Stripe Volume

ストライプ ヴォリューム

魂って何でしょうね?

デューク - 鬼火 -

2009-07-29 15:03:22 | The SIX ISLES
割れ残ったガラスの向こうの闇に薄緑の燐光が二つ浮かんでいる。

なんのことはない。 私の瞳だ。



あの男は深紅だったな。 

お陰で生き延びられた。




右手で襟を掴みぶら下げていた奴を放りだし、左胸を貫通した細い矢を引き抜こうとした。

しかし、返しが付いていて抜けない。 先へ押し抜くしかないからこのままにする。



---------------------



着任して間もない頃、どうもこちらの情報ばかり流す連中が居るらしい

という噂の店があって、戦略部のリーダー数人が身分を隠さず客として入り

逆にどのように漏洩するか情報にマーカーを付け調べたことがあった。



およそ3日で細部まで含む相関図を掌握、諜報員らしい人物を特定した。



このネットワークはまだ気付かれていないと思わせておいた方が

今後も役立ちそうだと判断され、その娼館は重要監視対象となったが

表向きは白、なにも見つからなかったことになっていた。




怪しまれない程度に数名が客として通い、交互に監視にあたる。


それでも半年も続けたらやはり目立つ。

数カ月がいいところだろうと思っていた。






懸念は意外な形で早く当たってしまった。



---------------------



娼館の監視 という指令で来てみればこの有様はいったい何だ?




 民間人に機器類(諜報用)を埋め込むのは禁止されていますね。





倫理上、と言うよりは管理が行き届かない為。

相手側によって発見された場合、こちらの手札が丸見えになる。




遊びが過ぎて逆にこちらがハッキングされていたという失態。




ガクガクと頭を小刻みに上下させながら、こちらへ振り返ろうとする女。

後ろから彼女の両眼を右手で覆った。

左手は首。 細い。



この娘の正気は、もう戻らないだろう。

なんにせよこれ以上情報はやれない。

そのままその若い娼婦の首を折った。





 本件は、このまま報告いたします。




きびすを返して退出しようとドアに手をかけた刹那

うなじにぴりっと何かが走る感覚。


手にしたボードで頭部をかばうと

クロスボウの矢がビィンと突き立っていた。




チッと空気を焦がし3方から寄せてくる殺意。




役職は同じでも、経験はあちらがかなり上だ。

さて。 どう生き延びる?




2、3手を受けたところで至近距離からクロスボウで胸を撃たれた。

先端が傘の様に開く返しが体内で開いていたら即死だったろう。

距離が近すぎて貫通したため助かった。



しかし、浅傷ではない。

撃たれた反動で床を転がりながらそれだけ考えた。




壁に当たって止まり起き直りかけたとき

こちらへ投げられるナイフと別方向からつがえられたクロスボウの影。



避けられるか?



その瞬間、視界が二重映しになった。





 放たれたナイフが見える。





考える間も無く体が先に動く。

刺さる直前、指先が軽やかに刃を捉えた。

クロスボウの矢も同じく捉えた。

速い。

意識しているゆとりは無い。



立ち上ると3人が怯んでやや退いた。



薄緑色した鬼火が全身からのぼるような気がした。







身体の前で交差した両手の

右手のナイフと左手の細矢。

身を沈め、跳ね上がり様に持ち主の顔へ返した。

中空で後転、壁の天井際に足を着いて半身をひねり

腰の短刀で油煙に曇ったシャンデリアを切り落とす。



暗転。



着地して眼を閉じ気配を伺う。

微かな息づかいの方へ顔を向けると

そちらからジグザグの光跡が走った。



寄せる魚群の腹の燦めき。

飛び退ると居た場所に突き刺さるニードルフィッシュ(投げナイフ

追われながら食卓を楯に物陰へ転がり込む。



 当然、次は仕留める気で狙ってくる。
 
 もたもた考えても一緒だ。

 ならば。



正面から仕掛けた。 防具を身につけていないぶん身軽だ。

投げナイフを数度かわして間合いを詰める。



こめかみに蹴りを当てる。

相手は後方の出窓の縁柱まで吹っ飛んだ。

金の凝った装飾に色が付く。



ずるずると床へ垂れてゆく奴を引き起こして、息を確かめる。


とどめを刺すかとも思ったけれど、気が失せてしまった。



ずきりと矢傷が重く響き 

私に私の感覚が戻った。


------------


これがグラディウスの能力を無意識にCALLした時の体感だった。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

天使の分け前 2

2009-07-07 00:22:22 | Bar ANGEL’S SHARE
仕事が忙しくて、息抜きもままならないというトールさん。

今日は時間が取れそうだし、他にも…というので飲みに誘う。


---------------------



なんだったら中まで来てくれてもかまわないよ。



 そう言われていたものの天使エリアは初めてだ。

 この先明らかにエネルギーの性質がちがってる。

 行けないことはなくても、別段無理して入らなくてもよさそう。

 さて、どうしよう?




