エウアンゲリオン

新約聖書研究は四福音書と使徒言行録が完了しました。
新たに、ショート・メッセージで信仰を育み励ましを具えます。

畑の宝と真珠商人の譬え

2017-03-20 | メッセージ
マタイ13:44-46

 
マタイ13章では、譬えが盛んに用いられて、天の国というテーマを説こうとします。マタイが、神の名をとなえることを避けたがっていたために、神と言ってよいところを天と呼び変えたことは周知の通りです。また、国という語も、支配と訳して然るべき内容であるために、「天の国」は「神の支配」と理解してよいことも、よく知られています。
 
そもそもどうして譬えを用いるか、そんなこともここには記されています。その中で、ここまでにすでに種蒔きの譬えと毒麦の喩えが置かれ、さらにこれらにはイエス自身の解説まで付いています。また、からし種とパン種の譬えもあり、これには解説がないように見えて、実はよく見るとちゃんと意味が説明されていることが見て取れます。いずれも、「種」が主役であり、それを蒔いたり含めたりする神の行為を示す点で一つの流れを作っています。
 
そこへ今回、種とは違うコンセプトで、同じように天の国が譬えられることとなりました。何かしら、すでにそこにあった価値あるものをやや偶然めいて発見するという場面が想定された譬えです。これら宝や真珠は、行為者が蒔いたり作ったりしたものではなく、自分とは別のところにあったものです。自分が関与しないところから与えられたものです。この前までは、イエスが種を蒔いているような印象を与えていましたが、ここでは聞いた者や弟子たちの生き方が示されているように読むことができるかもしれません。
 
畑は、聖書で時に私たち人間世界のことを表します。譬えというのは当時の人々に、理論的なことでなく日常的な等身大の事柄を示して理解させる手段でありましたから、先の良い地に落ちた種云々の喩えを聞いた者は、畑が自分たちの世の中なのだということは容易に想像できたことでしょう。奇妙なことに、この発見者は、見つけた宝を盗んだりせず、わざわざ埋め戻した上で、全財産をはたいて土地を購入します。それは小作人だったのだろう、などと理解する人もいますが、なんでわざわざ、と思います。真珠の場合は盗めませんが、やはり持ち物をすっかり売り払って、それを買っています。
 
この2つの違いを説く説教もありますが、並べられているということは、基本的に、同じことを別様に語っていると理解するほうが自然です。教師が生徒に教えるとき、微妙な違いでこのような喩えを並べることはありません。2つの譬えは、どちらも、「持ち物をすっかり売り払って」「買う」のです。正規な買い取りをするのです。私は思います。イエスは、罪により死を定められた人間を、その絶大な犠牲を払うことで、代価を支払い、買い取ったのではありませんか。贖ったとも言います。
 
人間は畑でした。ならばなおさら、この土地購入者や真珠商人は私たち人間に当てはめられているのではないでしょう。これはイエスです。イエスは、人間の中に、宝や真珠を見出すのです。そんなもの、どこにありましょう。土くれに過ぎないではありませんか。しかも、罪にまみれた。しかし土の器の中に宝を受けていると言ったパウロを思い起こします。また、あなたは高価で貴いと告げた預言の言葉も浮かんできます。イエスがこれを見出すと、すべてを捨てて買い戻したというのは、至って普通の私たちの知る救いの恵みではありませんか。
 
だから、天の国は「次のように譬えられる」との意訳は、原典が、たとえば「探している商人に似ている」というのが、つながりが悪いからという理由で日本語らしく改変されているのですが、私はそれは不要だと考えました。まさに、神が支配するというのは、イエスの救いを受け止めた魂を、人間世界の中から探している商人のやっていることそのものなのである、と思うからです。
 
続いて、魚を全部集めてから選り分けるという、毒麦にも似た喩えが語られます。ここまでずっと、一連の喩えで、行為している人は、神の側の者で筋が通っています。畑の宝と真珠だけが、私たち人間が宝を求めなさいというふうに方向を換えるのは不自然なことです。全部、神が支配している姿を示しているに違いありません。
 
この神の働きを学んだならば、旧約の中にも神の愛を覚えることができるし、新しいイエスの教えもそれに適ったもの、むしろそれを具現したものであることが分かるではないか、と話したのが、イエスが最後に弟子たちに尋ねた意味だった、としてはどうでしょう。そして、そのような神の支配を素直に受け容れられないものが、故郷にはあったというのです。この予告は、12章の終わりからすでに投げかけられていました。イエスはこの神の支配のスタイルを明らかにした上で、もうしばらく癒しや教えを各地に施して、エルサレムに向かうことになるのです。
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