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水の迷宮/石持浅海(小説)

2008-04-20 23:00:45 | 読書
今回の記事は『水の迷宮』(石持浅海、光文社文庫)です。
美しいミステリの旗手として話題の作家さんの第3作目。
舞台は水族館です。これって何だか珍しいですよね。


■内容紹介
三年前に不慮の死を遂げた水族館職員の命日に事件は起きた。
その日、羽田国際水族館で「館長様へ」と宛てられた紙袋が発見される。中には携帯電話が入れられていた。
音楽が鳴った。
くるみ割り人形のメロディー。
携帯電話にメールが届いた着信音だった。

From:非表示
東京湾の汚染はひどいですね

羽田国際水族館には東京湾の展示水槽がある。
まさかと思い展示水槽へ向かった職員が、水槽内にアルコールが投げ込まれていることを発見する。
メールは展示生物への攻撃を示唆するものだった。
水族館の職員室に不穏な空気が流れた。
「いったい誰が、何のために?」

ざわつく室内にくるみ割り人形が流れた。
携帯電話には差出人非表示のメールが届いた。


■感想
石持浅海さんの本はこの『水の迷宮』で初めて読みました。
『月の扉』から読むのが普通かなと思いつつ、タイトルと表紙に惹かれてまず読もうと思ったのがこの本です。

この小説の舞台は水族館。
ミステリの舞台として、水族館って珍しい。それが最初の印象です。
が、読み進めていって、小説全体に流れる雰囲気自体がミステリにしてはだいぶ変わっていることに気づきました。
何と言うか、物語に殺人事件が似合わない。
これは悪く言ってるのではなく褒めてます。
小説ではあるタイミングで殺人事件が起こり、状況的に職員が容疑者という流れになっていきます。
しかし、水族館の職員の誰もが職員を疑えない。苦労を共にしてきた職員の中に犯人などいない。そんな気持ちを持っています。
それが他のミステリとは違う読み口をこの小説に与えていました。
何だか新鮮。
まだ一冊しか読んでないので分かりませんが、これが石持浅海さんの作風なんでしょうかね?

そんな中、物語の探偵役の深澤さんだけは冷静に客観的に事件を見つめていきます。
というのも、唯一彼だけが水族館職員ではないからです。
かつての友人の命日にたまたま水族館を訪れていた部外者と言う立場です。
頭が切れ、常に冷静なこの深澤さんの「いい男っぷり」が相当にくい。
かっこいいセリフを言ったりはしないんですが、その行動がとにかくかっこいい。
特に終盤での犯人に対しての態度が、もうかっこよすぎる!

事件の真相はとても意外です。
びっくり仰天というほどではなかったですが、続けざまにくる衝撃にやられました。
事件の終わり方はもっとびっくり。
まさかこんな終わり方とは!
でも、こうであったからこそ、何ともいえない美しい余韻が残ります。



『水の迷宮』 (光文社文庫)
著者:石持浅海
ジャンル:小説(ドミステリ/水族館)
メモ:特になし
おすすめ度★★★★

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