*** june typhoon tokyo ***

Nao Yoshioka@代官山LOOP

■ Nao Yoshioka@代官山LOOP

Naoyoshioka_01




 アメリカン・ソウルの風。

 ソウル・シンガーの登竜門アポロシアターで開催される“アマチュアナイト”にて準優勝の経験もある日本人女性シンガー、Nao Yoshioka(ナオ・ヨシオカ)のフル・バンド・ワンマン・ライヴ〈Nao Yoshioka Live in Tokyo presented by SWEET SOUL RECORDS〉を観賞。ミュージックディレクター/ドラムの中村亮を中心に、ギターの田中Tak拓也、Lynと吉岡悠歩のツイン・コーラスなど、キーボード、ベース、ドラム、ギター、コーラス二人のバンド・セットで、代官山LOOPにニューヨーク・ソウルの薫風を吹かせた。

 小柄でショートヘア、愛嬌あるルックスのNao Yoshiokaは、16歳でCDデビューを目前とするも挫折。渡米し、2010年よりニューヨークに2年滞在するなかで、本場のソウルを体感し経験を重ねてきた。前述のアマチュアナイトでの準優勝、アメリカ最大級のゴスペル・フェスティヴァルでは4万人のなかからファイナリストに選出されるなど、アメリカでも認められて帰国。2012年に初のオリジナルとなる「Make the Change」を発表し、2013年11月に1stアルバム『The Light』をリリースする日本ソウル・シンガーの逸材だ。

 前述のアメリカでの実績からすれば、日本へ“凱旋”と見えるかもしれない。だが、アポロシアターで好成績を収めた日本人は過去にも少なからずいて、その全てが“通用”する訳ではない。渡米時にゴードン・チェンバース(80年代以降のR&Bシーンで活躍、アニタ・ベイカーやアッシャー、ブランディ、カール・トーマスらに楽曲提供したプロデューサー)に称賛されたというのも、単に歌唱力があるからではないだろう。それは、彼女がソウル・ミュージックを歌うに値する人間性を持っているからだ。

Naoyoshioka_00_2 それは処々に挟まれるMCにも表われていた。恋愛、将来、人生……さまざまなことに思い悩み、打ちひしがれ、時には絶望するほど潰れそうになる日々。それでも僅かな希望と決して絶えることなく心に灯され続ける夢への意志が彼女を奮い立たせる。そんな傷心や苦悩の経験が言葉や歌になって滲み出すからこそ、彼女の歌はソウル(魂)・ミュージックたるのだ。
 周りを見渡せば、ソウル・スタンダードをカヴァーしているシンガーは少なくないだろう。ただ、そういった楽曲を上手く歌えたところで、ソウル・シンガーとはいえない。ソウル、つまり“魂”に響く、胸を揺るがす歌唱があるかどうか。それが、一つの“ソウル・シンガー”としての認知だとすれば、Naoは充分にその資格を有している。

 この日は1stアルバム収録曲を中心に、「Think」(アレサ・フランクリン、最近ではGU(ジーユー)「Wear Freedom レギンスパンツ」CMソングとしても話題)や「Fever」などの60、70年代ソウル・ナンバーを披露してくれたが、どれも自らの人生経験や感情に重ねて、その思いを吐き出すように歌っているのがいい。そこにはサラッとした心地よさというよりも、彼女自身の身を削りながら絞り出すようなある種の“痛切”も見え隠れする。
 だが、それがオーディエンスの五感をゾワゾワとうごめかせる。人間性豊かな情感が伝わるから、オーディエンスはそれに共感し共鳴する。完璧ではない自分を愛そうと誓った「I'm Not Perfect」、自分から変わらなきゃという強い意志を叫んだ「Make the Change」、そして、アンコールラストで披露した、自らを照らし、求めてきた“光”について歌ったと思われるアルバム・タイトル曲「The Light」……彼女の喜怒哀楽が沁み込んだシンパシーを感じさせる楽曲ばかり。カヴァー曲にしても、彼女ならではの味をしっかりと纏ったオリジナリティに溢れている。それは、使いながらに良さや艶が出る漆器やヴィンテージの衣装のように、彼女でしか出せない色でもある。

 このような素晴らしい才能を埋もれさせてはいけない。とはいえ、巧みな歌唱力があるからといって、セールスに繋がるとは限らないのがこの業界だ。関西出身と思われる愛らしくクスッとするような微笑ましいMCもあるし、もう少しキャッチーなアッパー・ソウルなどがあれば、広く認知される可能性もあると思う。1stアルバムがリリースされる11月上旬まで約1ヵ月。多くのリスナーがアルバムを手に取って驚嘆する姿を想像しながら、その日を楽しみに待ちたいと思う。


◇◇◇


The Soul Exchange Tour 2013 US Debut Live




Make the Change (LIVE at TOKYO SOUL DRIVE)




◇◇◇
 

 この日は歌ももちろん良かったのですが、ミュージックディレクターの中村亮の演奏演出が長けていたように思いました。音数がそれほど多くなくても、しっかりとグルーヴを生み出す手腕は見事でした。

 

Naoyoshioka_thelight


 
 
 



NAO YOSHIOKA/The Light

01 Feeling Good
02 The Light
03 Spend My Life
04 At Last
05 A Change Is Gonna Come
06 Certifiable
07 I'm Not Perfect
08 Make the Change feat. Shirma Rouse(Album Ver.)
09 His Eye Is on the Sparrow
10 Make the Change(Original Ver.)【Bonus Tracks】
11 Ain’t No Mountain High Enough(Live)【Bonus Tracks】


「Feeling Good」…ニーナ・シモンの曲。
「At Last」…エタ・ジェームス。ビヨンセが映画『キャデラック・レコード』で歌った曲(映画の感想などはこちら)。
「A Change Is Gonna Come」…サム・クック。リーラ・ジェイムスも歌ってますね。
「His Eye Is on the Sparrow」…ゴスペルの名曲。ホイットニー・ヒューストンもカヴァー。
「Ain't No Mountain High Enough」…マーヴィン・ゲイとタミー・テレルのデュエットによる超アガる名曲!


発売日:2013年11月13日
発売元:SWEET SOUL RECORDS
 


 
 
 
 




 
 

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