山の頂から

やさしい風

命を削る鉋!?

2012-11-05 23:48:05 | Weblog
 気掛かりな事が重なり溜息ばかりが出る。
人生が順風満帆な者など、そうざらにいるはずもないが、
しかし時として生きるのが面倒に感じるのは一度や二度のことではない。
今日も又、気がつけば溜息・・・

 こんな時ふと或る女(ひと)の言葉を思い出す。
その人の母親は6人の子供がいる家庭の後妻に入ったが、
彼女を産んで間もなく亡くなった。父親は50代だった。
遅くに授かった子である彼女を大変に可愛がってくれたそうだ。
だが幸せは長くは続かなかった。
彼女が小学校高学年の時に脳溢血で倒れ絶命した。
残された彼女は家庭を持った腹違いの兄宅に託された。
『父が歳を取っていたから何かあったらどうしようと、
子供心にも常に頭の隅で考えていた』と彼女は言う。
今から60数年も前の話である。
3人の子がいた兄宅は裕福ではなかった。
そんな中で彼女の境遇は推して知るべしだ。
また他のきょうだいは年の離れ姉達で結婚し家を出ていたから、
一緒に生活をした事はなかったらしい。
それぞれに自分の生活が精一杯で彼女を援助するゆとりもなかった。
つまり彼女は、ほぼ天涯孤独の身であった。

 中学校を卒業して直ぐに美容室に見習いとして住み込み働いた。
僅かな給金をやり繰りし貯金もした。
いつかは店を持とう。優しい人に巡り合って家庭も持ちたい。
そんな小さな夢を支えに一生懸命働いたという。
僅かづつではあったが貯金も増えていった。
だが或る時、兄に今まで面倒見てきた食い扶持を出せと迫られ、
なけなしの貯金を取り上げられてしまったのだそうだ。
その時の悔しさと情けなさは今でも震えがくるほど悔しいと話す。

 気を取り直し無我夢中で働くなかで、
『明日はきっと今日よりも良い事があるさ!』と自分に言い聞かせた。
しかし現実はそんなに甘くはない。
降って湧いたような良い事などあるはずはなかったと彼女。
何度も何度もへし折れそうになりながら、
それでも祈るように『明日はきっと・・・』と呟いたそうだ。
そうして数年が過ぎ、夫となる男性と巡り合った。
彼は貧しくはあったが正直で賢く優しいひとであった。
小さな会社を興し二人で力を合わせ身を粉にして働いたそうな。
慎ましやかな家庭を築き5人の子を授かった。
子供達は皆、お祖父ちゃん・お祖母ちゃんが最も大切な存在と、
其々の子に言い聞かせて育てる様な親となった。
自分の手で切り開いた人生の、今が最高に幸せと顔をほころばす。

 止まない雨はない。明けない夜はない。
『明日はきっと今日よりも良い事があるさ!』
いま自分に与えられた現実を受け入れて乗り越えよう~
彼女はいつもそうやって生きてきたと胸を張る。
【ため息は命を削る鉋かな】って諺があると教えてくれたのも彼女。

それにしても国民に溜息ばかりつかせる政治家達の嘆かわしいこと!!

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