Harukoの濾胞性リンパ腫日記【B細胞 Ⅳ期 B症状 50歳代後半 】 2008年4月28日~

悪性リンパ腫の入院日記。多くのリンパ腫病のうち濾胞性(低悪性)リンパ腫の総合情報サイトを目指して行きます。

Campath-1Hを用いたHLA不一致造血幹細胞移植

2008-01-01 00:00:00 | 治療法あれこれ
Campath-1Hを用いたHLA不一致造血幹細胞移植


●HLA不一致(ミスマッチ)造血幹細胞移植
 同種造血幹細胞移植術の合併症として、GVHDと拒絶があります。GVHDや拒絶の危険はHLAと呼ばれる白血球の型(A座、B座、DR座の各2個の合計6座)が合っていない場合に高くなることが知られており、以前はHLA一致あるいは1座のみの不一致ドナーがいる場合にのみ移植が行われていました。しかし、このようなドナーが血縁者から得られる確率は30%程度しかありません。また、骨髄バンクを介しても良いドナーが見つからなかったり、あるいは病気の進行のためにバンクでドナーを探す時間がないような状況があります。そこで、近年、HLAが2座あるいは3座異なるドナーからの移植(HLA不一致移植)が試みられています。ほとんどの患者さんにおいて、HLAが2座、あるいは3座不一致のドナーは血縁者から見つかります。臍帯血移植もドナーが見つからない患者さんの治ための療方法の一つになりますが、生着不全が多いことや、移植後にドナーリンパ球輸注療法を行うことが出来ないなどの問題があります。

●HLA不一致移植の方法
 HLA不一致移植が失敗する最大の理由はGVHDであり、GVHDを引き起こすのは主にドナーのT細胞であることが知られています。そのため、HLA不一致移植の一つの方法はドナーの造血細胞から、GVHDの原因となるT細胞を取り除いて移植する方法ですが、この方法の場合、拒絶の危険が高まることやT細胞を失うために免疫力の回復が遅れたり、GVT効果が損なわれたりすることが危惧されています。そこで、この研究ではCampath-1Hと呼ばれるリンパ球を抑制する抗体を用いて、T細胞を(完全に取り除くのではなく)抑制した状態で移植することにより、GVHDや拒絶を予防しながらHLA不一致の移植を可能にする方法を開発しようと考えています。Campath-1Hはリンパ球などの細胞の表面にあるCD52という物質に対する抗体で、米国では慢性リンパ性白血病に対する治療薬としてFDAから認可されています。
 Campath-1Hを移植後のGVHD予防の目的で用いる試みは海外では数年前から行われています。イギリスのグループは、44症例の同種造血幹細胞移植においてCampath-1Hを併用した前処置を行い、急性GVHDをほぼ完全に予防することに成功しています。この結果に基づいて、彼らは47例の非血縁ドナーからの移植にもCampath-1Hを併用し、急性GVHDは3症例のみでした。また、アメリカのデューク大学では、HLA不一致移植24例においてCampath-1Hを併用した造血幹細胞移植を行い、GVHDの発症は21%と、HLA不一致移植においてもCampath-1Hの投与によってGVHDを抑制できることを報告しています。HLA不一致移植では免疫力が低下するため、感染症のためになくなられた方が3人(13%)いらっしゃいましたが、他のHLA不一致移植の方法で43症例中11症例(26%)が感染症でなくなられたことと比較すると改善していると考えられます。

●Campath-1Hによる副作用
 Campath-1Hを点滴する際に、アレルギーのような反応(発熱、かゆみ、皮疹など)が出現することがあります。重症の場合には呼吸困難や血圧低下がおこる危険もありますので、予め、副腎皮質ホルモン(ステロイド)による予防を行います。また、リンパ球に対する抗体ですので、移植後のリンパ球の回復(免疫力の回復)が遅れることが予想されます(これはHLA不一致移植の共通の問題点です。)

●治療上の問題点
 HLA一致の通常の造血幹細胞移植と比較すると、移植後の重篤な合併症であるGVHDの危険が高まること、感染症の危険性が高くなること、そして場合によってはGVL/GVT効果が減弱する可能性もあります。ですから、HLA一致あるいは一座不一致の血縁ドナーがいらっしゃる場合には通常の移植を行うべきでしょう。また、血縁者にドナーがいない場合にも、病状に余裕があるのであれば、骨髄バンクでHLA一致ドナーを探すことが優先されます。適切なドナーがいない、あるいは病状から骨髄バンクのコーディネートを待てない場合には、未だに極めて実験的な段階の治療であることを理解していただける方だけを対象として治療を行いたいと考えています。東大病院では既に倫理委員会で承認を受け、2002年3月から臨床試験を開始しました。この臨床試験にご関心のある方は、下記のメールアドレスにご連絡ください。

●これまでの治療成績
2005年5月時点で20名の方が参加されています。まだ患者さんの数も少なく、長期の成績も不明ですが、これまでの経過では、1名の方に拒絶が生じ、III度以上の急性GVHDも1名の方に出現しましたが、これはHLA一致兄弟間移植と同程度のGVHDの発症頻度です。これまでの経験から、Campath-1Hを用いることによって、HLAの二座、三座不一致があってもGVHDを十分に抑えられるという感触を得ています。しかし、Campath-1Hによって、正常な免疫力の回復も遅れるため、感染症(特にサイトメガロウィルス)や再発に関して評価していく必要があります。このCampath-1Hという薬を日本中の病院で使えるようにするために、医師主導の臨床治験を計画しています。

●臨床試験に参加するためには・・・
1. 適切なドナーがいない、あるいは病状のために骨髄バンクのコーディネートを待てないこと。
2. 病状が同種造血幹細胞移植以外の治療では完治が期待できないこと。
3. 移植治療に耐えられる体力が残っていること。
4. 腫瘍の状態がある程度コントロールされていること。(抗癌剤治療に全く反応しない腫瘍に対しては、移植を行っても効果は期待できません。)
5. 重症の感染症を合併していないこと。





http://www.h.u-tokyo.ac.jp/mukin/






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