夜明けのダイナー(仮題)

ごった煮ブログ(更新停止中)

SS:Candee-Graffiti <その1>

2010年11月28日 17時24分47秒 | ハルヒSS:長編
   <プロローグ>
 
季節は夏。 もちろん誰に聞いても夏なのだろう。 只今俺は高校2年生の夏休みを過ごしている。 
去年の終わらない夏休みの再現を回避すべく宿題は7月中に済ませ、8月は盆休みの帰省を除きSOS団に振り回されたのは……既定事項なんだろう、やれやれ。

「さあ、行くわよ! 特にキョン、暑さにやられてる暇は無いわ!!」
はてさて、今回は何回目の不思議探索になるであろうか、夏休み最後の土曜日。 こんな暑さじゃ不思議とやらも夏バテで大人しくしてるだろうに。
「なあ長門」
「……何?」
「図書館、行くか」
「……行く」
今回は長門とペア。 こんな暑い日は涼しい所へ逃げるに限る。 が、同じ思考の輩が多いせいか図書館は混雑していた。 おーおー、夏休みの宿題に追われている連中の多い事、多い事。 ご苦労なこった。
さて、何を読もうかな。 既に長門は蔵書の海の中へ消えていた。 俺は適当にタウン情報誌を手に取り読み始める――。
 
気が付けば昼の集合時間に近くなってるな。
「長門、行くぞ」
「……承知した」 今回は珍しく何も本を借りずに外に出る長門
「どうした長門。 珍しいな、本を借りないなんて」
「……あなたに伝える事がある」
「何だ?」 
何となく、と言うより当然と言うべきか、何かあるんだろうな。 『やっかい事』が。
「……天蓋領域との対応に疲弊したわたしに対して情報統合思念体はバックアップを派遣する事となった。 来るのは8月31日・月曜日」

――そう、この夏休みの間、実に様々な事件が発生していた。 ハルヒは退屈だと思って居たのだろうが、その裏では非常にやっかいな出来事が繰り広げられていたのだ。 詳細は時間の都合上、割愛させて頂く。 そりゃあ長門も疲れるだろう、またエラーを発生されてはかなわん。
しかし『バックアップ』か。 何やら脇腹が痛み出したのだが……。
「そうなのか」
「……その日、わたしの部屋に来て」
「解った」
 
 
数日後、8月31日。 今回の夏休みはエンドレスにならない、と思う。
「おう、来たぞ」
「……入って」
例のマンションの例の部屋。 まあ長門の部屋なのだが、クーラーの効いた部屋で麦茶を飲んでいると奴はやって来た。

      『ピンポ~ン』

「……来た」
やって来たのは予想通りの顔だった。 やれやれ、他に居ないのか、思念体とやらに人材は。
「ヤッホ~、キョン君。 久し振り♪」
――Loveletter From Canada、か。 いやDeath Letterだな。 俺の名前はデ○ノートにでも書かれているのか。
「……パーソナルネーム朝倉涼子を再構成。 バックアップとして任務に復帰する事になった」
「明日から学校に行くから宜しくね」 マジか。
「なあ、何で朝倉なんだ?」
「……涼宮ハルヒから見て不自然に思われない人物」
まあ、1年の時に在籍していたから問題ないと思うが、急に転校して行ってまた戻って来たと聞いたら、またいらん行動を起こされるのは目に見えるな。 『転校と復帰の理由を追及するわよ!』とか言って。
「あと、あなたが言ってたじゃない。 あの空間で……ほら、下手すると世界崩壊の危機だった時に」
ま、まさか『そこに消えちまった朝倉を含めても』って奴の事か!?
「嬉しかったわ。 まさか自分を殺そうとした相手の事を想ってくれてるなんて♪」
おいおいおい、そんなのが朝倉を選んだ理由ってのか。 なんたら思念体とやらは。 でも仕方あるまい。 他の見知らぬ人物が来るよりは、何であれ見知った人物の方がマシなんだろうな、多分。
「あと、もう1つ疑問なのだが。 もう俺を殺すなんて事は無いだろうな?」
1回殺されかけて、1回刺された相手なんだから、平静を装っても当然浮かんで来る疑念であるよな。 常人なら速攻で拒否したいであろう事象なのだろうが、俺には拒否権は無いのだろう。 国連常任理事国が羨ましいぜ、全く。
「……大丈夫、わたしがさせない」
「その前に急進派としても、あなたの存在が重要なのは認識されて居るから問題無いわよ。 むしろ、私もあなたの護衛任務の命令が下されているの。 心配無用よ」
そうなのか、とりあえず一安心と言った所か。 むしろ問題はハルヒの出方、か。



