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imaginary possibilities

Living Is Difficult with Eyes Opened

裏切りの戦場 葬られた誓い(2011/マチュー・カソヴィッツ)

2012-12-18 23:56:25 | 映画 ア行

 

原題は「L'ordre et la morale(秩序とモラル)」。

英題は「Rebellion(反逆、反乱、反抗)」。

そう、これは邦題から想像するような戦争映画ではない。

戦争のメカニズムというより、戦争を駆動する政治のメカニズム。

大衆と戦場を都合好く分かったり利用したりするポリティクス。

それを擁護も糾弾もせず、自戒に耐え続ける本作。

今年最もスクリーンと渾身で対話した一作。

この時期に見られる偶然という必然。

これはもう、必見。

 

実は本作を私は2回観た。

1回目はチネチッタで観たのだが、

デジタル上映素材の画質(特に色味)が好くなく、

痛みを産むであろう光景の美しさの現出叶わず失意。

シネマスクエアとうきゅうでの上映がフィルムだという情報を得て、

最終週に駆けつける。そう、東京では今週木曜(20日)まで。

緩慢なカメラの動きとシネスコの儚き雄大さ。

慈悲深き空の青、ヘリと車の無情な青。

緑の深さと闇の奥深さ。

 

◇物語の背景や史実的な側面は、公式サイトなどで軽く予習して行った方が好いかと。

 

◇今週観るべき映画は、何よりも本作であるように思う。

   本作に私が強い感銘を受けたのは、主人公の内面を軸とした視点ながらも、

   大きな社会のダイナミクスを淡々と描き、そこに投石などして終わらない。

   政治がかかえる必至の欺瞞は、「民意」が嗾けては保証する。

   そうした絡繰り自体は直接描かれることはないが、じりじり伝わる。

   若き日のマチュー・カソヴィッツは本作で描かれるような事実を知らず、

   「真実」のみを受け取ってしまっていたという事実を知ることからこの映画は始まった。

   そして、〈裏切り者〉であるフランス人大尉の立場から眺めることにこだわった。

   利用された「真実」の向こうにある事実が大衆には見えないように、

   権力を常に擁護するはめになる大衆が本作では見えてこない。

   そのフェアな反転が、民主主義の陥穽へ注視を促す。

   ここで描かれる悲劇の書き手は誰なのか。

   そこには常に「民意」が作用してないか。

   自覚的にしろ、無自覚にしろ。

 

   戦闘に向かう兵士達を映すカメラはNikon製。

   世界はつながっている。堅い絆で。