全国地蜂連合会

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ヘボに関する佐賀達矢さんの論文

2016年12月04日 | ニュース
東京大学大学院でヘボを研究中の佐賀達矢さんがこの度ヘボの巣の乗っ取りについて考察した論文を
出版されたそうです。その概要について寄稿して下さいましたので以下に掲載いたします。



里山で巣を乗っ取り合うクロスズメバチ属2種を発見 ―伝統文化の勝利!―

中部日本の山間地ではクロスズメバチ属の蜂の子を採集し、飼育して食べる世界的に珍し い文化があります。佐賀らは、地元の蜂愛好家による「クロスズメバチの巣の下にはいくつも女王蜂の死体がある」との情報を元に調査を行い、世界でも珍しい社会寄生[注1]の実態を解明しました。

中部日本では、クロスズメバチは平野~低山地に、その近縁種のシダクロスズメバチは中 山地に生息し、両種は低山地で分布が重複します。両種ともに女王は初夏に一匹で巣を作 り始めます。

佐賀達矢は、蜂愛好家の金井實氏、東京大学の嶋田正和教授、岡田泰和助教らと協力し、両種の分布が重複する低山地の女王の中には、自ら巣を作らず、巣を乗っ取り合う[注2]個体がいることを明らかにしました(調査地は岐阜県下呂市萩原町、長野県諏訪郡富士見町)。スズメバチ類では、今回のような、2種の女王が互いに巣を奪い合う現象については、スズメバチ類では世界で初めての報告です。

カッコウの托卵やサムライアリの奴隷狩りで知られるように、異種の巣の乗っ取り行動で は、寄生者(搾取する側)と宿主(搾取される側)の優劣関係は一方的に決まっています。と ころが、クロスズメバチとシダクロスズメバチの間では、巣をめぐる闘争の優劣は決まっていません。この現象は、平野からはクロスズメバチ、中山地からはシダクロスズメバチの、そ れぞれの新女王がやって来て分布が重複する低山地で観察することができました。里山の伝統文化に支えられた本研究の結果は、19 世紀から続く巣の乗っ取り行動の進化と種分化に関する論争に重要な示唆を与えると考えられます。

なお、本研究は、武田科学振興財団、藤原ナチュラルヒストリー振興財団、長野県科学振 興財団、「夢応援」企画(有限会社 COME ON UP)の研究支援を受けて行われました。

用語解説;
[注1]社会寄生:寄生の一種。寄生者が宿主の体から直接栄養接触するのではなく、寄生 者が自身の生存と繁殖のために、他種あるいは同種の資源や労働力を搾取すること。
[注2]巣の乗っ取り:社会寄生の一種。本研究で取り上げた2種では、晩春に、女王が他の女王が作った巣へ侵入し、宿主の女王を殺し、その巣へ居座り、巣とその巣にい る子(働き蜂)の労働力を利用する。

詳細な記事がお読みになりたい場合には、http://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/news/topics/files/20161014topics.pdf
で記事(PDF)をダウンロードすることができます。




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