境界をつくる前庭の精霊が話しかけてくる。



どうかなさいましたか? 見慣れぬ御方。




 ええ。 どうしようか迷っているところなんです。

 これからこのエリアの統括責任者と会う予定なんですけれど

 天使エリアは初めてなもので。




それでしたら、少しこの場でエネルギーに慣らされては?

この場所は、ちょうどエネルギーの汽水域にあたります。

なにかお話しましょう。

それとも貴方からなにかお話してくださいますか?




 そうですね…。

 では、お付き合いいただけるお礼に私から。



-------------------



デューク  - come across -



-----------------




私が話し終わった頃には精霊は3人に増えていて

トールさんがやって来るまで、にこにこしながら

代わる代わる話し相手になってくれた。




-----------------






一杯を奢って、遅くなったお祝いを言って

それで帰るつもりだった。








最初入ったほう。

ステーションのタワー棟の中層くらいのところにある「IRISH PUB」


長いバックバーが、通路との間仕切りになっていてバーテンダーが数人。

1卓3~4人のテーブル席が空間を大きく取って点在してる。(ソファ席は無し)



照明は明るいところから暗めまで色々。

外壁側は、全壁面が天井から床まで窓。

そこが長いカウンター席になっている。



多分その区画の中心が見えるようになっている。



雨に滲む窓越しに見えるような夜景風で、

エネルギーの動く様が映っているらしい。

それが大変に綺麗。




最初の一杯は、同じものを。



話したのは、おめでとう って言ったのと後

…何かな。



最初はそれだけで帰ろうと思っていたけれど

すこし物足りなくて。

話し足りなくて帰りがたいというか。

それで、場所替え。






2軒目。


この店の名前は、、、ANGELSHARE、、、としておこうか。

地下?なので無窓。

ボトルをキープするように時間枠を持っている。

だから必ずひとりきりの時間を楽しめる。


マスターは、何世紀遡っても「ここで店開いていましたよ。」

と、しれっとした答えが返ってきそうな年齢も前職も不明な人。





今夜、二回目の乾杯。



トールさんと飲みに来たら開けようと思っていたILEACH。



現職場のややこしい話を聞き

打診されていた件の話を聞き

LABOでの話も時に混ざり…

しかしそれでも杯はゆっくりかさねられた。





別れ際、この件を受けてくれると大変有り難い、という

トールさんの言葉が妙に面はゆい。

どういう顔をしたもんだか困ってしまった。



資料を受け取り、これに関することは承諾した。


  
そして、天使エリアへ帰って行くトールさんを見送ってから

ポータルをつないで私も帰った。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

デューク - come across -

2009-07-07 00:00:53 | The SIX ISLES
最初の出会いは向こうからやってきた。


-----------------



私は特予科生ではなく、普通に士官学校を出たあと

ここへ幹部候補の実習にやって来た。



まだ全く勝手が分からない頃のこと。



なんだあいつら?この辺の番犬よりガラが悪いな。


一緒に居た学友に実に自然に疑問を口にしていた。





それは単なる破落戸ではなく、既に実務経験を積んだ兵士だった。

かなり特殊な才能を特化して身につけた、癖のあるどころではない

幼少時から叩き上げられた奴ばかり。 単なる馬鹿も当然いない。

若いせいもあり歯止めが効きにくい。 

任務を終えたばかりで、気晴らしを探していたところだったろう。


全く…いい出会いをしてしまった。




それでも、最初はこちらの返答次第、一発殴って済ますくらいの

自制心はあったのではないかと思う。

つまらない諍いでも、上に伝わってしまえば処分は喰らうのだから。


そして私は、更に奴らの神経を逆撫ですることを言ってしまった訳。



自分の無神経さに気付かずいられるほど

得難い幸せに気が付かず育ってきていた。




その後はあっという間に人通りのない裏通に追い込まれ

壁を背にして取り囲まれ逃げ場無し。

腕に覚えは? 無し(笑




首に蹴りをもろ食らって蹲ったあとは

殴られてるんだか蹴られてるんだか。





自分の胸のどくどく言う心音だけ聞こえてきて

静かに空気が沈み収まってきている事に気付く。

自分の連れはどうしたろう?逃げられたかな?



