夜明けのダイナー(仮題)

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SS:Candee-Graffiti <その4>

2010年11月29日 21時40分01秒 | ハルヒSS:長編
        
       (その3より)


    <エピローグ1・文化祭準備>
 
俺とハルヒが教室に戻ったと同時に岡部教諭がやって来た
「おはよう、皆。 所であと1ヶ月もすれば文化祭だ」
と言う訳で朝倉委員長主催で『出し物決め』が開催された。 途中のやり取りは省略させて頂くが、我が2年5組の出し物は『カレーハウス』に決定。 男子が調理と盛り付け・女子が下ごしらえとウェイトレスをやり、男3人・女3人の計6人で1つの班で店番をする事になった。
そこで、自然な流れで決まったのが
   俺・谷口・国木田の調理班 と
   ハルヒ・涼子・阪中のウェイトレス班の組み合わせ、だ。

その日の昼食時、何時もの様に6人で弁当を囲んでいると
「クラスで1・2を競う美女がウェイトレスで、同じ班とくりゃやる気がでるな」
「谷口君、それは他の女子に対して失礼なのね!」
「そうだよ谷口、阪中さんも可愛いと思うよ」
「国木田、お前……」
「キョン、何か勘違いしてないかい? 僕は一般論を述べただけだよ」
「でもよぉ、この美女2人共、揃いも揃ってキョンにベッタリなんだからなぁ」 阪中と国木田の話、聞いてたか? 谷口よ。
「あら、谷口君」
「キョンは、もう、どっちと付き合うか決めたわよ!」
 
      『えっ!?』
 
クラスメイトが一斉に反応する。 おいお前等、今まで各々別の話題で盛り上がってたんじゃないのか? 戻れよ、戻れ。
「げっ、マジか!」
「どっちを選んだい?」
「教えて欲しいのね!」
俺は、今朝選んだ答えを言った――教室中が静まり返る
「そうか……決めたのか、キョン」
「それじゃあ、この6人で食べるのは、これで最後になるのかな」
「淋しいのね」
「「今日が最後じゃ無いわよ!」」
 
      『えっ!?』
 
おい、お前等。 だから自分達の会話に戻れよ。 聞き耳たてるな! しかも何故か廊下にまで人だかりが何時の間にか出来てるし……このクラスに芸能人は来てないぞ。 帰れ、帰れ。
「どう言う事だ!?」 米粒飛ばすな、汚いぞ谷口。
「キョンの答えは出たんだよね」 そうだが、国木田。
「教えて欲しいのね!」 さっきと同じ台詞だぞ、阪中。
「だってキョンが『出来るだけ今まで通りで』って言ったから」
「そうよ。 あと別に涼宮さんと喧嘩したい訳じゃ無いし」
「そう言う事だ、心配しないでくれ」

――実は2人にそれぞれ俺の思いを伝えた時、『選んだのはどちらかだが、クラスメイトとして、SOS団の仲間として、他の事に関しては今まで通りで』と言ったのだ。

何故かは知らないが、生暖かい視線が教室内外から注がれている気がするのだが、気のせいだろうか。
「流石だな、キョン!」 いや谷口、意味が解らん。
「良かった、良かったのね……」 阪中、何を泣いてるんだ?
「それじゃ、朝食と弁当は?」 そりゃあ、国木田――

   「「今まで通りよ!!」」
 
      『えっ!?』
 
これには俺も驚いた、マジか!? ハルヒ・涼子、本気か?
「あら、キョン君。 だって」
「あんた『今まで通り』って言ったじゃない」
「確かに言ったが」
「それじゃあ問題無いわよね♪」
「だから、このローテーションに変化は無いわ!」
「「今まで通り、これからも続けるわ!」」 やれやれ。
おい谷口、箸が止まってるぞ。 あと、口を開けたままフリーズするな、みっともない。 国木田、ニヤニヤするな、何か面白いことでもあったか? 阪中、何時まで泣いてるんだ。 早く食べないと次の授業始まるぞ。
そうだ、他の連中も早く食べないと。 昼休憩、無駄になってしまうぞ?
 
