(み)生活

ネットで調べてもいまいち自分にフィットしないあんなこと、こんなこと
浅く広く掘っていったらいろいろ出てきました

ep第36話【架空の話】49巻以降の話、想像してみた【勝手な話】

2016-05-17 11:58:52 | ガラスの・・・Fiction
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「緊張します・・・」
会場脇で記者会見を待つマヤはドキドキを抑えられずにいた」
「そうだね、マヤちゃんはなんていっても今日二本立てだもんね」
ともに会見に臨む是永、そして主演男優賞を受賞した境でさえ、余裕の表情だ。
「でもさ、後半の記者会見には速水社長も同席してくれるんでしょう。」
安心じゃない、と言われたマヤ、確かに1人よりはずっと気が楽なのだが・・・
「昨日の姫川亜弓の記者会見は見たの?」
「ええ、録画してもらったものを・・・」
あんなに堂々と受け答えできない!
かえってプレッシャーになりました、と顔を両手で覆うしぐさがかわいらしい。
「ま、気にせず本当のことを言えばいいよ」
それより見て・・・とうっすら開けたドアの隙間から会見場を覗かせる。
「あの金屏風、まるで婚約会見みたいだよね」
「なっ!!!???」
思わず顔を真っ赤にするマヤ、その瞬間会見場に開始を告げるアナウンスが
なされ、マヤは真っ赤な顔のままぎこちない手足の動きで壇上に上がることとなってしまった。
(もう・・・さいあく!)
しかしながら会見場では、経験豊富な是永そして境の援護射撃もあって
終始和やかに質疑応答が続き、
改めて、国際映画祭最高作品賞・主演男優賞受賞ということの大きさを
実感することとなった。
「えと、映画はもうすぐ、GWから公開です!みなさんぜひ劇場でご覧ください!」
なんとか映画の宣伝という大役も果たせ、ホッと一息ついたかと思いきや、
間髪入れずに
「それでは引き続きまして、北島マヤさんの単独記者会見に進みたいと思います」
と司会者の声に、落ち着いていたはずの心臓が再び高鳴りだした。
同席していた是永と境は壇を降り、座席が転換される。
そして中心にマヤ、その横にもう一つだけ椅子を残し、マイクの位置が整えられた。
「緊張してるのか、マヤ」
急にフラッシュがたかれたと思ったら、いつの間にか真澄がマヤの隣に立っていた。
「速水さん・・・」
「先ほど黒沼さんと桜小路くんには事情を説明した。」
詳細は後ほど・・・と言い残し、真澄は自分用にあてがわれた席につき、
マイクを握った。
「それでは只今より、来春の紅天女公演についての発表を
上演権保有者であります、北島マヤよりさせていただきます」
そしてマヤのほうに視線を送る。
(大丈夫。俺がしっかりフォローするから)
真澄のそんな心の声が届いたのか、少しずつマヤの緊張が解けていった。

**
「マヤにしては上出来だったんじゃないか」
夕刻社に戻った真澄は、速報を伝える夕刊紙に目をやりながら、
複数のニュース番組を流し見していた。
「ほとんど真澄さまが話されていた気もしますが・・・」
コーヒーを机に置いて水城がメガネをキランとさせる。
「ふ。まあ、テレビで使われるシーンくらいは話していたからよしとしよう」
舞台を降りればただの少女なのは昔も今も変わらない。


「みなさんは、亜弓さんの紅天女観たくないですか?」
私は見たいです。そういってのんきに笑うマヤのあまりに素直な言葉に
演劇界幻の名作『紅天女』の上演権を持つ唯一の人間であるという気負いは
全く感じられなかった。
作品をないがしろにしているのではないかと追及しようとしていた
マスコミも、そのあまりにまっすぐなマヤの発言
(と、その隣で発せられるなにかあったらただじゃおかないという
真澄の威圧感)にそれ以上意地悪な質問ができなかった。
「きっと素晴らしい紅天女だと、私は信じています」


「実際問題亜弓くんの演技に疑問のある人間などいないだろうからな。」
速水の口から具体的な権利関係の説明、特に前保有者である
月影千草からも正式に承諾を得ていることを伝え、
この決定が決してマヤの気まぐれで決められたものではないことを
説明した。
「彼女は『紅天女』という作品自体を高め、より多くの人に
 長く、広く愛される作品とするためにこのような決断をいたしました」
その言葉にウンウンと頷くマヤ。
記者たちの中には、かつての犬猿の仲だと言われていた時代を知る人間も
多く、北島マヤの完全に速水真澄を信用しているといった表情に
違和感を感じる者も少なくなかった。