 
    <Sep,1st>
 
さて、新学期。 何時もの如く妹のフライングボディーアタックを受け、残暑が非常に厳しい暑さの中、また地獄のハイキングコースを登る毎日が始まる。 教室に入ると
「あ、おはようキョン」
「おっす国木田。 谷口も元気そうだな」
「ようキョン。 夏休み中は涼宮とデート三昧で~」
「……誰と誰がデート三昧ですって~?」
お、涼宮大明神のお出ましか。 谷口、新学期早々哀れな奴。 骨は国木田に拾ってもらえ。
「あ~あ、谷口も相変わらずだね。 夏休み中はナンパ三昧、そして玉砕三昧で。 しかも宿題片付けて無いんだって。 キョンはどうなんだい?」
「俺か? SOS団の合宿を使って7月中に仕上げちまったよ」
「すごいねキョン。 その集中力があれば成績も上がりそうだね」 それはまた別の問題だと思うぞ国木田。 おっと岡部がきた、HRが始まる。
「皆、久し振りだ。 元気そうだな、夏休みはどうだった?」 谷口が居ないのはスルーですか。
「さて、2学期早々何だが、転入生を紹介するぞ」 ざわつくクラス内。
「ちょっとキョン! この時期に転入生ですって?」 やっぱり食らいついて来たかハルヒよ……そいつが宇宙人ってのは黙っておくぞ。
岡部に呼ばれ教室に入って来たのは、谷口調べAAランク+の美少女
「元・1年5組の人は久し振りです。 カナダから戻って来た朝倉涼子です。 宜しくお願い致します」
カナダの両親の都合がどうのこうの言ってたが、まあ情報操作って奴なんだがな。
――おい朝倉、何で俺の方を見て笑顔で手を振る!? 一斉に俺に注目するクラスメイト達。
「キョ~ン、どう言う事かしら~? そう言えばアンタ冷静よね。 ひょっとして朝倉と連絡取ってて転入するのも知ってたんでしょ? 白状しなさい!」
あのなぁ、人間驚き過ぎるとリアクション取れずに呆然とする事もあるんですよ……ってクラスの皆さん聞いてますか?
あれ、何故皆様ジト目なんですか? 針のムシロって奴ですな、これ。 あの、俺、何かしましたか。 矢張り此処で出る台詞は
 
      「やれやれ」
 
 
始業式の本日は短縮授業で半日、しかし午後から団活がある。 持って来た弁当を持って部室に向かう。 ノックしてもしも~し。
「はぁ~い」 おっ、2学期早々エンジェル・ヴォイスが聞けるとは、これは幸先よろし!
「こんにちは朝比奈さん。 よっ長門、古泉」
「…………」
「いや、どうも。 転入生騒ぎで大変そうですね」
「よく知ってるな。 機関の情報って奴か?」
「それもありますが、先程、長門さんからも聞きました」 長門は隣のクラスだし、喧騒は筒抜けな上に元々誰が来たか知ってる訳だしな。
「2学期始まったばかりなのに、どっと疲れたよ」

