Harukoの濾胞性リンパ腫日記【B細胞 Ⅳ期 B症状 50歳代後半 】 2008年4月28日~

悪性リンパ腫の入院日記。多くのリンパ腫病のうち濾胞性(低悪性)リンパ腫の総合情報サイトを目指して行きます。

お寿司を食べられない?

2008-06-19 20:23:23 | 副作用と対処法
お寿司を食べられない?


 骨髄移植の歴史は完全無菌化に始まります。主治医は基本に忠実に完全防御して宇宙服のような格好で清潔を守り,当然のように移植を受ける側も無菌のためと称してヒビテンのお風呂に入ってから移植病室に移動していました。約10年前です。それが移植前の通常でした。今は簡易化が目標です。つまり,手洗いはしっかり。1m以内に立ち入らなければ,マスクも必要ではない。新聞,雑誌は持ち込み可。ペットボトルも可。日常の着替えもきちんと洗濯されていればそのまま病室へ。腸内細菌叢を乱さないよう不必要な腸管滅菌は行わない。もちろんヒビテンのお風呂もありません。では,簡易化の中で,なぜ,お寿司はだめなのでしょうか?

お寿司はだめ?
 京大病院感染制御部のDr.藤原尚子先生に 『好中球減少時』 の食事全般についてコメントしていただきました。


 1.原則として血液悪性疾患の化学療法中と造血細胞移植後の好中球減少時期を分けて考える必要はありません。移植後はグレープフルーツに対して制約があります(文献1)。グレープフルーツジュースに含まれるフラノクマリン誘導体がチトクロムP450に対する抑制効果を持つため,シクロスポリンの血中濃度が上昇すると考えられているからです。



 2.『好中球減少時』の患者さんの多くは,好中球減少というリスクに加えて,免疫抑制剤投与中で,抗癌剤による腸管粘膜障害があり,広域抗菌薬による正常腸内細菌叢の破綻が起こっています。さらに制酸剤投与により胃酸による菌量低下が見込めません。
   このような状況で避けることが推奨される食物は

 (1)健常人でも避けるべきもの(期限切れ,食中毒が懸念される食物)
 (2)汚染細菌・真菌の量が多いと考えられるもの,となります。

   (1)は,摂取した場合の腸炎発症の閾値の低さ,および発症時の重症化が,避ける理由です。当院でもよく経験するのは,ステロイド内服中の患者におけるサルモネラ腸炎・菌血症です。通常,私たち健常人も日々サルモネラを経口摂取しているのですが,胃酸での殺菌や腸管粘膜の免疫等で発症に至ることはほとんどないのだと考えるのが自然です。それが発症してしまうのが,こういう患者です。また,HIV患者で有名ですが,発症後の慢性化,再燃も血液疾患での化学療法中患者や移植後患者で認められています。細胞内寄生性であるためにおこる病態なので,他の菌についてはその病態に顕著な差は認められません。摂取機会も圧倒的に多いので,サルモネラには要注意です。
   (2)は,摂取した菌の腸管病原性は不明でも,腸管からtranslocationして菌血症になる可能性があることが,避ける理由です。ものによっては流水での洗浄・加熱・低温殺菌を行って菌量を低下させれば摂取可能です。このような処置ができないもの(自家製漬け物・もともと生で食べる食物)は避けるべきものとなります。例えばキムチは(2)に属するため,加熱により摂取可能です。
    「無菌食」 なるものは不要ですが,(1)(2)が疑われる食べ物は,適切な処置を行って摂取するということになります。(2)に関しての簡易化は現段階ではここまでです。




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      以上の藤原Dr.のコメントからお寿司は 「なまもの」 という意味では(2)の可能性として避ける必要があるようです。寿司ネタによっては(1)もあり得るでしょう。お店の衛生状態や寿司職人の手の状況にもよりますが,作る過程においては(1)か(2)かは別として多少の菌が混入する可能性も出てきます。その他に,避けた方が良いものはCDCのガイドラインや,日本造血細胞移植学会のガイドラインにも記載がありますが,納豆やチ-ズです。袋菓子や清潔に販売されている食品はもちろん食べても良いと考えられています。



                





どんな物を食べている?
 写真は普通の食事と移植例を受けている方-いわゆる生禁-の食事です。一見,普通の食事にみえるのではないでしょうか?違いは果物について言えば,写真左は皮のついた果物がついています。移植後の好中球減少時の食事です。右は普通食です。ところがこれが意外と不評です。あっさりした味付けだからです。

どんな物を食べたい?
 共通して化学療法中の皆さんから要望されるのは,しっかりした味付けのものという希望です。食べたいものベスト3はカレー,ラーメン,焼そばです。その他にはキムチもあります。はっきりした味付けに希望が集中します。カップヌードルも人気です。

こんな食事があれば?
 入院中の患者さんの食事への関心は高いものがあります。病棟内で食事が選択メニューになっていて,単品を注文して食べることが出来て,少しずつ品数をとれると3度の食事が楽しいものになるでしょう。そんなに多くの量はいらないのですから。






文  献
1.Ku Yi-Min et al. Effects of grapefruits juice on the pharmacokinetics of microemulsion cyclosporine and its metabolite in healthy volunteers: Does the formulation difference matter? J Clin Pharmacol 1998; 38: 959-965.





http://www.minc.ne.jp/kasii/501-5.htm


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