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メイン・ディッシュ / 北森鴻

2005-12-30 14:49:30 | 読書
今回の記事は北森鴻さんの『メイン・ディッシュ』です。
「洒落たミステリはいかが?」
確か何かのゲームのコピーだったと思うけど
この小説にとっても合っているような気がする。
所々にユーモアが利いていてすごく面白いし
展開も予測がつかない方向に進んで行き驚く。
そして小説が持つ雰囲気というのか味とでもいうのかよくわからないけど
それがとっても洒落てるな~(死語か?)
っていう印象を受けました。
それでは内容紹介に移ります。

メイン・ディッシュの内容紹介
小劇団「紅神楽」の看板女優である紅林ユリエこと「ねこさん」は
奇妙な同居人と暮らしている。その同居人が「ミケさん」だ。
ミケさんの特技は料理で誰もがうなるとびきりの料理を作ってくれる。
その料理のおいしいことと言ったら溜息ものだ。
そしてミケさんはとびきりの料理人というほかにもうひとつの顔を持つ。
それが…!


上の内容紹介を読むと全然ミステリっぽくないじゃん
とかと思うかもしれないけど、これが『メイン・ディッシュ』の持つ独特の雰囲気です。
バリバリのミステリという印象は受けないんです。
でも『メイン・ディッシュ』はとびきりのミステリです。
(何だか書いてることが矛盾してるかな?)
話はねこさん視点のものと、それとは舞台も登場人物も全然違う話とが交互に展開していきます。
ねこさん視点の方の話はちゃんと時間順に進行していきます。
もう1つの方の話はいつの話かはよくわからず、しかもどこか謎めいている。
ねこさんの方の話とは何の関係もないように、最初は思う。
が、ねこさん視点の話を読み進めていくとこの全く別物に思える話が繋がっていきます。
しかも、あっと驚くような形で!

『メイン・ディッシュ』は登場人物たちもとても魅力的。
まずねこさん。彼女、サバサバした女の人なんだけど健気なところも実はあったりします。
多くの話が彼女の視点、語りで進行していくんだけれど
それがユーモラスでとっても楽しい。
そんでミケさん。彼は独自の空気感を持った人でその空気感はきっとみんな好きになると思う。
そして茶目っ気たっぷり。キッチンマジックの回のミケさんのなぞなぞには「そりゃないよ」と
つっこみたくなる。何といっても意外性ナンバー1だし。
そして忘れちゃいけないのが小杉隆一。小杉は紅神楽の座付き作者です。
自惚れ屋で欲深く、小心者で空気を読まない、と何かイヤな奴っぽいんだけどどこか憎めない。
小杉とねこさんとのやり取りがとっても面白い。
小杉とねこさんにはお互い信頼し合ったキズナのようなものがあるんだなぁと読んでて思った。
(こんなこと書くとねこさんににらまれそうだ…)
小杉の迷推理によって幾度も話をとんでもない方向に持っていかれるが
ミケさんが小杉に対して敬意をはらっているように
もしかしたら天才!?と思わせるところもあったりする小杉。やっぱり憎めない。
そしてちょっと好きになる…。

『メイン・ディッシュ』の変わった特徴に料理がものすごく出てくるってのがあります。
本当にいろいろと出てきます。
出てくる料理はわりと身近なものが多くて(カレーとかチャーハンとか果てはゆで卵まで)
それでもそういった料理がとっても美味しそうに書かれています。
料理なんて普段あんまりしないけど何だか作ってみたくなりました。
読んでて美味しい小説です。

ちょっと長々と感想書きすぎたかな。
とにかく『メイン・ディッシュ』はとっても面白かったです。
後半は読み終わってしまうのが惜しく思えるほどだった。
こんな気持ちになったのも久しぶりでした。


『メイン・ディッシュ』 / 北森鴻 / 集英社文庫
ジャンル:小説 (連作ミステリ/料理)
おすすめ度:★★★★★
は最大で5つです)


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