続けざまの攻撃に痺れて痛みの判らなかった身体。

だんだん血流が戻るのか激痛が耐え難くなってきた。

特に右手が半端じゃねぇ。




…起きられん。





痛みに意識が遠くなり逆に痛みで意識が戻り

その繰り返しでワケ分からなくなってきた頃

だれかに呼ばれた気がして目をひらいた。



 痛みで焦点が合わない。

 銀色の懐かしいシルエット。

 ボンヤリと輪郭が何重にもぶれて。




そこで意識が切れた。






次に目覚めたときは、回復槽の中。



しばらくしてそこから出られた時には

事件は何もかも朧な記憶になっていた。


右手は、どういう怪我の状態だったか聞いたような気もするが

要するに握力が下がってしまい元に戻すには時間がかかること

取り戻すほうの努力を払うより「嫌じゃなければ」頭を使うほうに

移ってはどうか? という話をされた。



  いい話ではない。




「重たい物(剣・火器類)が扱えなきゃどうにもならないんだよ。

「そういうことだ。



まだ感覚の鈍い右手を無意識に揉みながら

専科の変更をあっさり決めた。どうせ拒否できることじゃない。



その足で移動手続きに入ってしまったので

再びグラディウスと会うことになったのは、数年後。





当時は華奢だった(らしい)面影は片鱗もなくて

(私はもともと覚えていないのだ)

私はあの事件で既に彼と関わりがあったとは

ぜんぜん気付いていなかった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

from among  3

2009-07-03 00:00:33 | Angels Area
翼を抱いたままステーションのオフィスにまっすぐ戻った。

私室に置いてそれの状態が安定していることを確認した。

胸をなで下ろすと同時にひどくひどく複雑な気分になった。




再び翼に触れながら感覚を澄ませてみる。

微かにしか感じられないけれど間違いない。

翼の持ち主は、彼だ。





 でもどうして?





 …ああ前に、本体が「翼の数が増えましたか?」と聞いたとき

 以前の数と今の数と翼の枚数が違うようなこと、言ってたな。

 立ち入った話のようだったから、違う方向に話題を振り替えたんだっけ。。。






 …なんであんな所に埋もれていたのかな。

 あんな廃墟の中に捨てるなんて、、、酷い。






ひとしきり憤慨する気持ちと争ったあと、不意に気が付いた。




 廃墟も最初から廃墟で出現するはず、無い。




今でこそ見る影もない。

しかし、あそこは遺構になる前は何だったんだろう?

巡って見たとき確か私はこう思った筈だ


「元々はかなり壮大な建物群があったようだ」と。


昔に巻き込まれたような戦嵐が吹いたのではないか。





 …ああもう。

 納められた場所が元はどうだったかどうかなんて

 それこそ翼の数が減ったこととは何の関係もない。


 彼が、自ら、了承してやったこと、と推察できる。

 では、その理由は?…




考えたくない。

頭を抱えてそして、どのくらい経ったろう。




翼はより安定する状態を自ら模索しようとするのか

すこしずつその姿を変えはじめていた。






その変化を眺めていたら、気持ちが静まってきた。






 もう… いいか。

 望んだ通り、あなたはこの世界に留まってくれるのだし。


 明かされるほうがいいことなら、また機会のほうから

 此方へやって来るだろうさ。






思いついて、あるスフィアを取り出す。




 これね。 

 小さな翼がしっかり入っているでしょう。


 もし例えばこれをペンダントヘッドに造ったら

 真正面のきれいに見える位置で収まっている
  

 他に3枚分くらい翼の存在を感じるんだ。

 もしかしたら、あなたの大切なものかもしれない。

 だから一緒に置いておくよ。




すっかりクリスタル化した翼の上に ことん とそれを乗せた。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

from among  2

2009-07-02 01:00:53 | Angels Area
廃墟。

屋根はとうに落ちて壁も半ば以上崩れ

かつていったいどんな場所だったのか

見当が付かない。

石畳も時折浮き上がったヶ所がある為にそれと分かる。

木々だけは何を糧にするのか、生命のあるものが静かに生えている。


------------------



ヒトガタに並べた体の断片。

目を閉じた少女の頭部。

その下はトルソ。


その胸に組まれた両手。

翼が天使のイコンを思い起こさせる。





エレーン…

これでぜんぶ拾ったと思うよ。


冷たい髪を撫でる。


君の姉さんと兄さんは翼しか確認出来なかったけれど

君の両側にいるよ。



おじさん、おばさんは見つからなかった。

あの災禍から逃れられて穏やかにどこかで暮らせてたらいいね。



格好いい君の兄さんに 俺、憧れてた。

姉さんも素敵だった。


あのとき少し年上だった君とこんな再会があるとは

思ってなかったよ。



でも、もうどこかで新たな人生を得て、とっくに幸せに暮らしているね?

