*** june typhoon tokyo ***

The night is still young...

Cocco@日本武道館

2017-07-14 23:59:59 | ライヴ

 ※ 一部ネタバレを含みますので、各自了承の上閲覧ください。

 強く儚くも輝いた20年の有終の美。

 2017年3月にデビュー20周年を迎えたCoccoのアニヴァーサリープロジェクト〈Cocco20〉の第3弾となる20周年記念ライヴ〈Cocco 20周年記念 Special Live at 日本武道館 2days ~二の巻〉に運よく誘われ、まだフライデーナイトの佇まいもない明るい夕刻のなか、足早に会場の日本武道館へ向かう。Coccoとしては2008年1月の〈Cocco きらきら Live Tour 2007/2008 ~Final at 日本武道館 2Days~〉以来9年ぶりの日本武道館とのこと。本公演〈二の巻〉は、近年~最新作『アダンバレエ』のツアーに帯同したミュージシャンを中心としたバンドメンバーを従えてのステージとなる。

 Coccoについては「強く儚い者たち」「音速パンチ」などの代表曲の一部しか知らず、彼女のライヴも初体験。当日の二日前には同公演〈一の巻〉が開催されたが、そちらの事前情報も入れずにほぼまっさらな状態でアリーナ席から見遣ることになった。ステージには所狭しと(20周年記念の祝いで贈られたと思われる)花束が飾られ、バンドメンバーの機材の一部にも花が添えられていた。
 定刻の18:30を6、7分過ぎたところで場内が暗転し、静かに眠る深淵を思わせる幻想的な深くも透明性の高い青色のライトがステージのメンバーをうっすらと照らし出すと、バンド演奏がスタート。神秘的ながらも決して冷温ではない不思議なサウンドで異空間へゆっくりといざなうと、左手からCoccoが登場。観客の万雷の拍手と“あっちゃん”“コウ”などの掛け声に迎えられながらセンターマイクの前へゆっくりと歩みを進める。一呼吸おいた後、ドラムスティックのカウントが響くと「焼け野が原」へ。Coccoの〈二の巻〉の宴が動き始めた。



 ステージは極めてシンプル。おおよそロック調の音鳴りで、観客の声援には自らが言葉を発するMC以外では絡むことはなく、楽曲を淡々と、しかしながら一曲ずつ丁寧に積み重ねていく。そして、非常に効果的だったのがライティング。地元・沖縄の海や空を想起させるような青や水色をベースにしながらも、曲ごとに独自性を持たせた演出に。「キラ星」では“Be my Mr.Moonlight”の詞に合わせてか中央高くに黄色のライト一つと街並みを模したような白いライトで“月夜”を表現したり、ヘヴィなギターとタイトなドラムが交差する激しい曲調では赤と青の強い色彩を持つ色と白色のストロボを絡ませた刺激的なヴィジュアルを構築するなど、さりげなくCoccoの詞世界を着飾っていた。しかも、それらは強烈な彩度や明度のライトではなく、どこか淡く優しい濃淡の光だったのも、Coccoの繊細さなどとリンクさせているのかとも思わせた。
 また、意外だったのが、それほど沖縄らしさが前面に出ていないこと。「絹ずれ ~島言葉~」や「ジュゴンの見える丘」などには沖縄色を感じたが、それ以外ではロックを基調にしつつ、メロディや詞世界でオリジナリティの濃度を高めているといった風。このマッチングも、もしかしたら沖縄出身という先入観を出来るだけ排除したなかでメッセージの強度を高めたいという思いもあるのかもしれない。

 さて、冒頭から青のロングドレスを身に付けていたCoccoだが、しばらくして花飾りを頭に冠し、アイボリーなスリップドレスを身に纏うと、細い腕や身体のラインがより強調され、一瞬そのか細さに気が取られてしまった。だが、バレリーナを志していたという彼女は、線が細いながらもその所作には美しさだけでなくしなやかさを帯びていた。そのしなやかさは、曇りや霞のない伸びやかで力感溢れるヴォーカルにも。一度外へ放出された自身の心の奥底に宿る情念が再び自身に憑依したかのような歌唱スタイルは、その思いの深さゆえか、一曲終わるごとにつく息は肩を揺らすほどの大きさ。また、歌っている最中にてらいなく手の甲で口元を拭う愛らしい仕草などは、彼女に本来ある“表現したい、伝えたい”と純真に思うけがれない“少女性”が今も心に宿していることの表われなのかもしれない。
 「BEAUTIFUL DAYS」のアウトロでステージアウトしたCoccoは、次の「blue bird」で波曲線のある白の裾の長いウェイヴィなドレスで再登場。羽衣を持った天女か天衣無縫な妖精かといわんばかりの姿で優雅に舞う姿も印象的だった。



