夜明けのダイナー(仮題)

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SS:ROCKSHOW <その2>

2010年10月05日 22時22分58秒 | ハルヒSS:シリーズ物
   (その1より)


「この1曲目はみくるちゃんに歌ってもらおうと思うわ」
「ふえぇ~わたしですかぁ?」
「そうよ、卒業記念とファンクラブ感謝祭よ!」 ミクル伝説の歌声再びですか。
「バンド名を替えてみてはいかがでしょう?」 お、古泉の提案か。 珍しいな。
「『SOS団』と『ENOZ』をたして『S-ENOZ』と言うのはどうでしょう」
「『SOS団』のSか」
「『SUPER』のSでもあるわね」
「……『SPECIAL』のSでもある」
「それ良いわね、採用するわ。 さすがね副団長!」 いいのか、安直でないか!?
「所でハルヒ、残り2曲のボーカルは?」
「2曲目はあたしと榎本さんが歌うわ」 良かった、俺じゃない~と思ったのも束の間。
「3曲目はSOS団5人で踊るわよ!!」
             
   な、何だって!?

「だって『文化祭を大いに盛り上げる為のSOS団』でしょ!」 はい、異論はありません、ハルヒ様。
 

密度の濃い一週間が過ぎ、週末の土曜日・午前9時。 いつもの北口駅前公園で、いつもの「遅い・罰金!」のあいさつを聞いた後、鶴屋さんの先導で北口駅南『鶴屋北口ガーデンス』(西日本最大級のショッピングモール)にやってきたSOS団+1。
 
 午前中=機材調達
当日のドラムセットはENOZ・中西さんと共用する事になって居たので、ギター・ベース・キーボード・パーカッション等を揃える事となった。
購入した機材は
ハルヒ:フェンダー・ストラトキャスト(RED) 「レス・ポールは重いのよ」
長門:ギブソン・SGダブルネック(RED→WHITE)「……色はやはり白」
古泉:リッケンバッカー4001(マホガニー) 「個人的な趣味です。」
朝倉:ヤマハEOS-B2000&KX-5(ショルダーキーボード) 「拡張には部室のノートパソコンを使うわ♪」
あとは俺と朝比奈さんが使うタンバリン等を買い――金額は聞かないでくれ、恐ろしくなる。
これらを『ちょろ~ん』と払える鶴屋さんが恐ろしい。 それより申し訳なさでいっぱいだ。
 
さて昼食、これまた鶴屋さんのおごりでイタリアンのランチ。 あの~高校生のランチでコース料理ってのはどうかと……ハルヒ・長門、遠慮して喰え!  鶴屋さん、ゴチになりました。
 
 午後=衣装選び
具体的なビジュアルは『超月間キョン&古泉』P41を見てくれ。 
やはり時間の掛かる衣装選びを時間のある午後にして正解だったな。 女性陣の衣装選びのにぎやかな事……うるさいぞハルヒ、朝比奈さんをオモチャにするな。
 
「さーて機材・衣装揃ったし、来週は「練習に入るのか?」」
「何バカ言ってるの、来週はテストでしょ?」  しまった、ぬかった! 忘れてた。 何しに学校行ってるんだ俺。
「何を今更慌ててるの、日頃の積み重ねでしょ、勉強なんて」
軽く言うな。 他のメンバーはともかく凡人代表の俺に向かって何とおっしゃるハルヒさん。
 
   ああ忌々しい、忌々しい。
 


日曜はさんで翌週、『地獄の7日間』とは言ったものだ。 いっそ巨○兵でも出て来てくれれば。 お、こっちには神人が居たな。 対決させたらどっちが勝つか……ついでに『決戦兵器・紅玉』なんて出してみたりして――。
 
……すまん、現実逃避し過ぎた。 赤点出なかっただけましな結果だった、と言っておくか。 良いのか俺、来年大学受験だぞ。
 
試験の済んだ金曜、久々SOS団の部室に顔を出し、明日のスケジュールを確認する。 これからの週末は北口駅近くの貸しスタジオでバンド練習となった。 ちなみに、そのスタジオの経営はは古泉の知り合いが……と言う話だ。

