上田龍公式サイトRyo's Baseball Cafe Americain  「店主日記」

ベースボール・コントリビューター(ライター・野球史研究者)上田龍の公式サイト「別館」

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

ピート・ローズの通算安打記録に伴っていた「実」をイチローは抜けるだろうか?

2010年09月15日 | Baseball/MLB
 「1364/4256」(約32%)
 「616/4189」(約14.7%)
 「1699/2214」(約76.7%)
 「2556/2747」(約93%)
 「242/2030」(約12%)

 上記の数字は、ピート・ローズ(Reds,Phillies,Expos)、タイ・カッブ(Tigers,Athletics)、ジョー・ディマジオデレク・ジーター(Yankees)、イチロー(Mariners)の各通算安打(2009年まで)中、所属チームがポストシーズンに進出(1960年以前はリーグ優勝、61年以降はワイルドカード以上)したシーズンに記録した本数とパーセンテージを示したものだ。

 ディマジオとジーターの「優勝貢献率」は驚異的だが、球団数拡張や地区制導入などによって1960年代以降ポストシーズン進出へのプロセスが難しくなったことを考えると、ローズの安打数とパーセンテージも高く評価すべきものだと思う。ちなみに地区制が両リーグに導入された1969年以降に限ると、ローズの優勝貢献安打数と割合は、「1364/3147」(約43%)にはね上げる。ポストシーズン進出はRedsで1970、72、73、75、76年の5回と、Philliesで80、83年の2回で計7回。うちリーグ優勝は6回、ワールドシリーズ制覇は3回を数える。またメジャーリーグ記録の200安打以上10回のうち4回(70、73、75、76)もRedsがリーグ優勝した年に達成されたものだ。

 ご存じのとおり、ローズは1989年に野球賭博に関与したとして永久追放処分を受け、野球殿堂入りの資格も停止されている。1919年のワールドシリーズで八百長試合に加担した(ブラックソックス事件)として同様に永久追放されたシューレス・ジョー・ジャクソン(White Sox)が、White Soxのオーナー、チャールズ・コミスキーに年俸など待遇面で不当な待遇を受けていた(ゆえにコミスキーの殿堂入りを取り消すべきだとの声は少なくない)ことが事件の背景にあったことと比べると、ローズはまったくの「自業自得」であり、永久追放後も近年まで賭博行為を否定していたことを考えると、少なくとも存命中の殿堂入りは難しいだろう。

 ただ、記録そのものは(興奮剤使用などの疑いは多少あるものの)近年のホームラン打者たちのように筋肉増強剤やヒト成長ホルモンの助けを受けて達成したものではない。またRedsのキャプテンとして「ビッグ・レッド・マシン」の牽引車役となりチームの優勝に貢献したこと、常に全力プレーを怠らず、1970年以降は本拠地球場がすべて人工芝だったにもかかわらずめったに試合を休まず、1960年代にNFLに押されて人気が下降気味だったメジャーリーグを70~80年代にかけて復興へと導いた功労者の一人でもあり、日本においても1978、79年に来日して親善試合とは思えぬハッスルプレーを披露して、カップめんや男性化粧品CMにも出演するなど(東京の繁華街には「ピート・ローズ」という名前のバーまであった)、日本でもメジャーリーグへの関心を大いに高めることに寄与し、のちの日本人メジャーリーガー誕生に一役買ったともいえるだろう。

 賭博行為や脱税など犯した罪は大いに非難するが、ベースボールへの貢献度はそれを補って余りあるものがあるというのが、永久追放後から現在に至るまでのローズに対する私のスタンスであり、おそらく盟友の豊浦彰太郎さんや菊田康彦さん(「Red Hot Zone」、いつ再開するんですか。まだ私のPCにはブックマークしたままで、更新を何年もお待ちしています。今年は書くネタがいっぱいできたでしょ=笑)も同じ気持ちだと思う。

 これはベースボールに限ったことではないが、特に球技では卓越した個人のプレーや記録が必ずしもチームの勝利に結びつかないケースがある。マイケル・ジョーダンが毎年驚異的なパフォーマンスで得点王に輝きながらも、なかなか所属するChicago Bullsが優勝に手が届かなかった頃、地元シカゴのメディアやファンからは「ジョーダンはバスケットボール界のアーニー・バンクスだ」と揶揄されたものだ。バンクスは同じシカゴに本拠地を置くメジャーリーグのCubsで50年代から60年代にかけて大活躍した中心打者だったが、MVPや本塁打王など数多くのタイトルに輝いたにもかかわらず、チームは彼の在籍中ついにプレーオフ進出さえも果たせなかったため、ジョーダンもブルズで同じような存在になるのではと危惧されたのだ。
 
 先日、イチローがジョー・ディマジオの通算安打数を抜き去ったことは日本のメディアでも報道された(ディマジオの時代が公式戦154試合制だったこと、第二次世界大戦中に兵役で全盛期の3年間を棒に振るなどのハンディを乗り越えたうえでの記録だったことに言及したメディアは皆無だったが。まあしょーもねえか。イチローがノーヒットに終わった試合で、相手投手がジョン・レスターだったことも伝えないんだから。イチローや松井秀喜が誰からヒットやホームランを打ったか、松坂大輔が誰から三振を奪ったか、5秒もあれば十分伝えられると思うのだが)が、同じ「2214本」時点での、「1699」と「242」の差はやはり重い。
 
 イチローにはもちろん、Marinersやシアトルへの愛着もあるのだろうし、弱いチームを浮上させて世界一まで導く理想を抱いているのかもしれない。だが、野球人としての彼を心からリスペクトしている立場からすれば、やはり彼には「シアトル板アーニー・バンクス」にはなってほしくないのだ。監督人事ひとつとっても、首をかしげたくなる人選が続いているフロントの体質(ダスティー・ベイカーやジム・トレイシーを招へいするチャンスは十分にあったと思う)や、フロントの失態をイチローに責任転嫁する地元メディアの存在などをを考えると、Marinersは決してイチローのような不世出の選手がプレーするにふさわしい場所とは思えないのだ。
 バンクスの時代は、まだ悪名高き「保留条項」が選手の自由を奪ったままで、フリーエージェント制を選手会が勝ち取ったのは彼が現役を引退したあとのことだった。イチローにはバンクスになかった「野球人生における選択権」がある。

 少なくとも、今のままでは通算安打数に占める「242」の数と割合は変わらないままだろう。近い将来、日米通算でイチローがローズの記録を抜き去るとき、私は彼の「優勝貢献本数」が少しでもローズに近付いてほしいし(その場合はオリックス時代の2シーズンも当然合算される)、できれば更新してほしいと心なら願っている。「1364」はイチローの能力からすれば、決して不可能な数字ではない。



上田龍最新刊「100・200・300 トータルスラッガーズリスト~メジャーリーグ最強万能強打者列伝」(Baseballogy野球書籍セレクション)予約受付中!




 
My Prison Without Bars: Pete Rose
クリエーター情報なし
Rodale Pr
『野球』 ジャンルのランキング
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 「100・200・300トータルスラ... | トップ | レッズは現存ずる「メジャー... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。