祝 卒業

2010-02-27 14:52:43 | Weblog
今日は下の娘の高校の卒業式
少し肌寒い日でしたがお天気も良くいい卒業式日和になりました
娘が社会に巣立つには後もう一年(予定) それで親としての役目は一応終わりになるでしょう
しかしあの男子生徒達の髪型が皆殆んど同じなのにはビツクリ・・・・例えて言ういしだ壱成みたいな 私らの時代はリーゼントにパンチパーマ、アイパーにスキンヘッドそしてモヒカン・・・・といろいろと個性にあふれていたのにね なんか俺は硬派みたいな奴まったくおらんかったもね はっきしいっておもろなかったわ

いや~ここ数日天気が良くて雪が日に日に少なくなってきてるね っていっても渓流シーズンにはまだまだですけどね
シーズンまでには少し毛鉤でも巻いておかなくちゃね 昨年のFFでの岩魚45は感動しました またあの感動をもう一度ってやつです あっそれとテンカラにもチャレンジしたいなぁ

やばい卒業式の話から飛んじまったわ んじゃこのへんで

今日の暇つぶし5

2010-02-09 22:06:38 | Weblog
約束の谿 その三


煙草の火を消し吸殻を携帯の吸殻入れに入れる 先程まで吹いていた風は止み聞こえる音は水の流れる音だけ

「出た!」「えっ?」「先輩、奴がネグラから出てきましたよ」
私は少し腰を上げ淵の中に沈んでいる倒木の辺りを覗き込んだ
確かに水の流れの中にうごめく生き物が確認できる 大きさは尺三寸程か、間違いなく大岩魚だった
派手なライズは無いがス~ッと浮上しては何かを捕食しているようだ

Kはロッドを手にすると淵の方へ歩き出した 淵の手前にある1.5メートルほどの大岩を背にし少し中腰になりロッドを振り始めた
ほう、これは”石化け”(石に化けて気配を絶つという秘技)と言うやつだな 透明度の高い流れでは岩魚に釣り人の存在を知られないように細心の注意が必要だ、それも大岩魚ならなおさらだ
Kの振り出すラインは美しいループを描いている 私は短期間でのKの上達振りに驚いていた あのおおざっぱな性格のKの変わり様 それだけKにとってあやの存在は大きかったのだろう
私はそんなあやという女性に生前に会ってみたかったなと思った


Kは数回ロッドを振ると岩魚の1メートル程前にフライを流れに乗せた そして上手く流れに乗り岩魚の定着している方へ流れていった
フライが岩魚の横を流れ過ぎようとした瞬間に岩魚は少し横に揺れ動いたように見えたが岩魚はフライを追う事は無かった
そして2度目、岩魚の動きは先程より大きかったが同じ結果に終わる
私はKに近付きフライをニンフに変えたらどうかと提案してみた するとKは「このフライはあやが巻いたものなんです どうしてもこれで釣りたいのでこれで駄目なら諦めます」
「そうか、そういうことなら仕方が無い しかしチャンスはあとワンキャストだけだと思う 慎重にな」と私が言うとKは「OK牧場!」と笑って頷いた 返す言葉は前のまま変わってはいなかった

Kはフライの水気を取ると再度浮力材を染み込ませそしてキャストする
しかしフライは岩魚の定着位置のすぐ真上に落ちてしまった 失敗だ! そう思った瞬間岩魚は反転し流れに乗りながらフライ目掛けて浮上した
そして岩魚釣ではあまり見る事が出来ないような豪快なライズとともにフライを捕食した

きっと二度のキャストで岩魚は食い気が出て、更に三度目岩魚の真上にいきなり落とした事で岩魚にフライを見切られるのを防いだのだろう
昔、岩魚職漁師はテンカラで毛鉤を流すのは五十cmほどだったと言う


「掛かった!」と水の流れる音を掻き消すほどのKの叫び声が谿の中に響き渡る
「よし!やったな 絶対釣り上げろよ」と言い私はKに駆け寄ると背中に吊るしてあったネットを手にした
Kのロッドは折れんばかりにグニャリと曲がっている 岩魚は倒木の方へと逃げ込もうとラインを引く
「K耐えろ 倒木の方へは絶対に行かせるな!」と私が叫ぶとKはまた「OK牧場!」と言った

Kのロッドの捌き方は見事なものだった 最初は大暴れしていた大岩魚はしだいに弱まりそしてついに私の差し出すネットに収まったのである

「デカイ!」 最初はあっても尺三寸かなと思っていたが実際は四十をゆうに超えていそうだ あやの言う通り岩魚は優しい顔をしておりまさに雌の岩魚に違いなかった

Kは写真を三枚ほど撮り終えるとすぐにもといた淵へと岩魚を放す 岩魚はゆっくりと倒木の方へと泳いでいった

「やったな」と声をかけるとKは「はい」と岩魚を見送りながら答えた。岩魚が姿を消した後も何を想っているのだろう、Kは淵を見つめたままその場を離れようとはしなかった



その後Kは一週間の休暇をとった あやとの最後の約束を果たす為だ

数日後のKからのメールには幅広の虹鱒やルビーの宝石を鏤めた美しいオショロコマなどが添付されていた
メールの最後に書かれていたのは
『僕とあやの釣り旅はもう終わろうとしています そして僕の渓流釣りもこれで終わりです。先輩との初釣りでの岩魚は今でも心に残る思い出です そしてあやとの出会い・・・』
『明日の最終日は天塩川です 運良くイトウに出会えれば嬉しいのですが』

Kはこの旅で本当に釣りを止めてしまうのだろうか まぁ本人が決意した事なので私がどうのこうの言う事ではないがFFがあれ程上達したのに残念ならない。



それから十数年の時が経ちKは現在釣りを止めているのか・・・  答えはNOだ

Kは私にメールをくれたその夜に夢を見たと言う

 

その夜はとても星がきれいでKは晩くまで焚き火に当たり星を眺めていたがやはりここ数日の疲れかそのうち寝入ってしまった
そして夢の中にあやが現れこう言った
「Kくん、約束ありがとう 私、ずうっとKくんの釣り見ていたよ 前よりも上手くなって私も嬉しいな。でも残念・・・Kくんが釣りを止めちゃうなんて 私はそんなの嬉しくはないよ
だって私、Kくんの釣りをしている姿見ているのが好きだったから だからお願い止めないで・・・」

目が覚めると焚き火は既に燃え尽き消えていた 

手のひらの中にはあやの巻いたフライが握られていた・・・




こんな結末で勘弁です    

今日の暇つぶし4

2010-02-04 09:27:58 | Weblog
約束の谿 その二


ベストの胸ポケットから一枚の写真を出し私に見せた そしてこのS川に私を誘った訳を話し始めたのである。
Kの口から出た最初の言葉は「ここで出会ったんですよ・・・彼女、あやに・・・」 



「先輩を前にS川への釣行に誘った時あったでしょう、でもその時先輩はお子さんの具合が悪くてこられなかった時です 僕あの日どうしてもここへ来たくてこっそり一人出来てしまったんです 先輩が見つけた渓なので悪くて今まで言えませんでした
最初のうち岩魚は飽きない程度に釣れました そして水がとても透明で綺麗だし渓相も本当に素晴らしい所だと思いました。



ところが途中からぱったりと岩魚が顔を見せなくなったんです おかしいなと思いつつも遡行を続けると先行者がいたのです、ちょうどここです この淵で竿を振っていました。
今日の釣果にも満足していたしここで終わりでも良いと思っていましたので僕は少し下流で岩に腰掛けて”彼”の様子を眺めていました
その姿がなんと言うか、うまくこの美しい渓相に溶け込んで雑誌の中の写真を見ているような・・・上手く言えませんが本当にその姿に見惚れてしまったのです。
すぐに上流へ上がって行くのだろうと思っていましたが、この淵から移動しようとしませんでした そのうち僕はその姿に何か違和感を覚えました
僕はその違和感を確かめる為に立ち上がり”彼”の方へと歩き始めました 3メートルの所まで近づきありきたりの言葉で「釣れますか?」と声をかけました
すると私の存在に全く気が付いていなかった”彼”は「キャッ!」と叫び少し飛び跳ねてこちらを向きました そう”彼”ではなくて”彼女”だったのです、そしてこの人があやです。
髪はショートでバンダナを巻き、顔は小麦色に焼け背丈は女性にしては高めで僕より少し低い位
話を聞くとここへは何度も来ていて、前にこの淵の大岩魚がフライに出てきたのを目撃してからこの淵の大岩魚への挑戦が始まったそうです 幾度と無くフライには出てくるのですが口を全く使おうとしなかったみたいです。「私の巻いたフライが下手だからかなぁ」と微笑む口元の笑窪が魅力的でした。