 MCは二度ほど。ステージ中央にこれも花が飾り付けられていた譜面台が据えられて「Heaven's hell」に入ろうとすると、ギターを渡そうと構えるスタッフに対して「ギリギリまでギター渡すの待ってもらっていい? ギター重いから(笑)」と制してMCへ突入。デビューから20年が経ち、大人になって良かったと思えることについて、「小さいころ図書館で“大人へ上手くなる方法”の本を探していたけれど、知らない間に大人になっていたから」と語った後、周りの大人に“逃げるな”と言われてきた自身が「大事なのは生きることだから、逃げるなと言われても逃げていい。私が“逃げていい”って言ったことを思い出してもらいたい」と吐露。
 また、「Never ending journey」の直前には、この曲はリハーサルでどうしても上手く歌えず、バンドメンバーに八つ当たりしたことを白状した後に、どうして上手く歌えないのかを考えだしながら語り出す。「自分の歌にはそれこそ山をも動かすような力や自信があると思い込んでいたけれど、実際は力なんてなく、その無力さに絶望した」「(それなのに私の歌で何かをもらったと言ってくれるのは)受け取る側の力があったから。それに私は支えられてきた」「(物事を大切なものと気づくか、気づかないかは)発信する側でなく受け取る側次第。だから、誰かのためとか、何のためにとか背負うのではなく、だから、そう、ただ歌えばいいんだ、わかった」と集ったファンとともに自問しながら答えを導き出すような場面も。それらのメッセージにはこれまでの紆余曲折が言葉の節々からにじみ出る一方、その言葉にファンも共感し、涙する人も少なくなかった。



 ただ、正直なところ、MCは冗長なところもあり、メッセージの内容が重く感じてしまうことも(これも奇しくも彼女が言うように“受け取る側の問題”か)。とはいえ、誤解して欲しくないのは、それまで淡々と楽曲演奏をしてきただけでも、彼女が発する伝播力や浸透性には充分過ぎるほどの力が漲っているということ。彼女の生の声を聞くという意味ではMCもステージの重要な成分足ることに異論はないが、彼女が発する宇宙的とも言えそうなエネルギーは演奏中だけでもズシリと肌に脳に五感に伝わってくるゆえ、聴く側も受け止める体力を要するステージとも感じた。それはCoccoが表現者として楽曲に全身全霊を込めたことの証でもあり、前述のごとく“一曲終わるごとに肩を揺らすほどの大きな息をつく”というのもその顕われなのだろう。

 ラスト・タイトルとしてこれ以上相応しい曲名はないと言える「有終の美」の後半、日本武道館の“上空”には数多くの白い紙飛行機が舞い始めた。ゆらゆらとゆっくりと四方八方へと旋回しながら滑降していく姿を見上げると、それは紙飛行機ではなく、Cocco自筆の絵や言葉が描かれたハート型の紙片だったことに気づく。フロア一面に優しくファンの手元へと“着陸”していく姿を通してみたステージのCoccoは、微笑みに満ち実に晴れやか。さまざまなことをファンの声や支えとともに乗り越えて20年を迎えられた感謝の気持ちが、そのハートの紙片の動力となり、武道館に集ったファンの心へと届けられたようでもあった。

 表現者として時に不器用ながらも真摯に歩みを続けてきたという気概や自負、そして感謝の念がこのステージや空間を埋め尽くしていた二夜の宴は幕を閉じた。膝と腰を深く折り、頭を垂れた後、スタッフの肩を借りながらステージ袖から降りていったCoccoを見遣ってから周囲を見渡すと、観客の何とも言えない表情や吐息、声が耳目に注がれてきた。一種の“ランナーズハイ”のような高揚や恍惚の気配を感じながら、夏の夜の日本武道館を後にしたのだった。

◇◇◇

<SET LIST>
00 BAND INTRODUCTION
01 焼け野が原
02 ドロリーナ・ジルゼ
03 強く儚い者たち
04 遺書。
05 Raining
06 箱舟
07 キラ星
08 やわらかな傷跡
09 樹海の糸
~MC~
10 Heaven's hell
11 手の鳴るほうへ
12 オアシス(Original by Singer Songer)
13 カウントダウン
14 絹ずれ ~島言葉~
15 音速パンチ
16 BEAUTIFUL DAYS
17 BAND INTERLUDE
18 blue bird
~MC~
19 Never ending journey
20 ジュゴンの見える丘
21 有終の美

<MEMBER>
Cocco(vo,g)

椎野恭一(ds)
鹿島達也(b)
藤田顕(g)
粂絢哉(g)
渡辺シュンスケ(key)


◇◇◇

















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