うきは拾遺集

    野鳥の声に目覚め、筑後川を眺めて暮らす。
   都鄙の風聞、日日の想念、楽興の喜び&九州ひと図鑑。

拾遺集 ヤマセミ三昧

2020年03月30日 | 日記
 世界はコロナウイルスで沈鬱ですが、自然のめぐりは春たけなわです。春なのにやり場のない不安感に押しつぶされそうな人間たちを知らぬ気に鳥たちは春色を堪能してうきうきと気分を高ぶらせます。ヤマセミの活動が盛んです。かまってくれと、ひっきりなしのパフォーマンス。にわかカメラマンも付き合いにあわだたしい。すこしずつご紹介しましょう。  

      
                居間の食卓から窓越しにツー・ショット 

    
       美しいでしょう、と言いたいところですが。このままこの家の居間の窓に突進!


             窓ガラスを相手のぶつかり稽古。スッキリした気分で 

三春天満宮 火鑚り(ひきり)神事

2016年12月10日 | 日記
 
 
 三春天満宮は当地、三春地区250世帯の心のよりどころです。12月9日の例大祭を前にした7日、西長瀬地区の祭主宅で「火鑚り神事」が執り行われました。3日間の祭礼の最初の行事。堅い木と木をこすりあわせて火を起こし、神前の燈明、供物の煮炊きに供する斎火(いみび)採る。木と木の摩擦熱で火を手に入れた太古の人々の暮らしの記憶を伝えて面白いと思います。

 ヒノキの角材をカンナで仕上げた「火鑚り臼」、スリコギの形をした「火鑚り杵」と丈夫な綱の3点が道具一式です。銅の部位に綱を二巻きほどした杵の先端を臼に垂直に強く押し当て数人がかりで両側から交互に引き合って回転摩擦で火を起こす仕掛けです。

 

 回転摩擦が適切に与えられれば5分ほどでヒノキの焼ける匂いとともに煙が立ち上り始めますが、それから発火までが正念場です。湿度環境を演出する天候次第で30分以上かかることがありますが、この日は天気に恵まれたものの採火までにかなり手間取りました。煙が立ちのぼり、さらに回転と摩擦熱を加えると臼と杵の接点に小さな火種が見え、素早くこより状の紙に点けて神官が用意したランプに移します。苦労の末の採火が無地終わると一同から歓声が上がりました。

 火鑚りの言い伝えをたどれば、オホクニヌシの国譲りと出雲大社の起源を伝える場面の古事記に記述が見られます。地上を治めるオホクニヌシはアマテラスの命を受けたタカミカヅチに迫られて国譲りを承諾し、「天にそびえるような立派な宮を賜りたい」との交換条件を付けて交渉が成立します。その手打ち祝宴の場面です。

 《膳夫(かしわで)(調理人)のクシヤタマは鵜となって海の底に潜り・・・海に生えるワカメの茎を刈り取ってきて、それをひきりの臼につくり、ホンダワラノの茎をひきりの杵につくり、新たな火を鑚りだして、タケミカヅチにおいしい食べ物をつくり供えた上で、オホクニヌシはあらためて誓いの言葉を唱えあげた》(三浦佑之訳『口語訳古事記』)。

 出雲の熊野大社に伝わる火鑚り神事がその面影とされているそうです。遥か九州のこの地の神社で古式にならって伝えられる不思議を思います。ついでい言えば、神様が祭主に選ばれた氏子の住まいに逗留することもユニークです。わたしの知識にないだけかもしれませんが、お旅所はあっても神様の民宿は聞かない。火鑚リのあと、祭主宅では神様を迎えるための注連卸しの神事、直会が営まれて神宿が整う。9日に注連上げを行って本宮にお送りするまで、神様は住民とともに旅情を楽しまれることになるのです。