その日の夕飯後、居間でテレビを見ていたら電話が来た
「あーもしもし、佐々木か、何だ?」
「やあキョン、テスト終わって寛いでる所申し訳ない、国木田から概要は聞いている。 相変わらず涼宮さんに振り回されている様だね」
「ずいぶん国木田と連絡とってるみたいだな」
「まあね、でも彼は『友人』と言うより『ライバル』だね。 電話をするのは情報交換と気分転換だよ。 刺激を求める、と言っても良いかも知れないね。 キョン、キミとの会話とは違うよ」
「勉強で疲れた脳を更に使ってどうする」
「くっくっく、相変わらずだねキミの言葉は。 斜に構えつつ発言は的を得ている」
「用件は何だ。 国木田からは具体的には何も聞いていないんだ」
「まあ、そう結論を急ぐのはやめたまえ。 たまには親友同士の語らいも良いと思わないかい。 それとも会話の持続が困難な程キミの頭脳は疲弊しているのかい。 それならばキミの要求に答えて本題に入るとしよう。 キョン、キミは去年の夏休みの宿題をごていねいにも8月31日まで取っておいたと聞いている。 そこでだ、今年は最初の一週間で完了させてみる気はないかい?
キミの家に毎日お邪魔させて頂いて共に宿題を進めよう。 キミは一人では努力を怠ってしまうタイプだから……おっと、馬鹿にしている訳では無いのだよ、誤解しないでくれたまえ。 一人より二人で進行させる方が理解が深まる場合があると言うものだよ。 高めあう、と言う方が解り易いかな。 どうだろう、悪い提案では無いと思うが如何かな? 宿題さえ仕上げておけば残りの夏休みは気兼ねせず有意義に過ごせると言う事さ。 選択権はキミに委ねるよ」
佐々木の家庭教師か、あながち悪くないな。 確かに一人でやろうとしてもだらけてしまいそうだし。 それならば先生の監視付で宿題を進めるのも悪くないな。  
え、授業中は寝てばかりだろって? どのSSみても大概居眠り・ハルヒとの会話が多く、まともに授業を受けてないな、俺。 まあ30対1よりマンツーマンなら集中出来るだろ、多分。

「それじゃ頼むよ。 しかし、毎日って良いのか?」
「他ならない親友の為だ、気を使わないでくれたまえよ。 むしろ……いや何でも無い」
夜が更けて来たので後は適当な話題に切り換え電話を終える。  俺自身は問題ないが、最初の一週間を空ける為に必要な手続きを取る。 というべきか――。
いやはや自分のスケジュールを決めるのに何でコイツの許可を取らねばならないか、と、つくづく思う。 しかし黙って「一週間団活を休む」と言ったら確実に不機嫌になるであろう人物~ハルヒにどうやって言おうか。
        
             やれやれ。
 

さて土曜、9時に北口駅前集合と言う事で、8時に家を出る。 当然、『時間には間に合っている』のだが、また俺が最後。 前日から寝袋使って待つしか無いのかね?
そして古泉の手配したスタジオへ向かう。 軽音部部室と同じ位の広さの部屋には先日購入された楽器が用意されていた。 (ドラムセットはスタジオの物らしいが) いつでも演奏可能な状態だ。
「さすが古泉君ね、早速練習するわよ!」
 
俺と朝比奈さんは隣の部屋に移動する。 そこは小さなスタジオで、防音が完璧なおかげで隣の4人の演奏が聞こえない。
「さて、やりますか朝比奈さん」
「は、はいっ」 それぞれヘッドフォンから流れる曲に合わせて歌詞を覚える作業に入る。
 
気がついたら12時。 「お昼にしましょ!」とハルヒの一言でランチタイム。 お、大量のサンドイッチ、ハルヒが作ったのか?
「そうよ、ここで食べる為にね!」
「よくこんなに作ったな」  10人前は軽くあるな。
「有希ってよく食べるから、多めに作ったのよ!!」
「どうやって持って来たんだ?」
「親に頼んだわ」  またお礼言っておいてくれ。
「さあ食べましょ!」     

      「「「「「「いただきます」」」」」」
 
結論から言おう、サンドイッチは美味かった。 今まで食べたどのサンドイッチよりも。 しかも大量に一人で作ったなんて……他の4人も同様の感想だろう、間違いなく。
これを不味いと嘘でも言ってみろ、小一時間の説教で済むとおもうなよ!
 
