英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

英国人は紅茶好き?   事実は違うんだって!

2017年10月28日 20時30分02秒 | 生活
 「この調査は、われわれが長い間、ほんのちょっぴり信じていたことを粉々に砕いてしまった。2017年は本当に最悪の年だと強く思います」ー。
 英国人は紅茶よりコーヒーを好むとの調査結果を、9月29日付タブロイド紙「メトロ」が報じた。同紙はコーヒー・シロップメーカー「モーニン」が最近調査した結果を転載。「モーニン」が、英国人1500人に「好きなホット・ドリンクは何か」を尋ねたところ、61%の英国人が紅茶よりコーヒーを好むと回答した。
 「メトロ」のエレン・スコット記者は冒頭の言葉を記し、冗談まじりに「裏切り者」とコーヒー党を糾弾する。英国人のコーヒー党にとって、どんなコーヒーの人気の高いのか?ラテ、カプチーノ、アメリカーノ、モカ、そしてエスプレッソと続く。
 コーヒーを好む理由を問うと、46%が「朝、眠気を覚ますのにコーヒーのカフェインが必要」と回答し、39%は日中、疲れをとるのに必要と答えている。
 スコット記者はこれまた冗談半分に「そんな理由でコーヒーを飲んでたら、命を縮めますよ。夜更かししないで早く床に就きなさい」とアドバイスする。ただ単に味が好きという回答も65%に上った。
 「コーヒー好きな奴はきっと紅茶もたくさん飲んでいるんですよ。推測だけどね」と紅茶党と思われるスコット記者は話す。
  ちなみに、英国人がコーヒーを飲む回数は1日に平均4杯。コーヒー・マシーンを自宅に持つ。それに使う金額は1人で年間676ポンド(約10万円)にもなるという。
 一方、英国人のコーヒー党を皮肉るスコット記者は「ティー(紅茶)を飲めばリラックスできる」と語る。
 英国滞在中、私は紅茶を飲んでリラックスしたとは思わなかったが、日本の紅茶より数段おいしかった。値段の高い紅茶を飲んだのではない。安物だ。英国は硬水で、日本は軟水だ。これが紅茶のうまい、まずいを決めていると私は思っている。ただ専門家に確かめたわけではない。
 私の日常生活にコーヒーと紅茶は欠かせない。英国に夏時間と冬時間があるように、夏にアイス・コーヒーを、そのほかの季節にホット・ティーを飲む。約40年前に英国に住んでいた頃は、もちろん、毎日紅茶を飲んでいた。
 時が変化して、英国人が現在、紅茶よりコーヒーを好むとしても、紅茶を飲む習慣が英国人から失われるとは思わない。緑茶が日本の文化であり伝統であるように、それは英国の文化であり伝統だからだ。