きっとそうだよね?


遅くなってしまったけど、祈るよ。





遺体の手を握り、意識を大いなる源へ繋ぎながら、翼に話しかける。





昔、大きな戦争があってね、その時、引きちぎられながら

次元のはざまへ吸い込まれていった同郷の人達のなきがらなんだよ。



あなたのことは、いつからそこに居たのか知らない。

しかし、あなた上に彼らが吹き溜まっていたということは

その前からいたんでしょう?


…ながい時間だよね。







疲労感が酷くなる。


ああ 駄目だな

どうしても自分の気持ちが入ってしまう。


彼らの幸せを祈らずにいられない。

中庸な導管であり続けるのは難しい。。。 


難しいよ。   トール。






私と源のエネルギーとを得たなきがらが

光と闇の中へ還元されてゆくのを見届け

また翼へ眼を向けた。





驚いたことに翼から、うっすらと光が一条

さっきまで遺体のあった所へ伸びていた。




…手伝ってくれたの?




幽かに反応して今度は鉛直方向に光が伸びる。




手伝ってくれるの?

これからも?




ちかちかと瞬いた。




だったら、消えないでいてくれなければ。

それから私はもう限界だから一旦戻るよ。


一緒にきてくれるね?





包まれていた布ごと抱き上げる。



それぞれの翼が、灯りをともしなおしたように

内からの輝きが徐々に増してきた。


暖かくて少し手応えのある重さが

生きている実感をそれだけで与えてくれた。





胸に抱えなおし

そっと頬擦り。





奥のほうでトクトクと脈打つ細いラインを感じる。

親しい覚えある波動との微かな繋がり。






…まさかね。

一瞬、目眩がして頭を振った。

少しふらつきながら、ステーションへ戻った。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

from among  1

2009-07-01 00:00:44 | Angels Area
翼が戻ったときの記憶から

有翼の同胞の抜け殻がまだ残っている所をみつけた。


------------------


どこから流されてきたのだろう?

変わらぬ姿のまま吹き溜まっていた。

すこしずつ深淵に還元されてゆこうとしている。


変わらぬ…と言っても、命を落としたその時の姿で

ひとかたまりになっていた。



こういう場合、一律にエネルギーを送って昇華させてしまう

ものなのかもしれないが、私にはそれが出来なくて、ひとり

ひとりに懐かしい身仕舞いを整えてから送り出していった。



命はどれにも全く残ってない。



その時の体が、辛うじて形を保っているだけであって

きっと身体の持ち主は、何処かで別の肉体なりを得て

新しい生を生きていると思う。



もうただ時間に還元されてゆくだけなのだ。

でもただ放置するのは辛くて形を整わせてみる。



手折れた四肢を繋ぎ選り分けて体を探し…としていると

3人も送れればいいほうで、くたくたになった。




そうやって積み上がった山が小さくなった頃

少しだけ命の気配がした。




下の方だ。




驚いて上に載っているものを順に降ろし、被っている土埃を払ってみた。

光を遮る布に包まれて、中から出てきたのは何枚もの翼。



frosty white…霜柱の白色に光っている。


向こう側の闇が透けるような白。


しかしここでそれは力強く輝いて見えた。 




翼の羽根一枚に触れてみると、あっけなくハラッと落ちて

見る間に散ってしまった。


布が遮断していたもの…時が、私が開いたせいで入り込んでしまった。




天使の気をもつ、見覚えない翼。

包み直して戻した方がいいのか。

こんな所にある意図が読めない。

持ち出してしまっていいだろうか?



何もかも喪われたものしかないところで

息づいているものを見付けてしまった。

誰のものであれもう手放せない。 離したくない。





時が動き出してしまった。

どうか一緒に来て欲しい。





そう念じて再び羽根に触れてみた。

ハラハラと羽根が散る。 

散って消えてゆく。

強い拒絶する意志。




…だめなのか。

持っていた者か、切り取った者か、置き去りにした者の意志を

そのまま映しているのだろうか。





触られるのも…いや?





また念じてから、そろっと手を伸ばしてみた。

今度は、少し弾力を持った感触。

羽根は落ちなかった。

全く拒否ってわけじゃないんだ。 少しホッとする。



じゃあ 話に付き合ってくれないか?

私の用事が終わるまで。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする