Review the Reviews

レビューをレビューするブログ

緑の旅人の『女の穴』評

2012年08月25日 | 漫画など

news_thumb_onnanoana

 

ふみふみこ『女の穴』(徳間書店)

 

評者:緑の旅人

掲載サイト:『Amazon.co.jp』

概要:『ぼくらのへんたい』の作者が2011年に出した処女短篇集

 

 

思春期の残酷さが胸に突き刺さる『ぼくらのへんたい』が良かったので、

前著を手に取ったが、以下のレヴューの通りの凡作だった。

 

そこまで悪いわけではないのですが、特別良くも無い。

読み終わった後「ふーん。それで?」という感想しか残らず、記憶に残らない話が多い。

絵も良くある「おしゃれサブカル風」の域を未だ出ておらず、

かといって「おしゃれサブカル風」にも成りきれていない。

 

そうそう、「おしゃれサブカル風」(笑)。

『コミックナタリー』系というか、文化人ウケを狙ってるというか……。

作者は「ひらめき☆マンガ学校」で西島大介に師事したが、そこで得たのは悪影響だけかも。

しかし、である。

 

こういう未完成というか未成熟なもの(しかも未成熟故の勢いとか良い意味での荒さも無い)を

そのまま出版させるのはどうかと思います。

 

『ぼくらのへんたい』が連載中の2012年8月において、この意見は的外れとなった。

『COMICリュウ』編集部は、未来につながる仕事をしたから。

 

 

新人を評するのは難しい。

作品に対する評価は正鵠を射ている。

しかし、すぐ後に開花する才能まで見抜けなかった。

 

 

【評価】

文体:★★★☆☆ 批判として、よくまとまっている

情報:★★★☆☆ 作品そのものについての指摘は、過不足ない

熱意:★★☆☆☆ 新人が持て囃されたりすると、嫉妬を感じることはボクにもある

平均点:2.7 だれが未来の傑作を描くかは予測できない。新人には寛容に


岸の『妻と別れたい男たち』評

2012年08月22日 | 

4087206505

 

三浦展『妻と別れたい男たち』(集英社新書)

 

評者:岸

掲載サイト:『Amazon.co.jp』

概要:ベストセラー『下流社会』の著者が、中高年男性の離婚願望を解き明かす

 

 

離婚したがる男の典型。

高卒以下、自由業または自営業、妻も働いている。

評者はいう。

 

だから何なの?といった感じですね。

私は、これら4つとも当てはまりませんが、そりゃ、離婚したいと思うこともありますよ。

 

そりゃそうだよな。

大卒の会社員が「離婚したい」なんて、そう他人にペラペラ喋れないよな。

おかしな調査をするもんだ。

 

どうも著者は、低学歴と不幸を結びつけたがるような気がします。

調査結果に学問的な価値があるのかどうかも、何かの役に立つのかどうかも、わからない本だと思います。

 

著者のワンパターンぶりを指摘し、学問的価値に疑問を呈する。

三浦展の本は読んだことがないが、なるほどと思った。

そんなことより気に入ったのは、オチの部分。

 

買って家に置き、家族に見られたら、それこそ不幸のタネになるのでは?

 

要するに、これが書きたかったんでしょ?(笑)

 

 

【評価】

文体:★★★★☆ この人のレヴューをいくつか読んだが、切り返し系のオチが得意みたい

情報:★★★☆☆ 短いなりに役立つ内容

熱意:★★★☆☆ 客観的に批評しつつ、笑わせようという曲芸に挑戦

平均点:3.3 これが「ベスト50レヴュワー」の実力か


Yahoo!映画の『THE GREY 凍える太陽』評

2012年08月19日 | 映画

6-vlcsnap-2012-08-18-16h30m50s144

 

『THE GREY 凍える太陽』(アメリカ映画・2012年)

 

掲載サイト:『Yahoo!映画』

概要:リーアム・ニーソン主演。飛行機事故の生存者たちがアラスカで狼と闘うスリラー映画

[本家ブログの記事はこちら

 

 