中国はどこへ行く      大国の未来を見据え、日本人はいかにすべきか

2017年10月27日 10時17分07秒 | 日中関係
  5年に1度の中国共産党大会が終わり、習近平総書記の権力が著しく強化された。われわれ日本人にとっても「対岸の火事」のような気分で中国の内政を見ていてはいけないと思う。長期的な視野から中国を観察する必要がある。
 この”超大国”が目指す未来は何か。強固な一党独裁と国家資本主義を推し進める中国共産党。習氏は党の最高権力機関「政治局常務委員会」を構成する7人(習氏を含む)を選んだが、後継者を示唆する人事はなかった。
 24日に閉幕した党大会では、習氏の政治理念を「習近平思想」として党の憲法に相当する党規約に盛り込む改正案が承認された。
 習氏は明らかに、新中国建国の父、毛沢東や経済建設の礎を築いた鄧小平に並ぶ地位を確立し、個人的な独裁を強め、中国を米国と並ぶ二大強国にしようと狙っている。彼は「社会主義現代化強国」を実現すると宣言する。
 習氏がこの宣言をする裏には、矛盾した内政問題があると思う。「一人っ子政策」を撤回したと言え、子どもはさほど増えていない。日本と同様、労働人口の減少が間近に迫っている。
 国営企業の民営化は、既得権を持つ共産党員に阻まれ、スムーズには進んでいない。国営企業のシンボルとも言える鉄鋼など重厚長大産業が不況から脱したと言え、借金を重ね、非効率投資で大きくするやり方を変えていない。これでは持続的成長を見込めない。
 10月27日付朝日新聞の朝刊で、現代中国研究家の津上俊哉氏はこう述べた。「30年以降は高齢化による年金の負担が爆発的に増大する事態が待っています。その手前の段階で、すでに公共投資の債務が積み上がっています。国際通貨基金(IMF)は、22年には中国の政府、民間を合わせた債務が対GDP比で300%近くに達すると警告しています。厳しい未来がはっきりしているのに、習氏の報告に抜本的な対策がない」
 すべての権力を集中させようとしている習総書記は、2049年の党建国100周年までには、中国を世界一の強国のする夢を描いている。彼はそれを「中華民族の偉大な復興」と呼んでいる。さらに、共産党の政治報告で、35年という節目を設定した。その年には習氏は82歳になる。
 早稲田大学現代中国研究所所長の天児慧(さとし)氏は「(習氏の82歳は)毛沢東が死去した歳。鄧小平が1992年に南巡講話に赴いたのは87歳の時でした」と話す。
 習氏はいかなる手段を弄しても、自分が亡くなるまで、中国の政治に大きな影響力を行使したいと考えている。あわよくば終生、最高権力者の椅子に座っていたいと望んでいるようだ。
 習総書記は「外国の政治体制を機械的にまねるべきではない」と主張し、西洋の民主主義体制に敵愾心を抱く。
  習近平思想」とはどんなものなのか。

 ◾「完全で深いレベルでの改革」や「新しい発展のアイデア」への呼びかけ
 ◾「人間と自然が調和する生き方」の約束。これは環境保護の向上だけでなく、国内の電力需要の大きな部分を再生可能エネルギーが担うようにするという従来の方針を意味するかもしれない
 ◾「人民軍に対する共産党の絶対的な支配」の強調。同時に現代中国史最大の規模だと専門家らが指摘する軍幹部の入れ替えが実施されている。
 ◾「一国二制度」を経て、本土との統合の重要性。これは明らかに香港と台湾を念頭に置いているとみられる。

 最初の2項目は民主主義制度の中でしか実現できない、と私は信じる。「新しい発展のアイデア」は自由な民主主義制度のなかでしか育むことができない。上意下達の国家主義経済と独裁の中では実現不可能だ。上からの指示では、必ず破綻をきたす。
 「一国二制度」もいずれ、独裁国家、ましてや個人的な独裁を強める習氏の指導体制では行き詰まるだろう。
 そのとき、習氏の目指す「中華民族の偉大な復興」は暴力的な色彩を強めよう。政治学のイロハだが、古今東西、内政で行き詰まった国は、国民の目を国外に向ける傾向が強い。独裁国家なら尚更だ。
 中国の内部矛盾が爆発しかけたとき、台湾問題、尖閣問題が東アジアの「バルカンの火薬庫」になる可能性が強い。そのとき、日本の政治指導者はどうするのか。今の国内政治を見ていると心配だ。
 民進党や希望の党に見られるように、国政選挙で議席を減らせば、党首を罵倒し、首を切れと絶叫する。そこに困難の中で一致団結する精神は微塵も見られない。一方、与党の自民党は、特に安倍政権に言えることだが、国家の大方針を議論もしないで「仲良しクラブ」だけの人々で決める。国会での議論をなおざりにしている。まさに権威主義的な独裁的手法だと断言できる。独裁とは言わないが・・・。
 1940年6月22日、フランスがドイツの独裁者アドルフ・ヒトラーに敗北し、世界中で英国一国だけがこの強大な独裁国家と闘う事態になったとき、賢明な英国民は一致団結した。一人の偉大な指導者チャーチルのもとにに集まり団結し、英国と民主主義を死守するため、「死しても戦う」と宣言した。
 日本国民も英国民同様、一致団結し、どんな苦境にも耐える民族だ。万一、中国がなりふり構わず襲いかかってきたとき、すっくと立ち上がる偉大な民族だと信じたい。しかしそのとき、日本にもチャーチルのような賢明な指導者が現れるのだろうか。
 北朝鮮を利用し「国難突破解散」と有権者を煽り、それでいて政敵と真摯に「議論」もせず、「北朝鮮に圧力を」と叫ぶ安倍政権と自民党。選挙に負けたら党首を引きずり降ろそうとする野党議員。国家や国民の遠い幸せなどどうでも良いとしか映らない、そこには、「失職させないでくれ。明日から路頭に迷わせるようなことはしないでくれ」と有権者に懇願する多くの政治家がいる。中国共産党大会と日本の総選挙を見ていると、こんな思いが私の胸中を巡り巡っている。
 