「もう少し記者会見が長引いていたら危険でしたわね」
水城の言葉に何が?と顔を上げる真澄
「あの金屏風が婚約会見になるところでしたわ」
思わずコーヒーを吹く真澄に、
「真澄さま、幸せなのはよろしいですが少し気をつけていただかないと・・・」
一般は男と女の雰囲気に思いの他敏感ですわよ・・と
女性に対して朴念仁で唐変木な上司に忠告した。
「そうだな・・・」
と、真澄も記者会見の様子を思い出す。


「速水社長は、紅天女にとても執着されていましたが、
 北島さんが大都に所属したことで手中に収めたとお考えですか?」
「北島さんとは個人的にアドバイザー契約をされているとの
 ことですが、具体的にどのようなことをされているんですか?」
最近はテレビ新聞雑誌以外のメディアも多く、
怖いもの知らずの記者も混じっているようだ。
真澄はその質問を投げかけた記者の所属を確認すると、
「記者会見はこれで終了です」
と冷たい視線とともに会見を終わらせた。
「この媒体を調べておいてくれ」
一枚の名刺を、水城に差し出す。
「これは?」
「最後にあの質問をしたヤツだ。」
すでに各メディアには大都芸能の名で
本題と関係ない情報の取り扱いには注意するように、と
暗に報道規制の圧力をかけている。

「速水さん、鷹宮紫織さんとの婚約を解消されたというのは本当ですか?」
会見を終え、会場を去る直前の真澄の背中に
そんな質問を投げかけ、会場の雰囲気を一気に氷点下に落とした記者
"実話プレス 編集長 高取修"
「ふ、食えん時代になったものだ」
「そうですわね・・・しかし当座の問題はむしろこちらかも知れません・・・」
そういうと水城はおもむろに手にしたタブレットを真澄に差し出した。
「・・・・!?な、なんだこれは、水城くん」

**
「ふあーーーーー、疲れたーーー!」
記者会見を終え、ようやく自宅に着いたマヤは
行儀が悪いと思いながらも、服のままベッドに飛び込んだ。
思えば帰国以来記者たちに囲まれっぱなし、心の休まる
時がなかった。
映画三昧で贅沢だったとはいえ、二週間も海外生活を
することなど初めての経験、見えない疲労がマヤに襲いかかる。
「だめ・・・このまま寝たら・・・」
速水さんに怒られちゃう・・・分かっていても急速な睡魔が
マヤを布団の中へと誘う。
"ちょっとだけ、5分だけこうやって・・・"
マヤが守れもしない誓いを立てながら深い眠りに落ちようとするその寸前

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

遠くから軽妙なメロディが響いてきた。
「!?」
慌てて飛び起きるマヤ
同時に、ベッドに放り投げていた携帯が光っていることに気づく。
"どんなに疲れていてもちゃんとお風呂に入ってから眠ること!
お湯はりセットしておいたからね、今日はお疲れ様!"
マネージャー大原からのメールに、先ほどのメロディが
お風呂の準備が出来たことを知らせるものだと気づく。
「大原さん・・・・ほんとありがと!」
"寝てました・・・"と素直な返信をして、
マヤは少しスッキリした頭とぐったりした体を引きずり、
バスルームへと向かった。


「ん?なんだこれ」
お風呂上がりにミネラルウォーターを飲みながら
携帯に届いていたメッセージを読んでいたマヤは、
麗からのメッセージに目を丸くした。
"トレンド入り チェックした?"
トレンド入り・・・・マヤには馴染みのない言葉だ。
そもそも機械に詳しくないマヤは、携帯でもほぼ
電話とせいぜいメール機能ぐらいしか使っていない。
一応自宅にはPCもあるのだが、使い方が分からずほぼ
インテリアと化している。
「ま、いいことも悪いこともあるからな」
真澄もそういって、積極的には教えてくれない。
この部屋でマヤが使える機器といえば、DVDの再生くらいだ。
"トレンド入りって、何?"
マヤにとっては初めて聞く単語だったようだ。