前回は、好きな映画を貶されて怒ってると思われたら困るので(笑)、まずは星1つレヴューから。

 

私が期待していたのは、狼の大群に襲われた主人公が

山の地形を利用し狼に立ち向かう爽快なアクション映画。

しかしながら実際は暗い暗いヒューマンドラマでした。

正直上映開始10分後には気が付いてしまいました・・・これは駄作だと。

 

nakachu63の投稿

 

どんな映画を期待していたかハッキリしている。

 

主人公の心の闇に焦点がおかれているのですが、

この映画を見に来た人の99%はそのテーマを望んでいないと思います。

そしてその闇が異常に深いです。正直見ていて疲れます。

 

ボクはその「心の闇」を評価するが、嫌いな人がいて当然と思う。

基準が明確で、嘘やごまかしがなく、読んでいて気分がよい。

 

 

こんな変り種レヴューも。

 

オオカミの造形が少し気になるのです。いかにも怪物なのです。

オオカミがただ怖いというだけの存在で、

自然というものの崇高さがオオカミを通して感じられないのです。

自然崇拝が根底にある東洋人と、人間の理想の極限形としての神を崇拝する西洋人の、

自然に対する考え方の違いが出てしまっているのでしょうか。

 

長川淀治の投稿

 

なるほどねえ。

ちょっと胡散臭い話だけど(笑)、考えもしなかったので参考になった。

同じ動物でも、日米で造形に違いが出ることはありそう。

具体的な作品で比較検討してほしかったが。

 

 

「私の職場に対する不満なんて鼻クソでした」 というレヴュー。

最終文に感心した。

映画ブログはどいつもこいつも、「涼しさを感じられて良かった」と書いてたが……

 

とにかくラストシーンが好きでした。

冷たくて、静けさに満ち、余計なものが一切ない、そして謎めいてもいる

―このラストカットを見るための2時間だと思いました。

この上なく極寒ムービーなのですが、最後にものすごく熱くなりました。

 

belfast_maine_fwの投稿

 

……だってさ。

「アラスカの映画=涼しい」は、見たもの全員が考えること。

文章を公表するなら、ひと捻り必要だ!

 

 

【三者まとめての評価】

文体:★★★☆☆ 映画ブログの平均よりずっと上だ

情報:★★★★☆ 三人寄れば文殊の知恵

熱意:★★★☆☆ 映画ブログにないもの、つまり競争がある

平均点:3.3 さまざまな視点が提示され、まとめるのも楽しい


佐藤秀の『THE GREY 凍える太陽』評

2012年08月19日 | 映画

9-vlcsnap-2012-08-18-16h29m23s32

 

『THE GREY 凍える太陽』(アメリカ映画・2012年)

 

評者:佐藤秀

掲載サイト:『佐藤秀の徒然幻視録』

概要:リーアム・ニーソン主演。飛行機事故の生存者たちがアラスカで狼と闘うスリラー映画

[本家ブログの記事はこちら

 

 

星2つか。

どう批判するのだろう。

 

オオカミの生態を良く知るオットウェイがリーダー格になるのだが、

実は彼は生き残るために率いているのか疑いたくなる行為をしている。

そもそも墜落機体の胴体を風よけに籠ってじっと凌げればやがて救援隊が来るのは間違いない。

 

噴飯モノの記述。

「間違いなく救援が来る」とわかっていたら、オットウェイに追随する者などいない。

命令する権限がないのだから。

まして感情移入する観客もいない。

 

しかし、彼は墜落現場を離れて森に移動させる。

森の中に入ったからといってオオカミ達の包囲網から逃れられる保障などある筈もないのに。

 

こちらも同様。

墜落現場に留まったとしても、助かる保証はない。(ちなみに「保障」は誤用)

評者以外のすべての観客が、そんなことは承知だ。

 

実はオットウェイ自身がある観念に取りつかれていた。

一番強い相手を倒せたらその日に死んでも悔いない、という父親から教わった詩だ。

一番強い相手が呼んでいる。彼が自殺を思いとどまったのはその声だった。

 

この解釈は、そう間違っていない。

オットウェイは、「生」と「死」の両方へ傾斜している。

佐藤は後者をやたら気にしてるだけ。

 

やがてオオカミに食い殺される者、力尽きて生還を諦める者もいるが、

オットウェイには自分の責任で死なせたという自覚がない。

 

「ボクの判断で皆を危険にさらしました、ゴメンナサイ」と謝ればよかったの?

