(開幕スタメンに「Matsui」の名前があるかないかで、2008年ヤンキースの命運が決まる!)
今朝は、スカパー!MLBライブ開幕前最後のウォームアップとなる、MLBオープン戦インディアンスvs.ヤンキース戦を、「Mr.ステルス」こと(笑)加藤じろうさんと担当した。
90年代に人気・実力ともア・リーグ最強を誇ったチームを解体して、一から若手を育て上げたインディアンスは、いよいよスキのない編成が完成しつつある。おそらく向こう3年ぐらいのアメリカンリーグは、レッドソックス、タイガース、インディアンスがペナントを争う時代になるのではないだろうか?(もちろん、それがいい形で裏切られれば言うことはないのだが)。
さて、ヤンキースのほうは……。正直言って、今年はかなり「ヤバイ」。フロントがヨハン・サンタナの交換要員に要求されながら敢然と断わったメルキー・カブレラが、いきなりグレイディー・サイズモアのフライをポロリだものなあ。いかに強風という悪条件があったとはいえ、松井秀喜やボビー・アブレイユ、相手のサイズモアやフランクリン・グティエレスは右往左往しながらもフライを処理していたのだし、メジャー昇格直後のルーキーでもなく、立派なレギュラー、しかもア・リーグNo.1センターの座をサイズモアやイチロー、カーティス・グランダーソン(開幕故障欠場は痛い!)、トリー・ハンターらと争うべき地位に近づきつつあるのだから、現地のコメンテーターも言っていたように「ノーエクスキューズ」、つまり言い訳のできない凡ミスである。
それ以上に、先発投手陣の顔ぶれは今年も前途多難。正直なところ、開幕戦で王建民がロイ・ハラデイ相手に大コケでもしたら、そのままズルズル連敗街道まっしぐら、88年のオリオールズの悪夢再現というのも、決して杞憂とは思えない。何かチーム全体から強い「意志」が伝わってこないのである。
アレックス・ロドリゲスとの再契約によって、生え抜きのキャプテンであるデレク・ジーターとのチーム内でのパワーバランスがますます変わってきたことも影響しているのだろう。かつて同じような状況が、1977年に、FAで移籍してきたレジー・ジャクソンと当時のキャプテンだったサーマン・マンソンとの間にあった。ただ、このときはマンソンがジャクソンとオーナーのジョージ・スタインブレナーに対して思い切り意地を見せて攻守にわたりジャクソンに劣らぬ大活躍を演じ、ジャクソンもAロッドにはないカリスマ性をシーズンが深まるとともに発揮し、また何といっても「意志の塊」であったビリー・マーティン監督の存在があった。
このときのマンソンに比べると、ジーターは好人物、紳士的過ぎる。ここ数年のチームは、彼がいろいろなお膳立てをしても、打線や守備陣に障害になる人物が入れ替わり立ち代り存在して、彼の意思がチームに浸透してこなかったのだ。
その象徴が、メディアによると「レギュラー争いを強いられている」松井秀喜の現状である。しかし、ハッキリ言ってしまえば、松井を差し置いて開幕スタメンが噂されているシェリー・ダンカンが、果たしてそれほどの選手なの?という疑問は、今日の彼の打席を見ていても拭い去ることはできなかった。若手と言われてはいるが、現在27歳。今年9月の誕生日が来れば28歳である。それ以上に、パワーはあるが荒さ、穴が目立つバッティングを見ていると、これから大きな「伸びしろ」があるとはとても思えない。たとえに出すのも何だが、あれだったらこれから日本ハムと交渉して中田翔を引き抜いて、1Aのスタッテンアイランドから鍛え上げれば、数年後にはダンカンなど問題にならないほどの成長を遂げると思う。