さて、そろそろ切り出しますかね。 下手すると折角のサンドイッチが不味くなるかも知れない案件ではあるが。

「なあハルヒ」
「何よ」
「夏休みの予定なんだが――」
「決まってるわ、バンドの練習に明け暮れるわよ!  あ、合宿もあるわね。 キョンはお盆には里帰りよね? それ以外はSOS団の活動に骨身を奉げなさい!!」
「あーすまんがハルヒ、物は相談「駄目よ!」」 まだ何も言ってないが
「聞くだけでも良いから聞いてくれ。 去年の夏休みを覚えているか? 8月31日にあわてて宿題を仕上げた事を。」
「あんたが悪いんでしょ! 先にやっておかないから」 お、喰いついて来た。  しかも餌まで自分でつけて
「そう、それなんだ。 今年は最初の一週間で宿題を仕上げる為に団活を休みたいのだが……」
 
しばしの静寂。 やっちまったか、俺?
「いいわ」
「へ?」 いいのか?
「仕方ないわね、但し一週間限定よ。 そこで仕上げる事が出来なくても延長は認めないわ!」
「マジか、ハルヒ。  ありがとよ」
少しアヒル顔のハルヒ。 SOS団の活動が出来ない事がそんなに悔しいのかな。
「貴方が一週間、活動を抜けると言ったから淋しいんですよ。 涼宮さんは」 古泉、久々に台詞あったと思ったら顔が近い、息が耳にかかる、自重しろ。
「失礼しました。 あ、それでは涼宮さん、今年の合宿は勉強会を兼ねませんか?」
ハルヒを見る。  アヒル顔→ニヤリ顔→100Wの笑顔と忙しく変化させて
「それよ古泉君! さすが副団長ね。 それならキョンもサボれないわ!!」
「……あーハルヒ、一週間で仕上げろといったのは実は佐々木で、佐々木を家に来てもらって宿題を――」
と言った所、またやっちまったか? 他の5人の視線が冷たい。 完全に地雷踏んだな。
「ふーん、そう言う事。 さすが『親友』ね。 ずいぶん仲のよろしい事で」
「あのぅ、それなら佐々木さんも一緒に合宿に来てもらうと言うのはどうですかぁ?」
おおっ、さすがはマイ・スィート・エンジェル! 朝比奈さん。 天使が舞い降りたとはまさにこの事。
「ふーん、別に良いんじゃないの。 一人増えて何か問題でもあるの? そもそも佐々木さんて誰。 あ、もしかしてキョン君のコ・レ?」
朝倉、横目でニヤついて小指を立てるな。 小指はぎゅっとしまっておけ。 しかも佐々木の事は長門から聞いている筈だ。 白々しく誰?とか聞くな。
「……あなたは一度修羅場を体験すべき」 あのー長門さん、シュラバって何ですか? 
いかん、話を進めよう。
「所で古泉、言い出したからには場所の確保は出来てるんだろうな」
「お任せ下さい。  涼宮さん、昨年と同じ場所で宜しいでしょうか」 計算済みか。
「そうね、特に場所は決めて無かったから、それで良いわ」
古泉の手際の良さにハルヒも従うしかあるまい、って普段と逆だな。 何時もならハルヒの意見に古泉が唯々諾々と従うだけなのに。
「今年はミステリーとか小細工とか不要だぞ、あくまで宿題を仕上げる為の合宿だ」
「承知しました。 これであの別荘も活用出来ます」  まさか去年の合宿の為だけに建てたのか?
「さあ、休憩終わり。 練習再開よ!」

午後も午前同様に夕方5時まで練習し解散となった。 夜、佐々木に一連の事を話すと、少し間があった後「良いだろう」と返答を得た。
 

数日後、夏休み突入。 翌日、合宿開始。 SOS団+朝倉・佐々木は孤島に向かった。  妹? 置いて行ったさ。 何をしに行くか考えれば当然だろ。
朝は早起きし涼しいうちに宿題を進める。 昼食後、暑いうちは海で泳ぐ。 朝倉と佐々木のプライベートの水着姿は初めてみた。 いやぁ、眼福、眼福。 まあ朝比奈さん程では無いがな……ハルヒ、冷たい目でこっち見るな。
夕方から寝るまで、夕食を挟んで宿題をする。 実に規則正しい生活だ。 おかげで宿題は全て片付いた。 集中すれば出来るもんだ、俺だって。  普段その集中力が働くかは別、だがな。
 

夏休みは盆休みを除きバンド練習に明け暮れる。 そして、お盆は完全オフ。
長門はこれを機会にメンテナンスモードに入るらしい。  その為の朝倉復活でもある訳だ。


お盆休みが過ぎた最初の土曜日……どうも合宿以来規則正しい生活が身についているらしい。 お陰で、ここ半月ほど妹のボディープレスを受けていない。  そんな朝、バンド練習の為、北口駅に向けて自転車を出し最初の角を曲がった瞬間