日本人のコミュニケーション手法を、アメリカ映画に押しつけるな。

 

最後の生き残りがオットウェイの本性に気付くが時既に遅し。

オットウェイは身勝手なほど独り善がりに最後の戦いに挑むのだが。

 

「本性」も意味不明。

文脈から判断するに、「自殺願望があること」か?

ヘンリックは、飛行機に乗る前から気づいていたし、

くわえてオットウェイの会話のなかで何か確証を得たわけでもない。

「やはりそうらしいな」というだけ。

そもそもこの場面の直前、ディアスが自ら死を選んでおり、いまさらの話だ。

評者は鑑賞中に居眠りしたか、もしくは嘘をついている。

 

 

「オットウェイは死神」と書きたくて、それに合わせ映画の内容を捻じ曲げたのだろう。

解釈は自由だ。

しかし嘘は許容できない。

 

 

【評価】

文体:★★☆☆☆ 未見なら、うまく騙されそうな文章だ

情報:★☆☆☆☆ あきらかな誤謬は、未来の観客の不利益となる

熱意:★☆☆☆☆ そして「ミスリード」は映画への冒涜だ

平均点:1.3 白黒曖昧な描写を勝手に決めつけ、墓穴を掘った。訂正・削除すべし


うぉーどっぐの『エースコンバット イカロス・イン・ザ・スカイ』評

2012年08月19日 | 

51p7qFngd6L._SS500_

 

山本平次郎『エースコンバット イカロス・イン・ザ・スカイ』 (DENGEKI HOBBY BOOKS)

 

評者:うぉーどっぐ

掲載サイト:『Amazon.co.jp』

概要:フライトシューティングゲーム『エースコンバット』を基にした航空小説。主人公はナガセ

 

 

表紙がコザキユースケ氏で、彼の画集について書いたとき興味をもった。

評者はHNのとおり軍事マニアらしい。

 

またQ-XというUAVが登場するが、3面図ぐらは最終ページに資料として入れて欲しかった。

(ほかに登場する共和国の兵器等も)

とくにネーミングが無機的で脳内で想像しずらいのですわ、外観が。

あとF-2、F-15Jと模擬戦をさせてほしかった。

現存の機体と比較してくれないとASF-Xの強さが分かりにくいし。

エースコンバットならE-767は登場させてほしかったね。

(もちろんサンダーヘッドで)

 

ミリオタって、どうしてこうなんだろう(笑)。

兵器名をずらずら並べてなにが楽しいのか……。

駅名必死で覚える鉄道オタクも同じだけど、あれはまあ毎日乗るものだし、多少可愛げがある。

 

肝心な用語に誤字が少しあって萎えました。

(「MFD」がところどころ「MSD」になっていたり・・・)

特に軍事系の固有名称誤字は萎えますね。別物になってしまうし。

 

ところがこの冒頭部分にツッコミが入る。

 

MFD(マルチ・ファンクション・ディスプレイ)がところどころMSDになっていて萎えたという指摘ですが、

それはMSD(マルチ・センサー・ディスプレイ)で良いのではないでしょうか。

 

東方の嵐のコメント

 

どちらが正しいか知らないが、「萎えました」は勇み足かな。

 

 

枝葉末節の知識をいくらあげつらっても、作品の本質はつかめない。

そんな当り前のことを、あらためて教えるレヴューだ。

 

 

【評価】

文体:★★☆☆☆ 上から目線の文章のお手本

情報:★★★☆☆ 情報は、量より質

熱意:★★☆☆☆ 「ぼくのほうが軍事にくわしいもん!」

平均点:2.3 似ても焼いても食えない人達です。芸術の敵です