日本人の起源

遺伝子・言語・考古・歴史・民族学などの既存研究成果を統合し、学際的に日本人と日本語の成り立ちを解き明かす

4.日本人のミトコンドリアDNAHg、日本人は北ルート系モンゴロイド

2015年03月16日 | 本論2-日本人のルーツを探る(人類学)
ミトコンドリアDNA
 ミトコンドリアDNAは多様性が高く一つずつ紹介できないので、下図で示す。日本人のミトコンドリアDNAは周辺の諸民族と連続性を示す傾向が強い。図2-20、図2-21をみてわかることは、周辺諸族とのトコンドリアDNAの頻度差が少ないことである。 Y染色体Hgの頻度が日本、韓国、中国北部で全く異なるのに対し、ミトコンドリアDNAはほとんど差がない。これは男性の方が淘汰圧が高く、子孫を残せる個体に大きな偏りがあるからであろう。例えば、チンギスハーンのY染色体Hgは中央アジアの1600万人に受け継がれているというし、清朝を打ち立てた太祖ヌルハチの祖父の子孫は160万人に及び、中国東北部の少数民族に多いHgは太祖一族に由来するとされる(篠田2007)。大陸部では、一握りの優位な男性が膨大な子孫を残すという歴史が繰り返されてきたと推定される。
 なおハプログループN7aやN9bは沖縄やアイヌなど日本列島両端部で比較的高く、「縄文系」要素と認められる。

図2-18(篠田2009)


図2-19(http://www.scs.illinois.edu/~mcdonald/WorldHaplogroupsMaps.pdf)


図2-20、図2-21(篠田2009)

日本人は北ルート系モンゴロイド
 以上、日本人のY染色体、ミトコンドリアDNAハプログループはともに出アフリカ後北ルートをとったモンゴロイド系が100%であることを確認しておきたい。少なくともハプログループの面からは南ルートをとったオーストラロイド系の北上は確認できない(崎谷2009a,崎谷2009b)。また明治以降の混血を除き、西ルート系コーカソイド要素も数字には表れていない。ただし有史以降の渡来人の中には西ルート系の血を引く集団がごく少数混在していた可能性は否定できないことは後述する。

図2-22

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<文献>
・崎谷満(2009a)『新日本人の起源』勉誠出版
・崎谷満(2009b)『DNA・考古・言語の学際研究が示す新・日本列島史』勉誠出版
・篠田謙一(2007)『日本人になった祖先たち』NHK出版,PP199-200