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やくみつる氏の「月刊ベイスターズ」連載打ち切りに抗議し、「横浜ファン正式返上」をここに宣言する!

2008年01月26日 | Baseball/MLB

(やくさんご夫妻の初デートの場所も、横浜スタジアムでの開幕戦だったのだが)

 

 

 横浜ベイスターズの球団発行誌「月刊ベイスターズ」に連載されていた漫画家やくみつる氏の連載コラムが昨年5月、突然打ち切られた。

 

 原因は、昨年のドラフト1位入団選手への超過契約金問題で、記者会見での球団社長の発言を批判する内容の原稿を書いたところ、球団側より掲載不可の判断が下され、やく氏が降板を申し出たという。しかし、実質的には球団側の意向による連載打ち切りといって差し支えないだろう。

 

 やく氏によれば、編集長は球団に対して相当抵抗したとのことだが、結局1985年の1月に雑誌が月刊化されると同時に始まり、以来22年以上続いてきた名物連載ページは、読者への十分な説明もないまま打ち切りになってしまった。そして、連載開始当時の担当編集者は、ほかならぬこの私だったのである。

 

 連載が始まった当時の状況を説明すると、前年のホエールズは最下位に転落し、当時の関根潤三監督が退任して近藤貞雄監督に交代。長く優勝から遠ざかり、Aクラス入りで大騒ぎするようなチーム状態で、ドラフト1位指名選手も「ハズレくじ」の繰り返しでほとんど大成せず(実際、70・80年代の1位指名選手でレギュラーとして活躍したのは山下大輔、斉藤明夫、盛田幸妃、谷繁元信ぐらい)で、とても世間に向けて堂々と「大洋ファン」を名乗れるような状態ではなかった。

 

 当時は隔月刊の「横浜大洋」と名乗っていた雑誌の売り上げも当然ぱっとせず、私が勤務していた制作・編集・販売を請け負っていた編集プロダクションも制作費名目で球団に赤字を補填してもらう状態(それなのに、球団のフロントには、自分たちのていたらくを棚に上げて、雑誌が売れないのは編プロの責任と公言するバカ者が少なからずいたようだが)。そんななか、読者から「(奇特にも)大洋の選手をマンガにしている人がいる」と投書をもらってその存在を知ったのが、当時は「はた山ハッチ」のペンネームでの執筆も多かったやく氏だった(月刊ホエールズの連載は「はた山」のペンネームが使われ続けた)。

 たまたま、やく氏がメインで連載を持っていた漫画誌の編集部に、私の個人的なツテがあったことで連絡を取り、84年にインタビュー記事をお願いしたのが、やく氏の初登場で、その後サラリーマンとの二足のわらじを履いていたやく氏がフリーになり、月刊化にあたって目玉連載がほしいということで、正式に連載をお願いした。イラスト(その後4コママンガ)+エッセイというスタイルは、私が考えたものである。

 

 やく氏の連載は、以後誌名が「ベイスターズ」に変わってからも、雑誌の目玉だった。その間、雑誌はチームがしょうもない状態であってもある程度ファンをつなぎとめる役割を果たすことができたと思うし、やく氏の連載にはそれに多大な貢献をしていただいたと考えている。内情を話せば、当時は目一杯とはいえ、やく氏には相場からすればずいぶん安い原稿料で書いていただいていたし、おそらく(野球界の「保留条項」にも似た、一度決めた原稿料はなかなか上げないという)出版界の常識と照らし合わせても、あるいは同じ額のままではなかったのかと思う。

 

 やく氏の連載とともに、信州大教授・山本哲士氏のコラムも打ち切りの憂き目にあっている。こちらは私が編集部を去ったあとに始まったコラムだが、100回を超える名物連載だった。理由は序盤のチーム不振に関し、打撃コーチの進退問題に言及したところ、大矢明彦監督や親会社TBSの逆鱗に触れたのが原因だという。「球団内の雑誌に、球団を批判するようなことは許されない、他でやれ」とクレームをつけ、あろうことか「こうした記事を載せるなら、編集部にいっさいチーム取材をさせない」という圧力をかけてきた。山本教授はご自身のblogでこうした球団や監督の姿勢を「全体主義」「ファシスト」と批判しているが、まったくその通りであると思う。

(山本哲士公式ブログ「横浜ベイスターズ大矢監督のポストモダン・ファシズム」)

http://hospitality.jugem.jp/?eid=91

 

 

 私が編集を担当していた当時から、読者やファンからは「大本営発表雑誌」のありがたくないニックネームを頂戴していた。まあ球団広報誌という性格から、編集部が直接手がけるインタビューや論評記事で、それがいかに正統な論拠に基づくものであっても、チームや選手批判がタブーになってしまうのは身内(関連会社が発行している現在は「社内」)の立場から仕方がない部分もあるだろう。

 

 しかし、雑誌の副題は定期刊行物となった第2号から一貫して「ファンマガジン」である。ファンのための雑誌である以上、少なくとも罵詈雑言や名誉毀損にあたらないのであれば、寄稿記事や投書に批判の声は反映されなければならない。またそのための寄稿記事であり、投書である。それでも以前は、やく氏や山本氏が連載でかなりきついことを書き、現場、あるいはファンの受け止め方も賛否両論あったようだが、あえて許容・黙認する姿勢がフロントにもあったようだし、選手をなだめる職員などもいたようだ。