写真:党大会の初日に演説する習総書記。

 
 

今回の総選挙で分かった政治家の質   英宰相チャーチルの政治視点から分かること

2017年10月26日 15時03分57秒 | 日本の政治
「広い視野、遠大な理想、道義、勇気、高い目標といったようなものの中に、私たちは人生の航海に必要な海図や羅針盤を求めていると言えるだろう。ただ、それだけでは不十分だ。確固とした不退転の決意と覚悟を持たねばならない]
 20世紀の大宰相ウィンストン・チャーチルがこう述べる。死後50年しても英国人から尊敬されている大政治家は生前、「党内運営や選挙対策能力いくら長けても、政策立案能力がいくら優れていても、それだけで優れた政治家だというのなら、そうではないと言いたい。政治家の一番の資質は、それはリーダーシップにつながるのだが、勇気、不退転の決意、いくら批判されても動じない心、自分の政治上の羅針盤を信じ、大衆や有権者の見解に耳を傾けるが迎合しない。大衆を説得する能力だ」と強調する。
 民進党の両院議員総会や、昨日の希望の党の両院議員懇談会の報道を聞くつけ、民進党系の議員のうち、何人がチャーチルのお眼鏡にかなう政治家なのかと思う。多分ほとんどいないだろう。
 希望の党の両院議員懇談会で、小池百合子代表(東京都知事)は引責辞任を求められ、つるし上げを食らう。党内には、水面下で離党を検討したり、将来的な解党を画策したりする動きがある。空中分解は秒読み段階だ。
 「多くの有為な人材を失ってしまったことは本当に残念至極だ」。小池氏は懇談会の冒頭、神妙な表情で衆院選の不手際をわびた。これまたピントが外れている。「有為な人材」など民進党系の議員にいるのかと小池さんに尋ねたい。
 当選した50人は1人を除いて民進党系の議員だと聞く。
 柚木道義氏は「『血が流れる』ではなく、血しぶきが舞い散る選挙だった」と語り、小池氏の「排除の論理」によって逆風になったことを批判した。
 小川淳也氏や吉良州司氏は「仲間がこれだけ死んでいるのだから責任を取るべきだ」などと、露骨に代表を辞任するよう求めた。
 当選することだけを考えているからこんな言葉が出るのだ。小池さんが「排除」の言葉を吐いたから、「負けた」と信じている。負けたのは、柚木、小川、吉良三氏が何の政治信念もないからであり、「小池氏のポピュリズムの風」に乗ろうとして崖から谷に落ちたからではないのか。天国でチャーチルがあきれているだろう。「政治家を辞めなさい」と言うにちがいない。
 政治上の不退転の決意と覚悟を持たない民進党の大多数の政治家が、民主主義制度を軽視する安倍晋三首相と自民党の「独裁的な手法」政治を許したことだけは確かだ。相手を批判することだけに集中し、自らの政策を論じることもなく、政治家という生業だけに目が行くこのような政治家こそ国家と国民の「獅子身中の虫」である。
日本の政治家と有権者が民主主義制度とは何かを真剣に考えてほしい。そしてチャーチルの言動に、日本の政治家は学んでほしいと願う。

写真:両院議員懇談会で陳謝する小池百合子・希望の党代表
 

 
 

