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映画でシミュレーションしておけば何処かで役立つはず

アメリカン・ギャングスター

2008年02月06日 21時34分29秒 | 映画 あ行
評価★★★★★



脇役たちが主役に向かって言う名台詞に要注目!


確固たるポリシーを貫き通すふたりは対極に位置する。

1960年代末、自分のボス亡き後、一匹狼となったフランクは
独自の基本理念でビジネス起業家として頭角を現す。

ベトナム戦争の軍用機を利用した麻薬の密輸に成功する。
バイヤーを省きコストをかけずに安くて品質の優秀な商品を作る。

マフィアが100年かけても出来なかった仕組みを
僅か2年たらずで達成させてしまうフランクの行動力と
頭の良さは尊敬に値する。

巨万の富を得たフランクはミス・プエルトリコの冠を持つエヴァとも知り合い
田舎に居る兄弟や実母をニューヨークに呼び寄せ新居を与える。
家族をとても大事にする男である。

裏の世界では、マフィアからも一目置かれる座に登りつめる。


フランクは長男であり兄弟たちは
兄が何を売って仕事をしているのかをまだ知らない。

彼らは初めてニューヨークに上京してきたその日に
カフェで取った兄の行動に衝撃を受ける。

フランクがクールでカッコいい!
兄から仕事をもらいそれぞれクリーニング店、自動車修理店などを任される。

それは、麻薬を売るための表向きの商売であった。



一方、ニュージャージーで働く刑事のリッチーは
警官の汚職は当たり前だったこの時代に潔癖な仕事を貫いていたため
周囲から疎まれ孤立していた。

極めつけは、捜査中に偶然発見した無印の100万ドルを
相棒の制止にも耳を貸さず全額警察に届けたのである。
しかも、署内でこれ見よがしに
裸の金を数える行為に所長から注意されるほどだ。

リッチーもいずれは腐敗しきった警察を辞めて弁護士になろうと
司法試験のための勉強をしている男でもあった。


超堅物ともいえるこの男は
潔癖なまでに自分の仕事に誇りを持っていた。

しかし、

私生活では子供の親権をめぐって妻との間で裁判で争っている。
依頼弁護士(女性)とも関係を持っているし

結構だらしない部分が強調されている。
こんなので子供は渡せませんよ!誰が見てもそう言うでしょう^^


いいねえ~!
それぞれの人物像をこれだけしっかりと説明してくれると
ふたりのどちらにも感情移入できてしまいます。

このふたり共に実在の人物です。

本作は『伝説の麻薬王・フランク』としてのストーリーと
腐敗した警察のなかで唯一まともな警察として仕事をする
『刑事リッチー・ロバーツ』のストーリーが並行する。

リッチーは仕事ぶりが認められ
検察官からエセックス郡麻薬捜査班のチーフに抜擢される。

さて、
いよいよふたりの共通するテーマに入ってきましたよ。


街では麻薬の“ブルーマジック”が蔓延し
ヤク中はもちろん死者が続出し始め(相棒の死が引き金となり)
リッチーらは
売人ではなく大元から一気に叩き潰そうと捜査を始める。

捜査を重ねても一向に捜査線上に浮上しないフランクという男は
目立たない慎重な生活をすることが捕まらない秘訣としていた。

ところが事態は思わぬ方向へと動く事となる

1971年3月、マディソン・スクエア・ガーデンで行われる
ヘビー級ボクシングのタイトルマッチで
モハメッド・アリ対ジョー・フレージャーの試合で盛り上がっている
(カシアス・クレイではなかったね^^)

この試合に集まってくるマフィアのボスなどをリサーチしようと
リッチーらは会場内に目を凝らすが、そこはいつものメンバーだけだった。

だが、よく見るとお馴染みのマフィアのボスよりも前の席に座って
高級コートに身を包みジョー・ルイスとも談笑しているひとりの男に注目し
写真に収める。

ここでやっとふたりを結ぶ接点となります。

愛する恋人エヴァからの贈り物である5万ドルの毛皮のコートが
こんな形で仇になるとは・・・。

母親も薄々感づいていました。
なにかよくないことをしているのではないかと

「アナタは長男よ。
弟たちはアナタを尊敬している
長男がすることを真似しようとする
なのでアナタは
責任ある行動を取らないといけないのよ!」

<こんな感じじゃなかったかな>

ここまでに1時間30分が費やされますが、観ている者にとっては
決して長くは感じません。

ここから一気に捜査線上に名前が上がり始めます。


ニューヨーク市警の特別捜査班の悪徳刑事トルーポを演じた
ジョシュ・ブローリンが主役のふたりを喰うほどの存在感を見せます。
いつも3人の部下を従え咥えタバコで民間人から金をせびり取り
見た目の濃いキャラから可也のインパクトが残る俳優さんです。