      『やれやれ』
 
――全校生徒の流行語になっているのか?
もし流行語大賞に選ばれたら、俺が表彰されるのか!? 全くもって、やれやれだ。



 
     <エピローグ2・SOS団>
 
まあ、無駄な争いを起こすよりはハルヒと涼子、2人共これからも仲良くやっていってくれるなら安泰だろう。
放課後、3人揃って部室に向かう。 これからも今まで通り、誰かが掃除当番とかで欠ける事が無い限り――

部室の扉の前に着いた
「ちょっと待て、ハルヒ」
「何よ、キョン」
「ノックしろ」
「わ、解ったわよ」
「あと、ドアは静かに開けろ」
  コンコン  「はぁ~い」
「やっほ~! 皆、揃ってる?」
「こんにちは朝比奈さん。 よう、長門・古泉」
「こんにちは、皆さん」
「やあ、どうも。 3人ご一緒で」
「お茶、淹れますね」
「……」  さて、全員揃ったな。 自分から切り出すには非常に恥ずかしい案件なのだが
「皆、聞いてくれ。 色々迷惑掛けたが――」
俺は付き合う相手・今までの経緯・そして今後も今まで通りでと言う事を3人に伝えた。
「そうですか。 解りました、仰せのままに」
「キョン君……」
「……承知した」

「さあ、あと1ヶ月で文化祭。 今年もSOS団は映画を撮るわよ!!」
マジかハルヒ、聞いてないぞ。 どうせまた思いつきで撮影して徹夜で編集って事になるんじゃ無いだろうな。
「今回は既に台本を用意したから、読んでみて!」ほう、ハルヒにしては用意周到だな。 どれどれ

    『タイトル・長門ユキの逆襲』

去年の映画の続編、か? んで内容は、っと。 
まずはキャスト、主役3人は一緒だな。 あとエキストラで鶴屋さん・谷口・国木田と、そして今年は涼子・阪中・コンピ研の皆さんまで狩り出す気か? ご苦労なこった。
当然、俺はカメラマン兼雑用。 これに関しては不服は無い。 表に出るよりマシだからな。
で、肝心のストーリーだが――読んでいく間に俺は部室の窓から外に飛び降りたくなって来た。
「なあ、ハルヒよ」
「何、台本に文句ある訳?」 何時もなら俺の文句にはムスっとしているであろうハルヒが、何故かニヤついていた。
「このストーリーって、何処かで聞いた事のある様な話なのだが、気のせいか」
「気のせいって事にしといて、ちなみに台本は涼子にも手伝って貰って書いたから」
「そう言う事♪」
やっぱりか! 説明しよう恋愛に対して鈍い主人公・古泉イツキが、ヒロイン・朝比奈ミクルと復活した転入生・長門ユキとの間で繰り広げられるラブ・ストーリーで、主人公に対して朝食や弁当を作る女子2人――それって明らかに
「いやぁ、素晴らしい台本ですね。 リアリティがあって、演じる方としても楽しみです」 古泉、黙ってろ。 忌々しい。
「すごいですぅ。 本当にこんな恋愛してみたいですぅ」 朝比奈さん、あなたとなら何時でもラブストーリーを……ってハルヒ・涼子、ジト目で俺を見るな。
「……ラブコメは素晴らしい」 長門、何か楽しそうだな。
 
って言うか、全てがこっぱずかしい――よくぞ、こんな台本書いたな。 恥ずかしくないのか、ハルヒ・涼子よ。
 


 
    <エピローグ3・文化祭>
 
何だかんだあって、文化祭当日。 映画は前日完成し当日の上映はコンピ研の皆様にお任せし、SOS団メンバーは、それぞれのクラスの出し物に専念する事となった。
前述の通り、俺達のクラスは『カレーハウス』をやる訳だが10時~15時までの5時間の内、それそれの班が1時間づつ担当。
厳正なクジ引きの結果、我が班は開店早々の10時~11時が割り当てられた。 
こんな時間だ、昼食には早いだろうから客は少ない、さっさと終わらせて他のクラスの展示を見ようと思って居たのだが
「おい、キョン!」
「どうした谷口?」
「廊下の行列、凄い事になってるよ」
「マジか、国木田!?」  仕込が終了し、開店の為廊下を見てみると
「長蛇の列なのね!」  軽く50人は並んでいるであろうか。
ちなみに本格的な調理は家庭科室でやってあり、教室内は火気厳禁の為保温はIHヒーターでしている。 その為、配膳台を含め『業務用室』に教室の3分の1を使っている。 よって『客室』は残り3分の2、定員は20人。 それを明らかに上回っている列の人数が列を造っているではないか。
「やり甲斐あるわね♪」
「かかってらっしゃい!」 
まあ、この超人的な2人が接客に当たるなら捌けそうな気がするが、もう一人が心配だ。
「阪中、無理するなよ」
「あ、ありがとう。 心配してくれて嬉しいのね」
「――キョ~ン、あんた」
「他の女の子に優しくするなんて、ゆ・る・さ・な・い・か・ら」
……こ、怖過ぎます、お2人様。 さあ始めるぞ、スマイル・スマイル!
 
