何と、未だに郁実さんの中には
トオル君が存在していたとは・・・
久しぶりに聞く、トオル君の呼び名に
私は、困惑した表情を浮かべた
郁実さんは、続けて話した
「だから私はトオル君に、言ってやったの」
「何で、さっさと来てくれなかったの!図体ばかり大きくても駄目なのよ!人に言われて気づくようじゃ駄目・・・あなたも、まだまだ一人前のプロとは言えないわね」
郁実さんは、そう言うと
満足気に笑い . . . 本文を読む
郁実さんは、昨日起きた事故を
恥ずかしそうに
だけど、楽しそうに語りだした
「おトイレが済むと、ブザーを押して、人を呼ぶのだけどね。それが、いくら呼んでも、なかなか人が来てくれないのよ・・・」
「そのうちにね、お尻が冷た~くなってきちゃうの」
ここで郁実さんは、大笑いし
私もつられて笑った
「だけど、仕方がないのよ・・・何十人の患者をね、たった数名の人たちだけで、みんなを看ているのだから . . . 本文を読む
私は郁実さんの居る部屋へと
足を進めた
部屋に入ると、郁実さんは
横になりながら、テレビを見ていた
いつものポーズである
本当なら、車椅子には
座っていてほしいと思う
座ることも、大切なリハビリの一環
横になっていたばかりでは
床ずれの原因になってしまう
とは、言え
郁実さんは、昨日転倒したばかり
体力的にも精神的にも
ダメージは大きいのかもしれない
私は、郁実さんの顔を見るが早く . . . 本文を読む
それでも、気になった私は
翌日、老健へと
行ってみることにした
受付では、私の顔を見るなり
わざわざ、職員が出てきて
昨日の出来事を 改めて詳しく
話し始めた
そして話し終わると、職員は
申し訳なかったと、ひたすら頭を下げるのだった
「そんな・・そんな・・悪いのはこちらの方なのですから・・・」
「それよりも、事実を隠さず、どんなことでも直ぐに報告して下さる、そちら側の誠意にとても感謝致 . . . 本文を読む
ある日の午後のこと
自宅に、老健から
一本の電話があった
いつもお世話になっている、職員の方だった
話によると
本日午後2時
郁実さんがトイレで転倒したとのこと
通常、トイレ補助が必要な患者は
患者からの呼び出しで、職員が患者をトイレに連れて行く
その後、用を済ませた後
再び職員は患者の補助をしながら、自室へと連れ戻る
しかし今回、郁実さんは
用を済ませた後、職員を待たずに
一人勝 . . . 本文を読む