民進、希望の議員は転職すべきだ     民進の参院議員総会に思う

2017年10月25日 15時33分41秒 | 日本の政治
 「民進党」や「希望の党」の混乱を目の当たりにすると、いかに多くの「政治屋」が日本に多いかを理解する。そして日本の民主主義制度の将来を憂う。
 参院民進党の議員総会で、前原誠司代表への批判が渦巻き、大荒れとなった、と各紙が伝えている。「分裂した民進党を再結集する『核』と期待を集める立憲民主党も即座に応じる気配はなく、すがる先のない民進党議員は苦悩を深めている」
 一方、希望の党はきょう午後、小池百合子代表が出席して両院議員総会を開く。この党の混乱も必至だ。6選を目指し、希望公認で山形2区に立った近藤洋介氏は22日夜、小選挙区で落選した後、比例復活もできないことが判明、「(希望は)一度、解党した方がよろしい」と語った。
 この両党の最大の欠陥は、大半の議員が政治信念がなく、政策を持たず、政治資質がなく、ただただ議員になりたいだけの烏合の衆から構成されていることだ。有権者は見抜いている。
 民進党の議員総会での桜井、小西両氏の発言から、この党が党としての骨組みがないと理解できる。
 桜井充氏は前原氏への怒りをぶちまけた。「早い段階で新代表を選ぶべきだ」とも述べ、前原氏が即座に辞任するよう求めた。小西洋之氏は「前原氏は党規に反した」として、除籍か離党勧告処分を要求した。
 小川敏夫参院議員会長は、前原氏が「(参院民進党が)再来年の参院選を戦える道筋をつけてから辞める」と語ったことを紹介し、辞任までのプロセスを「マスコミに醜態をさらさず、平和裏に収めたい」と説明した。
 桜井、小西両氏は、前原氏の政策や理念を糾弾しているのではない。前原氏がポピュリスムに乗っかろうとして希望の党への全員鞍替えに失敗したことへの批判なのだ。平たくいえば、「おれたちは職を失った。どうしてくれるのだ。明日から飯が食えない」と言っているのだ。
  戦前、政治理想に燃えて、政治家を志そうとした子どもに、父親は「家をつぶす気か」と怒鳴ったという。この父親の政治家像は政治家は理想や信念を抱いて、それを世の中に反映させようとするが、財産を食いつぶすとう考えだ。この考えが当時の一般的な政治家像だ。自民党の藤山愛一郎(1897年~1985)はそうだった。外相にまで上り詰めたが、家財を政治にはたいた。
 民進党と希望の党の多くの議員や元議員、立候補者は、前原氏を批判する前に自分の胸に手をあてて、なぜ政治家になったのかを自問すべきだ。前原氏が批判されるべきは、仲間を落選させ、路頭に迷わせたからではない。彼が安易にポピュリスムに乗っかろうとしたからだ。安倍政権を打倒するために野党が一つになろうとして、その旗を振ったが、旗の核となる統一政策を立案できなかった。
  原発ゼロ、消費増税反対、改憲反対の政策だけでも良いではないか。その政策を掲げて民意を問う。合意できない政策は脇に置く。そして政権を取った暁には、野党各党が一致した政策実現に全力を尽くす。それが達成できた暁には、解散し再び民意を問う。これが健全な議会民主政治ではないのか。
 前原氏は、国際政治学者だった故高坂正堯さんの生徒ではないか。政治を学んだ政治家である。言い訳は許されない。前原氏も小池氏もポピュリスムの風を吹かせて政権を握ろうとした。安倍政権に政策と政治信念で真っ向から勝負しなかった。そのことこそ批判されるべきだ。党首ばかりではない。両党の議員も同罪だ。
 私は「希望の党」と「民進党」の「政治屋」を批判する。それだけでなくメディアにも苦言を呈したい。テレビのワイドショウーを見ていると、やたらと党首の言動や有権者の風向きなどポピュリズムを煽る放送を繰り返してきた。スポンサーの動向もあるのだろうが、もう少しまじめな番組をつくるれ、と直言したい。
 桜井、小川両氏ら「政治屋」は議員を辞職して、ほかの職業に就いてほしいと願う。落選した近藤氏は職安に行って、ほかの職業を探せと進言する。彼らは英国の名宰相ウィンストン・チャーチルが批判した政治家だからだ。
 三氏のような政治家を批判したチャーチルの演説を紹介して、このブログを終わろう。
 チャーチルは1934年6月に雑誌に寄稿し、「今日、〈安全第一〉という言葉をよく耳にする。道路を横断する際の一番大切な掟(おきて)だ。……危ない橋は渡ろうとしない政治家の政治活動には、非常に役に立つだろう。しかし、そんな政治家は閣僚になることだけが目的で、いったんその目的を果たせば、なんとか長くそのポストに居座り続けようと努める。また際立った仕事もせずに閣僚の責任だけを果たし、内閣維持の保証者として働くだけだ。このように〈安全第一〉に死ぬまで固執するかぎり、本当に価値のある仕事はできないし、立派な業績も残せない」と述べている。