 
「つ、疲れた~」
「明日もこれじゃ大変だぜ!」
「まあまあ、ウェイトレスの3人に比べたら、僕達は楽だったんじゃ無いかな」
「明日も頑張るのね!」

11時を過ぎ、次の班にバトンタッチした俺達は、揃って他のクラス展示を見て回る事にした。
「しかし、何であんなに客が来たんだろうな」
「あたし達が宣伝したからよ!」  なんですと!?
「10時まで暇だったから、涼宮さんと2人で門の前で呼び込みやってたの」
「ついでに映画の宣伝も兼ねて、一石二鳥よ!」 それでか。 こんな美少女2人が宣伝すれば行列も出来るよな。 謎が解けたぜ、じっちゃん!
ちなみに長門のクラスは今年も占い。 『予言』は止めておけよ、長門。 古泉のクラスは常設展示で、何やら堅苦しい内容なのでパス。 そして、朝比奈さん・鶴屋さんのクラスは……
「ヤッホ~、キョン君、ハルにゃん達、いらっしゃい!」 
今年も『やきそば』ですか。 あとその格好、相変わらず似合ってますよ、鶴屋さん。
「いや~、さっきまで暇だったんだけど、やっぱり昼近くになると忙しくなって来るっさね!」
多分、行列が無かったのはウチのクラスのせいだと思います、申し訳ありません。   あ、朝比奈さん。
「あっ、いらっしゃいませぇ。 やきそば6つですね」  相変わらずの可愛らしさで
「……間抜け面」
「……キョン君、そのうち刺されるわよ」
ああああああああああ……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!!
 
 
「キョン、僕達3人は映画見に行くから」
「3人で他の所を回って来ると良いのね」
「じゃあな!」
昼食を終えた俺達は2手に分かれる事になった。 谷口・国木田・阪中の3人はSOS団の作った映画を見に
「それじゃあ、あたし達は」
「中庭で、お茶でもしましょうか」
ハルヒ・涼子・俺の3人は、映画は試写会で昨日見たので、少し中庭でのんびりする事にした。 今日は雲1つ無い秋晴れ、絶好の文化祭日和って奴だ。
「文化祭って面白いわね」
「あ、そっか。 涼子はカナダ行ってたもんね」
「そうだったな。 戻って来て2ヶ月とは思えない程馴染んでるから、忘れてたぞ」
「長門さんから聞いたけど、涼宮さん、ステージに立ったんですって?」
「そうよ、代打でね。 いきなりだったから自分では満足してないんだけどね」
「いや、そんな事は無いぞ。 あれだけ盛り上がれば大成功だろ。 ENOZのメンバーからも感謝されてたじゃないか」
「あーあ、カナダなんて行くんじゃなかったな……」 俺を殺そうとしなければ良かっただろ、涼子。
「涼子、カナダ面白く無かったの?」
「え?そ、そんな事無いわよ。 只、こっちはこっちで皆で楽しそうだったのかな、って思って」
「でも、今は楽しいんだろ」
「うん♪ ありがとね、キョン君・涼宮さん」
「あ、忘れてた!」
「急にどうした、ハルヒ」
「SOS団でバンド作って、文化祭でライブやるつもりだったんだわ!」
「あら、涼宮さん。 じゃあ、来年やれば良いじゃない」
「涼子、来年は受験で、それ所では無いと思うが」
「所でキョン、先週の中間テストの結果はどうだったの?」
「……黙秘権を行使する」
「駄目だったって事よね。 あ、涼宮さん、2人でキョン君の勉強見ましょうか?」
「ナイスアイディアね、涼子! キョン、文化祭終わったらビシバシ行くわよ!」
ヤブヘビか。 まあ、勉強に関しては優秀であるこの2人から教わるのも悪くはないがな。