ハルヒは何か急用とかで遅れて来ると言う事で、4人で近況報告。 佐々木団騒ぎも一段落し、当面は平和な日々が続くのでは無いかと言うのが総意だ。 あとはハルヒのご機嫌次第ってな訳か。
この話題が終わったのを見計らったかの様に100wの笑顔を湛えた台風がやって来た。 まあ9月だから台風シーズンな訳ではあるが。
「やっほ~、皆居る? 4人揃ってるわね!」 おう、待ってたぞ。 ってか、何やってたんだ。
「ふっふ~ん、聞いて驚かないで。 新戦力の入団発表するわよ!!」
ハァ? SOS団に入ろうとする奇特な奴が居るとは……ま、待てよ。 宇宙人・未来人・超能力者が居ると言う事は、まさか残りの異世界人発見か!? そんな奴が北高に居たのか!?
「どうも、朝倉涼子です。 宜しくね♪」 って、お前かよ! 宇宙人2人体制でハルヒの監視か。
「初めまして、2年9組の古泉一樹です。 お見知りおきを」
「3年の朝比奈みくるですぅ。 宜しくお願いしますぅ」
そうか、この2人は初対面だっけ、一応。 まあ情報として互いに認識してるのだろうが、ハルヒの手前、平静を装う方が良いに決まってる。
「なあ、ハルヒ」
「な、何よキョン」
「決まってるじゃない。 SOS団に欠けてた萌え要素の一つ、『委員長』よ!」
――確か今日の始業式後のHRで、クラス委員長が朝倉に職を譲りたいと申し出て、少し考えた後「いいわよ」と返答。 朝倉の委員長復職が決まった訳だが
「そんな理由かよ! って言うか、朝倉、お前は良いのか?」
「何よ、涼子ならオッケーしてくれたわ。 さすが委員長、話が解るわね」 そう言う問題か、ハルヒよ
「あらキョン君、心配してくれるの? 嬉しいわ♪ でも心配要らないわよ。 だって楽しそうなんだもん、この部活。 1年の時と比較して涼宮さんも社交的だし」
さいですか、何も言う事はありませんよ。 所で何で他の4人がジト目で俺を見るんですか? 古泉、ポーカーフェースが崩れてるぞ、スマイルスマイル。 朝比奈さん、北高1の美人が形無しですよ。 って長門、お前まで何故だ? ハルヒは……ジト目自体は別に見慣れてるが、理由が解らん
「……スケコマシ」 何ですと?
「キョン君、プレイボーイですぅ」 あ、あのぅ
「無駄な優しさは時に命取りですよ」 古泉、意味が解らん
「キョ~ン? 何故か涼子には優しいわね。 何があったのかいい加減白状しなさいよ!」 は、ハルヒさん何か勘違いしてませんか?
確かに2回殺されそうになったのは禁則事項なので話せませんがね。 しかし、こんな居心地悪かったっけ、この部室。 いかん、話題を変えねば
「そんな事よりハルヒよ、今日の団活は何をやるんだ」
「何も無いわ」 だろうね。
と言う訳で昼食の弁当を食べた後、2学期最初の団活は通常通り。 俺は古泉とボードゲーム、長門は読書、ハルヒはネットサーフィン。 朝比奈さんはお茶汲みの後、朝倉と何やら会話している。 女の子同士の普通の会話、ファッションや流行の話題が中心みたいだ。
 
 
所で皆様はお気付きだろうか、ハルヒが朝倉を『涼子』と呼んでいる事に。 今朝の段階では『朝倉』だったのだが、やはり団員となって距離が近くなったせいであろう。 俺が『涼宮』から『ハルヒ』と呼ぶようになったのは――「きっかけ」か。
人生、どう転ぶかなんて解らない物だな。 なあハルヒよ、これこそ不思議って奴じゃないのか?
 
    パタン
長門の本の閉じる音で終わる団活、さて帰りますか。
「あ、わたし職員室に用事があるから」 朝倉、早速委員長の仕事か? 大変だな。
残った5人で下駄箱に向かう。 おや、何やら手紙が
「あ、すまん皆。 教室に忘れ物をした、先に帰ってくれ」
「何よキョン、間抜けね……バイバイ」
「キョン君、お先に」
「失礼します」
「……」
人気の少ない場所で手紙を読む。 何時ぞやみたいにノートの切れ端に
『元・1年5組の教室で待ってます』  これは、やはり――。



 
      <告白>
 
と言う訳で、元1年5組の教室へ向かう。 あの時と同じ、夕暮れの教室で待って居たのは
「やっぱりお前か」
「入ったら?」
「何の用だ、朝倉」
前回と違うのは、教卓の前に居なくて……あの席に座っていた
「なつかしい、って言うのかしら。 その辺りの感情は良く理解出来ないんだけど」
「お前の席はそこじゃ無くて、もっと前の方だったろ」
「そうね、『この世界』ではね、でも」
「『あっちの世界』では、お前の席は此処だった、な」
そう、去年の冬のあの悪夢では、朝倉の席は俺の後ろ……教室の窓側・一番後ろだったよな。
「知ってて、この席で待ってたのか」
「そうね、この席だったら、あなたと……」 俺も元・自分の席に座り
「本題に入ろうか」
「せっかちね。 もしかして涼宮さん達を待たせてるの?」
「いいや、先に帰って貰った。 待たせるのも悪いしな。 『教室に忘れ物をした』と言って来たのだが」
「『忘れ物』か。 私もこの教室に忘れ物をしたのかもね」
「どういう意味だ」
「思い出、って奴かしら」 そうか、去年、この教室で消えちまったからな。
「長門さんとの同期で、消滅してから現在までの情報はデータとして入ってはいるんだけど、私は実際に見たり経験した訳じゃ無いから。 何か、羨ましいな。 って思って」
「思い出、か。 確かに約1年、空白はあるのだろうが、これから先は居るんだろ? この世界に。 だったら作れば良いじゃないか。」
「ふふっ」
「何が可笑しい」
「だってキョン君優しいもの。 仮にも2回、あなたを殺そうとした相手よ、私」
「でも今は違うんだろ?」
「ありがと、信じてくれて。 もの凄く嬉しいな」 
AAランク+の笑顔が夕日に輝いて見える……い、いかん。 見とれてる場合では無い。
「所でキョン君、今から暇かしら?」
「いや、特に用事は無いが、何だ」 やっと本題か
「夕食の買い物、付き合って♪」  をおい!!
「それが本題かよ!」
「だって、荷物重いし、長門さんの分もあるから。 だって彼女、放っておくとレトルトカレーで済まそうとするんだもの。 わたしが居ない間はずっとレトルトだったみたいだし」   まあ良いか、と言う訳で朝倉と下校する。