「やあ、キョン」
「お、佐々木か。 合宿以来だな」
「くっくっく、キョンにしては早い時間の外出では無いか? また涼宮さんがらみかい」
「おう、毎日バンド練習さ」
「しかし、キョンがバンドやるとはね。 中学時代には想像も出来ない事象だね。 しかも、国木田から聞いたがボーカルらしいじゃないか」 あのおしゃべりめ、恥ずかしいから佐々木には黙っていたのに。
「まあ、そうむくれる必要はあるまい、僕としては非常に……おっと、僕は北口駅に向かうが、キミもそうだろう。あの頃のように後ろに乗せてくれないかい?」
「ん、ああ、良いだろう」

佐々木を後ろに乗せ~おっと、自転車2人乗りは道路交通法違反だ。 実際にやるのは駄目だぞ。 これはストーリー展開上必要なんだ――兎に角、北口駅に向かう。
「高校に進学して今の塾に通いだしたのだが、キミとは生活リズムが違っていたせいか、お互い会うことは無かったね。 近所の筈なのに」
「全くだ、高校も別方向だし、休日の俺はこの時間のんびり家で過ごしてるからな。 仕方ないさ」
「……やはり北高に行きたかったな」
「ん? 何か言ったか。 浜風が強くて聞こえなかった」
「くっくっく、キミの生活リズムに改善の兆しが見えてきたから親友として嬉しく思った次第さ。 休日に惰眠を貪るのも構わない。 だが折角の人生、しかも2度と無い学園生活の貴重な日々を無為に過ごすよりは、他人に振り回されると言うのはさて置き、快活に過ごすと言うのもキミにとって悪くなかろう、と。 そう感じたのさ。 最近のキミは、どことなく活力があるように見えるよ。 それは僕の気のせいかい?」
「『他人に振り回され』って、確かにハルヒに振り回されっぱなしだな。 そして、そいつは疲れるよ。 とても快活には程遠いな」
とまあ他愛も無い会話を繰り広げ、気がつけば北口駅前に着いていた。 佐々木との会話は時間を忘れさせる。
 
佐々木との間にある『空気』……それは中学時代と変わらない。 約1年のブランクを全く感じさせない程に。
それは俺にとって心地よい物であるのは確かだ。 故に俺と佐々木は互いに『親友』と呼べるのだろう、か。

「ありがとうキョン。 助かったよ。 電車の時刻には余裕で間に合うよ」
「おう、気をつけてな。 あと、これ位はお安い御用さ」
 
佐々木と離れて気がつく。
歴史に『IF』は禁物、と言うが――もし佐々木と同じ学校に進学していたらどうなっていたのだろうか。そして
       

              ハルヒと出会わない
 

そんな可能性もあった訳だ。  俺は不思議に出会う事も無く、ましてやバンドなんてやる事も無く、日々友人たちと平凡な毎日を繰り返す……。 今となっては全く想像出来ない。 俺の周囲に宇宙人・未来人・超能力者、そして世界を変える事の出来る神様が居る。 そして中学時代からの親友が『神様予備軍』なんて――

「……ョン、キョン! 何ボケッとしてるの?」
ハッ、ここは何処だ。 目の前に居るのは……ハルヒか、何だ急に。
「何だ急に、って。 さっきから居たわよ。 呼んでも返事しないし、ボケっとしてるし。 暑さにやられたの? そんな暇ないわよ、さっさと練習に行くわよ!」
「ああ、すまんな」 俺はハルヒに手を引っ張られスタジオへ向かう。
うん、今はこれで良いんだ。 ハルヒが俺の手を引っ張って新しい世界に向かう。 暴走した時は俺がブレーキをかける。 この世界を選択したのは誰でもない、俺なんだ。
 

スタジオに着く。 待ち構えていたのは前述の『マクロ』な問題に比べれば『ミクロ』な問題なのだろうが、ステージに上がる為の、俺にとって最大の難関……    
    
   ダンス、だ。

ボーカルの方は何とか形になり始めたのだが、何せダンスなんぞは本格的にやった事が無い。 あ、フォークダンスは別だ。
ハルヒは流石、この振り付けを考えただけあって上手く踊れる。 長門も機械的な動きながらリズムには合ってる。 古泉? 野郎を語る気は無い。  癪だが上手く踊れてる。   朝比奈さんは……一緒に頑張りましょうか。
ん、朝倉? 『5人で踊る』とハルヒが最初に言ったのでダンス見学とキーボード担当だ。
 