 
    <エピローグ4・Day After Day>
 
文化祭2日目の日曜日は初日同様、開店早々多忙であった。 
その後、クラス展示を6人で見て回り、午後は体育館で軽音部のライブを見……ハルヒがまたステージの上にゲストで上がり
演奏したのは『サプライズ』だったが、とにかく楽しかった文化祭は終わった。
 
そして日常に戻る。 相変わらずハルヒと涼子は俺の為に朝食と弁当を作りに来てくれる。 それに加えて毎日の団活終了後、俺の家に来て勉強を見るというのが加わった。 本当に申し訳ない、こんな俺の為に。
「気にしないでキョン君。 私達、好きでやってるから」
「そうよ、気にする暇あるなら努力して、あたし達と同じ大学受けなさい!」  一体どこまでレベルを上げる気だ?

文化祭が終了後も今まで通りのローテーションで月・水と涼子、火・木とハルヒが朝食・弁当・勉強を担当してくれて、その後それぞれの家に送るのが決まった日常となっていた。
所で、その金曜日であるが、2人揃っての担当であり、当然それぞれの家に送って行くという使命があると思っていたら――
「次の日、休みなんだから、ハルちゃん・涼ちゃん、泊まって行きなさい。」と母上様のありがた~いお言葉……って、おいオカン! 何をおっしゃってるんですか!?
「それじゃ、お言葉に甘えて」
「泊まっていきます♪」 ってコラ、2人共、納得するな!
「あら、良いじゃない」
「何か問題でもあるのかしら」 あの、俺、男ですよ?
「あんたみたいなヘタレが何言ってるのよ」
「それともキョン君、私達2人と相手するの?」 ごめんなさい、どうぞ遠慮なく泊まって下さい。 やれやれ、時々どっちと付き合ってるのか忘れそうになるね。 まあ、両親や妹は2人が泊まっていく事を喜んでいるのだから問題ないとするか。
ちなみに、ハルヒの親は俺の家に泊まる事に即O,k,が出たらしい。 涼子は……まあ良いのだろう、そう言う事だ。

この2人と金曜の夜、一緒に居ると言う事は土曜の不思議探索での集合で少なくとも『俺が一番最後』でなくなり罰金が無くなると思いきや、そうはならなかった。 何故か?
俺達より早く朝比奈さん・長門・古泉が来ていて、俺達3人の割り勘になるのか? と考えていた、が。
「あんた、女の子に罰金払わせるつもり?」 と団長様に言われた日には……朝比奈さん、これって『既定事項』ですか? この制度、廃止にして頂けないでしょうか?
 


12月17日、ハルヒと涼子の家庭教師のおかげで、俺の成績は急上昇。 期末テストで何とクラス4位になったのである。
当然、上位3人はハルヒ・涼子・国木田なのであるが、まさか、この俺がその下に名を連ねるとは……

「皆、聞いて!! クリスマス・イブに予定のある人居る?」 
放課後、団活の時間。 部室に入るなりハルヒは言った。 おい、イブまであと1週間だぞ。
「残念ながら、ありませんね」
「予定無いですぅ」
「……無い」
「無いわよ♪」
「この流れで『予定ある』とは言えないよな」
「当然でしょキョン。 と言う訳でパーティーやるわよ!」 へいへい、お約束ですな。 んで、また部室で鍋を囲む、と。
「キョン」
「何だ?」
「あんたは、それで良いの?」
「ああ、『彼女』と2人きりで過ごすのは、パーティーが終わってからでも間に合うからな」
「皆で過ごす方が楽しい。 ってキョン君は思ってるんじゃない?」
「そうだな、涼子。 『彼女』と2人で過ごすのも大事な事だが、SOS団の仲間も大事なんだ」
そして何時もの様に団活を終え、6人で下校する。 本日も何の変哲も無い平穏な日だった。
 
 
 
 
 
 
   ――そんな平和が続くと思っていた俺の心に、また『悪夢』が蘇る……
 


      (その5へ続く)




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