傍聴絵日記

@さいたま地裁傍聴席

被告人の来店を告げる顔認証システム(戸田)

2016年08月09日 | 刑事事件
平成28年(わ)第887号  

石井 翔子  

窃盗

【概要】
平成28年6月27日、ショッピングモールのおもちゃ売り場で同じ玩具を5個,合計37690円を窃取(万引き)した事件です。犯行時の所持金は1576円で、被害品の一個分にも満たないのですが、「買うつもりだった」と、お決まりの弁解をしていた様です。
また、知人(子供の幼稚園のママ友)に本件の「ジュウオウジャー」の玩具購入を依頼されたと述べていますが、結局何故全く同じ品を5個も盗んだのかは明らかにされませんでした。(ゴレンジャーをルーツとする)戦隊モノだから5個なのかな。)
依頼者のママ友については、事情聴取に行かれると自身の犯行が周知されると回答を拒んでいます。

被告人は同種の前歴2件と前科2件を有し、前刑(懲役1年2月、執行猶予4年)の執行猶予期間中の本件犯行です。
また、本件の一週間程前に同ショッピングモール内で万引きを注意され、その際に同店の「顔認証システム」にデータ登録されており、本件犯行日も被告人の来店を告げる注意警報が発報していたと言います。(警報を受けて、被告人の本件犯行が発覚した様です)

前刑の逮捕時には転売目的で10万円相当の玩具を万引きしており、本件と犯行態様に明らかな類似性が認められます。
また、店内に人気がなかったから、つい盗めるかもしれないと思い、(衝動的に)犯行を行ってしまったと弁解しますが、どう考えても来客が少ない時間帯(午前10時前後)を選んでの本件犯行です。ですから、衝動的犯行と言うより、大きなトートバッグを持参して、計画的に盗みに行ったと、感じます。
人気がないと衝動的に盗むのならば、野菜の無人販売では、被告人にとっては「盗り放題」と言えます。

【顔認証システム】
SFかスパイ映画の様な話ですが、監視社会の到来を予感させます。
本件に関して現段階では大手資本故の導入でしょうが、いずれ導入費用のコストダウンとともに一般にも広く普及するでしょう。
その際には、「顔データ」をめぐり個人情報の扱いに関する慎重かつ十分な議論が必要と思われます。(今直ぐ、整備に向け議論すべき)

【犯行動機】
夫婦双方が離婚に際しての慰謝料支払いの為に金銭に窮していたと弁解しています。双方が以前の家庭を捨てた、略奪婚の末に築いた現夫婦関係ですが、前刑時に夫に記入済みの「離婚届」を預けており、本件の再犯によってその実行が予想されています。
家族の存在(離婚届)が本件犯行の歯止めにならなかった様です。
被告人は、離婚によってまた(家族関係も)ゼロからやり直しですと、簡単に言いますが、元夫の一人と現夫との二人、合計3人の血縁関係の子供からすれば、被告人は唯一無二の実母である事を再認識すべきです。

【求刑】
懲役1年6月(実刑)

前刑の執行猶予取り消しと併せて短くない服役になりそうです。

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