「ねえキョン君」
「何だ」
「何時から涼宮さんを名前で呼ぶようになったの?」
「急に何を言い出すかと思えば。 その、何だ『消えちまった朝倉を~』とか言った後、あの空間から出て来た後だが」 それがどうした
「確か涼宮さんにキスして戻って来たのよね」
「そうそう……って、おい! 何でそれを知っている!?」 この小悪魔め、知ってて聞いてたのか。 ナイフで刺すより性質が悪いぞ
「ふふっ、キョン君面白い♪」
「あのなぁ」
その後スーパーでも「こうして買い物してると夫婦みたいね」とか言って来たり、単に俺をからかって楽しんでるんじゃ無いのか、朝倉よ。
そして朝倉の部屋……長門の住んでいるマンションの505号室だが
「初めて来たな、ここ」
「いらっしゃいませ」
「なあ、この荷物、何処に置く?」 俺の両手には一杯になっているスーパーの袋、重かったぜ
「あ、ちょっと待って♪」
先に台所に荷物を置いて来た朝倉は、玄関で待っていた俺に
 
 
      ――キスをした
 
 
「な、何しやがる!!」 両手が塞がってるのを良い事に
「うふ、お礼よ。 お・れ・い! ほら、向こうでは挨拶みたいなモノでしょ」
「お前、マジでカナダ行ってた訳じゃないだろ」
「そうね」
「あと『あいさつ』だからって、他の奴にもする気か?」
「……する訳無いじゃない」 どう言う意味だ? と思った次の瞬間
 
 
 
      「好き」
 
 
 
朝倉に抱きしめられる。
「あ、朝倉?」 何をなさって、何をおっしゃってるのですか? それより両手のこの荷物を……それより『好き』って、誰が、誰を!?
「これってエラーじゃないわよ」
「ま、マジか」
「あなたは、どうなの?」 お、俺ですか。 う~ん、こいつの見た目はそりゃクラス、いや学年、ううん北高で5本の指に入る美人であるのは確かだ。
もちろんスタイルも抜群。 おまけに文武両道、まさにパーペキである。 そんな奴……実態は宇宙人ではあるのだが、何故俺に?
「……それとも涼宮さんが気になるの?」
は? 何故ここでハルヒが!? これまた見た目は北高で5本の指に入る美人だろうな。 しかし朝倉と正反対で性格に難あり。 あ、朝倉は俺に対しては小悪魔的悪さがあるな。 う~ん、どっちも捨て難い……じゃ無くって!!
「おい、ちょっと待て」
「何? キョン君」
「いきなり告白されても困る。 俺の回答は全くの白紙だ、すまん」
「そうよね、いきなりゴメンなさい」
「そもそも俺の何処が良いんだ」 そうだ、凡人代表の俺の何処が良いんだ
「……優しい所」 はぁ?
「何処がだ? 全くもって自覚が無いのだが」 まあ、朝比奈さんに対しては優しいつもりだがな
「復活したわたしを受け入れてくれたじゃない」
「耐性が出来てるんだろうな。 俺の周りに不思議が発生し過ぎてるからな」 カムバック、俺の日常。 平凡ライフ・リタ~ンズ!
「まあ、良いわ。 いきなり返事を求める方が間違ってるわよね。 それよりどう? 夕飯、一緒にしない?」 う~む、そうだな
「ごちそうになるよ、悪いな」
「荷物持ってくれたお礼よ」 キスに加え食事まで。 あ、家に連絡せねば。
 