 

 今だから告白するが、球団批判につながるファンの投書を校正段階で球団広報に差し替えを命じられたケースは何度もあった。38年も優勝から遠ざかり、親会社の都合にばかり左右されていたチームにファンがひとこと言いたくなるのは当然の感情であり、少なくともフロントや現場が耳を傾けるべき意見は載せるべきと編集サイドでが判断しても、要は「聞く耳持たず」の姿勢だった。驚いたことに、言論機関であるはずのTBSが親会社になった現在、その傾向はますますひどくなってしまったようだ。

 

 もし、やく氏や山本氏の主張に文句を言いたいのであれば、「身内」の編集部に取材拒否をちらつかせ、連載打ち切りに追い込むような姑息な手段を取らず、それこそ球団発行の雑誌なのだから、オーナーなり社長なり監督が直接反論すればいいだけの話だ(今回のやり方は、雑誌の批判記事に対し、自分たちが所有しているメディアを使って反論せず、巨額の損害賠償訴訟を、出版社や編集部ではなく、コメントを寄せたフリーランスのライター相手に起こした「オリコン」の恫喝訴訟のやり口にも通じるものがある)。特に大矢監督は情けないのひと言に尽きる! 敗戦のあと、横浜スタジアムの観客席から「やめちまえ!」という野次(決して感心できることではないが)を聞くことは珍しくないと思うのだが、それに対してもあなたは「本拠地でファンが球団を批判するようなことは許されない、他の球場でやれ」というのか? いかにも度量が狭く、コーチ陣も選手もファンも「イエスマン」揃いでないと気がすまない性格のようだ。

 

 昨年暮れ、横浜球団ではスカウトなど球団職員の不可解な解雇や大量退職があり、恒例の納会も中止されるという異常事態になったことが新聞などでも伝えられた。正直、1998年の優勝後、貢献度の高かったスカウトなどが退社したり、他球団に移籍するケースも相次いでおり、牛島和彦前監督の退任にしても、結局は球団が補強など必要最低限のバックアップも渋ってきたのが真相だったと噂されている。オーナー会議や実行委員会における読売への追従ぶりも見苦しいほどだ。こうした球団の姿勢に不信の声を向けるのはファンならばむしろ当然だといえる。

 

 たまたま口座を持っている銀行にいつも最新号がおいてあるので毎月目を通しているのだが、やく・山本両氏の連載がなくなったあとの「月刊ベイスターズ」は、商品カタログ以下の印刷物に成り下がった。当たり前である。10年、20年と続いていた長期連載は、定期刊行物に必要な「継続性」の原動力であり、そうした連載を持ちたいと雑誌編集者と名のつく人間はみんな苦心惨憺している。それが突然なくなってしまったら、その穴を埋めるのは容易なことではない。編集部にも以前にもまして球団側からは「意向に沿った」編集方針が強要されているだろうから、インタビューも論評記事もレポートも紋切り型に終始せざるを得なくなっている。これは編集者の責任ではない。ファン、そして編集者の意思すら反映せず、提灯記事のみに終始する編集内容なのだから、それはもはや大本営発表雑誌ですらない。ただの「残骸」である。

 

 やくさんの連載打ち切りについて、玉木正之さんは「ベイスターズは素晴らしいファン、いや最高の支援者を失ったことに気づいてるのかいな」とご自分のHPに書いていたがまったく同感である。結局(選手全員までそうだとは言いたくないが)「ファンはただ入場料を払うかテレビ視聴を通じて放映権料という形で金を出してくれればいい、よけいな注文や批判を球団や選手には一切言うな」というのが横浜ベイスターズの球団経営陣の「総意」であると解釈せざるを得ない。

 

 これまで、かつて深い関わりを持ってきた立場を超えて、横浜ベイスターズを応援していたからこそ、近年のチームのあり方に当Blogなどで苦言を呈し続けてきたが、加藤博一さんには本当に申し訳ないけれども、もはや見切りをつけるときが来たようだ。

 

 私は本日、2008年1月26日をもって、横浜ベイスターズファンを正式に返上し、少なくとも今回の問題を引き起こした原因が取り除かれない限りは、再び応援しないことをここに宣言する!!!!!

 

 

 

 

 

 追記:その後、山本先生はご自身のBlogで改めてこの問題に関してエントリーを行なわれています。私は改めて横浜ベイスターズ球団に問いたい。ここまでの仕打ちを受けてもプロフィールに「本職は横浜ベイスターズファン」と堂々と書かれている方を「公共の敵」のごとく切り捨てたあなた方は社会倫理的にも間違っているのだと!!!!!