一見すると昔のバート・レイノルズかニック・ノリティか^^

このアクの強い悪徳刑事が本編のスパイスとなって
とてもいい味を盛り込んでくれています。
次回公開作品として
『ノーカントリー』(トミー・リー・ジョーンズ主演)が控えています。
そういえば『プラネット・テラーinグラインドハウス』にも出ていました。
そのときは医者役で口にいつも体温計を咥えていたあのひとです。


フランクとリッチーが直接相対するシーンはラスト前の僅かな時間だけ
教会でリッチーに逮捕されたフランクは
取調室にて初めてリッチーという男を知る。

ここでの談笑ともとれる事情聴衆がすばらしい!
台詞の一語一句が核心を突いていて脚本の良さが伺える。

「100万ドルをそっくり署に届けたそうだが
次も同じことをするのかが問題だ!」

<確かに!>

そういえば、裁判所でも対立する妻に毒突かれて言われていましたね。

「今回、そんなりっぱなことをしたということは
他にやましい事があるからよ!」

「いいことをしたからって天国にいけるとは限らないのよ!」

返す言葉が見つからなかったリッチーは黙り込んでしまったしな~



フランクはリッチーの持つ芯の強さに惚れ
自分とかかわった全ての人物、法人、医者、弁護士、警察など
リッチーに暴露するのだった。

ここでのホワイトボード前に立ち人物相関図を書き説明するフランクと
それを座りながら説明を受けるリッチーの光景が
なんとも先生と生徒みたいで微笑ましい。

シーンは切り替わり
バックミュージックに乗り、次々と逮捕されていく
汚職した面々たちを見るのが実に爽快だった!^^

前出での汚職警官トルーポも
例に漏れず逮捕されると思いきや・・・


メイドが掛ける掃除機の部屋から庭で椅子に座っている背中のトルーポを映す。
押し迫った自分への逮捕に意を決して取った行動とは・・・

カメラは無情にも何も気付かないで掃除機を掛け続けるメイドを撮る。


フランクは70年の刑が捜査協力をしたという理由で
15年の服役で済んだ。

出所するシーンでは思わずこうも違うのか!?
ヨレヨレの安物のジャケットに身を包み白髪まじりのフランクには
かつての栄光が遠い昔のように感じた。ショックだった。

全財産失って妻も母も兄弟も居なくなったよ。

でも、フランクの顔からは僅かな笑みを感じたんだが・・・
次のビジネスへの構想でもあるかのように
フランクなら出来る!

文無しから巨万の富へと
ウィル・スミスもやったじゃないか!(爆)


いい映画だった!
『ゴッドファーザー』にも匹敵するくらいの重厚な印象が伝わってくる。

157分(2時間37分)がまったく長く感じなかったのが凄いよ。


エンドロールのあとにオマケ映像があったようですが
見逃してしまいました。
どんな映像だったんでしょうか?


◇-----------------◆

<僕らの失敗>フランク・ルーカス
恋人のわがままを聞いたばっかりに崩壊へと向かってしまった。
当時のレートで換算して約1500万円の毛皮のコートは高くついたね。


<僕の想定外>
プロのスカウトも認める甥が野球をやめてしまい
自分と同じ道を選んだ!
これには複雑な心境でしたね。
優秀な才能を捨てて悪の道を選ばせたのは自分のせいだったのか。


ベトナム戦争が終わるって!?米軍の撤退?
それでは密輸ルートがなくなっちゃうぞ!
最後に今までの20倍の2000キロを送ってくれ!(2トンだと)
(焦っているフランクは信じられない量を要求する)
死人の棺桶に入りきるか?とか^^

---------------------------------------------------------

監督;リドリー・スコット
脚本:スティーヴン・ザイリアン
撮影:ハリス・サヴィデス
音楽:マルク・ストライテンフェルト


出演:デンゼル・ワシントン/ラッセル・クロウ/キウェテル・イジョフォー/キューバ・グッディング・Jr/ジョシュ・ブローリン


『アメリカン・ギャングスター』



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6 コメント

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☆うお!☆ (TiM3)
2008-02-06 23:55:55
レビューの筆が「走って」ますねー。

マイケル・マン監督みたいな路線かな~と思ってましたが、
もっと助演陣の言動や存在感に力を注いでる気がしますね。

うーん、、しかしリドスコっぽいか? と言うとそう言うカラーでもなさそうな(・ω・)
返信する
映画のタイトル名だけだと (ituka)
2008-02-08 02:09:12
鑑賞前に思ったのはB級の匂いがプンプンしていたんですよ~


ワタクシもマン監督の『ヒート』のようなハードボイルド系なのかなみたいな^^

スコセッシを意識していたリドリーだったかも知れません
どちらかというとスコセッシのようなシットリとした映像とは違い、割りと乾いた印象でしたね。

リドリー自身が新分野の開拓という意味では大成功した映画だったと感じました。

「オレを殺したいだと?じゃあ列に並べよ!」
この台詞は本編で2回出てきます。

トルーポがフランクに向かって
リッチーがフランクに向かって

どちらも粋な言い回しでカッコよかったですよ^^
返信する
警察の腐敗が すさまじい (zebra)
2013-02-05 19:07:59
フランク・ルーカス vs リッチー・ロバーツの戦いが見ものでしたが

