER 5. PLEASURE! 6. HA NA BI 7. 祈りを


■Darnell Kendricks/Smooth Soul Cafe
[ 2012 ] REWIND RECORDS

 一口に“ソウル”といっても、なめらかな肌あたりからネットリと濃厚なものまであるが、本作はタイトルどおり前者のテイストを得意とするカリフォルニア出身のR&Bシンガー・ソングライターの2010年作。タイトルに“カフェ”と冠するも、いわゆるBGM的な機能としてさらりと耳の上を流れる“カフェ・ミュージック”とは異なり、あたりはやわらかだがジワジワと深く長く染み込む浸透性の高いスムース&メロウな楽曲群が揃っている。

 デビュー作『ストロベリー・レモネード』のタイトルしかり、これまでのアーバン&スムースなテイストはしっかりと継承、さらに精密度が高まった感さえある。それだけに楽曲の“軽さ”を不安視する人もいるかもしれないが、ブライアン・マックナイトが引き合いに出されるソフト・テナーの美声がそれを払拭。歌モノの魅力を存分に味わえる。

 聴後の清涼感は格別。アシッド・ジャズやネオ・ソウルあたりの好事家に薦めたい一枚だ。

Feb 06 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. Smooth Soul Cafe Intro 2. Let's Run Away 3. Please Believe Me 4. Baby Don't Leave Me 5. Brand New 6. Baby Jane 7. So Much 8. After Dinner 9. After Dinner reprise 10. Still I Think of You 11. You Took My Loneliness 12. Joy 13. My Favorite Person 14. Good Love-Diggysim Remix


■AMP/Glory Songs
[ 2012 ] GOONTRAX

 2011年末にリリースされた『Simple Steps』が日本の好事家の間で話題となり、短期間に複数の来日を果たしたコリアン・アメリカン、サム・オック。彼がCL、ジェイ・ハンとともに組んだユニットが2012年末に発表したのが本作だ。

 “Faithful”や尺八の音を使った“Beauty”あたりはサム・オックのソロ作同様の和やかなムードが漂うが、他曲では電子的なアプローチやストリート感が強い作風も多く、3人の嗜好がバランスよく配されている。

 特徴的なのは、リード曲“People's Song”や後半からゴスペル風コーラスが加わる“See You in Heaven”などからもわかるように、非常にキリスト教的な詞世界だということ。本作は自主レーベルAnointed Music Productionsからのリリースだが、“Anoint”とは“聖油で清める”の意だ。

 宗教的な世界観という、日本人にはあまりピンとこない詞世界を除けば、すんなりと耳に沿うR&B/ヒップホップ作といえる。

Feb 27 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. Amplify 2. No Other Place 3. People’s Song 4. Faithful 5. See You in Heaven 6. Wonderful 7. New Creation 8. Your Word 9. Shine 10. Hummingbird 11. Worthy Is The Lamb 12. Everywhere 13. Beauty 14. No Turning Back 15. You Lift Me Up 16. No Other Place - re:plus remix


■Miguel/Kaleidoscope Dream
[ 2012 ] RCA

 メキシコ系の父親とアフリカ系の母親を持つカリフォルニア出身のR&Bシンガーのセカンド・アルバム。前作『All I Want Is You』は多くの注目を浴びた印象はなかったが、このセカンドは2012年を代表とする一枚として好評を得た。

 ファンキーだがまどろみを誘うドローンとしたサウンドは、タイトルやジャケットよろしく万華鏡のように表情をくるくると変え、非常に独創的だ。プリンスやマックスウェルあたりのメロウな感覚に加え、スペイシーな要素などからはグラム・ロック的な雰囲気も散見される。そしてなにより特徴的なのは、先行シングル“ADORN”でも顕著なとおり“(ク)ゥワッ”という合いの手風の声だろう。ドレイクが出てきた時に感じたのと同様のユニークさと面白味が、スルメのようにジワジワと五感を支配していく。

 “トイレとお部屋に消臭力~”……ミゲルといえば消臭剤のCMで歌っていたポルトガル出身のガーレイロ少年というイメージも、このセカンドのヒットをきっかけに日本でも目が離せない存在へとなってほしいものだ。

Apr 01 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. Adorn 2. Don't Look Back 3. Use Me 4. Do You... 5. Kaleidoscope Dream 6. The Thrill 7. How Many Drinks? 8. Where's the Fun in Forever 9. Arch & Point 10. Pussy is Mine 11. Candles in the Sun 12. Gravity 13. ...All