朝倉の作ってくれた夕飯は『冷しゃぶ』だった。 残暑厳しいこの季節には適している――誰だ『おでん』とか思った奴は。 さすがに熱いのは勘弁してくれ。
夕飯時の会話は朝倉の居ない間のクラスでの出来事がメインだ。 長門との同期では不足している部分を……って、そう言えば
「なあ、長門を呼ぶんじゃ無かったのか?」
「あ、忘れてた!」 おい!! 意外にドジっ娘か?


 
   <変革~Evolution~>
 
次の日の朝、教室にて……あ、昨日は夕飯後すぐに帰ったぞ。 泊まる訳無いだろ。
「あ、おはようキョン君♪」
「よう朝倉、昨日は悪かったな」
「……キョ~ン、『昨日は悪かった』って、な~に?」 うおっ、ハルヒ!?
「な、何でも無いぞ」
「あら涼宮さん、おはよう。 昨日の夜、キョン君を夕飯に誘ったんだけど、それがどうしたの?」
一瞬にして静まり返る2年5組の教室、まさに『閉鎖空間』だな。 古泉、助けてくれ。
「な、な、な、何ですって~!?」 おいハルヒ、ネクタイ掴むな。 マジで苦しい!
「夕飯の買い物手伝ったお礼に食べさせて貰っただけだ」 
「だーかーらー、何でキョンが涼子の夕飯の買い物を~?」
しまった、完全に地雷を踏んだな。 朝倉、今すぐ俺を刺してくれ。 こんな針のムシロに立たされている位なら、いっそ一思いに……。
「あー、シュラバってる所悪いが、HR始めて良いか?」 は、早く始めて下さい。 神様・仏様・岡部様――。
 
ちなみに昨日、朝倉が転入したあおりで席替えが行われた訳だが、俺とハルヒの位置に変化は無く、俺の右隣に朝倉が来た。
今にして思えば、これは朝倉の情報操作だった訳か。
 
    やれやれだ、ああやれやれだ、やれやれだ。
 
「ねえ、キョン」
「何だ、ハルヒ」
「あんた、涼子の事どう思ってるのよ?」
「……別に」
「ふ~ん」 おい、昔の席ならともかく、朝倉本人は俺の隣なんですが。 モロに聞かれてますよ、ハルヒさん。
ほら、朝倉がニヤニヤ笑ってこっち見てるし――あの~クラスの皆さん、生暖かい目でこっちを見ないで下さい。
あと谷口、「ごゆっくり~!」って泣きながら出て行ったが、授業はこれからだぞ? 昨日に続いて欠席扱いになるぞ。
 
そして昼休み。 通常ならば俺は谷口・国木田と共に、そしてハルヒは阪中と弁当を食べるのが定番なっていた。 元々ハルヒは学食派だったのだが、阪中に誘われてからは自作の弁当を持って来る様になっていたのだ。
「涼宮さん、お昼一緒にしても良いかしら?」 お、朝倉がハルヒと一緒に弁当か。
まあ、これが去年なら箸にも棒にも引っかからずハルヒに拒否されて終了だったのだろうが
「え、涼子!? い、良いわよ別に」 
「阪中さんも良い?」 
「うん、良いのね。 食事は大勢の方が楽しいのね!」
昨日からとは言え、SOS団員になった朝倉をハルヒが拒否する筈が無い。 
「さ、谷口・国木田、食うぞ」
何時の間にか戻って来た谷口が「お前は俺達と食べて良いのか」と言って来た。
「どう言う意味だ?」 
「相変わらず鈍いね、キョン」 おい、国木田まで何だ?
「朝倉さん・涼宮さん・阪中さん、僕達と一緒にどう?」 く、国木田!? 何を血迷っておられるのかな、何を?
「あら、良いんじゃない」 あっさりO,K,かよ、朝倉。
「ふぇ?」 ハルヒよ、何だそのリアクションは。 可愛いじゃねーか……って、誰が可愛いって!? 俺まで血迷ったようだ。
「良いのね、楽しそうなのね!」 のねのね連発で、本当に楽しそうだな阪中。
 
――と言う訳で教室後方・窓際にて6人、机を並べてランチタイム。 そんな構図が出来上がったのである。
 


     (その2へ続く)


    

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