「〇〇のインターン通った」、「自己PRが書けない」など就活関連の言葉が連日のように聞こえる。私も就活のことは考えているが、この日はそんなことどうでもよかった。ESの書き方や自己分析より、目の前で歌うミック・ジャガーや、ギターを弾くキース・リチャーズのほうが大事だった。
『ザ・ローリングストーンズ オレ!オレ!オレ! ア・トリップ・アクロス・ラテン・アメリカ』を新宿のTOHOシネマズで鑑賞。当初は、一人で観に行く予定だったが、「誰か共有できる人と見たい」という思った。しかも、一夜限りのプレミア上映なので、よりなおさらだ。しかし、大学生でストーンズ好きとなると、そう周りにはいない。いや、一人いた。同じゼミのゼミ長だ。古い音楽に精通し、2014年のストーンズ来日公演に行った私の周りにいる数少ないストーンズ好きだ。
誘うのに要した時間はわずか5分。女の子をデートに誘うときも、それぐらいだったらいいのに。ストーンズ好きだったら行けるのかな?
余談はさておき、本題に移ろう。この映画は、今年の2月~3月に南米10都市で行われたローリングストーンズのツアーを追ったドキュメンタリー映画。ライブはもちろん、楽屋でのメンバーの様子、現地の人へのインタビュー、そして歴史的な公演となったキューバ公演に向けて奔走するスタッフたちが撮られていた。これまでストーンズのライブ映画は、たくさん公開されてきたが、ツアーの裏側を撮影した映画は、これが初めてだと思う。確かに、今回の南米ツアーでは、アメリカと国交を正常化したキューバで公演を行い、歴史的にも政治的にも意味のあるこの公演の裏側を撮るには、充分価値がある。
アルゼンチンから始まった今回のツアーは、チリ、ブラジル、コロンビア、ペルー、ウルグアイ、メキシコ、キューバを回った。各都市には、メンバーの様々な思い出がある。ブラジルのサンパウロでは、ロニー・ウッドの絵描き仲間ががいる。彼は英語がほとんど喋れないが、絵を描くのに言葉はいらなかった。絵を描くことがコミュニケーションのツールになっていてカッコいい。
南米では大人気のストーンズも、若いときには無名だった。その頃、ミックたちと一緒にブラジルに休暇に行った。そこで、生のサンバを聞いて生まれたのが「Sympathy for the devil」。さらに、宿泊先で完成した「Country honk」。「Honky-tonk women」の原形だ。劇中では、ミックとキースがブラジルでの思い出を語り、「Country honk」を歌った。キースがアコギを弾いて、ミックが歌う光景はファンにとっては涙ものだ。
現地の音楽を堪能するメンバーと同じく、観ている私も南米の音楽や文化に触れあえた。南米の人々は、情熱的で、陽気で、音楽好き。そして、以外にもストーンズファンが多かった。アルゼンチンには、ロリンガ族と呼ばれるストーンズの熱狂的なファンがいた。南米の人々と私は、どうやらウマが合いそうだ。
アメリカやイギリスの音楽が南米の人々に、南米の音楽がアメリカ人やイギリス人へと影響を与えている。劇中で、どこの国かは忘れたが、現地の人が「音楽は国境を越える」と言ったが、まさにその通りだ。
帰りの電車でもストーンズ祭り。世界一大好きなバンドは、私に至福の一時を与えてくれた。12月2日には11年ぶりのアルバムが発売される。待ってられない。就活よりも今はストーンズだ。
Viva The Rolling Stones!!
『ザ・ローリングストーンズ オレ!オレ!オレ! ア・トリップ・アクロス・ラテン・アメリカ』予告編
「Country Honk」ミックとキースの弾き語り。ファンじゃなくても必見