 

山本哲士公式ブログ「ホスピタリティの場所」

http://hospitality.jugem.jp/

 

 

 

 

ウロコロリ―やくみつる的モノの見方
やく みつる
岳陽舎

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5 コメント

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Unknown ()
2008-01-27 10:41:35
大げさに書いてるけどこの二人は別にファンじゃないで所、左翼でしょw
試合もみてないで文句ばっか書いてるだけやん
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勘違い人間の「特権意識」!!! (Ryo Ueda)
2008-01-27 11:47:24
>左翼でしょw
試合もみてないで文句ばっか書いてるだけやん

 あらゆる批判を許さないという、最近の悪しき風潮を象徴する意見ですね。批判=左翼というあまりに単純な図式を描きたがる頭の中身がどういう構造になっているのか、医学的、科学的にも興味のあるところです。ぜひ亡くなったあと、ご遺体を「献体」に出されることをオススメします。そうすればあなたの人生で唯一の「社会貢献」ができますし、その愚かさも「死んだら」ようやく治るんじゃないですか?

 それに、野球中継や報道に携わっている職業にでもついていない限り、応援するチームの試合に足を運べる人間なんて限られています。一部の暴力的私設応援団などに、そうした類の勘違いした「特権意識」を、持った人間が多いようですが、地方に住んでいたり、健康面や経済的理由でほとんど生の試合を見られない人もいるわけです。でもそういう人たちだってチームや野球を愛する気持ちには変わりがない。
 現在の横浜ベイスターズやプロ野球、日本球界全体が、大きな問題を抱えているのは、一目瞭然です。やくさんや山本先生にはそれをきちんと指摘する資格も権利もある。少なくともその意見を雑誌に掲載する前に握りつぶした球団側のやり方は、フェアなやり方ではありませんね。間違った方向に向かっている友人に苦言を呈すことができるのが真の友情ってものですよ。まあ、あなたのような単純思考の頭脳構造ではご理解いただくのも困難かとは思いますが。本当にお気の毒で、心からの憐れみとご同情を申し上げる次第です。
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えーと (りゅうた)
2008-01-27 12:37:17
神奈川新聞のはた山ハッチさんの一コマ?漫画を見て育った私ですが最近のやくみつるさんは明らかに試合も見ずに批判ばかりで「この人もうベイファンとは言えないでしょ…」状態だったと思います。それは自分の周りのベイファン仲間にも共通する認識でした。

何年前から大洋ファンだったから俺の方が偉いとかおもってらっしゃるならこれ以上何も言うこともないですがw
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もう一度文章を読み直してみてください (Ryo Ueda)
2008-01-27 20:29:07
>最近のやくみつるさんは明らかに試合も見ずに批判ばかりで「この人もうベイファンとは言えないでしょ…」状態だったと思います。

 少なくとも、最近のチーム状態、特にフロントの体たらくぶりを見ていれば、ミエミエのヨイショや提灯持ちコメントは口にできないのが普通の感覚でしょうね。私も当blogで厳しいことを書いていますよ。どうでもいいチームだったら苦言なんか呈しません。表現方法もそれぞれ違うわけですし、それこそ雑誌にきちんと掲載した上で、球団側やファンの反論も乗せればいい。それが言論の自由ってものです。

>自分の周りのベイファン仲間にも共通する認識でした。

「井の中の蛙、大海を知らず」って言葉もあるでしょ? 仲間内以外に、もっと広い「世間」「世界」ってものがあるわけです。統計学上も根拠や説得力に乏しい表現ですね。

>何年前から大洋ファンだったから俺の方が偉いとかおもってらっしゃるなら

 もう一度、私のコメントを読み直してもらえませんか? そういう「特権意識」を持つファンの姿勢をきちんと批判していますよね。「何年前から大洋ファンだったから俺の方が偉い」などという、あなたが勝手に捏造したことを、私が思っていることのように言わないでもらえますかね。読解力もなく、パクリや捏造にだけ長けているんじゃ、あなたの人生、行き着く先も見えているって感じです。

 今後、同様の内容であると判断したコメントについては保留します。異論・反論は歓迎しますが、きちんと私の書いた文章を隅々まで呼んで、揚げ足取りではないコメントを寄せてください。読解力、文章構成力、いずれも不合格。むしろこういう人たちにこそ「夜スペ」が必要なんじゃないでしょうかね。
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わかりますよ、でも・・ (34番)
2008-01-28 07:09:19
本当の愛情があれば批判は当たり前。「叱咤する」と言うことを目ざわりな批判と判断するフロントに封建的企業体質は確かに感じられます。

辛口コメントはベイスターズを把握すればしただけ湧き出るもの、心情を察します。

ですが「なぜ今に?」が正直な感想です。キャンプ目前、新外国人達も来日しました。野球界ではもうすぐ「お正月」を迎えようとしている大事な時期、ファンだって同じです。新聞や雑誌などから聞こえる横浜関係の怪我情報、批判・・なるべくシャットアウトしたいのがまさにこのお正月時期なのです。

できれば前半戦終了後もしくわシーズン終了後に掲載してもらいたかったです。

最後になりますが、「返上」なんて言葉は使わないでください。阿呆の子ほど可愛いもの、上田さんだって必ず気になりますよ(笑)。大洋、横浜の悪玉コレステロールはシツコイですから・・・
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