ちなみに毎週土曜日の朝、佐々木と北口駅まで一緒になる事が定例となった。 約束を交わした覚えは無いのだが。
 

照り返しのきつい暑い朝、またこの長い坂道を登る日課が舞い戻って来た。 9月、二学期の始まりだ。
規則正しい生活のせいか、はたまたダンス練習で体力のついたお陰か、単に坂を登る事自体が久々なせいか、今日はそんなに坂を登る事が苦痛に感じない。
「おはよう」
「おっす、国木田。 谷口も久し振りだな」
「おう。 全く夏休み中、お前は涼宮とのデートで忙しいからって、俺たちをほっといて」
「誰と誰がデートですって~?」 お、団長様のお出ましか。 哀れ谷口、骨は拾ってやるぞ。
「あーあ、谷口も相変わらずだね。 淋しいからってナンパ三昧。 当然全て玉砕で……しかも宿題やってないんだって。キョンは一週間で仕上げたんだって?」
「聞いたのか、佐々木から」
「うん、まあね。 塾一緒だし、電話もするし」
「塾には一緒に通っているのか」
「ううん。 電車は違うし、一緒に通った事は無いね」  そうなのか。 あ、岡部が来た。 HRが始まる。 全員が揃っている(除く谷口)。 皆元気そうだ。  急にクラス委員長が発言、何かと思えば朝倉に委員長を任せたい、と。
少し考える朝倉。 そして
「良いわよ」
まあ、去年少しの間だったが、責任感ある仕事振りはクラスの間だけでなく先生方にも好評だったから、問題ないだろう。
「大丈夫か朝倉。 忙しくなるぞ?」
「あら、心配してくれるの? ありがとう。 気持ちだけでも嬉しいわ♪」
「ふ~ん、相変わらず涼子には優しいのねー」 ジト目で睨むなハルヒ。 ちなみにハルヒが朝倉を「涼子」と呼ぶようになったのは合宿後だ。
 
ハルヒにとって『名前で呼ぶ』ってのは時間の経過と言うより親密度だろうか。 SOS団に(半強制だが)入った朝比奈さんや長門は最初から名前で呼ばれてるし、朝倉もハルヒに認められたって事か。
……しかし、俺は何時まで『キョン』なのかね?    やれやれ。
 

始業式って事もあり今日は半日。 午後からは久々に部室に集合と相成った訳だ。 ついでに部室で弁当を食べるのは既定事項らしい。 ハルヒは何やら用事を見つけたと言うので一人部室に向かう。  さて、用心の為ノックを2回。
「はぁ~い」 お、天使の声がする。 今日は良い日だ。
「こんにちは朝比奈さん。 よう長門、古泉。 ハルヒは遅れて来るそうだ」

ハルヒが居ないメンバーで揃うには久し振りなので『佐々木団』について語れる。 概略すると最近、活動が停止気味らしい。
そりゃそうだろう、当の佐々木が乗り気で無いのなら停滞も当然だろう。 良かったな長門、負担が軽くなって。 一安心だ。
この話題に区切りがついた絶妙のタイミングで相変わらずノックせずドアを突き破る台風がやって来た。
「やっほ~! みんな居るわね?」  おう、一人も欠けてないぞ。
「ふっふ~ん♪聞いて驚かないで。 新しい団員を紹介するわ!!」  
な、何だって!? ついに異世界人発見か! ジョン・スミスか!?
「改めまして、朝倉涼子です」 ってお前かよ。 まさかハルヒ、朝倉をSOS団に入れる説得する為に遅れたのか?
「そうよ、これでSOS団に足りない要素が満たされたわ!」  それってまさか
「『委員長』よ!!」   やっぱりか。 って事は2学期から朝倉が委員長に返り咲くのは既定事項って奴でしたか。  何でもありだな、ハルヒパワー。 
「んで、今日の予定は?」
「特に何も無いわ。 弁当食べたら自由よ! 明日から練習再開ね」
「ようするに放課後はスタジオ直行って訳か」
「あの~、3年は補習があるんですぅ」
「それなら仕方ないわね、みくるちゃん。 週末だけ参加して!」
「はぁ~い」

そして俺は久々に古泉とオセロをやる。 ハルヒはネットサーフィン。 長門は読書。 新しく来た朝倉は朝比奈さんと何やら楽しそうに話をしている。 女の子同士、話題が合うのか。

長門の本の閉じる音で解散、6人揃って下校する。


   (その3へ続く)


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