**
「ありがとうございました!」
帰国後のマヤは普段無縁なバラエティや情報番組の生出演など
変則的なスケジュールに朝から夜まで追われていた。
もちろん目的は出演する映画『微風のかたち』の公開宣伝だが、
いつもドラマや映画ばかりのマヤにとってはどれも新鮮で、
ついハイテンションにはしゃいでしまう。
しかしそんな素のマヤが特に若い視聴者に受け、
GW公開直後の観客動員もダントツの1位と好調だ。

これまでどちらかというと大人向けの舞台、特に『紅天女』という
伝説の舞台というイメージがマヤを遠い存在に思わせていたのが
今回の一連のテレビジャックが一気に北島マヤを身近な存在へと
変化させた。
それでいていざ演技となるとあの変貌、実力派若手女優の筆頭として
一気に名をあげた。
「オファーされる作品の質も変わってきました」
次の作品選びが、マヤの女優としての今後を大きく左右する。
「え、頭にシャープ?」
好調な動員を記念して急遽開催された舞台挨拶後の楽屋で、
マヤはしきりに境に教えを受けていた。
「単語の前に#をつけるんだよ、あー全角じゃなくて、、、」
「・・・マヤ、一体何を・・・」
「あ、大原さん!今ね、境さんにトレンド教えてもらってたの!」
トレンドって・・・いまいち理解していないような気もするが、
どうやらマヤは先日以来ずっとトレンド入りのことを
気にしていたらしい。
「マヤにだけは教えないように」
真澄のお達しに忠実な部下、大原はマヤの質問をのらりくらりと
かわしていたのだが、どうやらしびれを切らして境に質問したらしい。
「うわーーーーーぁ!すごい、なにこれ!」

先月末の記者会見が生中継されると、ネット上は紅天女のこと
だけでなく、そのあまりに美しく若き実業家、速水真澄の容貌に
沸き立った。
"あの社長超イケメン!"
"あの若さで大都芸能社長とか、勝ち組すぎ!"
"むしろ自分がモデルデビューしたほうがよくない?"
そして記者会見の様子を取り出したキャプチャー画が
#イケメン社長 のハッシュタグで大量にあふれ、その日の夜には
急上昇トレンド入りしていたのだ。
「速水真澄 11月3日生まれ 33歳 独身・・・って、こんなことまで。。」
次々にネット上に現れる真澄の情報にマヤも驚きを隠せない。
「速水社長から聞いてないの?」
「はい。どんなにきいても速水さんなんにも教えてくれなくて」
私も機械オンチだし・・・といいながらくいいるように
画面を見ている。
「どんな気分?自分の事務所社長がこうやって人気者になるのは」
ちょっといじわるかなと思いながら、境はマヤに尋ねた。
「やっぱり、速水さんってなにやっても絵になりますよね」
思えば出会った最初の印象も、背が高くて優しそうな素敵な男性だった。
その後の精神的フィルターから、素直に認めたくはなかったけど、
改めてじっくりと見る真澄はやっぱり美しくて。
"紫織さんと並んでると、本当にお似合いだったもの・・・"
初めて見た2人の立ち姿にどれほどの衝撃を受けたことか。
"私なんて、どんなに頑張ったってチビで地味で垢抜けなくて・・・"
どんくさくて目立たない子・・・こんな私が、真澄の隣にいてもいいのだろうか・・・
いつの間にか暗い顔になってしまったマヤを見て、境はおもむろに
マヤの手から携帯を取ると、手慣れた様子で何かを探し、改めてマヤに見せた。
「でも、いろいろあるけど僕はこの写真の速水社長が1番好きかな」
「・・・・・!」
その画像は、マイクを握って緊張しながらも弾けんばかりの
笑顔を見せるマヤと、隣でこれ以上はなく穏やかな微笑みでそれを見つめる
真澄の2ショットだった。
「こんな顔、まずお目にかかれないからね」
僕たちは・・・と小さく言うと、マヤの肩を柔らかく叩いた。
「・・・・・でもこれ。。。」
マヤはその画像につけられたコメントを読んだ。
「娘の成長を見守るイケメンパパ社長・・・って。。」
速水さんの、「俺はそんなに年じゃないぞ」という声が聞こえそうで
マヤは思わず吹き出した。
「わたしだって、いつまでも子どもじゃありません!」