■Allen Stone/Allen Stone
[ 2012 ] Ato Records

 スティーヴィー・ワンダーとの邂逅が一人の白人ソウルマンを生んだ。ブルー・アイド・ソウル界に颯爽と現れた1987年米ワシントン州生まれのシンガー・ソングライター、2009年インディ作『Last To Speak』に続くセカンドで、メジャー1作目。

 ナードな容姿からメイヤー・ホーソーン的にも語られるが、父親が牧師でゴスペルが身近にあったというから、マニアならずとも“黒さ”への順応は当然か。世俗的な音楽を禁じるよう育つも、スティーヴィーと出会うやいなや貪るようにソウル・ミュージックへ傾倒したという。

 印象は、UK黒人シンガーのネイト・ジェームスとダリル・ホールの中間といった風。ややブルース色も見えるのは、ゴスペル影響下にあったからか。歌唱は安定していて、自身が愛した偉大なソウルに一目置き、2010年代ならではの高品位なレトロ/ヴィンテージ感を演出する。まだ奥底を見せてなさそうだし、今後に期待が持てそうだ。

Apr 15 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. Sleep 2. Celebrate Tonight 3. What I've Seen 4. Say So 5. The Wind 6. Satisfaction 7. Contact High 8. Nothing to Prove 9. Your Eyes 10. Unaware 11. Satisfaction(Live At The Thoubador)


■Bilal/A Love Surreal
[ 2013 ] Ent. One Music

 ビラルは、フィラデルフィア出身のネオ・ソウル系シンガー・ソングライター。本作は2010年『Airtight's Revenge』以来の約3年ぶりのアルバムとなるが、にもかかわらず2001年からのキャリアで3作目とやや寡作である。

 近年ではジョイ・デナラーニが企画し、ドゥエレやトゥイートとともに参加した2008年のドイツ・ドレスデンでのコンサートや、盟友ロバート・グラスパー『ブラック・レイディオ』の客演(本作では“Butterfly”で共演)などで話題となっていたが、ようやく本腰を入れてのリリースとなった。

 プリンス系統のうねりのあるファンクをベースとしているが、ビラル独特の幻想的で神秘的なムードが全体を支配しているのが特色。オルタナティヴともサイケデリックともいえる要素もちらつくが、決して小難しい感じはなく、音数を少なめにしてしっかりとグルーヴを構築しているあたりは、奇才のなせる業か。

 派手さはなくとも深層心理をえぐる楽曲群が連なる、ユニークな世界観。既成概念を軽く超越したビラル流小宇宙は、実に刺激的でおもしろい。

Jun 04 ,2013 UP (Baseball Mania)

1 Intro 2 West Side Girl 3 Back to Love 4 Winning Hand 5 Climbing 6 Longing and Waiting 7 Right at the Core 8 Slipping Away 9 Lost for Now 10 Astray 11 Never Be the Same 12 Butterfly 13 The Flow 14 Outro


■MADFINGER/Another Chapter
[ 2013 ] P-VINE RECORDS

 UKソウルやレア・グルーヴ好きならまだしも、多くの音楽ファンにとって“アシッド・ジャズ”は懐古趣味の産物と片づけられるものかもしれない。だが、そんな先入観を吹き飛ばしてくれそうなのが、2011年にこの3作目(日本盤は2013年)を発表した、1980年前後生まれで構成されたチェコ・プラハ産のソウル・バンド。東欧の地で、“今”のバンドとしてアシッド・ジャズを鳴らしている。

 アシッド・ジャズ、元を辿ってジャズ・ファンクを奏でる面々は多少なりともスティーヴィー・ワンダーの影響がみてとれるが、“As”のカヴァーや本作からリード・ヴォーカルを執るマーティン・スヴァテックが(偶然にも)盲目ということからも近似性は当然か。

 音はUK直系、つまるところ“若々しい”インコグニート風か。ただ、東欧的なニュアンスを匂わせていた前作までの素地もあってか、UK独特の陰影や熟成した音というよりも清爽や新鮮さが前面に出ている。

 ムーヴメントとしてではなく、あくまでも普遍的・大衆的にアシッド・ジャズを捉えた注目作といえる。

Jun 14 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. Still 2. Another Chapter 3. Are You Ready 4. I'm Wondering 5. Try 6. Stop It 7. Bittersweet 8. You Remind Me 9. This Goes Out 10. The Last Song 11. Summerjam Party 12. I'm Movin' On 13. As


