ブログ de ビュー

映画や本、テレビ、ゲームの感想がメイン。作品の記事はカテゴリ「索引」から探せます。

西の魔女が死んだ/梨木香歩(小説)

2008-04-05 21:39:03 | 読書

今回の記事は『西の魔女が死んだ』(梨木香歩、新潮文庫)です。
新潮文庫読者アンケート第1位の名作とのこと。
とても温かく、優しい気持ちになれそうな本でした。


■内容紹介
西の魔女が死んだ。
四時間目の授業が始まろうとしているときだった。
まいは事務のおねえさんに呼ばれ、帰りの準備をして校門の所でママを待つようにと言われた。
何かが起こったのだ。
ほどなくしてダークグリーンのミニを運転してママがやって来た。
まいは急いで車に乗り込み、ドアを閉めた。車はすぐに発進した。

「何があったの?」
まいはおそるおそる訊いた。
「魔女が――倒れた。もうだめみたい」
突然、まいの回りの世界から音と色が消えた。
「まだ……、話ができるの?」
ママは首を振った。
「電話がきたの。心臓発作らしいわ。倒れているのが発見されて、そのときはもう脈もなかったみたい」
まいはちらりとママの顔を盗み見た。ママは泣いていた。声も立てずに、ただ涙だけを流して。

ひどく体が重い。悲しいというより衝撃だった。
二年前の季節が初夏へと移り変わる頃、おばあちゃんと過ごした一か月余りのことをまいは思い出していた。
ママが真面目な顔で「そうよ、あの人は本物の魔女よ」と打ち明け、それ以後、二人だけのときはいつもおばあちゃんのことを「西の魔女」と呼ぶようになった、あの一か月余りのことを。


■感想
※カッコ内の空白はネタバレ反転です。注意!

『西の魔女が死んだ』は小学館文学賞を受賞した小説で、2008年6月に映画化も決定している作品です。
著者は梨木香歩さん。
梨木香歩さんの小説はこの小説が初読みです。

この小説はとても温かい気持ちになれる作品でした。
物語の主人公はとても傷つきやすい、中学生の少女・まい。登校拒否がちで、現代社会には生きにくいタイプの子とお母さんから心配されてしまっています。
まいのような繊細で傷つきやすい一面というのは、きっと誰もがどこかに持っているんじゃないかと思う。
みんな、まいのように苦しんだ経験もあるはず。
まいにはとても共感できるんじゃないかと思います。
だから、この小説で描かれる、おばあちゃんとのひと夏の経験は、まい同様、私たちの心の傷を癒し、生きていく力を与えてくれる物語になってくれた。そんな風に感じました。

西の魔女こと、まいのおばあちゃん。
とにかく優しく、まいにそっと生きる力を与えていきます。
彼女はとても不思議な雰囲気をもった人です。そしてとても魅力的でした。
自分が年をとった時、こういう考え方ができる人になれたら素敵だなと思いました。

自分で決めて生きていく。
自分にとっての喜びも、希望も、幸せも。
決めたことを実行していくことは難しいもの。
人はついつい自分に甘えてしまう。
けれど、自分はこうしていくという意志を持つことが生きていく力になっていく。
この作品から、意志の力の大切さを学んだように思います。

人の死についても、この小説は優しい答えを出してくれています。
死は怖くて悲しいもの。
けれど、この小説でおばあちゃんがまいに教える死についての考え方はそんな気持ちを少しだけ和らげてくれる。

ラスト3ページはしんみりと心を打ちました。
まいの(「おばあちゃん、大好き」)の言葉は、とても嬉しかった。
そして、その後の(おばあちゃんの言葉)がとても温かくて優しい気持ちにさせてくれます。

『西の魔女が死んだ』には、本題の「西の魔女が死んだ」の他に、「渡りの一日」という、その後のまいの物語が収録されています。
「西の魔女が死んだ」とはだいぶテイストが違う物語ですが、成長したまいを見れたのは嬉しかった。



『西の魔女が死んだ』 (新潮文庫)
著者:梨木香歩
ジャンル:小説(ドラマ/青春)
メモ:小学館文学賞ほか、を受賞
おすすめ度★★★★

人気blogランキングへ にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ ←ランキング参加中。よろしかったらクリックお願いします。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