**
「おかえりなさい」
イケメン社長様!というマヤの屈託のない笑顔に、
誰から知恵をつけられたんだと深いため息のような呼吸を
しながら真澄はネクタイを緩めた。
「全く参ったもんだ。最近はロクなモデルもいないのか」
大都芸能のモデル部門も見直しをかけねばならんなと
思いながら、マヤから水の入ったグラスを受け取り一気に飲み干す。
「でも速水さんがかっこいいのは昔からじゃないですか」
マヤの言葉に、そういえばマヤからそんな風に言われるのは珍しいなと
気づく。
「誰がかっこいいって?」
聞こえてたくせに・・・と顔を赤くしながら二度とは言ってくれない。
「自分ではそんな自覚はないが・・・」
「よくゆう!いつだって綺麗なモデルさんや女優さんに囲まれてにこやかに
 ダンスなんかしてたじゃないですか」
言い寄ってくる人間は昔から男女を問わず数多くいた。
そのほとんどが裏に自身の打算的な欲望を持っていることも
分かっていたし、下心は冷たくはねつけ、ただ事業に
つながることだけを考えてきた。
「本気で俺に興味があって近づいた者などいやしなかったさ」
「うそ!速水さんと話してる女の人はみんなうっとりとした目で
 速水さんのことを見ていたもん!」
速水さんだって、すごく優しい顔してた
「ふーん。そうかねえ。」
ラフな服に着替えた真澄は、ゆっくりとマヤの後ろに近づき
首まで真っ赤にしたマヤのうなじを見せるように
長い黒髪を片側に流した。
「少なくとも俺にはそうは見えなかったが」
「!?はっはや」
びっくりして振り返ったマヤを胸に抱き、
優しく頬に手を当てながら、
「少なくともこの俺に本音でぶつかってくる女など、1人ぐらいしか記憶にないな」
真澄の冷たい手がマヤのほてった顔を心地よく冷やす。
「それとも君も腹に別のことを隠し持っているのか?」
「・・・・・わたしは、速水さんとは違います」
思いがけない反撃に、今度は真澄が言葉を失う。
「速水さんがお腹の中で本当は何を考えてるかなんて、私今でもよく分かりません」
抗議するように口を尖らせるマヤが可愛くて、真澄は声をあげて笑った。
「はっはっは、俺はいつでも君には正直に見せているつもりだが」
どこがですか!とちらりと顔をそらしたマヤの視線の先には、
引越し祝いにと2人でかった紫のバラのプリザーブドフラワーが飾られていた。
「まあ確かに、過去においてそういった態度を取ってきたことは否めないが・・・」
それに・・・とマヤは甘えたように真澄の胸に顔を寄せ、両手を背中へ回した。
「愛想笑いしてばっかの速水さんは、ちょっときらいです」
本当はこんなにあったかい人なのに
どうして冷たい人のようにふるまうの
「速水さんがかっこいいって言われるの、うれしいです」
顔だけじゃない、この広い心と温かな優しさも
もっとみんなに、速水さんのいいところを分かってほしい
どれほど速水さんが長い間私の心の拠り所として支えてくれていたか
知ってほしい
「って思うのはやっぱり私がまだまだ子供だからでしょうか・・・」
不安げに真澄を見上げるマヤが愛おしくて、真澄は思わずマヤを抱き上げ、
奥の部屋へと連れて行った。
「いつの日かお互いに正直なまま外でも振る舞える、そんな時がくるさ」
「そうかな・・・」
「ああ、少なくとも俺は、君が側に居てくれさえすればそれでいい」
世間の目を気にせず、いとしい人とともに過ごせる日を思いながら
今はまだ、2人だけのささやかな世界でその愛を育むため、
真澄は白く柔らかな世界にマヤをゆっくりとおろしていった。

"速水さん、私も早くあなたを支えられるそんな大人になりたいよ"
今はまだ、こうしてあなたにしがみつくことしかできない私だけどーーー


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~~~~解説・言い訳~~~~~~~~
るんるん♪ちょっと短いですけどかわいくいちゃいちゃする真澄&マヤは
絵になるから好き~~
ド昭和から始まったガラスの仮面を現代の文明に無理やりなじませてます
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