■The Brand New Heavies/Forward
[ 2013 ] Universal UK

 2013年、“前進”を掲げてザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズ(BNH)が帰ってきた。初期ヴォーカルのエンディア・ダヴェンポートも、わずか3曲とはいえ、重要曲のブギー・ファンク風“Sunlight”“Addicted”などでリード・ヴォーカルを執り、ファンを安堵させた。

 思えば、2011年の来日公演では急遽エンディアが来日をキャンセル。代役シンガーによる新生BNHでのステージとなり、ファンをやきもきさせたが、やはり“腐れ縁”なのか。ゲストという形だが、何事もない風でエンディア客演曲を発表。再びファンの気持ちを高ぶらせた。

 冒頭のインストからBNH節全開。だが、懐古に固執せず、ドーン・ジョセフら新たなヴォーカルを迎えて、今だからこそなし得る近未来志向のアシッド・ジャズ/レア・グルーヴを探求。これまでの礎に新鮮なエッセンスを加えている。

 “アシッド・ジャズ・レコード”25周年のタイミングはあくまでも偶然。普遍と先端の均衡を巧みに操りながら、時代の向こうをも見据えたグルーヴを奏でている。

Jul 01 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. Forward 2. Sunlight (Full Length Heavies Mix) 3. Do You Remember 4. On The One 5. A Little Funk In Your Pocket 6. Addicted 7. Lifestyle 8. Itzin 9. The Way It Goes 10. Lights 11. Turn The Music Up 12. Heaven 13. Spice Of Life 14. One More For The Road


■Jesse Boykins III&MeLo-X/Zulu Guru
[ 2012 ] Ninja Tune

 曼陀羅のような宗教的で宇宙的なジャケットが目を引く、シンガー・ソングライターのジェシー・ボイキンス3世とMC/DJのメロー・Xとのコラボ作。

 シカゴ生まれ、ジャマイカ&マイアミ経由でNYを拠点とするジェシーは、ファルセットを活かした感傷的な歌唱によってナイーヴでロマンティックな世界を創生。一方、メロー・Xはマックスウェル『BLACKsummersnight』のリミックスを手掛けた奇才として知られる。このような経緯からも、マックスウェルやディアンジェロのネオ・ソウル路線を洗練させたミスティックな音世界を構築したのも頷ける。

 フォーカスしたのはアフロ・ビートやインド的なもの。哲学的、原始的なものを見つめながら、エレクトロニックという現代的アプローチで、時空や既成概念を超越したソウル/ヒップホップを提示。キャッチーではないが、幻想的で独創的な展開で異空間へといざなう。

 ズールーはアフリカ民族、グールーはヒンドゥー教の尊師を示す。アフリカとアジアの融合を音楽的に試みた、前衛的ながらもモダンな“ソウル(魂)の行脚”と呼べる傑作だ。

Jul 10 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. Zulu Guru ft.Trae Harris 2. I'm New Here 3. Black Orpheus 4. Change Of Heart ft. MoRuf, Chris Turner 5. Broken Wings 6. Schwaza ft. JoeKenneth 7. The Perfect Blues ft. Jesse Boykins III 8. Searching Her Ways 9. Primal Chance ft. Mara Hruby, Jesse Boykins III 10. Strange Recreation ft. Jesse Boykins III 11. Tribe Of Stafa ft. MeLo-X 12. Better For You [Remix] ft. Ango 13. Outta My Mind ft. Chris Turner, Jesse Boykins III 14. Zulu Guru ft. Kesed


■Secure/IDENTITY
[ 2012 ] P-VINE RECORDS

 90年代R&Bを中心とした楽曲をア・カペラでカヴァー、その映像を動画サイトにアップして話題を集めた4人組ヴォーカル・グループの2012年作。ネット環境の発展により世界各地の逸材を比較的容易に発掘できる時代。彼らもそんな時代に大きく飛躍するグループの一つとなるかもしれない。

 オランダ・ロッテルダム出身で2002年に結成。ボーイズ・II・メンやジョデシィらのスタイルを継承したUS R&B風ミッドなどを甘いハーモニーで披露する。

 ブライアン・マクナイトやジョーあたりを意識したバラードあり、ラップを含めた“In Tha Club”などのフロア・キラー、セクシーなスロー・ジャムと振り幅も広い。それだけでなく、“Let Me Be”ではエフェクトを効かせるなど、“今”を意識したアプローチも怠らない。