キャンプ・オープン戦取材で毎日ヤンキースを取材している日本メディアの皆さんは、私以上にダンカンの「実力のほど」がわかっているはずである。にもかかわらず彼らは、ダンカンが松井を差し置いて開幕スタメンを噂されていることに対し、「松井開幕スタメン・レギュラー確保の危機」を連日報じることはしても、、ジョー・ジラルディー監督やブライアン・キャッシュマンGMに対して疑問を呈することをしていないように見受けられるが、これはきわめて不可解な現象である。正直な気持ちを言わせてもらえば、ダンカン程度の選手が、いやしくも世界一の奪還を目標に掲げているチームにあって半分スタメンを約束されている状況というのは、ヤンキースを取材するメディアも、チケットや放映権料を通じてチームにお金を落としているファンも許容すべきものではない。
もし、このまま松井が開幕スタメンを外されたり、途中出場が多くなったり、ベンチを温める光景が目につくようになれば、今年のヤンキースは世界一どころか、ポストシーズン進出、というよりも2位に食い込むのも難しくなるだろう。放送でも話をしたが、今年のア・リーグ東地区はレッドソックスがほぼ磐石なのに加え、ブルージェイズとレイズの追い上げが急である。下手をするとオリオールズとテールエンド争い?という危機感は、放送中何度も私の頭の中をよぎった。
こうしたチームの危機的状況を救うことができるのは、とにかくシーズンを通じて安定感を保つことのできるプレーヤーである。Aロッド、アブレイユ、カブレラあたりはどうしてもプレーにムラが出る時期がシーズン中に何回かはあり、しかも今日のカブレラのように「守り」で如実に現れるケースが圧倒的だ。その点、ジーターと松井はバットが多少湿っていても、守備と走塁にはムラが少なく、決定的なカタストロフィをチームにもたらさないのである。
世代交代はもちろん大切だ。しかし、チームの「伝統」という松明(たいまつ)は、ふさわしい実力の持ち主に受け継がれなければならないし、カブレラやロビンソン・カノウにはその資格はあるが、ダンカンにはない。
カノウが今日の試合でも、いよいよ首位打者や最多安打争いの常連になりそうな雰囲気を漂わせてきた。ジーターからカノウのチームに作り変えたいというのであれば、なおさら前後に松井が座っていることが、どれほど彼の助けになるか。日本の現地取材メディアの皆さんは、実体のないダンカンの実力に対する「過大評価」にきちんと異論を唱え、松井のスタメン、レギュラー出場をもっとアピールすべきである。今のままではこれからのヤンキースは、バラク・オバマではなくジョン・マケインをアメリカの有権者が選んだしまったあと世界中に訪れるであろう悪夢、あるいは石原某や橋下某に浅薄な人々が熟慮なき一票を投じた結果、彼に投票しなかった納税者までとんだとばっちりを食らっている東京や大阪の現状と同じような、あるいはそれ以上の深刻な事態に見舞われることになると、私は断言する!
追記:その後、ジラルディー監督は松井のレギュラー出場を固めたようである。自分もコーチとして2006年に同じベンチで1年間過ごしただけに、松井がベストの状態にあればチームに最大級の貢献をすることは目の当たりにしていたわけだし、オープン戦で結果を出しているのだから当然の決断だろう。ジラルディーは監督就任以来最初の“危機”をとりあえず回避した。
さて、松井秀喜選手は開幕を前にようやく人生の伴侶を迎えることを発表した。とてもおめでたいことである。今シーズン、そしてこれからのゴジラと彼が選んだパートナーの前途に幸多からんことを祈るばかりである。
不動心 (新潮新書 201) 松井 秀喜 新潮社 このアイテムの詳細を見る |
「Mr.ステルス」もとい、
「蚊に刺されたほどの衝撃すら与えない」
ほど人畜無害な、「語りべ」です(笑)
昨日はありがとうございました!
今度ご一緒させていただく時は、
上田さんの先制防衛弾への対抗手段を講じておきますので、
よろしくお願い致します。
P.S.
松井選手の婚約発表が、もう少し早かったら、
いろいろとネタを膨らますことができたんですけどねぇ…(笑)
>上田さんの先制防衛弾への対抗手段
なんの! こちらこそ「ステルス」に対抗し、「パトリオット」と化して、すべて迎撃してやる!(笑)