、この60年代のアメリカではこういう汚職警官がゴロゴロいたのが印象に残ってました。 こんな警察では市民が 何を信じていいかわからなくなりますよ~

 あと、リッチーの奥さんが「浮気されて どれだけ傷ついたか・・・まだ、他の警官のようにワイロをもらってたほうがよかったわよ!みんなもらってるじゃない!」 

リッチーの信念に真っ向から否定するセリフ・・・ 

アメリカ社会の闇が根深かったか(おそらく今も根深いはずです) 知るきっかけになった作品です。

 映画の冒頭で心臓発作で倒れたフランクの前のボスの エルスワース"バンピー"ジョンソンは '97年に日本未公開の「奴らに深き眠りを」で マトリックスのモーフィアス役の ローレンス・フィッシュバーンが演じていました。
 フランクの一世代前の ボスのストーリーと あわせて見てみるのも 面白いと思います
返信する
zebraさんへ (ituka)
2013-02-05 21:53:06
こんばんは。
この時代の警察の腐敗は底なしでしたね。
まじめに仕事してる権力者なんていないんじゃないかと思います。
終盤での次々と逮捕されていくお役人たちに目が点でした。
でも、ここは爽快感ありましたよね。

>'97年に日本未公開の「奴らに深き眠りを」

へ~、そうなんですか。
これは機会があればチェックしたいです。
本作とセット鑑賞がいいかもしれませんね^^
返信する
汚れた手でつかんだ、美しき人生。 人生を賭けてつかんだ、美しき正義。 (zebra)
2013-02-09 21:35:39
返信コメント ありがとうございます。

>裏の世界では、マフィアからも一目置かれる座に登りつめる。
黒人ボスでありながらカリスマがすごかったのでしょうね。
この時代のニューヨークは 5大ファミリーが 幅を利かせてましたから。
 過小評価するワケでは ありませんがリッチーが追ったターゲットがフランクではなく 5大ファミリーのボスだったら殺されてたかもしれません。
 
特に組織を飛躍的に大きくしたガンビーノ一家のカルロ・ガンビーノ
カルロと並んで組織全体を掌握し、ユダヤ人でありながら誰からもボス中のボスといわれたマイヤー・ランスキー

この二人はマフィアをアメリカンビジネス風に構築したルチアーノと同じ時代にしのぎを削ってます。まず、この二人から にらまれたら いくらリッチーといえども消されてたと。
>ベトナム戦争の軍用機を利用した麻薬の密輸に成功する。
バイヤーを省きコストをかけずに安くて品質の優秀な商品を作る。
マフィアが100年かけても出来なかった仕組みを
僅か2年たらずで達成させてしまうフランクの行動力と
頭の良さは尊敬に値する。
 まさに "汚れた手でつかんだ美しき人生"
>リッチーもいずれは腐敗しきった警察を辞めて弁護士になろうと
司法試験のための勉強をしている男でもあった。
超堅物ともいえるこの男は
潔癖なまでに自分の仕事に誇りを持っていた。
だからこそ彼は"人生を賭けてつかんだ美しき人生"を貫けたんです。
>フランクはリッチーの持つ芯の強さに惚れ
自分とかかわった全ての人物、法人、医者、弁護士、警察など
リッチーに暴露するのだった。

ここでのホワイトボード前に立ち人物相関図を書き説明するフランクと
それを座りながら説明を受けるリッチーの光景が
なんとも先生と生徒みたいで微笑ましい。

シーンは切り替わり
バックミュージックに乗り、次々と逮捕されていく
汚職した面々たちを見るのが実に爽快だった!^^
 フランクに関しては "美しき人生を捨てたかわりに 暴いた汚職つぶしの意地"でしょうか^^

 このときのフランク
「どんな情報が ほしいんだ イタリア系?アイルランド系?ユダヤ系?」
 リッチー「それ"も" いただこう」・・・"も"・・?
お仲間だろ?  仲間じゃない!ワイロをもらっていい気になってた連中は 警察官の仲間じゃない。

 リッチーは人種関係なしで犯罪ボスを許さないだけじゃなく  ワイロをもらって警察の情報を犯罪組織に流してた クズ警察官も 許さなかったか。 だから"美しき"警察官なんだな。
返信する
zebraさんへ (ituka)
2013-02-10 01:07:24
もういちど再鑑賞したい作品です。
フランクの一代叙事詩となる壮大な物語のなかにアメリカの歴史を感じます。

ふと思ったのが、リッチー役のラッセル・クロウは後に公開されることとなった『レ・ミゼラブル』の警察役を
この時点から予知してた感じでしょうか^^
返信する

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