 なかでも“Secure(Get Up!)”は、ジョー“Stutter”に比肩できる出来。EDM全盛でやや閉口気味なR&B好事家に、US圏外から良きR&Bを吸収するのも悪くないのではないか。

Jul 24 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. In Tha Club 2. The One I Need 3. Used To Be 4. Up 4 You 5. Rock Like This 6. Ladies Holdin’ It Down 7. Let Me Be 8. I Can’t Let Go 9. What The Deal 10. S.E.X. 11. Another Man 12. Secure(Get Up!) 13. The One I Need (Remix) 14. It’s Over Now


■The Wonderful Sound Of Induce!/HALFWAY BETWEEN ME AND YOU
[ 2012 ] WONDER SOUND

 自ら“Wonderful Sound”と言い切る自信は、名に違わず。マイアミを拠点にマルチに活動するDJインデュースが、名義を変えてリリースした2012年作。マイアミのヒップホップ・レーベル“Counterflow”創設者のひとりという縁故を活かし、その周辺人脈を呼び寄せ、制作ではなく演者としての才知を披露している。

 シングルとなった“Pretty”“Get Down Saturday Night”からも判るとおり、魅力なのは80年代ディスコ/ブギー、ファンクを横溢した明快なサウンド。前者はプリンス、後者はクール&ザ・ギャングあたりを意識させ、そのポジティヴな“継承”っぷりはかえって清々しいくらいだ。

 良質なソウル・ミュージック……R&Bからヒップホップまでのエキスをヴァラエティ豊かに抽出し、ジャケットよろしくダンディな装いで描いた“伊達男”な一枚。しかも、鼻につかない親しみやすさが楽しい。

Aug 01 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. Love Letter 2 U 2. Cover Girl Ft. Seven Star & Jack Splash 3. Her & I 4. Pretty 5. Get Down Saturday Night Ft. Fantab 6. Good Day (Sunday Afternoon) 7. Livin’ In The Future Ft. Jack Splash 8. Future Reprise 9. One Day, Some Say 10. Beautiful Thing 11. My Sweet, Goodbye


■Especia/AMARGA-Noche-
[ 2013 ] つばさレコーズ

 ムーディなホーン、哀愁や気だるさを感じるシンセやコーラス、夕暮れや夜景を想起させるサウンド……2013年には時代錯誤と思われそうなAOR/フュージョン調の楽曲を奏でる、大阪・堀江系アイドル・グループの2枚同時発表EPの“Noche”篇。多種多様なアイドル・グループが有象無象するなか、80年代的な世界観で勝負する彼女ら。ジャケットよろしくアーバンやトレンディといったテーマに真っ向からぶち当たる姿勢が快感だ。

 EPながらインタールード3曲を組み込むなど、コンセプトから外れない作り。山下達郎「MIDAS TOUCH」のカヴァーなどは、かつての山下のディスコ・ヒット「BOMBER」の火をつけた大阪という土地柄を意識してのものか。想像以上の相性の良さを見せている。

 閉塞感を久しく拭えない近年にこそ、このフュージョン/ディスコを行き来する彼女らの楽曲に耳を傾けるのも面白い。当時の雰囲気丸だしの「パーラメント」のPVも必見。

Aug 26 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. AMARGA 2. トワイライト・パームビーチ 3. センシュアルゲーム 4. Midas Touch 5. Interlude 6. パーラメント 7. ステレオ・ハイウェイ 8. 不機嫌ランデブー 9. AMARGA(reprise)


■Mayer Hawthorne/Where Does This Door Go
[ 2013 ] Republic of Music

 レトロなソウル・ミュージックを奏で、R&B/ソウル好きたちを中心に好評を博しているマルチな才能を持つシンガー・ソングライターによる、『Strange Arrangement』『How Do You Do』に続く3作目。

 これまではモータウンや古典的ソウルに対し、ヒップホップDJを通過した素地と音楽的“オタク”資質によってアプローチしていた彼。本作で近年に流行のヴィンテージな音質を重ねて披露してくるのかと思いきや、単なる回顧を選択せず、AORやフュージョンあたりのアーバンっぽさも感じさせるサウンドを披露してきた。プロデュースにファレル・ウィリアムス(""Reach Out Richard""“The Stars Are Ours”あたりはモロにファレル節!)ら、客演にケンドリック・ラマーらを迎えたことも刺激になったか。

