近江商人 Lifelog

近江商人のライフログ、あるいは遺言状の下書き

ブログサービスランキング -戦略分析

2005年01月20日 | ネットコミュニケーション

ブログサービス アクティブ数ランキング(H17.1.18現在)


順位サービス名月間 '04.12週間 '05.1.1st日間 '05.1.18①day/month
1livedoorブログ96,19762,08021,65622.5%
2楽天広場90,02663,17229,99833.3%
3NAVERブログ80,19047,59914,99318.7%
4ヤプログ43,52432,14313,97732.1%
5エキサイトブログ40,08429,82612,68531.6%
6はてなダイアリー36,36329,92115,12541.6%
7gooブログ35,69525,67911,42832.0%
8JUGEM18,34111,9374,71125.7%
9ココログ16,22211,3944,20925.9%
10ドリコムブログ14,07110,0843,83627.3%
11アメーバブログ13,7629,4763,97128.9%
12Seesaaブログ13,611 9,570 4,22031.0%
13Doblog5,999 4,2101,92332.1%
14ブログ人5,713 4,0621,60028.0%
15AOLダイアリー1,584 1,062 45528.7%


2004年はブログの年(SNSの年、ということもあるが)と言われ、ネット業界内では最もホットなサービスカテゴリとしてベンチャー、ポータル、ISP各社が競ってブログホスティングサービスに参入しましたが、このところ徐々に各社の戦略の成否が分かれ始めています。上記は「アクティブユーザ」を軸にして月・週・日毎の更新ユーザ数を計測したランキングです。各社が「ブログ開設数」を喧伝しているために、一体どのサービスが本質的に好調なのかがわかりにくくなっているところですが、実際の更新ユーザ数で序列すると実態としてのサービスごとの成績が現れてきます。この数字から特徴的な事業者の戦略とその状況を分析してみましょう。

表の通り、月間ベースでのアクティブユーザ数でトップを走っているのは「livedoorブログ」です。開設数では31万超え(1.20現在)となり”No.1ブログサービス”を公言する彼らですが、実際のアクティブユーザ数でも確かにトップはトップのようです。ただし、デイリーのアクティブと月間のアクティブの比で見ると(表の①day/month行)あまり活発なユーザが多いわけではありません。堀江社長としてはユーザの質やエントリー内容の質などにこだわることなく、とにかく「ブログNo.1」の座にこだわろうとしているようです。ポータルTOPページとブログTOPページを統合するなど、一層ブログ事業への傾注を進める彼らですが、果たしてこの量的No.1戦略が奏功するかどうかは見ものです。

国内でのブログ熱が高まる以前からCMSによる日記サイトとして人気の高かった「楽天広場」が月間アクティブユーザ数で2位につけています。昨年の5月に予告なく突如20万以上の日記からPingを飛ばし始めてPingサーバ運営者から大ブーイングを受けた楽天広場ですが、その後も着実に開設数も伸ばしています。彼らの場合、出自であるEコマースを軸としたコミュニティとして発展を遂げているためブログ間の”口コミ”を介した消費への相互誘導が活発に行われています。昨年後半にキーワードとなり始めた「CGM」(=コンシューマ・ジェネレイテッド・メディア)の観点からすると、掲示板やSNS、Q&Aサービス等を含めた国内のCGM事業者の中で最も先を走っている状態と言えるでしょう。また、デイリーのアクティブ数ではlivedoorブログを大きく引き離してトップとなっており、「買い物」を中心としたコミュニティの活力・粘着性が比較的高く保てています。今後は、これまで立ち上げから運営を担当していた田中良和氏がグリー(株)の設立に伴って離脱したことによる人的リソースの穴を楽天の組織力でしっかりと埋めた上で、現時点のCGMとしてのリードを保てる運営や機能強化を継続できるかどうかがポイントと思われます。

月間アクティブユーザ数で4位につけている「ヤプログ」は、H16.6月サービスインという後発組でありながら、キャラクターテンプレートやポップなサイトデザイン等による”かわいい”イメージ戦略やネットピープルに人気の高いまつゆうさんを起用したバイラルマーケティングなど、若年女性向けにチューンしたマーケティング戦略が功を奏して着実な成長を遂げています。ブログホスティングサービスを一つのコミュニティ=場と見たときに、「若い女性の集まるところに男も集まる」という法則に則った成功例(ここまでのところ)と言えるでしょう。今後は慢性的な表示速度の遅さなどのサービス品質の向上が課題となりそうです。GMO熊谷社長がご執心(ながらあまりうまく行っているようには見えない)な検索事業からプライオリティを切り替えてくるかどうかがポイントと思われます。

2003年1月からサービスをスタートし、2004年上期頃までは最大開設数のブログサービスと言われていた「はてなダイアリー」は月間アクティブユーザ数では6位に甘んじています。しかしながら、day/monthで見るとダントツのトップとなっており、キーワードリンクによる共同編集辞書機能が軸となって生まれたクラブ活動や互助会といったコミュニティの輪やユーザの機能要望自動収集→運営サイドが検討し改善するといったユーザの声を重視する運営方針が、より密度が濃く質の高いコミュニケーションを生み出しているようです。10月~11月に起こった「住所登録問題」で一部のユーザが離反したものの、迷走劇が大きな傷を残す結果とはならなかった様子。今後は、生来のポイント流通基盤(=会員流通貨幣の存在)をCGMとしての強みにどう変換できるかがポイントになりそうです。

最後に、当ブログを置いている「gooブログ」については、数字的にはなんとも”中くらい”な位置にいる状態ですが、gooラボと銘打つ商用実験でブログ全文検索やリアルタイムで全ブログからのリンク対象サイト集計ランキングを提供したり、携帯で撮影した動画を直接アップできる機能を提供するなど、他事業者とは一風変わった周辺サービス・機能が特徴になっています。また、上位のブログサイトが悩んでいる表示速度の面が良好で、NTTグループらしい設備余力を感じさせます。ただターゲットが不明確で色が見えないため、エッジなものを好むブログユーザには決め手に欠ける感が否めないところが課題と思われます。よかれ悪しかれ数字的に”中くらい”なのですから、今後はもう少し誰にどういうふうに使ってほしいのかを明確にすることが肝要と思われます。


2004年、雨後のタケノコのように乱立したブログホスティングサービス群も、今年は各社それぞれの戦略の中で”ビジネスベース”に乗せることが要求される時期を迎えます。また同時に、現時点ではまだまだマジョリティには十分リーチしていない「ブログ」という極めてインターネットらしい可能性を秘めたサービスを、現在の勢いを止めることなく一般層に普及させていくことも大きな課題です。片側では、ソーシャルネットワーキングにカテゴライズされているものの、これらブログサービス群同様に日記を軸としたコミュニティである「mixi」が、23万ユーザ×70%のアクティブ率という脅威の粘着力でユーザを囲い込み、なお成長速度を速めています。
「個」の時代、「コミュニケーション」の時代と言われる中で最もアツい「CGMの覇権争奪戦」が今年どのように進行するか、楽しみにウォッチしていきましょう。

出展:blogfan.org