閑寂肆独白

ひまでさびしい本屋のひとりごと

評判の小説を読んでみた。

2016-12-11 07:17:39 | 日記

 久しぶりに 吾店に新作・新刊の小説が到来した。 ある賞を取ったけれど当の本人が「何をいまさら」と言ってゴネたので話題になった作品なので読んでみた。 読みかかって「何だこれは!」 嫌になってやめようか、と思ったけれど、ままよと最後まで読んでみた。
 これは18・19世紀に 彼の地でたくさん書かれた通俗小説あるいはポルノ小説とそっくりではないか。もちろん時代と設定場所は違うけれど、貴族・高級将校と娼婦、あるいは戦争未亡人。それに小間使いの女、学生などが絡むという定番の仕掛け。
 ゾラ・モーパッサン・フローベルなどの「名作」小説、それにオペラの「名作」だってちょいと書き加えれば立派なポルノが出来上がる。すれすれの作品はたぶん無数にあるだろう。 作者ほどの語学に堪能な人であれば 当然そのような通俗小説のも目をとうしているだろう。 売れない絵描きが春画を書いて稼ぐのと同じく、作家だって春本を手掛けてもおかしくはない。「人間生活の表現・描写の稽古の為」という立派な言い訳も控えている。「伝○○」という作品はいくつか知られ、中でも「四畳半襖の下張」は有名なことは誰でも知っている。
 この作品が彼の若いころに書かれて今になって公表したのか、それとも近作というのか知らないけれどもし後者であるなら80歳前後というお年を考えるとなかなか「お盛ん」ですなというべきだろう。「眠れる美女」の例もあるじゃないか。
 このもらった賞というのが 「午後の曳航」を書いた三島の名前の賞というのもなんかなあ、という感じ。選考委員たちも(正確には知らないけれど)何らかの形でこの作者にかかわったか、あるいは批評家としての存在を知っているので、いよいよ文人村の仲間内の仕掛けではないかと。 作者が「小癪な真似をしやがって」と言ったのもムべなるかな と思った次第。丸谷才一もそうだったけれど、かれらの様な博覧の人は「たまには自分も書いてみるか」と思うのでしょうな。 戦時中のスパイ絡みの話で書きようではもっと面白い「探偵?活劇?小説」にできたのに、中途半端のポルノ小説では 少し残念な気もします。
コメント
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