 単なるヴィンテージではない、彼ならではのモダン・ソウルを描き出し、より深化を極めた傑作といえる。

Sep 06 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. Problematization 2. Back Seat Lover 3. The Innocent 4. Allie Jones 5. The Only One 6. Wine Glass Woman 7. Her Favorite Song 8. Crime (with Kendrick Lamar) 9. Reach Out Richard 10. Corsican Ros 11. Where Does This Door Go 12. Robot Love 13. The Stars Are Ours 14. All Better


■Esco Williams/New Challenger
[ 2013 ] P-VINE RECORDS

 メイヤー・ホーソーンやアレン・ストーンなど、近年、ナード(nerd)とソウルは好相性なのか。英リヴァプール出身のエスコ・ウィリアムズのデビュー作は、その名のとおり“チャレンジャー”にふさわしい潔さとUKブラックのルーツを感じさせる注目作だ。

 『スーパーマリオブラザーズ』の効果音や“プリンセス ピーチ”などの詞、PVではスーパーファミコンや格闘ゲーム風のシーンが登場するタイトル曲“New Challenger”ほか、“High Score”なる曲や演奏バンドがザ・コントローラーズを名乗るなど、ゲーマー気質を最大限に発揮。だが、楽曲はすこぶるソウルフルで、昨年には英の音楽アワード“MOBO”の新人賞も受賞した。

 最大の魅力はゲーマーらしからぬ(?)男前のパワフルな声。父がカリビアン、母がジャマイカ系含むミックスという出自もあり、南部やレゲエの薫りも。音はレトロなシンセもあり、ジョン・レジェンドとオマーを融合させた感もある。音楽界を席巻する挑戦者となるか、期待したい一人だ。

Sep 19 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. New Challenger 2. Starry Eyed 3. I Want You More 4. Something For Jazz 5. Dreamin' 6. High Score 7. Just Friends 8. New Challenger (Interlude) 9. This Time 10. Day One 11. About You (Sweet Kisses) 12. New Challenger (Kev Wilson Remix)


■YOSHIKA(from SOULHEAD)/MY ANTHEM
[ 2013 ] ディー・アイ・エイ・エイ

 初心に帰ることは後退ではなく、未来へ進むための重要な礎。姉妹デュオ“SOULHEAD”として颯爽とデビューした姉、YOSHIKAが10年を過ぎて出した答えの一つがこの初のソロ・アルバムに凝縮されている。

 2007年のベスト盤前後から雲行きが怪しくなり、約4年のブランクを経てavexへ移籍。心機一転ロックなど新機軸を導入したセルフ・タイトル作は、どこか迷いも見え隠れ。次作は曲風も寄り戻したが、不安定さを露呈した感は否めなかった。

 久しく悩み苦しんだ彼女が出した一つの選択がソロ。自身を見つめなおす意味も込めてか、愛聴曲カヴァーを中心とした原点回帰な内容に。ジュニアやチェンジなど彼女らしいルーツが窺えるカヴァーもいいが、やはり注視すべきはオリジナル。盟友OCTOPUSSYの片割れ、菱川亜希ほか制作陣が、彼女のセンスを最大限発揮させるグルーヴを提供。再起を期待するに充分な資質を備えたステップ作だ。

Oct 02 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. OPENING -MY ANTHEM- 2. ALL I DO 3. THE GLOW OF LOVE 4. THRILLER 5. MAMA USED TO SAY 6. NATURAL LADY 7. I DREAM 8. ALL I WANT IS U 9. RIGHT HERE (HUMAN NATURE REMIX) 10. A LONG WALK 11. TIME AFTER TIME 12. CHANGE THE WORLD 13. I DREAM (MAKOTO 80’S LEGACY REMIX) (BONUS TRACK)


■Chrisette Michele/Better
[ 2013 ] Motown

 呪縛と模索の果てにようやく見つけた自分らしさ。完璧ではないが“ベターでしょ?”と語りかけられる一枚。ロングアイランド出身、ニュー・ソウルの歌姫による4作目。

 デビュー作『アイ・アム』は賞レースに軒並みノミネート。『エピファニー』はNe-Yoらによる洗練された作風が受けヒットを記録。だが、自身の存在価値をこの手で掴みとりたかったのか。当時の坊主頭のルックス同様、音楽的にも刺激を求めた前作『レット・フリーダム・レイン』は思うような評価が得られなかった。

