短歌手控え~題詠blog用

飯田和馬の題詠blog用blogです

題詠ブログ2011・まとめ

2011-11-25 18:56:16 | 題詠

001:初
初めてのブランコに似たかなしみが沈む秋刀魚の瞳の底に

002:幸
幸せな小鳥の歌う空のようお臍をうんと持ち上げる腹

003:細
ひとしきり怒ったあとの細い枝。わたしが伸ばしわたしに刺さる

004:まさか
まさかなと冷笑苦笑。ぼくは猫。みんなは犬でぼくだけが猫。

005:姿
下卑た俺(姿勢悪い)がバラバラに。ガラスのように綺麗ではない。

006:困
僻むよりなくて無茶苦茶焼いてみたクッキー。だけど独り。困った。

007:耕
実直な小さなお百姓さんが耕すように気を取り直す

008:下手
下手くそが帰れカスイネお前さえおらへんかったら ずっと聞こえる

009:寒
あいつのは寒いとほくそ笑みながら出した穢れを見透かされてる

010:駆
狂おしく裸足で駆けてくサザエさんみんなに笑われてる気がして

011:ゲーム
飽きられたゲームソフトを借りてきてとても大事に遊んで飽きる

012:堅
主体的に堅気ではないふりをして千円だそうと気張ってはみた

013:故
この人は無事故無違反。泣き出すか酔い潰れるかしかない男

014:残
無残とも言う声もする。場違いの店でいい顔繕うを俺に

015:とりあえず
とりあえずマーキングだとおはように毛の生えたほど挨拶をする

016:絹
「え?」とかいう君の言葉の絹糸に懲らしめられてちぎれるか指

017:失
喪失を飲み下しつつ夕映えて顔の見えない君へ手をふる

018:準備
悦に入っておられるところ恐縮です。殴る準備が整いました

019:層
大層なことを抜かした口臭は阪神電車の臭いに似てる

020:幻
幻だ。とんこつ醤油ラーメンもイミフメールもあなたの事故も

021:洗
プーチンはよく手を洗い水色のナイトキャップを被って眠る

022:でたらめ
でたらめに並んでいると見せかけて神の摂理に適うおばちゃん

023:蜂
陽光はあくまで静か。天窓をつらぬくすべを蜂は知らない

024:謝
謝れと氷の中で喚いてた気泡はどこへ カフェテラス4時

025:ミステリー
手の平に窪みにミステリーはある。おやゆび探偵なかゆび警部

026:震
死の震え 魚をさばく時だとか平気な顔に捩る時とかの

027:水
とりかえしつかない水に水を足す(金魚じゃないよ。でも、助けて!!!!!!!!!!)

