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取引/真保裕一(小説)

2008-04-08 22:56:42 | 読書
今回の記事は『取引』(真保裕一、講談社文庫)です。
建設業界の談合問題について扱った社会派ミステリー。真保裕一さんの昔の作品は、今読んでも全く色あせて感じないのですごいです。近年も防衛省の談合問題が話題になりましたからね。


■内容紹介
公正取引委員会の審査官、伊田は汚職の嫌疑をかけられた。
伊田には全く身に覚えのないことだった。
何者かの策略に嵌り事件に巻き込まれたのだ。
伊田は嫌疑を晴らすために手を打つが、相手はさらに先手を打っていた。
結局、伊田は公正取引委員会を去ることとなった。

一週間後、伊田はある所からの誘いによってフィリピンへと飛んだ。
ODA(政府開発援助)プロジェクトに関する談合事件をマニラで調査するために。
調査対象となるプロジェクト担当者の中に、伊田の高校時代の同級生だった遠山がいた。
友人であることを利用した内偵調査。言い換えれば、友人を騙し陥れるような酷い仕事だ。
しかし、伊田には引き受けざるを得ない事情があった。

調査を進める伊田だったが、予想外の事件が発生する。
その事件を機に自体は思わぬ展開へと進んでいった……。


■感想
※カッコ内の空白はネタバレ反転です。注意!

真保さんが書く小説の主人公はいつもとても魅力的に感じます。
大人の男性が主人公であることが多いんですが、いつも彼らの行動が熱い!
『取引』の主人公である伊田も、冷めた性格と思いきや、後半でとにかく熱い行動を取ります。
冷静さと熱さを併せ持った、ものすごく魅力的な人物へと変わっていきます。

物語の展開はすごく意外な方向へと進んでいきます。
物語は談合事件の内偵調査だけでは終わりません。
フィリピンを舞台にその国に蔓延る問題にもスポットが当たっていきます。
フィリピンの外国人誘拐問題。日本人の児童売春問題。そして人身売買。
これらが伊田が関わる事件に関係していきます。

後ろめたい気持ちで友人の内偵調査をはじめた伊田なのですが、最終的に彼は(なんとか友人を助けたい)という気持ちで行動するようになっていきます。
トーレスですら遠山の復讐に賛同し行動したのに、伊田は何とか遠山を止めようとする。復讐を考える遠山の気持ちは分かるが、友人の犯罪を見過ごすわけにはいかない。友人に過ちを犯してほしくないと伊田は考える。何度も挫けそうになりながらも、ベッドの拘束を解くシーンは本当に感動しました。

物語は(残念ながらとても悲しい)結末となっています。
クリス、そして遠山の身に起きた事態は本当に悲しくてたまらなかったです。
胸にぽっかりと穴が空いたような、言いようのない心の痛みを感じました。
最後の最後、クリスが見せる微笑みが、そんな痛みを和らげてくれました。
けれどやっぱり切ないな。


読んでいて胸が熱くなり、とても感動しました。
途中の展開はスリリングで一時も目が離せず、最後にはすごくシンミリとなります。
かなり長めの小説ですが(講談社文庫版で669ページ)ぜひ読んでみてほしい一冊です。



『取引』 (講談社文庫)
著者:真保裕一
ジャンル:小説(ドラマ/ミステリ/社会派/ハードボイルド)
メモ:小役人シリーズ第2弾(※他作との関連はありません)
おすすめ度★★★★★

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