それから少しだけ二人で釣り上がりました でも僕は竿を出さずにずっと彼女の釣りをするのを眺めていました なんとなくその時餌竿を出すのが恥ずかしく思えたのです。
彼女と別れて帰宅すると僕はFFについて勉強しました 先輩に聞きたい事は沢山ありましたが、なんだか恥ずかしいと言うか内緒でS川に行ってしまった事もあり言い出せませんでした。
また彼女に会いたい 僕は買い揃えたばかりのFFの道具を車に積むと毎週のようにS川に通いました そして数週間後彼女に再会する事が出来た時僕は彼女にFFを教えて貰いたいと頼みました 少し戸惑いの表情を見せましたが彼女は了解してくれたのです
ロッドの持ち方や振り方、そしてフライの流し方など分からない事は何でも聞きました 彼女は嫌な顔1つ見せずに笑顔で教えてくれました そしてあっという間に岩魚を釣り上げる事に成功、本当に感動しましたよ 彼女も手を叩いで喜んでくれたのを覚えています。



その時大げさかもしれませんが、生きていて良かった、生きていればこんな楽しい時間もあるのだと冗談ではなくて本気でそう思いましたから」
「それから何度かこの渓で彼女に会い、そして彼女を「あや」と呼べる仲、そう僕らは付き合う事になりました 二人でいろんな渓に釣りに行きました あやに教えて貰いながら僕も一端のフライマンになっちゃいましたよ」とKは照れくさそうに言った。

Kの話はこれからが本題だった 私をこのS川に誘った本当の理由が明らかになるのである

そんな中あやは体調を崩し病院へ行った そしてある病気にかかっていてこの時余命3ヶ月と診断された 勿論、あや本人とKはその事を知らされてはいなかった
Kは仕事を終えると毎日のようにあやのいる病院へ通った しかし日に日にやせおとろえいくあやの姿を見てるうちに何かを感じ取っていた それはあや本人も同じだったのかもしれない
もう一人では起きられなくなるほど病状の進んだあやはKに「ねぇKくん、わたしもう釣りには行けないかもしれない だからあのS川の淵の大岩魚をKくんに釣ってもらいたいな」と言った(Kとあやは何度かS川に来ているがこの淵ではKは竿を出す事はなかった あやにこの淵の大岩魚を釣り上げて貰いたかったからであった
しかしその大岩魚は何度か姿を現すも全く口を使う事は無く、あやは釣り上げる事は出来てはいなかった)
「そんな事は無いさすぐに良くなるよ もう桜も咲き始めているしもうすぐ渓流釣のシーズンだよ 早く病気を直してまた二人でS川に行こうぜ」とKが言うと「うん、そうなると良いな・・・でもきっとあの岩魚はメスなのかも だから私には釣れないじゃない?Kくんなら男前だからきっと釣れると思う だって私もKくんに釣られちゃったじゃない」とあやはにっこり笑った 更にあやは
「お願いKくん、あの大岩魚釣って見せて、写真だけでいいの それを見たらわたし元気になりそう前よりももっともっと そして元気になったら二人でまた釣りに行こう そうだ、北海道一周釣り歩きなんていうのはどうかしら テントを張ってね」
「よし!わかった俺があの大岩魚を釣って写真に収めてくるよ あと二週間もしたら岩魚達も元気に餌を追う事だろうし そしてあやが元気になったら北海道一周釣り歩きな 十勝川のパワフルな虹鱒、それと知床半島のオショロコマも釣ってみたいなぁ」とKが言うとあやは「楽しみだわ、約束だよ」と言って小指を出した 「ああ約束だ」と言うとKも小指を出しあやの小指に絡めた。


しかしそれから十日後あやは永遠の眠りへ就いた



「僕はそれから何度もこのS川に通いました、そしてこの淵の大岩魚はある時間帯だけ餌を捕食する事を知ったのです だから奴を釣り上げる事が出来るのはこの時間帯だけなんです」
「先輩を誘ったのは僕の決心が揺らがないように先輩に証人になって欲しかったからです」 「決心って?」 「もし今日、この淵の大岩魚を釣り上げて写真に収める事が出来、あやとの約束が果たせたなら僕は釣りを止めようと思います あやとの渓歩きは本当に楽しく幸せで僕にとっては忘れる事の出来ない大切な日々でした」
「でもあやがいなくなった今僕にとって釣りは意味のないものになってしまったんじゃないかと それならいっそのこと釣りを止めようと思いました そんな考えっておかしいでしょうか」
「いや、君がそう決意したらそれで良いじゃないか よし見事大岩魚を釣ってみろ、私がちゃんと見ていてやるから、もしその後釣りをしている事を知ったらその竿を私がへし折ってやるからな」と私が言うとKは「はい」と言ってコクリとうなずいた。



そしていよいよその時間帯だ はたして淵の大岩魚は流れる水生昆虫を追い姿を現すのだろうか
Kはこの日の為に巻いたであろうアント系のドライフライをティペットに結んだ


つづく・・・かな