 それから約3年。三十路にもなり大人になったのか、開き直ったのか。どちらにせよ浮き足立つことなく、自然体が意識を好転させたのは確か。前作での重苦しさは陰を潜め、瑞々しくも愛嬌あるハスキーなあの声が帰ってきた。気鋭の作家陣も良質の楽曲を提供。目先に囚われない泰然自若な姿勢を含め、間違いなくキャリアハイといえる快作だ。

Oct 15 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. Be In Love 2. A Couple Of Forevers 3. Let Me Win 4. Rich Hipster (feat. Wale) 5. Love Won’t Leave Me Out 6. Interlude (In My Head Better) 7. Better 8. Snow 9. Visual Love 10. Charades (feat. 2 Chainz) 11. Interlude (In My Heart - Convo With Boyfriend) 12. You Mean That Much To Me 13. Supa 14. Interlude (In My Bed - Sleeping Alone) 15. Get Through The Night 16. Can The Cool Be Loved? (feat. Bilal, Dunson) 17. Ten Foot Stilettos 18. Interlude (Perch Yo Girlz - Phone Convo) 19. I'm Still Fly 20. Love In The Afternoon (feat. Nello Luchi)


■Brian McKnight/More Than Words
[ 2013 ] Ent. One Music

 ヴェテランならではの安心感と余裕、そして遊び。一見、悠悠自適といった佇まいも、実はしっかりと今という時流を見据えている。20年を超えても第一線で活躍するR&Bシンガーは、自分のすべき音楽をしかるべきタイミングで提供してくれる。

 第一印象は初期に近い80年代の薫り。だが、回顧のみに陥らず、今を意識したものを反映させている。軸となるのはR&B然としたミディアムだが、“Off The Wall”のベース・ラインを想起させるファンキーな“Don't Stop”や、爽やかなシンセ使いのAOR~シティ・ポップ風“Letsomebodyluvu”などは、こんな引き出しもあったのか! と思わせる斬新さ。ワム!“Last Christmas”風リズムが耳を惹く“She Doesn't Know”や80'sミーツ4つ打ちな“Made For Love”も面白い。

 SNSを通じ、交流や情報発信を怠らない彼。だが、“言葉以上に”訴えたいロマンが本作には詰まっている。

Oct 30 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. Don't Stop 2. Letsomebodyluvu 3. 4th of July 4. Sweeter 5. She Doesn't Know 6. More Than Words 7. Nothing But a Thang 8. Livewithoutyou 9. Made for Love 10. Get U 2 Stay 11. Slow 12. Another 13. Trying Not to Fall Asleep 14. Ididntreallymeantoturnuout(featuring Brian McKnight Jr.) 15. The Front, The Back, The Side(featuring Niko McKnight)


■JOE/Doubleback Evolution of R&B
[ 2013 ] Massenburg Media

 "R&Bの進化をタイトルに謳ったかと思えば、しばらく封印(?)していた“裸ジャケット”。「オレがやらねば誰がやる」といった気概がビシビシと伝わってくるようだ。20年選手のヴェテランとなったジョーの10枚目のアルバムは、昨今の乱れたR&Bシーンに本来の姿を取り戻したいと願う彼からの処方箋なのだ。

 その“進化”とは何かと紐解いてみると、生楽器を鳴らした気品や華麗さをまとった上質な音楽。かつていたるところで流れていた王道の“R&B”で、もう一度あの洗練されたスムーズなソウル・ミュージックに立ち戻ろうというジョーからのメッセージなのだ。

 だが、それは“進化”でなく“回帰”に過ぎないのでは? という人もいるだろう。形としてはそうかもしれないが、つまるところ“良質な音は時代を超える”ということを証明したかったのではないか。スターゲイトら外部制作陣を招きながらも大半を自身で書き、全編ジョー色に染まった、エレガントなR&Bクラシックスだ。"

Nov 26 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. Something For You 2. Easy 3. Baby 4. Compromise 5. Magic City 6. I'd Rather Have A Love 7. Love & Sex feat. Fantasia 8. Sexy 9. More 10. Mary Jane 11. 1 to 1 Ratio feat. Too $hort 12. DoubleBack

◇◇◇

※「近況注意報 1105 音楽篇(3)【3055】」へ続く













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