魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中で見苦しいところもありますが、ご容赦願います。

アユを増やすためにウグイを放流するのはどうかというお話

2024年03月27日 20時07分53秒 | 環境問題

アユ釣りの愛好家カモーン 太田川漁協、魅力向上へルアー解禁 おすすめポイント紹介も (中国新聞デジタル/リンク先はYahoo!ニュース)

またもや釣りのために問題が発覚したニュース。そしてまたもや放流関連のニュースである。広島市の太田川漁協がアユのルアー釣りを解禁するというニュースである。それだけならまだよい話かもしれないのだが、このニュースには「ウラ」というものがある。実はこのアユ解禁に先立ち、漁協がウグイを放流していたのだという。これはアユの捕食する珪藻を水生昆虫が食べてしまうというもので、水生昆虫に食べられる前にウグイを放って昆虫を食べてもらおうというものである。

ウグイは確かに水生昆虫を捕食するのかもしれないが、小魚も食べてしまう。太田川漁協はウェブログを持っており、当然ながらウグイを太田川の支流に放流している様子もしっかり公開されている(https://blog.goo.ne.jp/gyororin/e/95538682c2591645bca815eb66e53f7f)。放流しているウグイはかなり大きいサイズのように見えた。もしかすると昆虫のほかアユの稚魚なども捕食してしまう可能性があるかもしれず、放流は意味ないのかもしれない。(もっともこれについてはウグイがどれくらい魚を捕食するかというエビデンスは勉強不足からか見つけられなかったし、アユの成魚を放流するらしいからまた別の問題となるのだが)。しかもこのウグイのもとは琵琶湖産のものであるという。ウグイの系群については不明であるが、アユと同じく国内で様々な群があるように思われ、むやみな放流は交雑問題やそれによる不稔、系群の特性などが奪われてしまう危険性がある。さらにいえば琵琶湖のハスやらワタカやらイチモンジタナゴといった魚はアユの放流により各地で見られるようになったし、外来の珪藻やプランクトンの増加という懸念も大きい。

条件付き特定外来生物のアメリカザリガニ

現在はもはや生物を野外に放つということは、生物多様性保全の観点から受け入れられない世の中となった。近年も山梨県の荒川でのコイ放流のニュース(2018年)、犬鳴山納涼カーニバルのキンギョ問題(2017、2023年)、三重県のEM菌とコイの放流(2022年)、山形県酒田市でのイベントでアメリカザリガニ・カラドジョウの放流(2022年)、おさかなポストのコイ放流(2016年)、岐阜県の河川を区切った釣り堀からのニジマス逸脱(2024年)など、放流を好意的に報じるマスメディアが拡散し大きなニュースになることが多い。そしてこれらの放流された生物はいずれも環境に悪影響を及ぼしかねない生物であることはよく知られている。そしてこれは昭和の時代でも、一部のものを除いて平成でもなく、令和の時代のものであり、とくに最後のニジマスの件など1か月くらいしか経っていないように思う。

生物の放流は平成の世の中に置き去りにされるべきであった。しかもそれを個人や小さな規模の団体がやるのならまだしも、漁協という、生物多様性というもののなかで生きながらえている団体が放流しているのだから、この問題がいかに深刻であるか考えていかねばならない。そして団体だけでなく釣り人も、いよいよ「本当にこれでよかったのか」と考えるべきだろう。「アユのルアー釣り解禁!」あるいは以前のように「河川を区切ったニジマス釣り堀の運営開始!」に心躍っている場合ではもはやないのだ。

なお、筆者はウグイについては縁が遠い存在である。もともと主な活動地が福岡県と愛媛県の宇和海沿岸であるためだ。福岡県ではウグイは分布しないというわけではないが、局所的であり、宇和海沿岸ではウグイはほとんどいないらしい。トップ写真のウグイは韓国産のようで、韓国の水族館と山口県下関市の海響館との提携による展示のようである。


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