028:説
説明は俺になかった。俺だけになかった。そして魚崎にいる。

029:公式
白鳥を連れて来たけど汚いから非公式に殺されてゆく

030:遅
順調に閉め出されてく。善悪によらずなにかと遅いやつから

031:電
鳩をとばしたらやっぱり舌打ちをされた気がして電気消します

032:町
開いたら僕がいなくて楽しげな町が生まれるケータイ電話

033:奇跡
パゾリーニ『奇跡の丘』を見るように足場が高くなるまでを見た

034:掃
《清掃中》十三駅の便所さえ提示するのにお前ときたら

035:罪
蜜と罪、裏表とかテレ東のドラマのようなギラギラを吐く

036:暑
猛暑っと頑張ろうなと声かけて殺し屋みたいな視線を受ける

037:ポーズ
ポーズだと見透かされつつやるうちに事件の人の目になってゆく

038:抱
抱き起こす春ねじ伏せる夏もえる秋うずくまる冬 蔦は似ている

039:庭
庭先にちょろっとまいた豆まきの豆より僕の夜はましかな

040:伝
伝わった(伝わってたかもしれないが)服をきちんとたたんでみせた

041:さっぱり
肘ついて新聞よんであくびしてさっぱりな店しあわせな店

042:至
駆け上がる鮮紅色のホリホック 翼は要らぬ夏至の空には

043:寿
イギリスの寿司屋は素手で握れない。俺は真顔で縋り付けない

044:護
弁当の色がきれいで冬厚着。彼も私と同じ過保護だ

045:幼稚
あたたかい雨の会話にエバミルク過ぎて紅茶を幼稚にさせる

046:奏
小麦粉と卵と砂糖と牛乳と。四重奏がふくらんでゆく

047:態
醜態を晒してばかり。金づちで破壊しないと分からない価値

048:束
ホウレン草ひと束やるよ、もう帰れ 犬の臭気の満ちる玄関

049:方法
私にも有効だった。湯につけてピンポン玉をもどす方法

050:酒
いつだって酒の力を借りている。酒は大人のドラえもんです

051:漕
燃え盛る巨大なガレー船を漕ぐ人を思って紅葉を見てた

052:芯
替え芯として捨てられてごみ箱の中にインクを少し吐き出す

053:なう
嘘の「なう」積み重ねてる。矛盾点つく人なんていないと思う

054:丼
麝香丼ここに完成。違いなど分かりたくない大人のために

055:虚
十二月虚ろな猿の目のならぶ檻の前にて零すチチボーロ

056:摘
指先は微かに毒の香をおびる。日々草の花がら摘めば

057:ライバル
友達もライバルもない。僕は猫。みんなは犬で僕だけが猫

058:帆
黴くさきテーブルクロスひろげれば帆影のような祖母の記憶が

059:騒
この秋にたぶん死なない私が生意気に聞く虫の喧騒

060:直
《死にたい》と《素直に話したい》間をスイッチバックしてゆく電車

061:有無
北風のように有無など言わせない教師にこっそりつけたカメムシ

062:墓
両隣の墓にも花を同じだけ(に見えるように)用意していく

063:丈
頑丈なはずだとか言う。俺は木の真似して出来ぬものと思った

064:おやつ
さんざんに罵りあった後に食うおやつのプリン なんでプリンだ

065:羽
最後まで見ていたけれどまた鈴木砂羽が誰だか分からなかった

066:豚
飲まされて薔薇に染まった豚の肌 肉を美味しくするためという

067:励
奨励賞 それがどれほどすごいのか分からぬままにそれぞれ帰る

068:コットン
声がする。「コットンコットンしなさんな」きっとコットンするなよと思う

069:箸
わり箸はうどんの汁を含みながら熱帯雨林の雨を思った

070:介
好きだった空も名前も武器のよう自分の中の悪を介して

071:謡
童謡の景色が胸に落ちたとき大人の君が立っていました

072:汚
汚染とは何なんだろうと腰掛ける。スーパーに並ぶ空気椅子に

073:自然
かきわけて記憶をおこす。自然薯を掘りだすように荒く静かに

074:刃
刃渡りはマイナス30センチほど。俺の言葉で血まみれになる

075:朱
乱筆を朱墨はなぞる。さわがしい烏を森へいざなう夕日

076:ツリー
クリープを四杯いれたお茶飲んでクッキー食ってツリー飾ろう

077:狂
狂ったら進めるのかな まやまやと飛びかう虫が薄暮に浮かぶ

078:卵
「はい、卵われた」と言われ初めての作り笑いを鍵盤の前で

079:雑
里山の雑木のように罪のない話をたんと楽しんだ日々

080:結婚
「結婚をしていました」と言ってみる。特に変化は見られなかった

081:配
運命の配送センター 積み荷なく出てゆく白いトラックもある

082:万
万能と呼ばれる葱の細さなど白々と見て言い過ぎている

083:溝
ひょっこりと溝から顔をのぞかせる猫がぼくらを逸らせる月夜

084:総
全国の非リア充のツイートの総重量は五トンを超える

085:フルーツ
「父親がヤクザ」と言わせ立ち上がることを策したフルーツバスケット

086:貴
「貴」の文字が腑に落ちながら受け取った名刺は行方しれずほどなく

087:閉
《閉》を押し冬は降りくる。5、4、3…… どうせあなたは綺麗のだろう

088:湧
それは豹。湧き上がるもの。春、僕を八つ裂きにしに駆けてくる影

089:成
「成人の約七割が……」どうであれ俺には都合悪い気がする

090:そもそも
もそもそもそもそもそもそもそもそうそもそもそううそもそ 起きなよ

091:債
債権者会議にお集まりの方クッキー食ってツリー飾ろう

092:念
山上の垂訓受けた人のよう記念撮影し終えた後は

093:迫
クリスマスソング流れて冴える赤 みな迫真の演技に見える

094:裂
裂けて散るかもしれないと曇天の君の眉根を注視していた

095:遠慮
遠慮され残る巻き寿司 巻き寿司を作った人は怒って欲しい

096:取
手に取れば香り重みが嬉しくて林檎をみがく眠れない夜

097:毎
駅前のパン屋が毎日開くことは尊いことと勤めて分かる

098:味
大好きと君が言ってた菓子を食う。普通だったが親しい甘さ

099:惑
ブルーベリージャムの色した困惑がうすくひろがる夜間飛行は

100:完
夏空もホットケーキも君の歌も完ぺきでしたと神さまにいう



完走報告(飯田和馬)

2011-11-25 18:21:42 | 題詠
今年は二回目の参加となりましたがやはり「慣れた」なんてことは言えるものでなく……
皆さまの歌に刺激されつつ這う這うの体で辿り着いた次第です。
自分らしく詠めたもの、詠むこと自体ままならなかったもの様々てありますが今は爽快感に浸りたい気分です。
主催の五十嵐さま、楽しい場を提供して下さって本当にありがとうございました。