平方録

母親の知的レベル

「江戸時代のミイラ」というのが陳列されていて、驚いた。
身長は135センチくらいの女性で、甕棺に膝を曲げた状態で埋葬されていたものである。
台東区谷中で発掘された200年ほど前の遺体だそうだ。

火山性の土壌の日本では酸性度が強く、土葬されると短い間に骨まで溶けてしまうそうだが、甕棺の中で密封されていたため皮膚が死臘化して残されたものだという。
極めて保存状態が良いそうで、気持ち悪いはずの遺体なのだが、頭髪は脱色気味の薄茶色で後ろに束ねられていて、ややうつむき加減の横顔をげしげと見つめてしまった。

身長135センチとはやけに小柄だが、推定年齢は30~50代で、貝類を常食にしていたということが分かっているそうだ。
アサリとかハマグリとかシジミの類なんだろう。いずれも江戸前の食材である。
アサリの味噌汁にアサリの炊き込みご飯。そしてネギを加えて煮たものを汁ごとご飯にかければ深川飯である。江戸庶民の日常食、まさにちゃきちゃきの江戸っ子じゃあないの。
池波正太郎の「剣客商売」とか「仕掛人・藤枝梅安」などに登場する食事の定番である。
ただ、この女性は歯槽膿漏に悩まされていたそうで、CT写真で見ると上あごの歯がまったく脱落しているそうで、食べるのも話すのにも不自由だったのでは、という説明である。

一緒に連れて行った姫はミイラにはほとんど興味を示さず、見入っていたのは縄文人以前の人体模型。
「こんな顔した人がいたんだね」とか言いながら髪をもじゃもじゃにした毛だらけの人形の前でしばしば立ち止まっていた。
どういう想像をしていたんだろうか。その辺りは定かではないが、子どもが楽しめる施設であることは間違いない。
新幹線で家に送り届ける道すがら、上野の国立科学博物館に寄り道してきたんである。

喜んだのは恐竜の骨格模型がズラーッと展示された部屋で、目を丸くしていたが、余りの巨大さにどれだけ現実味を感じただろうか。
姫ともども、じいじとしても開いた口がふさがらないほどの迫力で、あんな骨格の上に筋肉や皮膚を纏った大きな生き物がのし歩いていたかと思うと、恐ろしい光景しか想像できない。
史上最大級の肉食恐竜とされるティラノサウルスの骨格だけでも20トンはあったと推定されているから、それを動かすエネルギーたるや相当なものである。
恐竜が生息したのは人類よりもずっと以前のことで、我らの先祖がこれらの生物と一緒に暮らさずに済んだのは、つくづく幸運だったと思う。

恐竜たちの出すゲップに含まれる炭酸ガスが充満して地球環境を破壊し、そのために絶滅したんだという説を聞いた記憶があるが、真偽のほどはどうなんだろう。
それが真実ならば、人類もまた恐竜の轍を踏もうとしているのである。

4時間足らずの滞在では、十分に見学できたとは言いかねる。春休みにでもまた連れてきて上げようと思う。
館内で一つ気がついたことだが、子どもを連れて見学に来ている若いお母さんたちが皆、知的に感じられたことである。
どうしてそのように感じたかというと、子どもに聞かれて説明している内容が耳に届いてくるのを漏れ聞いて、オヤ!、案外説明になってるじゃん、と気付いたのである。知的水準のレベルの高さを示していたんである。しかも美人揃い。知的だから美人に見えたのか。
これは発見だった。科学博物館だもんね。さもありなんである。

盆と正月がいっぺんにやってきていたが、宇都宮の回転ずしで“晩さん”をしてUターンしてきた。物事には終わりが付きものなのである。隙間風も…。





下の写真がティラノサウルス。腹部も骨で覆われていて“完全武装”である。
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