比較日本研究

比較日本研究会の活動報告。日本の政治・思想の研究。日本の政治・社会状況に対し平和の視座から発言。社会の逆回転に歯止めを。

2.朝日vsNHKは、なぜ全面対決になったか

2005-01-21 21:23:13 | NHK「慰安婦」番組改変問題
                  (憂々の里)
 12日の朝日スクープ以来、NHK番組改変問題はエスカレートの一途を辿っている。なぜそうなったか。
 12日朝日記事、さらに18日詳報を見ると、NHK松尾元総局長、安倍現自民副幹事長、中川現経産相らは、いずれも番組改変に政治家がコミットしたことを本筋で認めていることにまず驚かされた。
 安倍、中川、NHKは日を追うに連れて、朝日報道を「虚報」「捏造」だと、抗議をエスカレートさせる一方で、発言の内容についてはあいまいな、穏当なものだったように軌道修正を繰り返している。
 
 安倍は「風邪気味で自宅にいるところを夜討ちをかけてきてインタホン越しにコメントを求められた」、また中川は「酒を飲んでいるときに電話でいきなり4年も前のことをしつこく尋ねられたから」と言っているが、それは朝日の談話が本筋で事実だったために弁解し、発言を修正したいという心情が伝わってくる。つまり、コメントに後ろめたさがあるということだ。
 取材などされたこともない一市民が言うならもっともなセリフだが、政権党と内閣の中枢の者が、取材に対してあとから弁解するセリフではないだろう。また、松尾元NHK総局長は朝日記者は最初から結論ありきで、政治圧力はないといってもあるでしょうとしつこく言われたというが、朝日18日の詳報にあるようにそれが「長時間の取材」だったなら、プロ中のプロがそういう取材にその場で抗議もせずなぜ長時間取材を受け続けたのか、実に不思議である。

 つまり、政治圧力が仮にあったとすると、その加害者2名の政治家と被害者NHKの幹部、双方ともが朝日の取材を受けても、自分たちの発言とやったことが法に抵触し、それ以上に民主主義の根幹を揺るがす重大な行為だったという認識が決定的に欠落していたからではなかろうか。
 なにも悪いことではない、「偏向番組」について直すように注文をつけてなにが問題なのだ?そうとしか思っていなかった。また、被害者であるはずのNHK幹部もそれに対して編集改変を説明し、約束するのが何もおかしいことでない・・・そうとしか思ってなかったからこそ、易々と朝日記者の聞き出しに十分以上の答えを与えてしまったのではないだろうか。
 それは、1で紹介した12日の安倍氏のコメント(これは朝日が聞いて書いたのではなく、安倍が配ったものだ)をみれば、民衆法廷は偏向しており、北朝鮮を利するものだから公正中立にするように話すのは当然だという認識が正直にでていることからも、容易に想定できる。
 仮に、安倍、中川、NHKがいうように故意に解釈を歪めた部分が朝日記事にあった場合であっても、記事の大筋そのものは動かせない重さをいささかも失わないだろう。
 それだからこそ、時間が経過するにつれ、事の重大さを認識していくにつれて、全面否定しか残されていないことにも気づいたのではないか。そこに、狂ったように抗議と全否定を繰り返すNHKの異常さを感じてしまうのである。