英国の登山家のカトマンズ探訪を読む   思い出すネパール人との思い出

2017年10月24日 20時15分40秒 | 旅行
 一人の英国の登山家にとって、秘境ネパールの首都カトマンズは、時が移り変わっても、目もくらむほど素晴らしく、魔法の町である。彼の記憶はいつも生き生きとよみがえり、心温まるものになる。
 この登山家はクリス・ボニントン氏。生涯でヒマラヤに19回遠征し、遠征隊長としてイギリス隊のエベレスト南西壁初登攀やアンナプルナ南壁初登攀を成功に導いた。この功績を認められ、サーの称号を得ている。83歳。
 ボニントン氏が最初にこの首都を訪れたのは1960年。英国隊が7937メートルのアンナプルナ南壁に初めて登頂したときである。
 そのときにはカトマンズにはホテルが一つしかなかったという。今では数百のホテルやゲストハウスが建ち並ぶ観光都市。彼はカトマンズ・ゲストハウスを推奨する。最高のホテルに泊まりたければ、ホテル ヤク & イエティ(Hotel Yak and Yeti)がよいという。
 カトマンズを訪れるベストな時期は、モンスーンに見舞われる6~8月。ボニントン氏はこう話す。自動車の排ガスで汚染されている世界一の町だが、雨上がりに排ガスが霧散し、素晴らしいヒマラヤ山脈が遠望できる。
 この素晴らしい景色をカトマンズのどこから見たら良いか?ボニントン卿はスワヤンブー仏教寺院からの眺めを推奨する。この寺院はネパール語でスワヤンブナート。ネパールのカトマンズ盆地にあり、ネパール最古の仏教寺院ともいわれる。「カトマンズの渓谷」にあり、ユネスコ世界遺産に登録されている。 その寺院はカトマンズの中心部から西に3キロほど離れた丘の上にたっている。
 私は一度もこの国を訪れたことがない。20代の頃に訪れた友人が「朝日に輝く黄金のヒマラヤは、見た者でしか分からない」と語る。
 私は英国にいる頃、一人のネパール人とカトリック系の寄宿舎で知り合ったのを思い出す。彼はロンドン大学の学生だったが、薬が原因で75%失明した。医療過誤だ。
 病院を相手取り裁判に持ち込み、6千万円の賠償金を勝ち取った。しかし彼の人生は100%変わってしまった。母国に帰れば、高級官僚として、将来を約束されていたのだが・・・。
  この裁判が新聞で報じられ、証券会社や投資会社がやってきた。私は彼にネパールに帰れば、一生暮らせる金だ。決して「儲け話に乗って騙されるな」と助言したことを思い出す。彼は帰国した。生きていれば還暦を過ぎているだろう。彼が帰国して以来、音信はない。
 英紙「ガーディアン」のネット版に掲載されているボニントン氏のカトマンズ探訪を読み、まだ行ったことがないかの国に思いをはせ、そして40年前の彼との出会いを思い出した。

写真:スワヤンブー仏教寺院から見るヒマラヤ山脈